53話 リアル世界の破壊神、予見していた?
※何度か読み返し、色々話がおかしくなっている所や誤字・脱字は不定期に修正・加筆をしております。(更新日が多々変更あり)
浅井賢吾と霧島廉は榊夏椰、本名神崎夏椰で今のこの300年後の世界では夏椰・ウィステリアという彼の姉、神崎家当主のクラスメート、今じゃこのウィステリア領の領主となっている雪華の生い立ちを含めた諸々の話を聞いて、色々唸らされていた。
「それで何で為政者が雪華を気にしているんだ?」
「そうだな……それがわからん、でもそれが原因で為政者嫌いになったのか?」
「姉貴はあの通り、陰陽師であり魔術師でもあるし、それに何故か超能力的な力も持っている、それを利用しようとしたんだろ思います。姉貴は神崎家特有の能力というか『先見の力』は神崎家始まって以来の持ち主だったんです、信之介様は数日先、璃桜様は1週間先迄は見えていたそうです、そして分家では在りましたが、総帥もその力を受け継いでおり2分先が見えていたしそうです、でも姉貴は違った『先見の力』も『夢見の力』もほぼ100%の確率だったんです」
「えっ……、『先見の力』に『夢見の力』?」
「『夢見の力』って?」
「見た夢が正夢になる事があるって事ですよ、これは確実に正夢になるって感じる時と、正夢にならないって時の区別が付いていたらしいんです、夢を見ない日もありますけど」
「それがほぼ100%って事?」
「……それってもしかして聡の時も知ってた?」
「あぁ聡兄ちゃんに関しては、嫌な予感はしてたみたい、何度も聡兄ちゃんに電話してたし、気にしてた。でも確証を得られなかったから心配だったって言っていましたね、篤兄ちゃんにもそれは言っていたみたいです」
「そうか……」
「聡に関しては分からなかったのか」
雪華の能力の一端を知り、あの聡を助けられなかった事に対して、雪華の心に傷が残っているのではと心配したのは当然クラスメートだった二人である。
「なぁ夏椰、その雪華さ、聡のことってどう思ってるか聞いた?」
「聡兄ちゃんの事?」
「あぁアイツそんな凄い能力持っていて聡を助けられなかったってことだろう?」
「あぁ、それは……まぁそうなんですけどね、……暫く塞ぎ込んでいたのを覚えていますか?」
「あぁ、覚えている」
「大学に入って直ぐだったからな、聡も篤も名門大学のからスカウトが来てたし、メルリアの大学からもスカウトが来ていた、でも二人とも日本に留まり別の大学だったっけ?」
「あぁ、篤は日体大で教鞭をとるつもりだったし、聡も有名大学で理系で所属したんだっけ」
「二人とも大学で野球をしていたし卒業してから教鞭を執ってからプロにいくっていう事だった、将来雪華と一緒に子供達を教えたいって言ってた気がする」
「姉貴はそんな二人を応援していたし、でも聡兄ちゃんの夢見も先見も見えなかったって言っていたし夢すら見なかったそうです、それなのに嫌な予感だけしかしなかったって」
「能力が使えなかったとか?」
「能力は使えていたそうだけど、聡兄ちゃんからは、その気配が希薄になってきているのに気づいたって言っていたんだ。それで気になって精霊にも頼んでいたみたい、でも叶わなかった」
「アイツ家族で出かけた帰りに交通事故に遭ったんだったよな」
「あぁ家族も重傷だったけど、命は助かった、でも聡だけ意識不明のままだったんだ」
「姉貴は毎日お見舞いに行っていたんだけどね、それでオーラをみたり何か憑いているのかとか色々調べたけど、何もなかったらしい、ただ気配が希薄だって事だけは明白だったんだそうです」
「1ヶ月意識不明で目が覚めた、俺達元クラスメートでお見舞いに行ったんだよな」
「そう、その時は何かホッとしたんだけど」
「その後に元野球部の連中も行ったんだよな、雪華はその時行ったんだって聞いたけど」
雪華の幼なじみで榊家の内情を良く知る二人、和宮聡と穂高篤、そして雪華の初恋と言っていい相手の聡が交通事故にあった時の事を思い出していた。
「そうその日が最後の日だったんです、それから暫く塞ぎ込んでいたんだけど、少しずつ元気になってさ、理由を聞いたら聡兄ちゃんが側にいたらしい」
「聡が??」
「うん、姉貴陰陽師だから、霊体は見えるでしょ、聡兄ちゃんが心配したみたいで、ギリギリまで居たそうですよ、姉貴を励ますように」
「マジか、そんな話聞いたこと無い」
「篤兄ちゃんには言ってたみたいだけど、聞いてないんですか?」
「初耳だな」
「そうですか、でもそうらしいです、姉貴が言ってたから、ずっと自分の側にいるのは良くないから、さっとと家族の所に行くよ促したんだって、そのかわりちゃんと墓参りに行くからって約束したそうです」
「そうか、だからいつも二人で墓参りに行っていたのか」
聡が死んで暫く塞ぎ込んでいた雪華がいつの間にか元気になり、いつも通りの雪華に戻っていた事が、クラスメートには不思議だったと二人は言った、でも真相を聞けばそういう事だったのかと納得した。
「でぇさっきから話が横にそれてばかりだけど、結局為政者嫌いは、その力のせい?」
「あぁすみません、そうですね姉貴の特殊能力が権力者や為政者にとっては都合が良いって事だそうです、神崎総帥はそれなりの実績もあるし当時のメルリア大統領とは先輩後輩の仲だったそうですが、姉貴は大人からしたらまだまだ子供で女でヒヨッコと思われていましたからね」
「確かにな、女だからってのは差別だけど、実績に関して言えばその通りだろうな」
「えぇ、それは姉貴も認めていたんですが、姉貴はそんな彼らの心の底が読めていたというか、利用されて飼い殺されるなんてまっぴらごめんとばかりに抵抗していました、だからいつも強気の発言をし相手をよく観察し、小花衣さんや精霊達を使って下調べも行っていた」
「……つまりあれか、弱みを探していたって事か?」
「それって今と変わらん……、いや昔からそうだったと言うべきか」
「えぇ『権力者達の行動や言動は手に取るように分かるから、逆に利用させて貰う』とよく言ってました、それは神崎家も同様だったんです」
「神崎家も? でも雪華が当主と決定されただろう?」
「『当主の証』で決定されたけど、内心は認めてない事を姉貴は知っていました、それに信之介様と璃桜様がずっと警戒していましたからね」
「信之介と璃桜って……」
「怨霊の?」
「怨霊は信之介様だけで、璃桜様は怨霊にはなっていませんよ、ただ自身の魂を宝玉に閉じこめていたらしいんです、それで姉貴によって解放され、父が怨霊になっているのを知ったという事です、でも姉の菊の子孫が存在している事を知ると父の信之介の怨霊を押さえて神崎家本宅に籠もったと言った方がいいでしょね」
「神崎家本宅って、あの山の上にある屋敷か?」
「そう、その土地は璃桜様が生前生活をしていた付近だったので、菊がそのあたりの土地を全て買いあさって京都から引っ越してきたんです、でも菊は体調を崩して京都に戻った、以降菊の子孫はその地に足を踏み入れることが出来ないくらい体調を崩すんです」
「それも呪いか?」
「姉貴にはそう見えると言ってましたね、あの屋敷は通称御陵屋敷と呼ばれているのは、信之介様と璃桜様のお墓が在ったからです。なので菊の子孫は立ち入ることを許されなかったんです」
「その信之介の怨霊と息子の璃桜が菊の子孫を入れないようにしたって所だな」
「そうです、その後成人式を迎えた後は神崎家の新当主として正式表明をした事で、神崎家でお披露目をしたんです、その時に招待されていたのは全て権力者と為政者、まるで見せ物だったと言っていましたね、総帥の力が大きいですから」
「そうだろうなぁ~」
「でも雪華は気にしなかった?」
「えぇ、特に藤華1期生のSAクラスのトップですからね、藤華国際大学も主席で入学しています、その辺の人間よりは頭がいいでしょ」
「確かに……」
「だな、俺達宇宙開発局の研究者とも知り合っていたし、研究もしていたからな」
「相手を見て、どんな人物でどんな性格か、相手の人となりなんか瞬時に見るのはもう特技ですね、俺にとっては羨ましい特技です」
「まぁ~その辺は俺達のクラスなら、だいたいが持っていたんじゃないか?」
「だなぁ、みんな雪華に感化された気もしないでもないが、コツは知っていたと思う」
「でも、ゲームでは違ったでしょ、AIですから」
「……確かに、読めんな」
「リアルで気を張り巡らせて権力者や為政者と渡り合っている姉貴が、ゲームでは国王の命令を聞かなければならない場面っていくつもあったし、クリアをしなければ前に進めませんでした。だから余計に権力者や為政者嫌いになっちゃったんですよ」
「なるほどねぇ~、でも神崎領に関して言えば、雪華が領主だっただろう、当時政府に掛け合ってあの末期の大災害前に神崎領を認めさせただろう」
「先見の力で見えた為、神崎家の所有する土地を守る為とそこに住む人々を守るために、政府に喧嘩をふっかけたんだそうですよ、でも俺にはそれだけじゃないような気がするんだけどね」
「なんだそれ?」
300年前のあの大災害の前から雪華が何か動いていたのを夏椰は知っていた、でも何の為なのか迄は分からなかったのだ。
「姉貴、大災害が起こる前から何か動いていたんです、たぶん『先見の力』で大災害の事を知ったのかも知れないんですけど、神崎領がとても大事な土地だって事を凄く拘っていて、そして自分の島の事も拘っていましたね」
「あぁ、そういえば自分の島にスライムやキメラが出て倒していたって言っていたな」
「そうです、だからこの世界でも俺達は身分証明書(IDカード)も冒険者カードも難なく使えています」
「これも雪華のお陰って事か」
「とはいえ、権力者や為政者嫌いはゲームをしてから更に拍車をかけていますから、今はゲームのAIではなくリアル化た国王でしかも転生者の子孫ですから、姉貴は300年前同様に為政者や権力者に利用されないよう立ち回ると思いますよ」
夏椰の言葉を聞いて、確かにと頷いた二人は大きなため息をついた、クラスメートである雪華の、正直言って波瀾万丈人生を聞いて疲れたのだ。夏椰はお茶を新しく入れ直して先輩達に出していた。
男三人が部屋に籠もって更に遮断結界を張っている部屋の前で、話の中心人物である雪華は腕を組み、暫くそのドアの前で立ち尽くしていた、雪華ならばこの遮断結界を破って入ることは簡単である、しかし雪華はそうせず、中の様子をみることにした。
それから暫くして、大きな溜息と共にギルマスの部屋に戻っていった。
稚拙な文章をお読みになって頂きありがとう御座います。
ご感想に対する返信返しは超苦手なので、出来ないことが多いかもしれませんが、出来るだけ頑張りますので、長い目で見ていただけると幸いです。