64話 王宮にて……盗聴
※何度か読み返し、色々話がおかしくなっている所や誤字・脱字は不定期に修正・加筆をしております。(更新日が多々変更あり)
雪華たちがハルシェット辺境泊の家にいた頃、浅井賢吾と霧島廉はロドリアの案内でベルフィント伯爵の屋敷にいた、緊急の知らせと言うことで、伯爵が王城に言く前に会うことができ、状況説明が行われ、直ぐに一行は王宮に向かった。
王宮の門番に緊急に陛下と謁見を願い出たが、獣族がいることに難色を示した、しかしウィステリア公爵の命令であるとの言葉に、渋々許可を出した門番は通してくれた。
そして陛下の側仕えに対して伝言を伝えると、ある部屋に通された、そこには既に数名の貴族が揃っていた、当然雪華の要望通り王が選定した貴族だけである。
「陛下! 何度も緊急な事を申しまして無理を言って……」
「口上は良いから説明せよ」
「はっ、ウィステリア公爵のご姉弟がハルシェット辺境泊に連れて行かれました」
「何!」
「それでスキルマスターの霧島廉様と浅井賢吾様がお越しになってハルシェット辺境泊の状況を陛下に伝えるようにとの事でございます、またこのロドリアも危険にさらさせるわけにも行かないから連れて行けと公爵のご命令でした」
「なるほど、スキルマスターのお二人がお伝えくださると?」
「えぇ陛下、正確には我々ではなくこの箱から聞こえてくる雪華とハルシェット辺境泊ですがね」
「まぁその前に先に雪華から預かったこの魔鉱石を使わせていただきます」
「それは?」
「雪華の魔法、遮断結界を閉じこめたものです、ここでこれを使って結界を張ってから、この魔道具を使用します」
そういって兼吾は魔鉱石を床に落とした、するといきなり床に魔法陣が現れて部屋を覆い尽くす結界がうっすらと張られた、中にいるものは何かが揺らめいている様に見える。
「これが結界?」
「今回は他の貴族にも魔法がどういうものか見て貰うためにと少し工夫をしたようですね、本来は目で見えませんけど」
そう言いながら廉と兼吾はまず、緊急で急拵えをした物を出した。こっちで言えば魔道具の一つで雪華達の居所とその会話を聞くことができた。いわゆる盗聴器である。
『……小娘、先王陛下の手紙を読んだと言っていたが、本当か?』
『嘘を言ってどうする、ウィステリア家と目覚めているスキルマスターは読めて当然の言語と文字だ』
『私は先王陛下が書き残していた日記を見たことがある、あの言語は見たこともないし読めない、あれと同じ言語で書かれていると陛下は仰ったが、本当に読んだというのか?』
『……そう彼は日記を日本語で書いていたのか、なるほどじゃこの国の人間は読めないだろうな、あれは300年前のとある国の言葉だからな』
『……そうなのか本当なんだな!』
『はぁ、いったい何だ、そんな事の為に私たちを足止めしてここに連れてきたのか!』
『有る場所で、こんな物を見つけた、これは陛下が書いた文字とも違う、お前たちが動物園で読んだ文字とも違うものだ、この世界のどの大陸の文字とも違う、これは知っているか?』
『えっ、これ華国語じゃねぇか』
『こっちはソルア語だね』
『読めるのか?』
『悪いが俺はどっちの国の言葉も読めないね、でも姉貴は読めるようだけど、これ子供が書いた様な文字だよな』
『どっちの国の言葉も私は読めるけど』
『何が書かれている』
『どっちも子供の手紙だな、戦争末期に孤児になった子供じゃないのかな、死んだ親に当てた手紙のような書かれ方をされている』
『子供……の手紙』
『あぁ、何だったら翻訳してやってもいいが』
『できるのか? ならばやってくれ』
『パパ、ママ天国で元気ですか、もうすぐ私も行きます、お天気が凄く悪く、水がいっぱい流れてきていっぱい人が死んでいます。もう少し待っててね』
『お父さん、この間お母さんとリンリンが地震で建物の下敷きになってしまいました、お母さんとリンリンと会えましたか? もう世界は終わりです』
ここまで聞いていた国王やベルフィント伯爵に貴族達も不思議そうに聞こえる声を聞いていた、間違いなく辺境泊の声であると認識している、更に話は続いた。
『あぁそうだな、帰っても良い、これ以上引き留めると陛下に知られてしまうからな』
『ほぉ陛下に知られては困るか、ならば今度は自分で私に会いに来い、その時は丁重にその首を頂くとしよう』
『なっ!』
物騒な言葉をはいた雪華達の周辺から誰かが入ってくる音が聞こえていた。
『いいか辺境泊、私は世間では公爵でありお前よりは上位だ、だがそれ以前にスキルマスターでもある、ランクはお前も知っているよな、ヘイゼル・ロイズ、フィッツ・ブランツ男爵から聞いているだろう? その私に敵対行為をするような対応をした、これは許されると思うなよ、今回は陛下の顔を立ててお前に猶予をくれてやる』
『猶予……』
『そうだ、次私やウィステリアに関わる者達に対して手を出したらお前の領地攻撃するし、この屋敷も消し炭にするから覚悟をしろ。あぁもちろんロドリア商隊やその関係者にも手を出すことは許さない』
『いい気になりおって、小娘が……』
辺境泊の言葉が命令だったのか、扉が開く音がして更に人数が増えた様子だった。
『なっ、なんてざまで……』
『当然だろうに、これがスキルマスターだよ、なにも魔法だけが武器じゃないし、剣術が出来ないわけじゃない』
『そうだぜ、俺たち姉弟は剣術も子供の頃からたたき込まれているんだよ』
『悪いな、これで帰らせて貰う』
『そうだ、ついでにこ奴らの正体を暴こうか』
『なに!!』
「スキルマスター殿、いったい公爵は何をなさった?」
「襲ってきたものの正体を明かしたんだと思いますね」
「多分、魔法で」
『なっ!』
『私たちスキルマスターが解らなかったとでも思ったのか?』
『迎えに来た者達も魔族だったが、一応捕らえて縛り上げて封印させてある』
『なんだとぉ~~』
『この家にさぁ~人族の気配がないんだよ、あんたとそこの従者以外はな』
『悪いけど、ここの敷地にいる魔族は全員捕らえて国王に引き渡す、そして当然お前もなハルシェット辺境泊』
ここで何やらごそごそと音がする、何かの魔法を発動した様に感じたのはスキルマスターだけである。
『さて、じゃ帰りますか?』
『……待て、夏椰!』
『何?』
『この屋敷には地下がある、そこに人の気配がある』
『えっ、人の気配?』
『恐らくこの手紙の持ち主かもしれない、行ってみよう』
暫く二人が歩く音と、襲ってくるものを倒す音だけが、王室の結界を張ったこの部屋にだけ響いていた。
『こりゃぁ~~何?』
『牢屋だなぁ~、人身売買をしているという情報が入っていたから、それを閉じこめておく場所って所か』
「人身売買!!」
「魔族と結託していただけでなく、人身売買にまで手を出していたのか!」
「マイク・ゴラン!」
「はっ!」
「親衛隊を連れて直ぐにハルシェット辺境泊邸に赴け、そして地下牢にいる者達を種族問わず保護しろ、また怪我を負っている者、病気の者は全員治療するよう命じる」
「はっ、畏まりました」
「霧島様、この結界から出ることは可能ですか?」
「一度出たら入れないよ、でも陛下の命令もあるから行ってください、帰ってくる頃にはこの結界も解かれていると思います」
「ありがとうございます」
そういってゴラン隊長は出て行った、それに対して国王は霧島達スキルマスターに礼を言った、他の貴族達は陛下が頭を下げている事に驚いていたが、まずは今聞こえてくる声や音に集中することにした。
『酷いねぇ~~これ』
『拷問を受けた者もいるな』
『怯えてるね』
雪華達の声を聞きながら、話を聞いている貴族や国王達は皆押し黙りながらも唸っている。そして雪華が何かを見つけたのだ。
『ここ?』
『あぁそのようだ』
『この手紙だけど、あなた達のもの?』
『……そ、そうだ……、俺たちの先祖の残した者だ』
『2枚あるけど?』
『1枚だけだ、もう1枚は知らない』
『そう……』
『私は雪華・ウィステリア、こっちは弟の夏椰、あなた達を助けにきました、信じていただけます?』
『……助けに……』
『えぇハルシェット辺境泊は捕らえたわ、陛下に直接引き渡すつもりだけど』
『他に魔族が……』
『あぁ~そっちも俺たちが倒したよ、心配ない全員封じたから』
『俺は鍛冶職人のマットと言います、こっちは妻のマツリ、息子のロアです、助けていただいて感謝します』
『でぇあっちの横たわっているのは?』
『私の父です、もう助からない、かなりの拷問を受けていた』
『夏椰』
『解った』
『何が起こっているんだ?』
『この人達が助けてくれた』
『俺は拷問を受けて助からない体だったはずだが』
『治癒魔法で治した』
『……治癒魔法……』
『さて、怪我も直った所でもう一度聞くけど、どっちがあなた達の先祖から残されたもの?』
『助けてくれてありがとう、俺は鍛冶職人のタルビットという、我らの先祖が残した手紙はそっちの方だ』
『ふ~~ん、こっちか……』
『どっち?』
『あぁソルア語の方だね』
『ソルア語?』
『えぇこの手紙はソルア語といってソルアって国の言葉でかかれているの、子供が死ぬ間際に書き残したものよ翻訳するとね『パパ、ママ天国で元気ですか、もうすぐ私も行きます、お天気が凄く悪く、水がいっぱい流れてきていっぱい人が死んでいます。もう少し待っててね』って書かれているのよ』
『これはどこで見つけたか、先祖は言い残していないのか?』
『どこかの遺跡で見つけたと伝えられています』
『遺跡かぁ~、じゃこっちの華国語で書かれた方もそうなのかもね』
『ところで、あんた達は何で辺境泊に捕まったんだ?』
『我々の先祖が転生者だった聞いたからだと……』
『転生者???』
『はい、何代か前の先祖が転生者でした短命でしたがこの手紙を見て知っている文字だけど翻訳できないと言って息を引き取ったんです』
『いくつで死んだのか聞いている?』
『10歳前後だったと……』
『魔素過壊病かなぁ』
『可能性はあるわね』
外が何やら騒がしくなっているのに音が聞こえてきた所で、魔道具は停止した。
「どうやらゴラン達が到着したようだな」
「そのようですね」
雪華たちの声が聞こえていた不思議な小さな物体を見ながら、話の内容を聞いて、憮然としているベルフィント伯爵は苦虫を潰したような顔をしていた。
稚拙な文章をお読みになって頂きありがとう御座います。
ご感想に対する返信返しは超苦手なので、出来ないことが多いかもしれませんが、出来るだけ頑張りますので、長い目で見ていただけると幸いです。