47話 国王との謁見
※何度か読み返し、色々話がおかしくなっている所や誤字・脱字は不定期に修正・加筆をしております。(更新日が多々変更あり)
念話でウィステリア組と話した後、雪華は転移で三橋の所に向かった、そして彼を連れて更に約束の場所まで転移したのだ。
「……領主様、今のが転移魔法ですか?」
「えぇそうよ、初めて?」
「はい、転移魔法じたい存在は名前しか聞いたことがなく、高等魔法だと聞いておりましたので」
「そうなのねぇ、転移魔法は確かに高等魔法の部類に入るんだけど転移魔法陣というのがあってね、それを使うと転移魔法を使えなくても転移はできるんだけど、転移魔法陣はどこにあるのか不明なのよね、高等魔法である転移魔法を使える者は、転移魔法陣を設置できるんだけど、陣の内容を理解してないと作れないし設置も出来ないのよ」
「そうとう難しい魔法なんですね」
「確かに難しいわね」
「でぇ、ここはどこなのでしょうか?」
「あぁ、ここは王都ではなくて、ベルフィント領よ」
「ベルフィント領!!!」
そんな話をしている二人に近づく者がいた、咄嗟に三橋が警戒し雪華を守ろうとするが、雪華は知った相手であると、三橋に言って警戒を解いて貰った。
「久しぶりね、ラントさんだったかしら?」
「ご無沙汰しておりますウィステリア侯爵、本当にここまでお越しになれるとは、失礼ながら思っておりませんでした」
「でも、ここを指定したでしょ?」
「はい、侯爵ならば間違いなく来られるだろうと」
「さすがね、でぇ今日も案内はあなた?」
「はい、どうぞこちらに……」
そう言われて、雪華は三橋をつれて前回連れて行かれた場所に向かった。マルク・ベルフィント伯爵の屋敷の敷地内にある二階建ての大きな小屋擬きである。
「ようこそ、侯爵」
「宰相さん、お久しぶりですね、というかどうしてここな訳? 王都からかなり離れているでしょう?」
「前々から陛下の視察が有ったので、それならばという事です」
「なるほど、だから半月も待たされた訳ね、でも私は今日封書メモを貰ったんですけど?」
「侯爵ならば来られると、陛下が仰ったのですよ、至高の存在であるならばと」
「なるほど……無茶ぶりにも程がありますがねぇ」
「まぁ、グチは陛下に仰ってください、それとそちらが新しいギルドマスターですか?」
雪華と伯爵の言葉を聞きながら、三橋は驚いていた、宰相である伯爵と領主様が親しく話しているとは思っていなかったからだ、他領の貴族はウィステリア領を敵視し蛮族領と呼んでいるのを、彼も知っていたからだ。
「えぇそう、彼が新しいギルドマスターに就任したロイド・三橋さんよ」
「お初にお目にかかります。ベルフィント伯爵様、ロイド・三橋と申します。以後お見知り置きくださいませ」
丁寧にお辞儀をして名乗った彼を見て、伯爵もふむと頷くと、一緒に来るよう促した。前回と同じく2階に上がって部屋に入った、当然前回と同じく側仕えもいたが、今回は雪華に対して非難の言葉は無かった。彼女の正体を知ったためと思われる。
「久しぶりだな侯爵、そちらから会いたいと言われるとは思っていなかったのだが?」
「えぇお久しぶりですね、でも今回の一件で陛下と宰相である伯爵には新しいギルマスが誰か知っておいて貰いたかったのですよ」
「なるほど、しかしいいのかい? 王族や貴族と面識を持って今回と同じ様な事にはなら無いのか?」
「そこは大丈夫ですよ、今回ここに来るのは誰にも見られていないし、三橋の人を見る目は確かですし、貴族と馴れ合いをするような人じゃないです、もし貴族が何かを強要するなら、ウィステリアに報告するよう言っています、その前に本部長に相談でもするでしょう、それに私にも苦言を呈することくらいするもの」
そう言った雪華の顔を見て苦笑をした三橋は、改めて国王陛下に対して礼節を持って自己紹介をした。
「なるほど、侯爵が認めた程の人物ならば信じても良かろう」
「でぇ今回のこの無茶ぶりの謁見について、どういう事ですか? とベルフィント宰相に言ったら陛下にグチってくださいって言われたんですけど?」
そう言われて、レイモンド・フェスリアナ国王はマルク・ベルフィント伯爵を見た、それを苦笑して受けている伯爵は、「陛下の口からどうぞ」と言っている。
「やれやれ、実はハルシェット辺境伯の動向が気になってな、下手に動くのは得策ではないと思ったのだ、その為前々からこちらの方面に視察の予定が合ったので、ついでにハルシェット領の視察も兼ねようかと思ってな、その合間で時間をとった」
「やっぱりそういう事でしたか、ここの来るときゴラン隊長が付いて来るって言ったけれど、断った時にハルシェット辺境伯には気をつけるようにって言われたのよ、だから宿屋を出ない方法をとれば問題ないって思ったので転移魔法を使ってきましたよ」
「そうか、やはり至高の存在だな、我々には思いも寄らない方法だ」
「転移魔法が高等級の魔法であるのは事実だと思いますし、当然スキルマスターは全員持っています。ただ転移魔法を獲得する前に転移魔法陣というスキルが有るんですが、それを設置するのは容易ではないんですよ」
「転移魔法陣?」
「転移魔法と同じ効果を持つものですけど、魔法を持たない者も転移できる様にするための魔法陣です。ある地点と地点を結ばせて転移する為の陣、これは陣の内容を理解しなければ簡単に設置できません、転移魔法陣のスキルを獲得して尚そのレベルを最高レベルにあげてからでなければ転移魔法は取得出来ないんです。ただ今現在この世界でどこに転移魔法陣が存在しているのかは不明です」
「それはつまり……、何も知らずにその陣に足を踏み込んだら、どこにでるか解らないと?」
「そういう事です」
転移魔法が高等級魔法であり、簡単に手に入れられない、そこで転移魔法陣というものもあるが、もし普通にそれを使用しようと考えるなら危険である事を、雪華は国王と伯爵に示唆したのだ。
「そうか、簡単ではないけど、魔法陣で簡単に移動できてもどこにでるか不明だと、出たとこが危険な場所だと命に関わることもある、そういう事だな」
「えぇそういう事です、私たちスキルマスターもその辺を注意していますし、どちらにしても入り口と出口の両方に魔法陣を描かなければならないので手間なんですよ。本来なら魔術師がそのことをよく熟知していなければならない事なんですけど……」
「今の魔術師ではそこまで達していない……か」
「はい」
国王と伯爵、そして領主の話を聞いていたロイド・三橋は改めてスキルマスターの凄さを痛感していた。
その後今現在の冒険者ギルド王都支部に関しての話に移った、三橋がギルマスに就任することを国王が「認める」と言う事を発する事になる。
本来ならその必要はない、冒険者ギルドはウィステリア領に本部が有るためギルマスの交代等は、本部が指示する事になっており、その他のギルドも本部はウィステリアにあり、ウィステリアの総本部の下部組織になっている為、どのギルドもギルド長の交代は、派遣先領主に挨拶をする程度である。
だが、今回のように貴族と結託するような事態になった場合は国の捜査が入り、ギルド総本部に報告が行く、更に総本部からも捜査が入り処罰を含めた対処が行われる。
今回はその総本部長である雪華自身が動いている事もあり有る意味、他のギルドや貴族に対しての見せしめという意味合いも兼ねていた。
「それと陛下、冒険者予備校の質が落ちていると、凄く感じているんですけど……」
「冒険者予備校の質が落ちている?」
「そう、初歩の初歩を知らない冒険者ランクBと言うバカがギルド内で暴れたから仕置きしたんです」
「あぁ~、報告が来ていた、凄い処罰をしたらしいな」
苦笑して雪華を見ているレイモンド・フェスリアナ国王、親衛隊のゴラン隊長から報告を聞いたのだろう、バカが雪華に手を出した事で召喚獣に空の遊覧をさせられたことを、それを知って最初は呆気にとられたが、少々笑ってしまったのも事実だった。
「それにしても、あなたを怒らせてその程度で済んで良かったと、私は心から思ったものだ」
「まぁ、あのバカが怒る理由も解っていたけれど、あまりのバカさ加減に呆れたのよ、それで予備校はどうなっているのかと思ってねぇ、少し見学させて貰ったんだけど、貴族の顔色を見る質の悪い教師が多すぎます」
「確かに男爵の息がかかっていたギルドだったからな、予備校の方もそうだったのだろう」
「でぇ今後は三橋が仕切ることになるんだけど、それも了承して貴族を牽制してほしいんですけど」
「ふむ、わかったそうしよう、承認式に同時に発するとしよう、そうすれば多少はマシになるだろう、それと例の遊覧は貴族の中でもかなり有名になっているよ」
「有名って何ですか?」
「あぁ冒険者ギルドの代理が冒険者レベルBを召喚獣で懲らしめた、その人物は至高の存在だったと」
「陛下……」
雪華と国王の会話を聞きながらベルフィント伯爵は苦笑をしながら言った、悪い噂ではなく至高の存在がいたのに驚いている貴族が多いとのこと、またそれがウィステリア領主であったことに驚いていたのだと説明がされた。
「って事は貴族にバレちゃったわけね」
「まぁ動物園でハルシェット辺境伯と会っている事も拍車をかけたのは事実だろうね」
「あれは陛下の仕業でしょうが」
「まぁ否定はしないけどね、侯爵と会ってお互いがどのような反応をするのか見てみたかったのは事実だよ」
「あぁなるほど、でもこれで周辺の動向が気になりますね、陛下も気をつけてくださいよ」
「あぁ解っているよ」
この国の王と自身の領主がこうも親しく話している事に驚いていたのは、言うまでもなく三橋である。
貴族と結託はしたくないとか関わりたくないと言い放っている領主が、まさか国王と親しいなどと思いも寄らなかったのだ。
「あの~領主様、その国王様に対して、その宜しいのですか、凄く親しくお話しなさっている様ですが……」
「あぁ~それは、その……」
そう言えばと思った雪華、この王の祖父は転生者である、その事があり、割とフランクに話をしていた事を思い出しいて後悔した。それを感じ取った国王は自ら言葉を発した。
「君はウィステリア領主が300年前の事を知っている者である事は知っているな」
「はい、存じております」
「私の祖父、先王はその300年前の記憶を持った転生者だったんだよ」
「えっ!」
「陛下! 仰っても良かったのですか?」
「あぁ貴族は皆、先王の事を『転生王』と密かに言って周知の事実だしな、それに侯爵が信用している人物だしウィステリア領の住民なら信じてもくれよう」
「しかし……」
「あの、陛下それはその、どういう意味ですか?」
「つまりだな、先王である私の祖父は、ウィステリア領主が300年前に眠らされる前の時代の事を知っていたと言う意味だ」
国王の言葉を聞いて三橋は雪華の顔を見た、そしてそれに頷いた彼女に対して更に質問をした。
「本当ですか? 領主様」
「えぇ先王は自分が転生者であるという証拠と、私たちウィステリア家とスキルマスターが、本当に300年前に眠らされて当時のことを知る者であるかどうかを確かめるための証拠となるものを残していたのよ、それを私たちは見て読んで証明したの、でもこれはここにいる者だけの秘密だから、三橋も今は言っちゃダメよ」
「……わかりました、しかしまさか先王陛下が300年前からの転生者とは思いませんでした」
「先王は隠していたからな、ずっと、だがウィステリア家の者が目覚めたと知らせを聞いた時に、私とベルフィント宰相にだけには話してくれたんだ、その後貴族にもそれが知れ渡ったが、何故か貴族以外の国民には知らされていない」
「その辺は貴族達があえて知らせる必要はないと判断したのだと思います、転生者は300年前の記憶から何かしらの情報や利益になる繋がる事を知っている可能性があります、その為貴族に対して危険と見なされる事もありますが、密かに転生者を探して自分の利益の為に利用しようと考える貴族もいますから」
「ふむ、その通りだ。先王も自分が『転生王』と貴族の間で密かに言われていることも知っておられた、故にもし我が国で自分やウィステリア以外の転生者が見つかれば庇護するよう命じておられたが、貴族はそれを素直に実行するかは未知数とも仰られていた」
国王陛下の驚きの暴露で溜息を付いた三橋、雪華だけでなく国王と伯爵からも念押しされたら、極秘情報として聞かなかった事としなければならないと心に決めた。
稚拙な文章をお読みになって頂きありがとう御座います。
ご感想に対する返信返しは超苦手なので、出来ないことが多いかもしれませんが、出来るだけ頑張りますので、長い目で見ていただけると幸いです。