69話 ウィルシュタイン家と拓馬
※何度か読み返し、色々話がおかしくなっている所や誤字・脱字は不定期に修正・加筆をしております。(更新日が多々変更あり)
冒険者ギルドの2階でウィルシュタイン公爵家の方が3人、息子が戻ってくる迄の時間をギルマスが教えてくれたリバーシというゲームを興じながら待っていた。既に夕刻である。
その頃1階では、ルイス・ウィルシュタインが一時的な仲間と討伐から戻って来ていた、直接マリンに獲物を渡して報酬を貰う、だがルイス・ウィルシュタインだけがそのままギルマスの部屋に行くようにと言われたのだ。
「戻ったねルイス・ウィルシュタイン君」
「何か合ったんですかギルマス」
「うん、君のご家族がお越しでね」
「……!ここに?」
「あぁ別室でお待ちいただいている」
「申し訳ないが、会うつもりはありません」
「待ちなさい、雪華様から君のことは伺っている」
「雪華から!」
「そうだ、転生者であることもね」
ギルマスの言葉で気色ばんだルイス・ウィルシュタインだが、ギルマスロイド・三橋はそれを制して話を続けた。
「君はベルフィント伯爵令嬢の事は知っているね」
「あぁ知っている」
「彼女が転生者であることも?」
「……あぁ」
「彼女は自分から陛下や私、そして両親がいる場所で自分が転生者であることを告白していたよ」
「えっ!」
「当然雪華様も驚かれていた、この時代に先王以外の転生者がいるとは思っていなかったそうだ、ベルフィント伯爵令嬢リリアナ・ベルフィント様、300年前は琴音という名前だったそうだね、君はスキルマスターの浅井様と霧島様と同級生だとか……」
「あぁそうだ、あいつらはクラスメートだった、この件も含めて詳しい話はウィステリアでしか話せないと雪華は言っていた」
「えぇそれが良いでしょう、ここは安全ではありませんから、ただ親御さんと喧嘩別れはしないでウィステリアに行く方法を考えてください。これは雪華様からの伝言です、そう言えばあなたには解ると話されていました」
「俺に……わかる……」
「雪華様も家族仲が悪かった時期があったとおっしゃっておりました」
「あっ……、そうか、そうだなアイツはそうだった」
「ちゃんと自分の本音を言ってください。たとえ解り会えなくてもです」
「今までも散々言ってきた、冒険者になるのは生活のため、家族からの仕送りは一切なし、学費も自分で稼いでいる、母上が時々食べ物を送ってくれるけど、それも父上にバレたら止まる。俺の意見は聞く耳を持たないと思う、騎士になれ、それ以外に言わない親だ」
「リリアナ嬢の様に告白しては如何ですか? 何故無理なのか」
「カミングアウトしろと?」
「カ、かみん 何ですかそれは……」
「あぁいや、何でもない」
「私の勝手な考えですが、何故無理なのか、親御さんは理解できないんじゃないでしょうか、騎士家に生まれたのなら騎士になれるはずなのにと思っておいでなのかもしれません」
ギルマスの言葉を聞いて、ルイス・ウィルシュタインこと水原拓馬は雪華の家族の事を思い出していた、確かに家族仲が悪かった、両親や姉弟と暮らしておらず、祖父母と暮らしていた、長期休暇の都度にメルリアに行っていた、アイツには児相がついていたのは覚えている。それは家族からの虐待があったからだ。
「……解りました、会ってきます」
「えぇ、それでも和解できなければ、私が手をお貸ししましょう」
「えっ?」
「貴族の次男以下は家督を継げません、それぞれの道を歩むのですから、そのために冒険者になったのでしょう、雪華様の級友なら、問題はありません」
「ありがとうございます、ギルマス」
少し笑顔を見せながらルイス・ウィルシュタインはギルマスの部屋を出て両親のいる部屋に向かった。2階のギルマスの部屋とは対象にある奥の応接室である。ゆっくりとドアを開けると父と兄がなにやらゲームをしていた。見るとリバーシである。
「……リバーシ……」
「ルイス! 帰ってきたのね、お帰りなさい」
「母上、ただいま戻りました」
「おぉ~帰ったか、ちょっと待ってくれ、今いい所だ」
「そうだ話しかけるな」
父と兄にそう言われて、呆気にとられるルイス、これを母が説明した、ギルマスが時間つぶしにどうかと置いていったゲームという物だという。
「っというか何でここにリバーシがある?」
「あらあなたこのゲームを知っているの?」
「えっ、あぁぁ~~~まぁ」
「あぁぁ~~負けた!」
「俺の勝ちですね、父上」
「くそっ、2勝3敗か」
「えっと………」
リバーシで勝ち負けで悔しがる父を見て唖然としたルイス、そして勝って嬉しそうな兄を見て、なんだか気構えていた自分がバカらしくなった。
「ん~~、お前はこのゲームを知っているのか?」
「えっ、えっとまぁ~」
「じゃ今度対戦しよう」
「はぁ~~??」
「これはなギルマスが言っていたんだが、300年前まであったリバーシというゲームだそうだ、スポーツジム迷宮を攻略するにはこういうゲームも出来なければダメなんだそうだぞ」
「お前冒険者なんだろう、いつかは迷宮攻略するのなら知っていて損はないぞ」
「いや知っているからっというか、何の用でここに来た」
ルイスの言葉で改めて3人は顔を合わせてから姿勢を正し、ルイスに前に座るよう促す、そして父が代表していった。ベルフィント伯爵に言われたことを、つまりルイスの本音や話、思いをちゃんと聞いたかと、そして自身の娘が転生者だったことなどを話していた。
「それで?」
「お前の本音を聞きたい」
「本音は今まで何度も言ってきたけど」
「医者になるのよね?」
「そんなに騎士にはなりたくないのか?」
「父上それじゃ、今までと同じ堂々巡りです」
「あぁそうだな、えっとそのお前の事を聞いてみたいのだ」
「俺のこと?」
そこでルイスはギルマスの言葉を思い出した、何故出来ないのか理由を話してみればどうか、そしてカミングアウトの件も、その思いが出てきて、琴音がカミングアウトをした事には驚いたが、本人はすっきりしたと話していた、それ以降も変わらず生活していると。ただ今はウィステリアに行く為に説得すると話していた事を思い出していた。
「……あのさ、琴音の事」
「琴音?」
「……リリアナ嬢の事を聞いてどう思った?」
「どうって」
「アイツ転生したって聞いたんだろう? それについてどう思ったんだよ」
「それは……、驚いたが」
「それだけ?」
「300年前の記憶を持っているなんて凄いと思うがな」
「それを利用しようなんて思ってないだろうな」
「それは……」
「言っておくけど、もしそれを私利私欲のために利用しようとか考えていたら雪華が黙っていない、アイツはそう言う奴だ」
「雪華って、お前公爵様を呼び捨てに……」
「そうだよ、雪華は俺と同級生だ、俺も転生者なんだよ」
「転、生者……お前も?」
「あぁそうだ、俺が騎士になりたくなり理由がそれだよ、転生前、300年前は整形外科医だった、人と助ける仕事をしていた、それなのに剣で人を殺す仕事をするなんて絶対に嫌だ!」
「転生者……お前が300年前を知る転生者なのか?」
「そうだよ、だからリバーシのことも知っている、ウィステリア領が何なのかも知っているしリリアナ、琴音の事も知っている。雪華の性格だって知っている、アイツは仲間を利用されるのを一番嫌う、もし転生者の俺や琴音、リリアナも利用するなら雪華は容赦しない」
「でもお前、冒険者になって魔物を狩っているいるんだろう? それって殺す事じゃないのか?」
「生活のために仕方ないだろう、それに魔物は討伐しないと人は生きていけない、俺は雪華に頼まれた、ウィステリアに来てさくっと医者の免許をとって叔父さんと春樹さんの手伝いをして欲しいって、頼まれたんだ……」
「叔父さんと春樹さん?」
「雪華の父親と兄だよ、二人とも内科医と外科医だからね、俺も医者の家に生まれてた、父親が整形外科医だったから俺も医者になったんだ」
「じゃお父様の跡を継いだの?」
「いや家を継いだのは同じ整形外科の兄貴だ、母親が内科医だったからな、俺はおやじと一緒にスポーツ医学専門の整形外科医をしていたんだ」
「スポーツ医学って何だ?」
「ここにはあまりないけどな、簡単に言えばゲームで怪我をした人を治療していた」
「ゲームで怪我をするの?」
「今父上と兄上がしていたリバーシはボードゲームっていうものだ、これは机の上でするゲームの事を言う、でも外でするゲームがある、ボールを使うものやラケットとかいう道具を使う物などのゲームには怪我が付き物なんだよ、それを治療してもう一度ゲームが出来るようにする、300年前はゲームのプロがいてそれでお金を稼ぐ事だってできたからな、そういう専門の医者がいたんだよ、俺はその専門医だった、雪華が野球というゲームをしていたから、アイツのチームメートの怪我は俺のおやじが診ていた」
息子の思わぬ発言で、家族の時は一瞬止まった、何をどう言えば良いのか解らなかった。転生者、それは先王陛下と同じ300年前の記憶を持って生まれた者をいう言葉である。そして騎士になることを拒み続けた息子は、前世では医者だったからだと理由を言った。医者は命を守るり助ける仕事である、それを騎士になれとは命を殺す仕事をさせることに繋がるのだ、元が医者なら拒む理由は十分である。
「……そうかお前は転生者だったか、それも医者なのか」
「あなた……」
「医者に剣を持たせようなどと、私の方が愚かだったな」
「父上……、ルイス何故もっと早く言ってくれなかったんだ?」
「……兄上だったら信じられるのか、こんなこといきなり聞いて」
「それは……」
「だろ、それが普通だよ、こんな事言っても誰も信じないだろう、いくら先王陛下の件が合ったとしても、かなり昔だし、転生なんてそんにホイホイあるわけでもない、雪華が驚いていたのは先王以外に二人も転生者がいることに驚いていた、本来ならあり得ない事だとな」
なにやら複雑な思いをしている家族を見て、ルイスはため息を付いた、そして一気にのどが渇いた事もあり、出されているお茶を一気のみをして出て行こうと立ち上がる寸前に父親から声がかかった。
「お前は、その300年前の名前は何だ?」
「……水原、水原拓馬っていう」
「水原拓馬……」
「水原が姓だ拓馬が名前になる」
「そうか拓馬か……」
「それじゃ俺は帰る、それと忠告をしておく、俺が転生者であることは口外しない方がいい、でなければ他の貴族から何を言われるか、何かをされるか解らないからな、まぁベルフィント伯爵なら構わないけど、琴音の両親だし」
ルイス・ウィルシュタインこと拓馬はそう忠告してから部屋を出ていった、部屋を出てから一度迷った末に、ギルマスの部屋に向かった。
「話はすみましたか?」
「はい、ご心配をお掛けしました、リバーシを教えたんですね」
「えぇ楽しいですからね、転生者の君は知っているのでしょう」
「えぇよく子供の頃にしていました」
「そうですか、でぇご両親とはちゃんと話せましたか?」
「……ちゃんととは言い難いですが、転生者であることを伝えました、少し複雑な感じで落胆しているように見えましたけど、俺が転生者であることは口止めしておきました、何が起こるか解りませんから」
「えぇその方がいいでしょう、ウィステリアに行きますか?」
「はい、でももう少し旅費が足りませんので、討伐をします、それにウィステリア周辺の魔物は此方とは比較にならないほど強いと聞いていますので、もう少しレベルをあげないとと思っていますから」
「そうですか、良い心がけです、出発時には声をかけてください、雪華様に報告をしておきます」
「ありがとうございます、今日のことも申し訳ありませんでした」
「気にしないでください」
拓馬はギルマスに礼を言ってから冒険者ギルドをあとにした。
稚拙な文章をお読みになって頂きありがとう御座います。
ご感想に対する返信返しは超苦手なので、出来ないことが多いかもしれませんが、出来るだけ頑張りますので、長い目で見ていただけると幸いです。