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42話 冒険者と魔物の対応表

 午前7時になり1階に全員が集まっていると、マリンが告げに来た。そして彼女の先導で1階に降りる階段に向かった、雪華は数段降りて、全員を見回すとざっと20名ほどがいる。マリンは1階まで降りていた。


「まず最初に挨拶をするわね、国王命令でこのギルドのギルマス代理をする事になったレティシアよ、みんなも知っていると思うけど、憲兵に連れて行かれたあのレティよ。先に言っておくけど今回の一件国王は凄く怒っているから、それにこの件は冤罪だからね。そこは覚えておいて貰うわよ、それと安心しなさい、新しく来るギルマスは人族だからね」


 雪華の言った人族のギルマスという言葉に皆は少なからず安堵の言葉と表情になった、それを見て雪華はそんなに嫌かと思った。


「それと、これから渡す紙だけど、膨大な依頼書の仕訳をしてある、ランク毎にこれを掲示板に貼ってちょうだい、それとは別に冒険者ランク毎に対応する魔物のランクを表にしてあるからよく見ておくこと」


 そう言うと紙の束をマリンに渡し、別の紙を従業員全員に渡した。


「あのこれって……」

「ビッグアンテカウ討伐1頭に付きAランク冒険者複数パーティーで対応!」

「ビッグベア討伐1頭に付きBランク冒険者複数パーティーで対応、ともに単独討伐は禁止!」

「以下のランクはスライム及びその他の仕事ですか?」

「そうよ、それに従って貰います」

「しかし、これでは冒険者達が怒りますよ」

「今の冒険者レベルではこれが妥当でしょう、本来ならビックベアもビッグアンテカウもBランク冒険者が単独でシトメて欲しいところなのに、そこまでレベル無いでしょう?」

「ですが……」

「魔物のレベルは300年前から変わっていない。ウィステリア周辺は強い魔物が多いけど、ここはそれほど強い魔物が多いと思えない、とはいえこの国の冒険者レベルが低いのはどこも同じ、理由は解っているわよね」

「それは、魔素量が少ないから……」

「それもあるけど、ロストスキルやロストマジックがあるって事も要因ね、あとはさっき言った魔素量が少なくて魔法が仕えない者が多い、ならば現存している魔法とスキル獲得してレベルをあげる以外にないでしょう、それにね、スライムって侮らないで欲しいわね、アイツ等魔物ランクが上がると魔法を使用してくるし、希少種もいるのよ、この辺りは少ないみたいだけど、スライムも倒せないんじゃ話にならないわよ」

「冒険者レベルがあがれば良いって事ですよね、じゃ迷宮に挑んでレベルをあげれば大丈夫では?」

「無理よ! 今の冒険者が迷宮に入った瞬間に瞬殺されるわよ」

「瞬殺って……」

「あのね、迷宮は1階層でも魔物レベル3桁なのよ、冒険者レベルで3桁のない者が行けば死にに行くようなものよ、まず生きて帰れないわね、それに、だいたいBランクでレベル100ないってのが可笑しすぎるのよ! 本来のBランクならレベル500越えから700迄の冒険者の事なのよ!」


 雪華の話を聞いたギルド職員は唖然としている、昔話できいた、昔は強い冒険者が多くいてビッグベアなんかも一人で倒せる者もいたと。ただの昔話、お伽噺なんかと思っていたのだ。


「あなたたちは冒険者ギルドで働く職員でしょ、現実を見なさい、言っておくけど、これからもっと強い魔物だって出てくる可能性がないとは言えないんだから」

「何か方法は有るんですか?」

「レベルをあげる以外にない。迷宮はほぼ全て閉鎖している、当然死人を出したくないためよ、私の塔も閉鎖したからね。今開いているといえば、ウィステリアにある初心者の塔くらいよ」

「初心者の塔」

「えぇあそこは冒険者予備校の卒業試験で使用したり、卒業生がレベルアップの為に攻略するために開けてある、とはいえ、まだ1階層しか開けてないけど、というか1階層を攻略できる者がいないっていうのが本当の所だけど」

「この王都に動物園という迷宮が有るじゃ有りませんか、あそこは?」


 この言葉を聞いた雪華が、ピクピク眉間を動かしながら爆弾発言をした。


「あぁそれね、あそこはやめておきなさい、つい昨日完全閉鎖してきた所だから」

「それは何故?」

「あそこはねぇ、私たちスキルマスター仲間ですら危険極まりない迷宮と認定した場所なのよ、入った瞬間死んでるわよ、1階層で100~300弱程度の魔物が自由に跋扈している迷宮なのよ、笑えないレベルで笑えない数が自由に歩いてるのよ、そんな所に100にも満たない冒険者が行ったらどうなると思う?」


 雪華の説明にみな口をつぐんだ、これはダメだ死にに行くだけであると認識できた。


「解った様ね、じゃ開店15分前よ、依頼用紙を貼って準備をしてちょうだい」

「はい」


 雪華の掛け声で皆がワラワラと散り始めた時、ギルドのドアが開いて親衛隊が入ってきた、それに驚いた者達が質問した。


「あの、何かご用でしょうか?」

「まだ問題でもありましたか?」

「問題はないが、我々はこのギルドに陛下が所有するカード鑑定魔道具を貸し与えている、正規の物が到着するまで警備を行う命令を受けている。それにそちらのお方をお守りすることも王より直々に命じられている」

「はぁ? 護衛なんていらないわよ!」

「申し訳有りません、ウィステリア侯爵これも我らの仕事、陛下よりのご命令です」


 そこに言って入ってきたのは親衛隊の隊長のようで、周りの兵士は敬礼を持って出迎えていた。そして彼は雪華の前までやってくると陛下に対してするのと同じように片膝を付いて礼節をもって対応し、周りの兵士もこれに習った。これを見たギルドの職員はみな驚いた。


「あなた前にあったわね」

「前回は慌ただしい中、ご挨拶が出来ず申し訳有りませんでした。私は国王陛下直属の親衛隊長であるマイク・ゴランでございます、陛下に置かれましては、侯爵様が王都におられる間、出来る限りのご協力をするよう命じられております」

「……協力ってあまり必要ないんだけど」

「ギルド本部から新しいギルド長がお越しになる間はギルド長代理をなさると伺っております、侯爵様の事をご存じない、多くの民があなたを怒らせないよう注意を払うようにとの事です、もちろん私どもではあなた様の足下にも及びませんが……ウィステリア領と王都は何かと違うことが多い様なので、その変の助言もと命じられております」

「……なるほど……。解ったわでも、私に喧嘩売ってきたら容赦しないわよ、巻き込まれたくなければ割り込まず見ているだけにしていていなさいね」

「はっ! 畏まりました」


 この対応に驚いていた従業員に雪華は、開業準備を急がせた、そして自身は2階のギルド長室に向かい、マイク・ゴラン隊長が部下に何かを指示すると、数名が魔道具を使用する受付嬢の近くに二人陣取った。それ以外の者は数名が建物の周辺に私服に着替えて警備に当たる。残った者は隊長と共に雪華のいるギルド長室に向かった。


「……これは……見事な調度品ですね」

「ヘイゼル・ロイズが用意したみたいだよ」

「これを、ですか?」

「大方貴族の為に準備でもしたんじゃないの? 資金源はどこだろうねぇ~」

「これは、どうされるので?」

「とりあえず、勿体ないからこのままにしておく、王都に貴族が多いのは事実だし、特例は認めたくないんだけどねぇ~松永を説得するしかないわ」


 雪華はそう言いながらウィステリアにいる冒険者ギルド本部長である松永氏の顔を思い出していた。彼もAランク冒険者である、一応この時代のではあるが。


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


 ギルドの仕事を終えて戻ってきたのは夜の21時半頃である、当然警護の親衛隊長ともう一人が付いていた。それを見て男3人とロドリアは驚いた。そして夏椰の部屋でロドリアを含めて4人で話をすることになり、国王から頼まれたギルド支部に関して状況報告をしたのだ、そして警護が付いてしまったと言った。現在は部屋の外で警備をしている。一応遮断結界を張っている。


「あれ姉貴を守っているのか?」

「まぁ一応そうなるけど、本音を言えばウィステリア家の者と言った方がいいんじゃない? そしてもっと大きく言えばウィステリア籍の者って事だと思うけどね」

「何でそうなるんだ?」

「隊長の話を聞けば陛下はウィステリアと敵対関係にはなりたくない……らしいわ」

「だから危険視された?」

「逆ね、王都の民が私たちと敵対関係にならないかっと言うことらしい」

「あぁ~なるほど、ウィステリア領以外の国民はウィステリア領を蛮族領と言って嫌っていますからね」

「そう、それ、それだと思うわ、ギルドのスタッフも新しいギルド長が人族かどうか凄く気にしていたからねぇ~」

「でぇ誰が来るんだ?」

「松永の右腕だった人、確か名前はロイド・三橋だったかなぁ」

「あぁ三橋さんか、あの人腕っ節も良いし、人当たりもいいよな」

「あぁ信頼できる」

「松永に次いでレベル高かったわね、彼なら安心かな」

「しかし大丈夫でしょうか、王都は貴族が多いですよ、それにハルシェット辺境伯もいますし」

「そうねぇ、注意は促しておくけど、たぶん大丈夫じゃないかな、彼あぁみえても人を見る目は確かだから」


 雪華が言った言葉でスキルマスター達は安堵している、雪華が言うなら間違いない。そんな彼らを見てロドリアも信じることにした。


「それなら今後の予定はどういたしましょうか? 領主様がギルドの仕事をなさるのなら暫く此方に滞在となるのでは?」

「あぁそう言えば……」

「滞在と言ってもギルマスが来るまでだよな、だいぶ掛かりそうだな」

「そんなにかからないんじゃないかな、牢に入れられている時に既に式神とばしておいたから」

「マジか! 姉貴やること早いっていうか、それってもしかして予知した?」

「うん、そう、予知したの」


 あっさり言ってのけた雪華を見て夏椰は溜息を付いた、陰陽師の中でも予知能力の有った者は少ない、当時は予知夢として見ていたのは神崎総帥くらいだった、一般的には『先見の力』『夢見の力』とか言うらしいけど、でも雪華の場合ほぼ100%の確率だったのだ。


「ロドリアさんは仕事が有りますよね」

「えぇまぁ、ですがまだ全ての準備が整ったわけでは有りませんので、もう少しなら大丈夫かと」

「そうなの?」

「はい、久しぶりに家族と一緒にいる時間が持てそうだと思っています」

「そう言えば王都に店があるって言ってたわね」

「はい、私は商隊で出ている事が多いので妻や子供達に私の姉弟達が店を切り盛りしているんです」

「なるほど、それは良いわね、お店行ってみたいけど、ギルドの仕事を放置は出来ないから、今は無理ね」

「出発前にお越しになりますか?」

「それなら良いみやげが買えるかもよ姉貴!」

「そうねぇ家族みやげ買うの忘れてるわ」

「じゃ決まりだな、俺たちもまだ実験したいし、ここで部品なんか購入したいからロドリアさんの意見も聞きたいしな」

「じゃ雪華の仕事が終わるまで王都にいるって事でOK?」

「それでいい」

「悪いわね」

「気にしなくてもいいぜ姉貴、それに俺は情報がもっと取れそうだ」

「危険な真似はしないでよ、特に貴族がらみはパス」

「解ってるって!」

「ロドリアさん、コイツ要注意気をつけて下さいね」

「解りました」


 今後の予定が決まり、合間に王都観光もする事になった。雪華はギルマスが来て引継をするまで自由がない事を心の中で嘆いていた。


稚拙な文章をお読みになって頂きありがとう御座います。


ご感想に対する返信返しは超苦手なので、出来ないことが多いかもしれませんが、出来るだけ頑張りますので、長い目で見ていただけると幸いです。

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