61話 もう一人の元クラスメイトの転生者
※何度か読み返し、色々話がおかしくなっている所や誤字・脱字は不定期に修正・加筆をしております。(更新日が多々変更あり)
王室のある一室で、ベルフィント伯爵夫妻の一人娘リリアナ・ベルフィント伯爵が、300年前の雪華達のクラスメートが転生した人物である事が発覚し、色々話をしていてウィステリアの大学に来させないかとの提案に対して伯爵は、少しお時間をいただけないかと言ってきた、それは当然だと雪華は答えた。
そんな話をしていたら時間がだいぶ経過しており、晩餐の準備が整ったと知らせが入った。
「まぁとにかくリリアナ嬢の件は伯爵家に任せるとして、その他は解らないことも含め色んな問題が山積している、当面は元凶魔王に対応するために、冒険者の育成に力を注ぐ必要があると言うわけだな」
「そうですね」
「ならば、今の話は我らだけの内密の話として当面は公表をせぬように、ベルフィント伯爵婦人にリリアナ嬢とロイド・三橋も肝に銘じてほしい、私を含め初めて聞くことが多くて驚かれたことだろうが、これ以上の混乱は避けたい」
「はい、畏まりました陛下」
「承知しております陛下」
何か大方喋っちゃったと思いながらも、溜息をついて王の後をついて行く、他のスキルマスターも溜息をつき今後の事を考えるとやはりピートを締め上げる必要があると思ったのだ。
そして問題はその後ろから付いてくるベルフィント伯爵夫妻とリリアナ嬢こと小山内琴音である。雪華が何かを企んでいると感じているスキルマスター達は小さなため息を付いていた。
晩餐会の会場に入ると立食形式であった、いわゆる中世ヨーロッパ的な中央でダンスができる感じである。そしてその部屋の奥に国王と王妃の座る場所があり、近くにウィステリア組の席が設けられていた。
国王の晩餐の開始の合図と共に音楽が流れて来て晩餐が始まった。国王夫妻とウィステリア組には給仕が食事を持ってきてくれる。暫く音楽を聴きながら食事をしていたが、途中出ベルフィント伯爵夫妻のダンスを堪能したあと、個々にダンスを始める者が出始めた、それを眺めていたウィステリア組の前に、二人の人物が立った。
「一曲お相手いただけますでしょうか? ウィステリア公爵様」
「私ともお願いできますでしょうか? 浅井様」
この二人を見て一瞬か固まったウィステリア組、だが雪華がニヤリとした顔で相手の男性の手を取って立ち上がり、続いて浅井賢吾がリリアナ嬢こと小山内琴音の手を取ってダンスホールへと向かっていった。それを見送ったウィステリア組、特にSAクラスの二人はヒソヒソと何か話していた。
ダンスが始まって暫くすると小声で男の方が雪華に話しかけてきた。
「お前雪華か?」
「えぇあんた拓馬?」
「そうだ、琴音から聞いた、色んな事が解らない状況でもある」
「でしょうね」
「何か知っているのか?」
「ある程度は……、ただ解らないこともある」
「……、俺たちに解るように説明は……できそうか?」
「そうねぇある程度はできる、と言うよりあんたまた医者になったのね」
「仕方ねぇだろう、次男坊なんだ家督は継げねぇ」
「でぇうちにくる話も聞いたの?」
「ウィステリア大学か? 本当に行ってもいいのか?」
「まぁ整形外科医だったあんたなら問題ないでしょ、飛び級でさくっと医師免許とって父さんと春兄ぃを助けてよ」
「俺んとこ中立の立場だが、俺がそっちに行って親の立場が悪くならないか?」
「家督を継がないなら問題ないんじゃないの?」
「まぁ一応はな、だがこの世界じゃ何が起こるかわからん」
「……なるほど……ハルシェット辺境泊あたりが何かするかな?」
「っハっ!」
「あんた社交界に出てないの? ハルシェット辺境泊が冒険者ギルドに対して子飼いを放っていたこと」
「あぁそれは知っている……っというかここでハルシェット辺境泊の名前なんか出すなよ」
「何でよ、アイツ私に対して喧嘩売ってきたも同然なのよ」
「王宮でも、社交界でも派閥争いがある」
「知っているわよ、国王派と前王太子派と中立派、あんたの親は中立派って事でしょ?」
「あぁ、俺の親が珍しく今回は悩んでいてどっちにつく方が家のためかって考えているみたいだ」
「悪いことは言わない、ハルシェット辺境泊派は止めておきなさい、アイツイルレイア大陸と繋がっているから」
「………イルレイア大陸って」
「詳しい話は後よ、ここでは誰が話を聞いているか解らないわ」
そんな話をしながら踊っていると、丁度演奏の曲目が終わりダンスの終了の合図となった。そして拓馬は今の自分の名前を告げた『ルイス・ウィルシュタイン』と。
雪華は席に戻らず周りを見回し、どんな人物がいるかを見つめていた、騎士職の貴族もいる、だがレベルが低すぎる。これでは元凶魔王を倒すことなど皆無である。そんな事を考えていた所に琴音から声がかかった。
「公爵様? 如何なさいまして?」
「………あんたからそんな挨拶をされるとは思っていなかったわ」
「仕方ないでしょ、ここはこういう場所だし、私も伯爵令嬢なんだから、だいたいあんたも公爵でしょうが、もう少し貴族らしくできない?」
「生憎と私は転生じゃないんでね、300年前のままよ」
「……まぁいいわ、でぇ拓馬と話せた?」
「まぁね、でも込み入った話はできないわね、ここでは」
「でしょうね、気づいてる? ウィステリア公爵に声をかける人間を品定めしているのよ」
「あぁ気づいている、だから拓馬が来たのが不思議だった、琴音が仕組んだ?」
「まぁ一応ね、学院では爵位をチラツかせて行動・言動する事は御法度だったのよ、だから同級生と話をするって事で彼と少し話をする時間を貰ったの、明治あたりに近い差別的な感じね、未婚女性は異性と二人っきりになっては行けませんってやつ」
「なるほど、でぇ琴音は親を説得してこっちに来るの?」
「そのつもり、魔物に興味もあるけれど、やっぱりクラスメイトがいるのは心強い、たとえそれが転生者とそうでない者との違いがあっても昔の話ができるのは少し心が落ち着くわ」
「そう、待っているわよ」
「でも、連絡方法ってどうすればいいのかしら?」
「琴音の場合は親が私と連絡が取れるでしょう?」
「ダメよ、事がウィステリア行きって事になると連絡なんてできなくなるかも知れないでしょう」
「そうか……、だったらロドリア商会に行くといい、あの商会は私と懇意にしている、話は通しておくから親にバレないようにこっそり連絡すればいい」
「ほんとう?」
「えぇ、でもバレないようにね、それと商会に迷惑もかけないで」
「解ったわ、……あっ、それ拓馬にも話していい?」
「こっそりバレないように……を条件にならね、それともう一つ条件がある、もし手紙にするのなら日本語か英語にしなさい、この国の言語だと見られたときに不味いでしょ、日本語と英語なら解読できないでしょうから」
「わかった」
「ところで、拓馬の伯爵家ってどういう家系?」
「あぁウィルシュタイン家は代々騎士を輩出している伯爵家でねぇ、昔は国を守る軍の中枢にいた当主もいたそうよ、今の当主はボイド・ウィルシュタイン伯爵ね、兄も騎士団に入っているラルク・ウィルシュタイン。伯爵はもう軍をお辞めになって領地を統治なさっているわ」
「そう拓馬は二人兄弟って所?」
「いいえ妹がいたはず、名前は……、あっそうメアリー。メアリー・ウィルシュタインって子だったわね、今はまだ学院にいるはずだから社交界には出てきてないわ」
「………社交界って何歳で出てくるの?」
「学院を卒業する17歳か18くらいかな」
「………あんたたちそんなに若いの??」
「ふふふ、いいでしょ、若いのよ私たち、雪華たちは眠っていたから300歳越えてるわよねぇ~~おばぁ~ちゃん」
にやりとかつての同級生は羨ましいかぁ~などと言いながら自慢している。
「おばぁちゃんじゃ無いわよ! 私たちは時が止まっただけよ!」
「それでも大学院を出たくらいの年齢でしょ」
「………琴音ぇ~~」
「あはははっ、ごめん事実とは言え悪かったわ、ちゃかした」
「もう、相変わらずよね、そういう所」
「うふ、でもなんか懐かしいわね、こんな話できるとは思っていなかったわ」
「学園で友人はいたでしょ?」
「一応いたわよ、でもねぇ~貴族社会ってそう簡単じゃないのよ、駆け引きも必要だし、信用して何でも話せないし、息苦しいしさぁ、自分の家の事も考えると付き合う相手も選ばなきゃならないし、結婚だって自由じゃない、その点そんな駆け引きもいらず、お互いを知っている者同士なら疲れないもの」
「学園生活も大変だねぇ~」
「拓馬も同じだったわね、兄が騎士団に入るのに、自分は入らない事で、色々家族から何か言われた様で、親とは余り仲がよくないみたい」
「まぁ拓馬は元が医者だからね人を殺す仕事なんてしたくはないでしょうよ」
「そうねぇ~……、ところで雪華」
「何?」
「この世界だけど、もしかして……!!!」
琴音が何かを言おうとした為、雪華はすぐさま手で口をふさいだ。そして目を細めて言った。
「その先は今は言わないで、現状が混乱状態なのよ」
「……うん……わっ、わかった」
「正直、私も目を覚ました時何よこれ、ここどこって思ったのは事実なんだから、とにかく詳しい話はできればウィステリアで話す方が色んな意味で安全よ、これは拓馬にも伝えて」
「わかったわ」
雪華は琴音にそういうと、ちょっと一息入れてくると言いながら自分の席に戻っていった。それを見送る琴音はじっと雪華の後ろ姿を見ていた、藤華時代の雪華を思い出すように。
稚拙な文章をお読みになって頂きありがとう御座います。
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