62話 今後の方針と招かざる客
※何度か読み返し、色々話がおかしくなっている所や誤字・脱字は不定期に修正・加筆をしております。(更新日が多々変更あり)
翌日ウィステリア一行は晩餐会の後ベルフィント伯爵家で一泊し朝食後に宿屋に向かった。当然少しの荷物が残っていたのと、ロドリアとの待ち合わせでもあったからだ。そして今、夏椰の部屋に皆が集まって軽く結界を張っていた。
「姉貴、荷物ってそう無いはずだけど?」
「おみやげ、在るでしょ、ロドリアさんのお店によって買い付けなきゃ」
「あぁそうだった、少し部品も発注していたんだっけ、それも受け取らなきゃな」
「部品?」
「あぁ、今後必要になるものを作るための基本的な物質と言った方がいいだろうけど、出来上がったものを分解したり、まぁはっきり言えば学校で化学実験してた様な事が出来ればなと思って、必要なものを取り寄せたり作って貰ったりしてたんだ」
それを聞いた雪華は呆れ顔で男3人を見ていた。この時代でも実験するのかと、とはいえ多分自分も巻き込まれるか、自分自身で作る事も在るだろうと考えを改めた。
「なるほど……、ならば一つ頼んでいい?」
「何だ?」
「前の世界の物理・科学・化学・力学など理系全体を調べることは同意する、ただ、ここは魔素が中心だからね、その物質が昔のような物質だけで出来ているのか、魔素に還元してしまうのか……、まずそれを突き止めなきゃと思うんだけど……、それを前提に、この世界の基盤を壊すのはダメ、あっちの世界の科学知識などは出来るだけ公にせず、隠しながら小出しにする」
「……魔素か、つまりあっちの世界の原子や電子、お前の専門だった素粒子なんかが、魔素から出来ている可能性がある……と言うことか?」
「うん、たぶんだけどね、魔物は魔核を壊せば死ぬし、そうすると、魔素に還元して消滅、消えてしまうでしょ、ゲームと同じように、でもここはゲームを土台にそのまま現実になった様な世界だからね、色んな意味で調べる必要が在るんじゃないかなぁ~と思ってさ」
「確かに雪華のいう通りだと俺も思う」
「私たちが知る科学の知識をよく理解していれば魔素を使う魔法は自在とまでは行かないけれど、扱い安いんじゃないかな?」
「確かにそうかも、なんかこっちに来てからの魔法って割とイメージが重要って感じがするよね」
「そうなのよ、私もそれに驚いてる、だから名付けるとしたら、以前言ったこと在ると思うけど……」
「魔法工学? 魔素工学だっだけ?」
「多分そんな感じ……ウィステリア領って割と前の時代の遺物が残っているのよね、自治体制はもう私が神崎領でしていたもの、そのものだし、だから領民の識字率も高いしゲームの覚えも何故か早い」
「確かにそうだよなぁ、名称や貨幣価値なんかは変わっているけど、根本の所ってのはあまり変わっていない」
「三橋がこっちに来て直ぐにゲームで対戦って出来ますか?なんて質問してきたもんだから、出来るわよって答えたからね」
「あぁ、藤華の囲碁・将棋部連中みたいにか? プロになったやつもいたからな、藤華時代に」
「そうそう、一応プロになって休みは関係なく勉学中心にしてまともに卒業していったからね」
そんな4人が座談会風に花を咲かせていた時、結界の外から人が呼んでる声がする。その為話は一端中断して結界を解いた。するとちょうど昼食時でロドリアが来たとの知らせだった。今日の護衛はゴラン隊長が午前中陛下に呼ばれている為、代わりの者が付けられていた。
「じゃ食堂の隅っこを使わせて貰って食事しながら話そうか」
「だな」
「今後の話もあるしね」
そう言いながら、全員で1階に降りてロドリアの顔を見て笑顔で会った、貴族でない為、式典には出られていなかったが4人が無事に姿を見せたことでロドリアの方が安心していた。
「ロドリアさんがそんなに心配してくれているなんて思わなかったよ」
「夏椰様、お貴族様沢山いて、しかも王宮での式典ですからね」
「まぁ確かに貴族は沢山いたなぁ」
「でも心配なんてする必要はないよ、逆に俺たちが心配したのは雪華が暴走しないかって事だけだったから」
「暴走って失礼ね!」
「貴族相手で暴走されたら、国が滅ぶ」
「滅ぼさないわよ! バカなことをしない限り!」
「しかしいつかバカな事をしそうだよ、昨日の貴族達」
「まぁ幾人かはするでしょうが、程度にもよるわよ、それに王都や国を守るのは国王の仕事で、私はウィステリアとギルドを守るだけよ!」
そんな他愛のない話をしながら、食事が運ばれてきて、晩餐会の事などを話、楽しそうにしていた。そして雪華は同級生で転生した二人の事を話した。ただし転生者とは言わなかった、危険に巻き込ませない為である。
「でぇそのお二人のお貴族様は、みなさまにとってとても大事なお友達だと?」
「あぁそう、リリアナ・ベルフィント嬢とルイス・ウィルシュタイン共に伯爵家の者だけど、ベルフィント嬢に付いては言わなくてもわかるよな」
「はい、ベルフィント伯爵様の末娘であると、そしてもうお一方はウィルシュタイン伯爵様の次男ですか?」
「そう、家族は放置しても良いけどリリアナとルイスだけは私たちと連絡を取れるようにしたいので、できれば使用人を通してではなく本人直接の連絡でお願いしたい」
「はぁ、解りました」
「それと、今の現状を考えて彼らを危険に巻き込みたくないから、私たちと繋がっていることは暫く内密に」
「承知しました」
「でぇ、今後のことだけど、準備の方はどうなっています?」
「それでしたら、もういつでも出発できます、後は皆様の方は如何でしょうか?」
「そうねぇ、ロドリアさんのお店に行く約束だったから、まずそれを、お土産も買いたいし」
「俺もいくつか部品を調達したいのと、別の店で引き取りたい物がある」
「ならば、その必要な部品がそろい次第出発でよろしいでしょうか?」
「えぇ、それでお願い。私ロドリア商会に行くのを楽しみにしていたのよ」
「それはそれは、光栄ですね」
などと楽しい話をしていたが、スキルマスター達が一瞬目を細め店の入り口を横目でみた。すると数名の男が入ってきた。そして一人の男が何やら店主に声をかけてから、こちらを見てやってきて、護衛の者達に阻まれたが、何故か一睨みされて崩れ落ちた。それを見たスキルマスター達は警戒をした。
「失礼、ウィステリア領主様は此方にいると聞いた」
「あのぉ~あなた方はいったいどなたでしょうか?」
「……獣族か、貴様に話しはない」
この言葉で雪華が怒った、そして目の前のフォークを取り相手に投げた。相手は指でそれを受けていた。
「失礼な奴だ、私たちについている護衛を目の前で倒したばかりか、自分たちの素性を明かさず指名するか? 何者だ!」
「……これは失礼、護衛には申し訳なかったが、こちらも急ぐのでな」
「我らはハルシェット辺境泊の使いの者だ、辺境泊がウィステリア領主に話しがあるためお連れしろと命じられている」
慇懃無礼な態度をとる相手を見て雪華は正体を見抜いていた、そして当然スキルマスター達も同様だった。
「……なるほど、では準備をしてくるから外で待っていろ」
「悪いがすぐにとの命令だ」
「お前さぁ、ウィステリア領主が公爵家だって事自覚しているのか?辺境泊よりも立場が上だ、お前達如きにそんな命令されるいわれはないんだが?」
「……なるほど、公爵になっていたのか、これは失礼をした。では申し訳ないが一緒に来ていただきたい」
「さっきも言ったが、少し待て、食事が終わった所だ、少し時間を貰おうか? 支度をする時間くらいくれるだろう?」
「承知した、15分で出てきて貰おう」
このやり取りである程度理解したスキルマスター達、これに対してロドリアは不安で一杯である。それもあって一人にするわけにも行かない為、ロドリアも一緒に連れて部屋に戻った。
「姉貴あれって……」
「あんた達も気づいたのよね、だったらここから行動に移すけど、即席で盗聴器作ってくれない? それも二つ」
「……何っ! いきなりか?」
「そう急いで、私の持ち合わせを全部出すから早急に、そして二つの盗聴器を受信できて聞けるもの二つ」
「理由を言え!」
「あっちは私を指名した、でも私は夏椰も連れて行く、私たち二人に盗聴器を付けて、相手の言葉を受信機側で聞けるようにして欲しい、そして兼吾と廉はロドリアさんと一緒にベルフィント伯爵家を訊ね、早急に陛下と謁見をして盗聴内容を聞いて貰って」
「陛下に謁見!!」
「ハルシェット辺境泊の悪事を聞けるチャンスよ、何をしているのか、何をしたのか陛下が聞くチャンスでもある」
「でも陛下の周りには側近がいるだろうし、他の貴族だって……」
「そこでベルフィント宰相の出番よ、王妃とその側近や近しいものや、ハルシェット辺境泊の息のかかっていない者なら聞いてよし」
「っと言うことはハルシェット辺境泊派と王妃派を排除して聞かせるって事か?」
「そういうこと、遮断結界は私が魔鉱石に閉じこめておく、それを床に落として結界の中で聞いて」
「ちょっとまで結界の中で聞けるのか?」
「出来上がったものに私が術を掛けて電波を透過できるようにするわ」
「……解った、じゃ三人とも手伝ってくれ、雪華道具を……」
廉の一言で、雪華が道具になりそうなものを出し続け、男三人は科学の知識で早急に作り始めた、雪華は魔鉱石を出して両手で包み込むようにして握り、遮断結界の詠唱を唱えて魔鉱石に注ぎ込んでいた。
そしてロドリアはそれを眺めていったい何が起こっているのか解らなかった。時間はどんどん過ぎていく、下で待っている男達はロドリアから見ても屈強の戦士と見えるレベルも高いと感じていた、だがスキルマスターの4人は警戒をしていてもどこか普通である。
「あのぉ~もうすぐ15分経ちますが……」
「大丈夫よ、ロドリアさん、私は完成、後は3人の方だけど」
「もうちょっと待て……」
それから数分、ぎりぎりの所で「できた」という声が漏れた。その声を聞いて雪華は直ぐに出来たものを凝視し手を当て、特定電波の透過術を施した。
「じゃもう一度説明するわね、私と夏椰が出発したらすぐに伯爵家に行くこと、スキルマスターは下の連中の正体に気づいているわよね」
「当然だ!」
「解っている」
「驚きだけどね」
「そう、だからよハルシェット辺境泊の手先って事は、恐らく屋敷に人はいない、みんな避難をさせている可能性が高い、これも意味が解るわよね?」
「あぁ」
「OK、なら直ぐに行動よ! ロドリアさんを守ってね、そして絶対に側から離さないように」
「了解!」
「ロドリアさんは、多分状況が掴めていないと思うけど、絶対に兼吾たちから離れないように着いていって、王宮にもついて行ってね、これは私からの命令だと陛下に言えばそれで通る」
「解りました」
そして彼らは、全員で身支度をして1階に降りていった、既に約束の時間を2分過ぎており、相手が階段を上がってこようとしていた。
「待たせたな」
「2分の遅刻だ」
「そうね、悪かったね、準備に手間取った、ところで、ハルシェット辺境泊の所には弟も連れていく」
「弟?」
「私の弟よ、ウィステリア家の人間だから問題ないだろう」
「……解ったいいだろう」
相手がそういって、店の前の馬車に二人を促す、そして横目で二人は残される三人に目配せをした。馬車が走っていったが、何故か一人だけ残っている、その相手が言った。
「悪いが、お前たちはここで死んで貰う」
「ほぉ~それは辺境泊の命令か?」
「いや、違うね、俺が気に入らねぇんだよ、獣族と人族が一緒にいるのがね」
「そんなぁ~この人たちは良い人たちです」
「そんなこと関係ない」
「ロドリアさん、そこで倒れてしまっている護衛の二人にこれを飲ませて起こして下さい」
「あぁ、はい解りました」
そんな話を聞いて兼吾と廉はロドリアを自分たちの背後に隠しながら言っていた。
「なぁ~廉、行けるか?」
「あぁ久しぶりだねぇ~こんなの」
「殺しても問題ないよな」
『殺してもかまわないわ、と言いたいけど、敵さんとの取引材料になるから生け捕りだね』
『はぁ~~こいつらをか?』
『そうよ、殺すのは後でたっぷりしてやるから、今は暫く眠って貰って縛り上げて封印しておいて』
「……相変わらず無理難題だなぁ~」
「全くだ!」
「じゃ行くか」
「あぁ」
そういって念話で雪華と会話した浅井賢吾と霧島廉は二人で相手を倒し封印するために剣を持って向かっていった。そしてあっさり倒され、雪華の言うように縛り上げた上に封印石に閉じこめた。その間にロドリアは護衛を起こしていた。
「割と強かったな」
「まぁ昔に比べたら弱い」
「確かに」
「あのぉ~浅井様も霧島廉様も大丈夫ですか? その人、人族では無かったのですね」
「あぁ~まねぇ」
そんな話をしているところに漸く目覚めた護衛がスキルマスター達に質問をしてきた。
「あの、いったい何が合ったのですか?」
「あぁ説明はあとだ、一緒に来てくれ」
「とにかく、雪華の命令を実行しよう」
「行きましょう、ロドリアさん」
「はい!」
そういって護衛を含めて五人は、急いでベルフィント伯爵家へと向かった。
稚拙な文章をお読みになって頂きありがとう御座います。
ご感想に対する返信返しは超苦手なので、出来ないことが多いかもしれませんが、出来るだけ頑張りますので、長い目で見ていただけると幸いです。