51話 300年前のリアル破壊神
※何度か読み返し、色々話がおかしくなっている所や誤字・脱字は不定期に修正・加筆をしております。(更新日が多々変更あり)
300年前のまだ幼かった当時、藤華時代の雪華の話をしていた夏椰、兄弟姉妹が完全な和解には程遠かった時代、神崎総帥が次期当主の神崎雅彰と息子の成彰とその執事やらを連れて榊家に訪れた時の話をしていた。
「とりあえず会ってみようと姉貴が言った事で、お爺ちゃんは決心をしました、神崎家の要望で家族全員いることと言うことで、まだ和解していない他の家族もお爺ちゃんの家に、姉貴が暮らす家に来ることになりました」
「雪華嫌がっただろうなぁ~」
「だなぁ」
「えぇ盛大に嫌な顔をしてましたけど、父さんが宥めていましたよ」
「でぇどうなった?」
「神崎家の話を聞いて殺されるのではない事に安堵していたのは祖父と父達だけでした、姉貴は警戒を緩めていませんでしたね」
「家族を守るつもりだったって事か?」
「殺されないと分かったのに?」
「何か思うことがあったのだと思います、後から思えば姉貴は信じていなかったんですよ、神崎家を」
「それはどういう事だ?」
「さっきも言いましたけど、お家騒動です、神崎家は数代前の先祖の遺言を守るつもりではいました、ですから『当主の証』の存在を確認をしたかった、でも俺達にはさっぱり分からない、神崎家の直系であるなんてのは知らなかったですからね当時、姉貴だけは知っていたみたいだけど」
「まぁ神崎って苗字だけならいくらでもありそうだからな」
「何で雪華は知っていたんだ?」
「そうです、普通は苗字だけじゃ分かりません、いくらでもある、でも姉貴は妖怪達から真実を聞いて知っていたらしいんですよ当時」
「マジか……」
「えぇ、でも『当主の証』については知らない、ただ蔵にある箱に対して妖怪達が凄く強い守りをしているのを知っていた為、それがそうなのではと思ったらしくて、みんなの前で話し、お爺ちゃんとともに蔵に取りに行ったんです」
「妖怪の妨害が在りそうだな」
「だよな……」
「実際あったそうですが、姉貴が蹴散らしたようですよ」
夏椰の言葉で、二人の先輩は笑って、雪華の怖さを思い出した。
「さすがだな、アイツ容赦ねぇ~」
「家を守る妖怪にも容赦ねぇな」
「でもそれが問題の箱だったんです。神崎家が言うにはその箱には結界が張られていて術士しか解けないのだとか、それで神崎家が解こうとしたんですが、結界に弾かれたんです」
「弾かれた?」
「えぇ弾かれて痺れたそうです、でも俺達直系は祖母と母をのぞいてみな開けることは出来ませんが、弾かれることは無かったし痺れもありませんでした」
「何だそれ?」
「それで姉貴が触ると、そういう現象もなく開けることができた」
「雪華だと開いたって事か?」
「じゃ何か、神崎家の者には触らせないようにってか? どうやって区別していたんだ?」
「術だと思います、それにその箱の中には1通の手紙ともう一つ箱が入っていました、その箱についても神崎家は触るどころか何かの拒絶する気配を感じて近づけなかったんです」
「近づけないって、まんま拒絶か!」
「手紙の内容は読めたのか?」
「はい、それは高祖父が書いた手紙で『術士だけが開けられる、神崎家の者には絶対触れさせてはならぬ』と書かれていました」
「……その高祖父って術士だった?」
「詳しくは知りませんでしたが、霊感は少しあったそうです」
「でぇ結局その更にもう一個の箱は?」
「それは一つの水晶玉と封蝋なんかで使う丸い刻印の様な物と家系図と、一枚の手紙でした」
「水晶と刻印の様な物と家系図とまた手紙! それって……」
「まんま『当主の証』って事だよな、それに家系図が在ったら証明された様なもんだよな」
「榊家の家系図は璃桜様を起源に作製されたものは代々跡継ぎが持って存在していたんですが、それ以前が分からなかったんですけど、箱に入っていたそれは、本物の家系図で我々榊家の全員の名前が記載されていました、家系図とは本来記入する物のはずなんですが、俺達は開けたことはないですからね、とても不思議です」
「その本物の家系図にみんな載っていた?」
「書いてないのにか?」
「はい、でも神崎家が言うには、神崎家の興りは始祖、水晶の様なものは『宝玉』と言うものだそうで、刻印は当時では珍しい封蝋なんかで使う『印璽』で本当の当主の真の姿が刻印されるそうです、それらを含めて印璽も宝玉も家系図も始祖がもたらした物で、人の世の物に在らずという言い伝えが在ったそうです」
「うわぁ~~それやばい奴……」
「何か怖い」
「それでその手紙の方ですが、大昔の物なので、まるで古文書を解読するような感じで姉貴が現代語に翻訳したんです、すると印璽の刻印は当主が変われば自動的に刻印も変化する、正式な直系でない場合は触れることすら出来ない。と在りました。つまりお爺ちゃんや父、そして兄貴や俺、当然春姉ぇや秋姉ぇも印璽を触ることは出来ましたが、刻印は神崎璃桜様の姿になっていました、ただ総帥が言ったんです。神崎家に残ったのは本来『当主の証』と一緒に在るはずの家紋印という印璽だと言うものだと、そして印璽と同じく封蝋の様な丸い形で本来印璽は簡単に触れない為、誰が次期当主であるかを見定めるために家紋印の印璽があると、当時の神崎家は次期当主殺しの菊の末裔、当然家紋印の印璽だけは見つけることが出来たんですが、押印は出来ませんでした、家紋印も印璽と同様に始祖がもたらした物だそうです」
「じゃお前等は?捺印出来たのか?」
「お前等は直系だよな?」
「一応出来ましたが、何というか……」
「何だ? 押せなかったのか?」
「いいえ、ただ家紋印は神崎家の家紋が描かれていました、そして直系は家紋の半分が捺印できます、でも分家筋の神崎家は捺印すら出来ませんでした。まともに捺印できたのは姉貴だけです、その時点で神崎家当主が誰か明白となったんです」
「マジかよ、そんなので当主を決めるのか?」
「おもしろい一族だな」
「姉貴が家紋印を綺麗に押せた、ならば当主印もと言うことになり姉貴以外の者が、当時の当主印の刻印を再度確認したんです、当然まだ神崎璃桜様の姿のままでした、でも姉貴が触ると何か光で当主印が輝き、刻印を見ると姉貴の姿に変わっていたのです」
「……うそっ」
「マジ?」
「えぇ目の前でみましたから、それも『真の姿』っていう言い伝えなのか、姉貴の姿は何かこう女神のような姿というか……、とにかくそれで神崎家当主は姉貴であると文句なく無条件で決定したんです。それで……あの、その家紋印も印璽の刻印も昔の西洋にあった封蝋みたいな感じだったので蝋を探したんですがなくて、でぇどうしたものかと思っていたら、総帥が言ったんですよ、押せばどこから出てるのか解らないが、蝋がでで捺印出来ると、そして俺達が押したら姉貴の顔が半分だけしか捺印出来なかった、これは家紋印と同様で直系の証だそうです、つまり分家は刻印を捺印できないと言うことになるんです」
「あの世界にそんな魔道具みたいなものが存在するもんかね?」
「全くだ!」
「あっ、でも菊の一族は分家筋といっても、菊は直系の子供になるわけだよな?」
「姉貴が言っていたんですけど、直系の中で当主が決まれば、後は全て分家扱いになるとか、特に女性の場合嫁げば籍を抜くことになりますからね」
「……なるほど」
「それに当時の神崎家は菊の遠い子孫で分家筋以外の何者でもないって、幽霊でみた璃桜様が言ってました」
幽霊の璃桜様が言っていたっと言う夏椰の言葉で、浅井賢吾と霧島廉はうぅ~と唸りながら表情を曇らせた。そんな二人に対して夏椰は続きを話す。
「ただ始祖は人であり人に在らずというのが神崎家に代々伝わる言葉だそうです、なのでそれが当然だそうですよ、それ以降はもう怒濤の日々ですよ」
「神崎家との駆け引きとか?」
「総帥は一応榊家の立場も姉貴の立場も理解した上で対応してくれていました、後で知ったんですけど藤華中等教育学校を含めた藤華の付属は全て、姉貴の為に造られたそうですよ」
「何!!」
「何でそうなる!」
「神崎真理子、次期当主だった雅彰さんの18歳で病死した娘さんが姉貴に力の使い方を教えたり相談に乗ったりしていたでしょ、姉貴には苗字を言わず名前しか言わなかったらしいんですよ、でぇ姉貴が直系の末裔だと確信してから総帥は陰ながら俺達を見守っていたらしい、ただ自分の息子が次期当主という位置にいるため、これをまず解決すべきだとして榊家に接触してこなかったって言ってましたね」
驚くべき榊家いや元榊家という神崎家の内情を知ってしまった二人は開いた口がふさがらなかった、自分たちが通っていた学校が全て神崎家による雪華のための学校だったとは思っても見なかったのだ。
「俺も知りませでしたし、姉貴も知らずに入学してますよ、前期生の時に総帥が接触してきて暫くしてから知ったみたいですから」
「そななのか……」
「ただ総帥は姉貴が成人式を迎えるまでは当主であることを公表せずに、学生生活を送って欲しいと言っていたようです、とはいえ神崎家の他の家族は納得しませんしね、うちの母親も納得していませんでしたから」
「はっ? 神崎家が納得できない者がいてもおかしくないけど、何でお前の母親が納得できないんだ?」
「そうだよ、散々雪華を邪険にして存在を消したんだろ?」
「神崎家の場合は次期当主となるはずの夫が継げない、更に息子も継げない事は、結婚した当初から知っていたらしいんです、神崎家では配偶者に対して直系が見つかればその当主に、神崎家の名誉も財産も全て何もかも直系に還す事になる、それが嫌なら結婚は認めない、了承すれば術で了承したことを縛るというものが在ったらしいんです、でも直系が見つからなければ間違いなく跡継ぎで、自分は令夫人になれると思っていたのに、見つかってしまった。逆に榊の方は長男なんだから兄貴が次ぐべきだと母親が文句を言い出したんですよ」
「何を言ったんだ?」
『余所の子が海李の子供だからって直系のはずない、春樹が次ぐべきだ、早く死ねばいいのに』
「酷すぎるな、自分が生んだ子なのにか?」
「確かに虐待をしてきて、本物の家系図で愛人の存在がないにも関わらずに言うことかね」
「そう、確かに本物の家系図にも表示されていなかった、あれは自動書記と言うものらしくて、人が書くものじゃないって姉貴が言っていた」
「自動書記って、そんなの在るのか?」
「っというか聞いた事もないわ」
じゃその後の怒濤の日々はどう言ったものか、聞いて良いものか迷ったが、ここまで来たら聞いてみたい、それを察した夏椰は話を続けた。
「神崎家の雅彰の妻伶花婦人は魔術師の家系の人だったんです、だから姉貴を殺そうと考えていたんですよ」
「マジで?」
「えぇ最初は、部下を使って術を張り巡らせていたようだけど、姉貴にとっては雑魚扱い、妖怪と渡り合って殺してきた実績は伊達じゃないし、対人だとしてもプロの戦闘訓練を受けて銃器も扱える姉貴に敵は無し、だから逆に家族を狙ってきた、母さんと春姉ぇを誘拐したんです、姉貴はこういう事もあるだろうと家には結界を張って榊家に危害が加えられないように対処はしていたんですけどね、一歩外に出ればそれは効果がない。そこを狙われたんです」
「マジで……」
「当時野球の練習後に帰宅しようとしてけど、精霊達から二人の誘拐を知った姉貴は昔からの知り合いである刑事に協力を得た、知り合いの刑事二人と共に、母さん達が監禁されている場所まで行くと、姉貴は容赦なく見張りの者を叩き潰して銃を奪い、警察が止める間もなく堂々と中に入って拳銃ぶっ放して動けなくして、アッサリ二人を救出、刑事二人はあまり役に立たなかったらしいけど、姉貴が言うには後始末のために呼んだだけよって事らしい」
「アイツ容赦ねぇなぁ~~その頃から」
「武器も扱えるって普通の高校生がか?」
「ただ自分を思いっきり虐めまくった姉と存在を消した母親をどんな気分で助けたんだろうかと思ったけどね、後で聞いたら、自分の事はどうでも良いけど、他のみんなが悲しむからよって言ってた」
「向かうとこ敵無しの破壊神ぶりはリアルでも健在であるってか?」
「本気で怒らすと怖いって、そういえば聡と篤が言ってたな」
「でぇ結局その後、その伶花婦人どうなったんだ?」
「その場に伶花婦人はいませんし、彼女が関わったという証拠が無かったので、現場にいた者だけが監禁容疑の現行犯で捕まったんです、どうやって証拠をなくしたのかは不明でしたけど」
「マジで、そんなのあり?」
「逆に姉貴の方に本来なら過剰防衛だって怒られてた」
「はは、なるほど」
「うん、それは分かる気がする」
300年前の雪華とその一族の出来事に驚きを隠せない先輩二人に対して、夏椰は思い出すように、懐かしそうに話していった。
稚拙な文章をお読みになって頂きありがとう御座います。
ご感想に対する返信返しは超苦手なので、出来ないことが多いかもしれませんが、出来るだけ頑張りますので、長い目で見ていただけると幸いです。