54話 その後の真相
※何度か読み返し、色々話がおかしくなっている所や誤字・脱字は不定期に修正・加筆をしております。(更新日が多々変更あり)
ロドリア商会のロドリアさんが帰った後、雪華もギルマスの部屋で引き継ぎの仕事をしていた、それから暫く経って、残った男3人が別室で遮断結界を張っていて、中に入れないと言う連絡を受けた雪華は、様子を見に部屋の前に来ていた、結界を張ったのは兼吾の遮断結界である。
「領主様、如何なさいますか?」
「うぅ~~~ん」
雪華は唸っていた、強引に結界を破るのは雪華なら簡単である、しかし友人の張った結界を破るのはいい気分ではない。
そのため何を話しているのか聞いてみようと思った。透視・盗聴のスキルを見破られない程度に発動した、高ランク冒険者でも遮断結界は盗聴も透視も出来ない。
しかし雪華はただの冒険者ではない、始祖の魂を持つものである為、試してみたのだ。すると自分の話をしている事に気づいた、しかも300年前の話である。これは遮断結界を張らないと不味い状況であるのは理解した。
そして雪華は放置を決めた、今更自分の過去をクラスメートだったあの二人に聞かれた所でどうという事はないと言うのが結論だった。
「いいわ、このまま放置しましょう」
「宜しいのですか?」
「えぇ、問題ないわ」
「しかし……」
「別に悪巧みをしているわけではなさそうだしね、大丈夫ギルドに問題が起こるわけでも、迷惑がかかるわけでもないから、心配ないわよ」
「はぁ~、領主様がそう仰るのならば、このまま放置します」
新しくギルマスに就任したロイド・三橋が心配そうにドアを見ていたが、領主でありギルドマスター総本部の総責任者である雪華が言ったので納得することにした。ギルマスの部屋に戻りながら話を続けた二人。
「それよりも、予備校の件だけど何とかなりそう?」
「そうですねぇ~何人か教鞭認定試験に受かっている者が居てくれると、助かりますが……」
「ん……、他に何かある?」
「はい、ウィステリアほど子供が予備校に通えるという環境には無いでしょ、この国は……」
「あぁ~そうだったわね、まぁ一応陛下には子供が学校に通えるように対策をして欲しいとは頼んでおいたのだけど……あぁそうだ!」
「何か思いつきましたか?」
「この国って一般的に子供は貴族以外行ってないのよね」
「はい、さようですが……」
「なら、平民の親は冒険者登録などして採取等を行う権利を得ているけれど、子供を連れていくのは違法よね?」
「法的にはそうですが、平民は暮らしていくために子供を家庭労働者として登録せず、親の監督の元等と言って暗黙の了解で外に連れ出しています」
「ならば、そこを突きなさい」
「えっ?」
「依頼を受けにくるときは子供を連れている?」
「いえ、違法になるので連れては来ていません」
「外で待たせているのよね、ならばもし子供を連れて依頼を受けに来た冒険者には依頼をしても支払いはしないで頂戴、それで文句を言うなら違法だからと切って捨てなさい」
「ですが門番の方はどういたしますか? 今までは暗黙の了解だった為に、兵も見逃しています」
「そうね、そこは私が再度国王に次期談判するわよ、そうすれば、学校に行けない平民は冒険者ギルドで学ぶことが出来る、読み書きや算術を教え冒険者としての基礎を学べる、法を犯すことなく親子で採取に出かけることも出来るのだから、問題ないでしょ」
「なるほど、確かにそうですね、ウィステリアと同じ事を他領が出来るとは思えませんが、そういう事なら出来ると思います。ただ定着するまで時間が少しかかる事や苦情は増えるでしょうが、将来を考えるのなら問題ないと思います」
「うん、三橋には苦労をかけるけど」
「ははっ、十分覚悟の上です」
苦笑しながら言う、新しいギルドマスターロイド・三橋は、自身の領主である雪華・ウィステリア侯爵に対して一礼をした。
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ここ最近は殆ど三橋が中心になってギルド運営をしている為、雪華は早めに帰宅できる、そのため途中別室で遮断結界を張っている男どもに魔法で少し攻撃して解除するよう知らせた。漸く結界を解いて出てきた男たちは気まずい表情で雪華を見ていた。側にいたのは三橋と護衛のゴラン隊長だった。
「あぁ~~、悪かったな長い間」
「もう19時なんですけど?」
「あ、姉貴悪い、俺が長々と話をしていた」
「夏椰は悪くない!」
「ふ~~ん、まっ別に良いけど、大昔の私の話を今更聴かせたくらいで大したことはないでしょ」
雪華の一言で全てバレていると思った面々は、三人そろって頭を下げて謝ってきた。
「悪い、姉貴の断りなく色々喋った」
「夏椰は悪くない、聴きたいと言い出したのは俺達だ」
「そう、お前のその貴族嫌いは何だって事からで……」
「……別に良いわよ、権力者も、為政者もついでに貴族も嫌いなのは今に始まった事じゃないし、その根拠は子供の頃からのことだからね、あんた達が知った所で害が及ぶことは無いでしょ、今現在の状況で」
そう言った雪華をみた三人はホッとした表情をしていた、少し強引だったと思ったのだろう、しかし雪華からしたら既に過去の事である、過ぎた事に気を回す暇はないのである。
ただ何処まで話を聴いたのかは知っておく必要があった。とはいえギルドで話す事ではないため、宿屋に戻ることにした。
後の事を三橋に頼み男三人を連れて、ついでに護衛もついて宿屋に戻ってきた、そして雪華は途中の店で4人分の夕飯を持ち帰りにして貰って、雪華の部屋で4人一緒に食べることにした。
護衛は部屋の外で待機、ゴラン隊長はまた翌日参りますと言って帰って行った。それを見送った後雪華は弟夏椰にお茶を入れさせて皆に配り、他の男二人にはテーブルに夕食をセッティングするよう言いつけた、言われた男達はやっぱり怒っている?と思いながらも言うとおりにした。
そして雪華は遮断結界を張り、皆が席について食事を始めて暫くしてから雪華の何気ない一言で緊張が走った。しかも遮断結界を張っているのだ、何を言われるのかと戦々恐々である。
「でぇ何処まで話したの?夏椰」
「えっ、え~~と……」
「母さんの一件も話したの?」
「あぁ、そこまでは言ってない、姉貴の為政者や貴族嫌いの原因になったのは、あの避難所生活からだと俺は思ったから、神崎家との因縁から、そのあたりくらい迄かな」
「……って事は神崎家からの襲撃された事も、悪魔召還も話したわけね」
「あぁ、そうそのあたりくらいまで話した、成彰さんの婚約者が絡んだ話もした」
「あぁ~~あれか、結局成彰兄さんは婚約破棄されたからねぇ~」
「婚約破棄?」
雪華の一言を聴いて疑問を呈したのは浅井賢吾と霧島廉だった、そこは聴いてなかったらしい。
「えぇ、父親に私を何とかして欲しいって頼んで政治的に色々と妨害されたけど、結局成彰兄さんと結婚しても神崎家の膨大な財産は手に入らない事を知って婚約破棄を言い出したのよ」
「そうなんだ」
「でも婚約者って例の術の縛りとかはないのか?」
「まぁ婚約中は仮の術縛りはあるけど、婚約破棄すれば術縛りも解除されるのよ、完全な術縛りになるのは婚姻が成立してからよ、だから鷺沼さんは呪詛から逃れられたわけ」
「それも信之介の呪いか?」
「信之介様の呪いは純粋に菊の血を受け継ぐ子孫に対してだけなんだけどね、総帥から数代前の先祖が配偶者にも呪詛の縛りを課すよう、体調を崩しながら御陵屋敷の信之介様の墓まで行ったらしいよ」
「えっ、マジ?」
「えぇ、総帥からもだけど、信之介様本人から聞いたから間違いないわよ」
「……信之介様って幽霊のか?」
「そう、怨霊になちゃった信之介様、実際は璃桜様が近くに来てから瘴気は薄れつつあったんだけどね、それでも菊の子孫は許せなかったらしいわ、呪詛を解くつもりは毛頭無いって言い切っていたし」
「お前怨霊と話して怖くないわけ?」
「別に今更だし、物心つく頃から妖怪と話をしてたからね、それに信之介様の最後は、メルリアまで私を殺そうとして飛んできた菊の怨霊と戦って私を守ってくれたからね」
「菊の怨霊!!!」
「菊って怨霊になってたの?」
「あれ、それは夏椰から聴いてなかったの?」
聞いてないと二人は首を横に振っていた、それを見て雪華は夏椰を見たら、質問からは関係ないと思って言ってないと気まずそうに言った。
「そっか、菊ってね、最初に璃桜様を殺した後に信之介様を殺したんだけど、その後信之介様と璃桜様に仕えていた全ての使用人を殺したのよ」
「えっ!!」
「全員をか?」
「そう、全員一人残らず殺したの、自分にとって害となる者は全て排除をした、残った使用人は始めから菊に使えていた者だけよ」
「もしかして、それで怨霊に?」
「まぁね結局、璃桜様の子孫を捜せなかったから自分の子孫に遺言を残して死んだんだけど、死にきれなかったのね、恨みを募らせたまま死んだことで怨霊になっちゃったのよ」
「怖い……」
「人ってそんなもんよ、でもその魂はどうなったのかなぁ」
「それってどういう意味だ姉貴」
なんか少し怖い事を言い出す姉に警戒をした弟夏椰、始祖の魂を持つ姉の人じゃない部分というものを少し見た気がした。
「……皇太子がこっちに転生したでしょ、覚えてるよね?」
「あぁ覚えてる」
「実際アノ次元移動で魂は生き残れない筈なんだけど、……まれに強い魂はその奔流から逃れて転生する、でぇ魂を守るものは霊体と言われる膜のようなものだからね、オーラはその光みたいなものかな、そして人として生きるためには器となるものが必要なのよ、その器が人の体として生まれるのよね」
「えっ……」
驚いた顔で雪華を見つめる男達の六つの眼に雪華は苦笑する、当然である、あのリアル世界では科学者達である、生物学・化学・物理など理系を全般的に学んできたのだ、確かに不可思議な事は在るとは思っているが証明できるとも思っていたのだから。
「1%の謎ってね、そういう事なのよ、でもそれはあくまでもあの物理世界での事、こっちは魔素が全ての世界、空気も水も大地も空も草も森も、生きとし生けるもの全てに魔素が含まれて魔素で出来ており、魔素に還元される世界、魂とて同じく魔素に還元されるのよ、そしてまた生まれる、たぶんあの物理世界でも同じなんじゃないかとは思うんだけどね、よく解らないわ」
「よく解らないって……」
「何で?」
「あっちは物理世界でしょ、こっちは魔素が全てだからよ。当時私達は科学の先端を研究していたわ、でも研究して実証して証明して謎を解いて……科学者はそういうものでしょ、それでも解らないことはある、科学的に証明できないものがあった」
「……たしかに、それはそうだった」
「だから研究していたんだ」
「そう、でもこっちはそう言うことはない、全てが魔素なのよ。魔素で出来ていて魔素に還る、ここはそういう世界、あの物理世界の研究はこっちに次元移動した時点で頓挫した、というより終了って感じの不完全燃焼よね、私達科学者からすれば」
「でもこっちでも物理的な事はある」
「そうねぇ、在る程度の物理は在るけれど、きっとそれの根元は魔素だと思うわよ、でもあの物理世界では根元を探す研究は続けられていたけど証明にまで至っていなかったでしょ、人の根元とか宇宙の根元とかその他色々と、仮説はたくさん在ったけど」
「確かに……」
「菊の魂は……たぶんまだあっちの世界に在るんじゃないかなぁ~、次元移動前に信之介様と戦って怨霊としては消滅したけど、魂はどうなったのか知らないからね」
「じゃ信之介様や璃桜様も?……母さんも……か?」
雪華の話を聞いた夏椰が、少し悲しそうな表情で姉を見ていた、自分たちの母親の魂はどうなったのか解らないと言っているようなものだからだ。
「夏椰……」
「姉貴の話だと、そう言うこと? 母さんの魂も解らないって事になるよな」
「……うん、そう、なるね」
「……そっか……そうだよな」
「でも、もし魂があっちで転生をしているならば、新しい人としての器を持って生まれていたら、あの次元移動に飲み込まれた可能性もある」
「でも弱い魂は耐えられないんだろう? だったらもし母さんが生まれ変わっていたとしても耐えられるとは思えない」
「夏椰……」
「母さんは、大きな罪を持っていた、もし生まれ変われたとしても、そんなに早くはないと思う。だとすればこっちには来られないよ……きっと」
雪華と違い、夏椰は末っ子だから母親の愛情はたっぷり貰っていた、雪華に対して母のやったことは許せないけど、それでも夏椰にとっては喧嘩をしていても大事な母親だったのは事実だったのだ。
そんな夏椰を見て雪華は悪いことを言ったかなと思って後悔した。自分は良いけれど他の兄姉弟妹からすれば愛情を貰った大事な母親だったのだ。
稚拙な文章をお読みになって頂きありがとう御座います。
ご感想に対する返信返しは超苦手なので、出来ないことが多いかもしれませんが、出来るだけ頑張りますので、長い目で見ていただけると幸いです。