58話 謁見の場においての一悶着
※何度か読み返し、色々話がおかしくなっている所や誤字・脱字は不定期に修正・加筆をしております。(更新日が多々変更あり)
王宮に来ていた雪華達ウィステリア一行は、現在玉座の間にいた、そしてレイモンド・フェスリアナ国王によってロイド・三橋の冒険者ギルド王都支部長に就任したことを承認され、その式典は一応の終了をしたのだが、続きがあった。
王都にある動物園と迷宮はウィステリア領の所有物であり、治外法権となると宣言されたのだ、そして王は再び言葉を続けていた。
「そうそう、ウィステリア領主の名も出た事だし、紹介をしておこう、侯爵前に……」
「………」
「彼女が雪華・ウィステリア侯爵、ウィステリア領主である、皆よく顔を覚えておくが良い、ただし絶対に怒らせたり、敵に回すこと無かれ。これは先王よりの遺言である」
「……それは存じておりますが……」
「へぇー先王の遺言って知っているんですか?」
「あぁ先王は皆に独立自治と治外法権を認める事と敵対するなと言い残している」
「なるほど……」
王の後に突然言葉を発した雪華を見てギョッとした者が多くいる。しかも王に対して礼を尽くしたような言葉遣いではなかったのだ。
「ウィステリア侯爵どの、陛下に対してそのような言葉遣いはどうかと思うが……」
「……あなたは?」
「私はマイケル・ローランド伯爵である」
「そう、伯爵なの」
雪華はそう言いながら相手を見定めた、これはレイモンド・フェスリアナ国王の味方をしているふりをしてるだけの小物だと認識した。
「じゃ、こっちも紹介しておきましょうか」
雪華はそう言うと、伯爵の質問への答えはどこへやらと言う感じで夏椰と同級生を近くに寄び、ここに集っている貴族や騎士全員を見定めていったのだ。
「ここにいる全ての者に紹介する、私の横にいるのが末の弟の夏椰、その横にいるのがスキルマスターNo.6の霧島、その横がNo.7の浅井、ちなみに私はNo.2で弟が15よ、全員スキルマスターで迷宮管理者だから忘れないでもらいましょうか」
「領主もスキルマスターか……」
「しかし本当に300年前の者か?」
「あら、先王の手紙は読んだわよ、ここにいる全員、それに正直会ってみたかったわね、300年前の思いで話も出来たでしょうに」
「あの手紙を読んだ? あの文字が読めるのか?」
「当然でしょう、読めるし書けるし話せるわ。知っているわよね、ハルシェット辺境泊? 動物園に一緒に行ったんだから」
雪華に声をかけられたハルシェット辺境泊は雪華達スキルマスターを見据えて言った。
「ハルシェット辺境泊はご存じなのですか?」
「動物園に行かれたのですか?」
「確かに動物園には行きました、でも陛下の手紙ではない文字を読んでいました、ただそれも300年前のどこかの国の言葉だそうです、私は陛下の日記の文字を見て知っていますが、アレを読めたと陛下が仰っておりますので間違いはないと思います」
このハルシェット辺境泊の言葉で更に全員がざわめき始めた、それを見て雪華は溜息をついて言い放った。
「言っておくけれど、古代迷宮とか言われている私たちの迷宮は最低でも、冒険者ランク3桁無いと入り口にも入れないわよ」
「3桁!!」
「そう3桁よ、正直私たちが目を覚ました時に、冒険者ランクが下がっていることに驚いたんだから、今の状態で迷宮攻略なんてしたら……即死だからね」
「即死って……何故だ?」
「あなたは?」
「私はハリー・ジスタグ公爵という、何故即死なのだね」
「……だって、魔物のレベルは300年前から変わってないからよ、魔物を倒せるだけのレベルがある冒険者が、今の時代にいないもの、三橋が来るまでの間、冒険者ギルドで仕事をしていたけど、依頼内容と冒険者のレベルの差がありすぎて苦労したんだから」
そういえば冒険者レベルの魔物対応ランク表というものをみたのを覚えていた、あれでは冒険者達から苦情が出るのも道理であるが、魔物のレベルが300年前から変わっていないのが事実なら妥当な判断であるとハリー・ジスタグは思った。
「なるほど、だからあの魔物対応表だったのだな」
「そうよ、正直あれでもギリギリ精一杯だったのよ、付け加えるとウィステリア周辺はもっと強い魔物が多いから、うちでは冒険者のレベルアップを最優先にしているけどね」
「冒険者のレベルアップ……」
「……情報は、みんな在る程度知っているんでしょ、ウィステリアに密偵を潜り込ませているのは知っているのよ、手を出してこないから放置しているけれど、もしウィステリアとその領民及び、私が庇護する者に手を出したら、ただじゃおかないから覚悟してなさい」
「それは、どういう意味かね、侯爵」
「売られた喧嘩は買うって言っているのよ、ただし容赦はしない消し炭にするから覚悟してねって意味よ」
「なんと野蛮な!!」
「何とでも言いなさい、既に私たちがこの王都に来る途中で襲撃されているのだから、しかも殺さず憲兵に突きだしただけですませてやったのだから感謝しなさい、それに冒険者ギルドでの冤罪も許した訳じゃないからね」
「あれはブランツ男爵が責任をとったはずではいのかね」
「……私が知らないとでも? ブランツ男爵は捨て駒にされただけでしょう」
雪華がここまで貴族に対して直接的な言い方をしたのを見ていた、国王とベルフィント伯爵、そしてウィステリア組は溜息をついていた、特にスキルマスター組は挑発しているなぁ~と感じていた。
「ウィステリア侯爵、そろそろその辺で……」
「あら、悪かったわね陛下」
「いいや、全て事実だからな……っと言うことで、君たち諸侯にもう一つ言い忘れていた事がある。侯爵はスキルマスターNo.2で在るだけではなく冒険者ランクで言えばSLランク、至高の存在でもある、よって君たち諸侯がウィステリアに攻撃をしたり敵対関係になっても、王室も国も一切便宜を図らないし仲介もしない、そのことはここで宣言しておく。元々ウィステリア領は神々の庇護の元にある大事な土地、そして先王が独立自治と治外法権を認めた場所でもある、それともう一つ、これは私からの勅命である、本日を持ってウィステリア侯爵は爵位を一つ上げ公爵とする」
「はぁ~~?? 公爵? どういう意味ですか、陛下!」
レイモンド・フェスリアナ国王の最後の言葉で、雪華が思わず声を上げ、その他の貴族や騎士などのこの場にいる全ての者達は驚いた。ついでにウィステリア組も驚いた、爵位があがったのだ。そして先ほど雪華に意見をした小物のマイケル・ローランド伯爵が声を上げた。
「陛下、何故そのような事を、たとえ独立自治が認められいるとはいえ、ウィステリア侯爵もこのフェスリアナ王国国民でもあります、何故陛下は彼女を恐れるのですか、爵位まであげるなど」
「恐れてなにが悪い?」
「陛下……たかが小娘では……」
「まだ解らんか? ウィステリア公爵はたかが小娘でもなければ、ただの国民でもない、彼女は至高の存在だ、神々の加護を持つ、故に爵位をあげる。それにスキルマスター相手にお前達は勝てると思っているのか? 私は勝てる気がしなんだがね、その上でまだお前達は勝てると本気で思っているので在れば、勝手にすれば良い、私は一切関知しないし、仲裁もしない、何故なら神々を敵に回す事になるからだ」
陛下の言葉で一同が黙ってしまった、そりゃ当然だ、国の王がただの領主に勝てないと宣言したのだから、だから敵対するなと言っているのだ。
「ウィステリア侯爵、いえ爵位があがりましたのでウィステリア公爵に質問が在るのですが、構いませんか?陛下」
「……神殿長か、構わないが……」
陛下に断りを入れて話してきたのは、神官服をきた男だった、中肉中背ではあるが背が高く一見して武術も出来そうだと雪華は感じた、そして魔力もそこそこ持っている。
「ありがとうございます陛下、では改めましたウィステリア公爵様、私は神殿長をしておりますヘンドリック・マールセンと申します。神々のご加護をお持ちのあなた様にご質問がございます」
「神殿長? そう言えば神殿に行った時はお留守で会えませんでしたね、それで質問とは何かしら?」
「あなた様はこの国をどうなさるおつもりですか?」
「どうって、どうもしないけど?」
「では陛下を操ろう等というお考えなど在りませんか?」
「神殿長!! 度し難い発言だ!」
流石にこの質問は不味いとスキルマスター達は思った、雪華が一番嫌うのだ、そしてレイモンド・フェスリアナ国王も危機感を感じた、そしてその当の雪華は相手を見据えて言った。
「……お前にはそう見えるのか? 神殿長?」
「言動からしてそう思う者が多いと思いますが」
「……私が王を操るだと、ふざけたことを言うのだな神殿長」
「ふざけてはおりません」
「ならばお前は怖いもの知らずか? ただのバカかどちらかだな、この時代の者としてなら割と魔力もある、ある程度の武術も身につけているようだが……」
口調を変えて言った雪華は威圧を発していた、これに対してスキルマスター達はやれやれと思い、三橋は緊張しているし、レイモンドも危険を感じていた。
雪華はというと相手を見据えて当然口調を変えたのは立場の違いを思い起こさせるためでもあったが、本人に自覚はない、これは本来の立場『始祖』としての魂が言葉としてでているのだ。
「なるほど、流石は至高の存在お分かりですか」
「最初に言っておくが、私は権力者や為政者が嫌いだ、特に私利私欲にまみれて考えながら動く者がな、……お前はどちらだ?」
「私はどちらでも、ございません、私は神官です」
「………そうか、ならばこれだけは言っておく、レイモンド・フェスリアナは私の庇護化におく、これは先王が手紙で私に頼んできたことだからだ、だがそれ以外は知らぬ、たとえ王族であろうと貴族で在ろうと関係ない、レイモンドの家族であろうが関係ない、私が庇護するのはレイモンドただ一人のみだ、良いかもう一度言っておこう、これ以上我が領土で好き勝手はさせない、密偵は全て排除する、我が領民と私が庇護するもの、私の全てものに手を出した者は赦さない、必ず制裁を与える。覚えておくが良い」
雪華は全ての貴族・騎士の諸侯を見回し、そして見据えて強い言葉で断言した。一切の容赦はしない、必ず制裁をすると、その言葉を聞いた全ての者は、雪華に対して敵意をむき出しの表情を向けてくるが、その威圧に反抗する言葉は出てこなかった。
そしてベルフィント伯爵が皆に聞こえるように声を上げた。
「では、雪華・ウィステリア公爵様は陛下の前へ」
雪華は陛下と宰相を睨みつけながら、陛下の前に立った、そしてとりあえずカーテシをした。本来ならば跪かねばならないのだが、国王自らそれを拒否した、そのためカーテシにて対応したのだ。
「本日を持って雪華・ウィステリアに公爵位を授与する」
「…………謹んで、お受けいたします…………」
雪華はレイモンド・フェスリアナ国王を睨みつけながら公爵杖と佩玉を受け取った。それを少し苦笑しながら彼女に直接手渡した国王を見て集まっている諸侯が驚いていた。
稚拙な文章をお読みになって頂きありがとう御座います。
ご感想に対する返信返しは超苦手なので、出来ないことが多いかもしれませんが、出来るだけ頑張りますので、長い目で見ていただけると幸いです。