59話 晩餐会までの控え室で……
※何度か読み返し、色々話がおかしくなっている所や誤字・脱字は不定期に修正・加筆をしております。(更新日が多々変更あり)
すみません
修正していたらいつもよりお話が長くなってしまいました。
全ての式典が終わり、残すは晩餐のみとなった、準備が整うまでは別室で休むことになった雪華達はベルフィント伯爵夫妻達と一緒にお茶を飲んでいた。
「はぁ~~心臓が止まりそうでした」
「あら、そんなに驚いたの三橋?」
「当然ですよ領主様、あの場で陛下のいる前で、名だたる貴族や騎士様達相手にあのような発言は不味いでしょう」
「別に対した事じゃないでしょ、先に釘を差して置かないと後で色々言われかねないでしょ」
「ですが……」
「三橋さん、気にしなくても良いですよ、雪華は適当に挑発していただけだし」
「そうそう、それにこれで彼らの出方を見ることが出来る」
「そんな事を考えていたんですか? しかし相手はお貴族様達ですよ」
「大丈夫ですよ三橋さん、姉貴は300年前だって同じように政治家達にあんな風な態度をしてましたからね、うちの父も祖父も呆れてましたけど、これが姉ですから」
そんなウィステリア組の話を聞いていたのはベルフィント伯爵夫妻である、正直彼らも冷や冷やしていたのだった、陛下が何も言わないため、黙って成り行きを見ていたに過ぎない。
「300年前もとは、どういう意味でしょうか?夏椰様」
「300年前もね、政治家達、つまり国を動かしている人たちが姉貴に対して色々言ってきたんですよ、あの混乱で国民の避難する場所の提供をうちの領土にもしてほしいって」
「300年前の混乱ですか?」
「ほら、初めて俺たちが宰相の家に行った時、姉貴すごく怒ったような覇気を出していたのを覚えていますか?」
「あぁ~そう言えば……」
「そして300年前の事を思い出して腹を立てただけだとか何とか言っていたでしょ」
「えぇそうでした、当時も同じ様な事があったと……」
夏椰が話を続けようとした所でレイモンド・フェスリアナ国王が部屋にやってきた、それを見て伯爵夫妻と三橋は儀礼の挨拶をするが、ウィステリア4人組は軽く会釈する程度である。そして陛下は彼らに座るよう手で合図をし、それぞれの席に座った。
「その話是非私にも聞かせて貰いたいものだ」
「そんな楽しい話じゃないですよ陛下、それより陛下、あの最後の言葉は何ですか!! 聞いてないんですけど!!」
「んっ? 最後の言葉?」
「とぼけないで下さい、最後の言葉ですよ、何で公爵位なんですか!」
「それは当然の事をしたまでだ!」
「……何をお考えです?」
「別に何も考えてはおらぬ」
「普通は王族の血を引く人間が賜るものでしょう! 私たち家族に王族の関係者は居ませんよ」
「祖父が言っていた、あなたの一族の興りが誰なのか、だから当然の対処だと思ってほしい」
「……じゃこの佩玉もですか? いくら何でもこれは無いでしょう!」
雪華がレイモンド・フェスリアナ国王の前に突き出した物は謁見時に公爵杖と共に貰った佩玉である。本来なら国王の印の真ん中に領主家の印が刻まれているのが常識である、だが雪華が手にしているそれは、その常識の反対になったものであった。
「それは当然の事だと思っておりますよ、雪華様」
「……陛下!!! こんなの他の貴族が黙ってないでしょう!!」
雪華は反論しながら立ち上がった、するとレイモンド・フェスリアナ国王も一度立ち上がると、雪華の前で継承を付けながら膝を突き敬語で話し平伏している、当然周りの者は全て驚愕して王に対して何をされているのですか等の声をかけ、ある者は立たせようとするが、それを当人は拒否した。
「いいえ、貴族がそれを見て文句など言わせません」
「誰も認めないと思うけど!」
「……そうですね、ですが私は、私の思いはそれ以外に無いのです、それに事実を知ったら貴族達も納得せざるを得ないと思い出すでしょう」
レイモンド・フェスリアナ国王は真面目な顔で言ってきた、そしてウィステリア家、いや元神崎家の興りが『始祖』で在ることを知っている人物である。故にこの対処が妥当だと判断したのだ。
そんな国王を見て雪華は、また面倒なことをしてくれてぇ~と思った。雪華としてはまだ人間だと考えている、『始祖の魂』を持つ者であっても自覚は……あるが……
今はまだ只の雪華のつもりだからだ、とはいえあのピート・ルゥ・パートを見つけた後はどうなるか自身も解らないのも事実だった。
「そうですか……解りました、一応お受けいたしましょう、但し後で貴族が色々苦情を言い出すのは目に見えています、その対処は陛下がなさるのですよね!」
「はい、勿論です」
「……解りました、ならばもう立って席に座ってください、他の人が困っているじゃありませんか!」
雪華にそう言われてレイモンド・フェスリアナ国王は立ち上がり元の席に座ろうとしたが、席を雪華に譲ろうとする、だが雪華はそれを固辞し元の席に座った。
その様子を見ていた者は国王が座った後、それぞれの席に座り直して、再度王の顔を見ると、レイモンド・フェスリアナ国王は周りを見回し困った顔をしている臣下達に対して笑った。
それを見て宰相であるベルフィント伯爵が雪華に対して佩玉を見せてほしいと言ってきた、当然の要求である。故に雪華は王の顔を見たら頷いた為、ため息混じりに見せた。
「…………これは………、陛下!! 何故この様な事………」
「ほらぁ~宰相さんが一番最初に苦情を呈した」
「マルク、私はこれが正当だと思っている」
「しかし……」
「はぁ~、ベルフィント宰相、何故陛下がこんなバカな事をしたか理由を説明します」
「良いのですか?雪華様」
「仕方ないでしょう! 宰相にも言わずにこんな事して! 作成者には口止めとかしたんでしょ!」
「………はい」
王の返事には些か疑問の沈黙があり、雪華はある仮説に思い立って更に追求した。
「…………ま、まさかとは思うけど、制作者を殺したの?」
「………それは」
「はぁ~もう何てバカなことを……」
雪華と王が話している間に、宰相から返して貰った佩玉をウィステリア組が全員で見て呆気にとられていた、それどころか不味いのではと皆が思った。
そしてスキルマスターの1人である浅井賢吾が最高級の遮断結界を張った。更に霧島廉が睡眠魔法で使用人と側仕え達を眠らせた。起きているのは国王と宰相夫妻に三橋だけである。
「陛下、その制作者をいつ命を絶ったの?」
「ゴラン隊長に命じたので……期日までは不明です、ただ完成品が届いたのは半月前です」
「………半月前って………やれやれ、そうなるともう魂は魔素還元しちゃっているわね」
雪華は溜息をついて、レイモンドの顔を見て再度溜息をついていた。作られた物はしょうがない、また魔素還元してしまっては対処不能である。
「ねぇ陛下、私に関して何かをする場合、今後は行動を起こす前に教えてくれない? じゃないと罪のない命が絶たれてしまう」
「畏まりました、申し訳ありません」
そして雪華は深々と頭を下げて謝罪する王を見て盛大に溜息を付き、遮断結界を張ってくれた浅井と睡眠魔法を掛けてくれた霧島に謝意を述べた。
「でぇ、陛下がこんなバカな事をした理由を話す前に、今現在ここにいる者は全員堅く口を閉ざして漏洩しない様にして貰う。当然これはスキルマスター以外に対してよ。その上で魔法契約を行う、今回は三橋も悪いけど契約魔法に参加して貰うわ、理由は王都に居ることになるからと思って貰えると助かるけど」
「……承知しました」
「魔法契約?」
「そう漏洩防止の魔法契約よ。全員の血を一滴貰うわ、これで命の縛りを付けさせて貰う」
「命を差し出すという事ですか?」
「そういうこと、それくらいに大事な話なのよ、陛下は先王から直接聞いたのだろうけど……」
「姉貴、三橋さんは知っているのか?」
「初回の冒険者カードの更新でね、見られちゃったのよ」
「マジっ、って事は松永さんも?」
「えぇ松永と三橋はそのときに口止めをしてある、まぁ領内に入るから問題ないんだけどね、今回三橋は王都在住となるから魔法契約を行って貰うわ」
それから雪華はテーブルにある魔法陣を浮かび上がらせると、その魔法陣から一枚の紙が現れた、雪華はその紙に自身の血で契約内容を書き記し、その内容を皆に確認してもらい、最後に国王を初め宰相であるベルフィント伯爵とその婦人、三橋達がフルネームでサインを血で書いた。雪華はその紙を魔法陣の上に置くとそれは燃えるように消えた。
「これで契約成立ね」
「これが魔法契約?」
「あの契約書は私の血で書いたから、恐らく本来の私の配下の所にでも行ったのでしょ」
「……公爵の本来の配下?」
疑問を呈するベルフィント伯爵は不思議そうにして王を見るが、国王は頷いているだけである。
そして雪華は改めて、何故レイモンド・フェスリアナ国王がこのような行動に出たのかを説明した、自身が『始祖の魂』を持つものであること、つまり『始祖』とはこの世界を物理世界に弾き飛ばした張本人であることを説明、そしてウィステリア家はその『始祖』が興した家系である事、再び家系から『始祖』の生まれ変わりが生まれると伝えられている事を含め、いつか覚醒するだろうと言うこと。今現在はまだ覚醒はしていない事等を説明した。
「……それは真実なのですか?」
「本当よ、冒険者カードには実際にそう記されているしね」
「これで解っただろうマルク、私がこの方に対して礼を尽くす理由が、今はまだ人であられるが、いつの日にか覚醒をされれば正真正銘の神である始祖姫様なのだ」
「……だから先王陛下も、ウィステリア領主を怒らせてはならぬと……」
「そうだ先王、祖父は300年前からご存じだった」
「……そうねぇ知っていたわね。っというか知っていた事には驚いたけど……伯爵夫人もこの契約を忘れないで下さいね、くれぐれも子供たちを含めて他者に話さないで下さいね」
「……あぁはい、畏まりました」
「とにかく、今後は今まで通りで対応して下さい。良いですね陛下!」
「解りました」
雪華の説明が終わって暫くの沈黙の後、気分を変えるためにと霧島が雪華に言った、魔法で眠らせている使用人を起こしても良いかと、それを受けて了承をする。
起きた者達は急に眠くなってその場で寝てしまった失態を主たちに詫びていたが、その主たちが気にしなくても良い、お茶の準備を頼んだ。それを見て今度は浅井が遮断結界を解いた。
「あぁ~それともう一つ、晩餐なんて必要ないんじゃないですか? 残る貴族なんていないでしょ」
「確かに、この晩餐は強制しないと明言しているが、残る者は多少なりと居るのだよ」
「……それって私たちの見定めで残った者って感じなんだけど」
「まぁそうでもあるが、神殿長は違うようだな」
「あの神殿長、えらく突っかかってきていたわね、陛下を操るなんてバカじゃないの?」
「ははは、そう言われるな。確かに言動は過激すぎたと思うが、彼は神殿のトップに立つものだ、代表してあなたの真意を確かめただけではないかと思う」
「正直な所私はまだ会いたくなかったんだけどね」
「それは何故かね?」
「SLランクの一人をまだ見つけてないからよ、アイツを見つけてある情報を取ってからにしたかったんだけどね。まぁ仕方ないから適当に対応する事にします」
そんな事を言う雪華をみたスキルマスターたちは盛大な溜息をついていた、その人物の顔を思い浮かべご愁傷様とでも言いたかったのだ。
「何よ、その溜息は!」
「いや、お前がアイツを見つけた後の事を考えるとねぇ~~」
「そうそう、周囲に被害が及ばないかと心配する訳よ」
「姉貴、何でそんなにあの人に対して怒ってるの?」
「…………怒っている、そうね怒っても居るわよね、色んな意味で、でも安心しなさい、周辺に被害が及ばないよう一応結界は張るから」
「その結界を張っても大丈夫なのか? お前たちの本気の喧嘩は冗談じゃすまされないレベルだぞ」
「確かにそうだった、俺も秋姉ぇも被害者だ」
「俺達だって被害者だぞ夏椰!」
「俺もだよ、巻き込まれた」
「大丈夫だって! 迷宮内だからよっぽどのことが無い限り影響は無いって!」
3人の男の眼がジトーっと雪華を見ていた。信用無いなぁ~とつぶやく雪華に対して彼らは、お前等の喧嘩に対しては信用できんと天神将組がハモって言った。さっきの『始祖』の話で少し戸惑いながらも普通に話しかける努力をして質問したのはベルフィント伯爵だった。
「そのもう一人の至高の存在である方は、確か男性であるとの事でしたね、スキルマスターのお三方が言うような冗談ですまされない喧嘩とはいったい……」
「……もうぉ~ほらみんなを不安にさせちゃったじゃない」
「普通は不安になって当然なんだよ」
「だいたいこの時代であんな喧嘩されたら地図が変わる」
「酷い……」
「酷くない!!!」
「でも原因はいつもあいつじゃない!!」
「いつもじゃない、半分は雪華が原因だ!」
「公爵、本当に大丈夫かね?」
「大丈夫ですよ陛下! 心配在りませんそれにアイツの迷宮はウィステリア内ですから王都に影響は無いはずです」
「ウィステリア領民に被害が及ぶとかは……?」
「うん、それも……無いです、一応無いようにします」
「……俺お爺ちゃん達や月宮さんと小花衣さんに相談する、避難準備だけはしておくように言っとく事にする」
「酷いわね、夏椰そこまでする必要ないと思うけど?」
「月宮さんも小花衣さんもスキルマスターだよ、姉貴の力くらいは知っているよね」
「妥当な判断だぞ夏椰! それでこそ後輩!!」
「流石姉弟、よくわかっている」
それぞれの言葉を聞いた雪華はワナワナと体を震わせて言い放った。
「迷宮にはあんた達も来るんでしょうが!! 本当は私一人で行くつもりだったのに」
「当然行くに決まっている、俺もアイツを一発殴りたい」
「そうだ俺にも殴らせろ!」
「先輩二人も喧嘩に巻き込まれたんですよね、巻き込まれに行くんですか? 止めるんじゃないんですか!!」
「当然雪華とピートの喧嘩は止める、でもその前に俺たちにも殴る権利はある」
「そうだ、アイツには言っておきたいこともあるしな」
「これは俺たち天神将の仲間としての問題だよ」
これを聞いた夏椰は溜息をついて話を聞いていた他の面々を見た、全員が唖然とした顔と疑問符が立っている事に夏椰は気が付いた。
「天神将と言うのは昔姉貴達が組んでいた冒険者ギルドパーティーの名称ですよ、天神将というのは全員が今で言うSランクで、姉貴と今話題のピートさんがSLランクです、当時から他の冒険者達からは恐れられていた最強パーティです」
「ちなみにそのLVはどの程度だったのだ?」
「LVですか……」
「そうだ、確かSランクのレベルは1000と聞いているが強いのだろう?」
「……驚かないで下さいね陛下、宰相さん」
「ふむ」
「それ程かね」
「天神将全員がLV1100ですよ、姉貴とピートさんはそれ以上です」
「1100……」
「えぇ当時は3桁レベルの冒険者は多かったんです、魔物も強かったですし」
「では何故今は……」
「姉貴が言うには、ロストマジックとロストスキルのせいだろうと言ってました、それに人族は元々魔力が在りませんから、俺を含めて魔力が合ったのは、潜在的に元の世界だったここの魔素能力を持っていたせいではないかと言うことでした」
「ちょっと待て、300年前は魔素の無い世界ではなかったのか?」
「……そうですよ、実際みな魔素は無かったし魔法を使える人族なんて居ません、一部を除いては、でも300年前のあの混乱時は魔素が増えていた、潜在的に魔素耐性があったものが多かっただけだと……それにあの末期は魔物が出現していたんですよ、あの魔素が全くなかったはずの物理世界で、急に魔素が増えて魔物が出現した……それに対抗できる者は少なかったですからね、とはいえ、殆どは俺たち神崎家、つまり300年前に使っていた名前ですが、その一族と、水面下で生存していた魔術師協会の者達が魔物退治をしていました、ただ何故そうだったのか、何故物理世界で魔素が合ったのか、俺たちのような人間が生まれていたのか解らないままなんです、それをたぶんもう一人のSLランクであるピートさんは知っているだろうと姉は見当をつけている、だから締め上げると言い続けているんです」
「そう言えば以前公爵が言っていたな、魔王の気配を感じる者がいたっと」
「魔王ですって!」
叫んだのは話を知らないロイド・三橋である、冒険者ギルドでも魔王の事を知るものは多い、いや国民全てが知っているといえよう、おとぎ話で出てくるのだから、その魔王の気配を感じると言ったのだ
「以前公爵が話していたんだ、300年前のあの世界で魔王とおぼしき人物の気配を感じていたと、だが本当の魔王を知らないから判断が付かないと言っていた」
「もし魔王が先王の様に転生している可能性があるとすれば、今の冒険者では全滅ですし」
「そうだ、そう言っていたな勝てないと」
「……だから冒険者のレベルアップが必要と言うわけですか、最初は迷宮攻略のためにレベルアップを目指しているものと思っていましたが……」
「迷宮を攻略するには大変だと思う、でもそれに挑戦できるレベルの冒険者の育成は必要だと思うんです、もし本当に魔王がいるならば、天神将全員でかかっても限界があるかもって言ってたし、今は全員居ませんからね」
「その天神将全員は何人なんですか?」
「姉貴と、あの先輩二人と、話題のピートさんを含めて10名です」
「では後6人居るわけだな、でぇその6人は今?」
「居ません、姉貴が言うには恐らく300年前の混乱に巻き込まれて死亡したのではないかと……」
言い合いをやめて夏椰の話を聞いていた天神将メンバー3人は、溜息と共に憮然とした。本当に魔王がいるとして、残った天神将4人でどうにかなるのか?とそれにお伽噺で出てくる魔王のレベルっていったいどの程度なのか不明なのだ。だからピートを問いつめたいと思う面々である。
「たぶん……、たぶんだけどもし転生しているとすれば魔族が住むと言うイルレイア大陸じゃないかなと思うんだけど……」
「イルレイア大陸?」
「うん転生していたらの話、先王みたいに記憶を持っているかどうかは知らないけどね……、あの司教」
「魔術師協会かぁ~確か表向きは教会の司教だったよな」
「教会の司教って事はカトリックか? プロテスタントだと牧師っていうからな」
「うん、プロテスタントはそういうの無いからね、悪魔払いを専門的にしていたのは大昔のカトリックだから霊力の強かった者がそういう事していたからね、本物の魔術師は少なかったから」
「じゃ水面下にあった魔術師協会ってのはその少ない魔術師のより所って事か?」
「そう、魔女裁判の歴史のあるヨーロッパだと地下組織にしなければ生きていけなかったでしょう、たとえ現代人だったとしてもその歴史は根強くあるし、日本みたいに陰陽師が一応迫害されていない国だと地下組織にならずに済んだけど、それでも迫害や異端者は扱いだったから、在る意味マスコミの餌食になる」
「でも神崎家は合法だったんじゃないのか?」
「神崎家は表向き企業を起こしていたでしょ、裏で陰陽師の仕事をしていた、これは暗黙の了解って奴だったから、よっぽどのコネでもなければ動けない、総帥は政治家とのパイプがあったからその辺は非合法でも動けたんじゃない?」
「お前達は……」
「私たちは神崎家から隠れるように生きて来た、だから分家である神崎家から隠れるために、本家である私たちは榊と名乗っていたのよ、夏椰に聞いたでしょ、私は権力者が嫌い、そんなパイプで理不尽な扱いをされる人を見てきたからね」
「色々あるんですよ、先輩、神崎家のやり方に腹を立てている姉貴も何度か見た事も在るし、俺たち榊家が神崎家の直系筋だって事がバレた後は、神崎家のそれに巻き込まれる姉貴は俺たち家族を守るため、領地の住民を守るためだけに苦渋の決断を何度もしてきたんですよ、あの物理世界で持っている魔力を全部使い果たすほどに政治家達の顔を立ててきた、だから神崎領でもあるウィステリア領は今でも姉貴は大切にしています」
雪華達、目覚めたィステリア組の話を聞きながら、色々と疑問が出てくる現代の人族は、彼らの話をじっと聞きながら時間が経過していった。
稚拙な文章をお読みになって頂きありがとう御座います。
ご感想に対する返信返しは超苦手なので、出来ないことが多いかもしれませんが、出来るだけ頑張りますので、長い目で見ていただけると幸いです。