6話 災害への備え
政治家と会ってから何やかんやと色々あり、総帥は手回しなど色々していたが、結局雪華の要求通りに全てが運び、県の半分は神崎領としてフェンスが張られ独立領となった。
またその為、神崎領民としての身分証明書(IDカード)が領民全てに、少々面倒くさい作業を得て与えられることになった。
神崎家と役所関係者が乳飲み子から高齢者・寝たきりの方だけではなく全ての障がい者に至るまで一軒一軒訪ねていき身分証明書(IDカード)作成を行った。
領内に出入りするにはゲートと呼ばれる場所にて身分証明書(IDカード)提示しなければならない。特殊な素材で出てきているため偽造は出来ない。
初めの頃は住民からの反発などもあったが、それに対して何度も説明がされた、詳しく話すわけにも行かないが、近い将来大災害が起きてしまう、生きられる確率が少ないこと、領内に居れば神崎家が結界にて守ることが出来ることなどを丁寧に説明をしていった結果、一応の了承を得ることが出来、今に至っている。
10月中旬に入り雪華は分家となる神崎総帥の家に来ていた、総帥の家は神崎領にはなく県庁近くに建てたれている。
総帥宅に務める使用人は神崎領にある御陵屋敷に務める使用人とは相容れない。当然である、自身の主が当主と思っていた所に、本物の直系が姿を現し、それもまだ子どもといわざるを得なかったからだ。それが解った日からは直系筋が住む神崎領には行かないようにしている。ただ同じ神崎である以上使用人幹部達はそうは行かない。主に従いついて行く。
応接室に通された雪華は指定された席へと座った。執事の小花衣と護衛の篠崎はその背後で立っていた。暫くして総帥と雅彰おじさんと成彰兄さんの三人が側付き執事達とやってきた。
「お待たせしました」
「いいえ、めんどくさい事を色々お仕付けてしまっていて申し訳なく思っています」
「でぇ今日は一体どのようなご用件でしょうか、息子達や側仕えまで同席とは、何か良くない事でも?」
「えぇ、あまり歓迎されない、正直生死に関わります」
「それは、どういう事でしょうか」
雪華の言葉で神崎家の面々は顔を見合わせて怪訝な表情をしていた。
「総帥には私が今から話すことを、中央政府の総理と全ての大臣及び気象庁関係者に包み隠さず話してほしいのですが、言葉では恐らく伝わりにくいので録音をしますから、それをもって中央に赴いてほしいのです」
「それは、かまいませんが、一体何をお話になるのでしょうか」
「これをご覧ください」
雪華が示したのは高祖母であるメアリー・グランバーグの日記である。それは彼らも既に中身も知っているものである。
「これが何か?」
「メアリーお婆ちゃんが残した日記って、殆どが英語で書かれているのはご存じですよね」
「あぁ読ませて頂いたが途中でケルト語でしたか、それだけが解らなかった」
「そのケルト語、本当は古代ケルト語だったので調べるのに苦労しました。それで解ったんですが、こう書かれていました」
『大災害が起こる、とてつもなく大きな災害。
多くの生あるもの、たくさんの物体が一瞬にして破壊・消えていく。為すすべはない。
多くの魔物・魔獸・妖し・アンデット、人ならざるものが現れる。友好的なもの、そうでないものも多数。非友好的なものの蹂躙が蔓延り対抗できず、文明は崩壊する。
そして、魔素に満ちた世界となる。』
「これは………」
「今現在大災害が起こっています、これはメアリーお婆ちゃんからの予言というかメッセージではないかと、ただ全部を鵜呑みにするのはちょっと私も懐疑的ではあるんですが、大災害については否定できません」
「ふむ、実際起こっているからなぁ」
「それに…スライムが出たでしょ」
雪華の一言で一同が沈黙した、もう何年か前、まだ雪華が籐華国際大学に入学し、次期当主であるとお披露目前に参加した「術者の会」各派閥の当主もしくは代行者といった力のある者同士の会合である。
その会合に使われた建物が山奥にあり魔物の巣になっていたという事実があった、しかもそれはゲームに出てくるスライムであった。ゲームによってはスライムの扱いは違っていて強いモンスターと認識するゲームもあれば、レベル上げに最適な雑魚モンスターという認識の者もいる。ましてや現実レベルでスライムが存在するなど術者の誰が思うものか。
「あのスライム…、物理攻撃が全く聞かなかった」
「術は何とか効いていたが、死にませんでしたよね」
「あのスライムだけど火魔法なら攻撃出来るレベルだったわね、レベルでいえば2~3程度の、もしレベル1程度なら武器に火の魔法か火の術式を込めて攻撃すれば倒せたと思うけど、数が多すぎました」
「あの時は雪華様がいなければ全員食べられていました」
当時のことを思い出して皆が項垂れていた、それもそのはず雪華自身もまさかスライムが出てくると思わなかったし、だいいち数が30程いたし。
山火事には出来ないし色々考えた結果全スライムを一カ所に集めて結界の中に閉じ込めて丸焼きにすると言う、初めて使う魔法を使ったのだ、おかげで手加減できないためスライムは消し炭に成り何も残らなかった上、力の使いすぎか雪華も立っているのもやっとと言う所だった。
ちなみに余波を受けた建物も同様消し炭で跡形も無かった。これを見た術者全員が雪華に恐れを抱く結果となった。
「あのときの魔法はいまは制御できているんですか?」
「あぁ今は大丈夫ですよ、ちゃんコントロールも出来ますからご安心を、あの時はまだこの日記やおばぁちゃんの残した魔法書を読んで勉強していた頃だったので、実験のつもりがあんな事になって本当に申し訳なかったと思います」
雅彰は自分の妻が錬金術師の末裔だった事でもあり魔術師協会との関わりもあったため魔法の存在は認めている、が明らかに妻よりも上であると改めて認識した事件だったのだ。
「とにかく話の続きをしますね、大災害によって為す術が無くなる、文明が滅ぶとあるんですけど…、正直言うとこれ実際に起こりそうなんです」
「何ですと!!」
「それはどういう事ですか?」
「うん、実は宇宙空間に浮かんでいる衛星あるでしょ、あれ全部落ちる」
「えっ」
「今なんと言った、衛星が落ちる?」
「そう全部、大気圏突入して燃えない破片が落ちてきます」
「根拠は?」
ここで雪華は言い及んだ、原因は地球の核というか重力がおかしな変動を起こしており、その周りに何故か魔素を感じており、それが原因ではないかと雪華は思っているが、確証がない。
重力の変動についてはまだ観測される程度のものではないが、魔素量の状況によっては地殻変動が活発になり一気に亀裂が広がる。そうなると普通の人間には見えない魔素が地上に今以上に増えて魔物が活発になる可能性が高い。
そうなれば誰が魔物を倒すのか、文明の利器という軍事力などを使ったとしてレベルが低い間は良いだろうが、これが二桁、三桁の魔物なんて出たらどうするか、レベル一桁ですら相手に出来ない状況なのにである。
「私も根拠が示せません、ただ重力加減の影響だとは思うんですけど、実際衛星の高度は徐々に下がってきているんです。だからこれが何処に落ちるか特定して避難する方が先決な訳だけど、衛星が落っこちたら通信機能も不能となるしGPSも意味なしって事で」
雪華が言おうとした事にやっと理解が及んだのか、神崎家の面々は青ざめた、通信衛星が落ちる。通信機器が使えないって事は時代が後退してしまうと言うことになる。更に雪華は言葉を続ける。
「もう一つ……」
「……まだ何か、あるのですか?」
「原子力関連が全て機能しなくなる、もしくは臨海爆発の可能性」
「なぁっ!!」
「しかも多分だけど全世界で起こる可能性あり、同時に起きたら世界中放射能漏れが広がって世界中に漂うことになりますよね、きっと……人間生きてられない」
みな開いた口が塞がらない状況である。何処に助けを求めて良いかも不明になる状況なのだ。
「雪華様はなぜそう、わかるんですか?」
「あぁ~~こっちの原子力に関してはもう予知夢としかいえないですね。夢なのか現実なのか解らない感覚で目を覚ましたので、ただ絶対に起こると何故か確信が持てちゃったとしかいえません。地下の核シェルターに逃げ込んでも多分無理だと思います」
「何故?」
「地殻変動が大きいでしょ、地震が頻発すれば地下室なんかいくら頑丈でも多分無理だと思います」
「いつ起こるんですか? それは解りますか?」
「さすがにそこまでは解りません。でも遠い未来ではにと思います、なので総帥は今の話を中央に知らせて対策を早急に考えて貰って下さい」
雪華はそう言うと録音していたでデータを総帥に預け、自分も領内に対策を立てるために会議を開きに行きます。と言って帰って行った。
残された神崎家の面々は録音データを2本コピーをして1本を総帥が中央へ持って行き、もう1本は成彰に預けることにした。
稚拙な文章をお読みになって頂きありがとう御座います。
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