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40話 男3人の密談とロドリアとの商談

 動物園から戻った一行は、宿屋にいた。雪華は自身の部屋に籠もって暫く誰にも会いたくないと言ったのだ。

 そのため男3人は夏椰の部屋に集まっていた、当然結界を張っている。


「あれだけピートの事を気にしているってのはどう言うことだ?」

「先輩達はピートさんの事をご存じなんですか?」

「あぁ、留学していた時に一度会っているんだよ」

「留学ってバード大?」

「あぁいや、ヤツは卒業生だったから大学では会ってない」

「そうだったな何の仕事をしていたかは話してなかったが」

「姉貴も一回だけしか会ってないと?」

「いや、雪華とは何度か会っていたんじゃないかな」

「あぁ理由は知らんが、アイツは自国でもアカウントを持っていたらしいから、日本が撤退して以降の事も知っていたからな、情報でも貰っていたんじゃないか?」

「えっ、ピートさんってメルリアのアカウントだけじゃなかったんですか?」

「アイツ、メインは日本のアカウントだったんだ、でぇ別垢でメルリアのアカウントも持っていた」

「そうそう、初めてあった時にそんな事言っていた、当時日本が撤退して以降はもう、かなりめちゃくちゃな戦争をしていたって聞いたな、フェスリアナ王国の当時の国王ってNPCだから、収拾を付けながら国を守っていた感じだと言っていたんだよ」

「でも、それおかしくないですか? 日本は撤退しているのに」

「夏椰も気づいたか、日本が撤退しているのにフェスリアナ王国は存続していたんだ、とは言ってもここの歴史通りに繋がる領都戦争も起こっていたらしい」

「プレイヤーはいなくてもNPCがいるから存続していたのかもなぁってのが俺たちの見解だった」

「なるほどNPCですか、それなら納得です」

「俺たちはあのとき一度しかピートに会ってないけど、雪華はその後の事をピートから聞いて知っているんじゃないかなと俺は思っているんだがな」

「でも、姉貴からそんな話一度も聞いたことありませんでしたよ」

「あっちにいたときもゲームの話はあまりしてないな、そう言えば」

「研究が忙しかったと言うのもあるけど、異常気象やら多かったしな、それに雪華の場合、政治家達が接触してくるというおまけ付きだったし」


 先輩達の話を聞いて、留学中の姉の様子を少し知った夏椰。

 しかし、まさかピートと面識があって何度も会っていたという話が少し気になっていた。

 そして今回の動物園での状況についても、やたらとピートが関係している事や、ピートの事は別物と思っても良いとかよく解らない事を言っていたのを思い出した。

 さらに先輩二人に始祖の話をした時、「本来いるべき場所に導く者が現れる」という言葉を思い出したのだ。まさかそれがピートなのではと夏椰は思ってしまった。

 ただ証拠がないし確信もない、夏椰はリアルのピートを会ったことが無く判断が出来ない為、暫く自分の中だけで留めておくことにした。

 男三人があれこれと話している同時刻、雪華は自室で同じくピートの事を考えていた。


「ん~~~、アイツ絶対何か知っている筈だわ、ここまで用意周到に動いている様子だってのもおかしな話よ……ねぇ残滓あんた何か知ってるでしょ?」

『回答不可』

「………回答不可って……なるほど、残滓は知っているって事ね、まぁ考えてみたらそうよねぇ、ピートが人じゃないのかもしれないし、私を導く者だとなるとあんたの事も知っていて当然って事だものねぇ~」

『…………』

「……そう黙りなの、じゃやっぱりピートを捜して本人の口から聞くしかないわね」

『はい』


 残滓と心の中で話をしている間に、だいぶ時間が経っていた。とりあえず食事をすまして、まずは図書館に行き獣医師関連の書物のコピーをする必要があると考えを纏めた。

 そしてウィステリア領から来る新しいギルマスに引継が必要になる為、明日はギルドに行く事になっている。

 ウィステリアに帰るのはまだ先だな、と考えて、飼育係の事を思い出した、ウィステリアに行くかどうかを例の飼育係りは来るのかと、それを気にしながら夕食を摂った後就寝することにした。


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


 翌日、宿屋の1階でロドリアを含めて全員で朝食を食べていた時、ロドリアからウィステリア領に支店を出したいと言う話を聞かされた。


「支店?」

「はい、ウィステリア領の木材は高値で売れますので、此方としては儲けがでます、また他領で仕入れた物でウィステリアが必要と思われたら買って頂けるかと」

「ん~~そうね、考えてみても良いかも知れないわね」

「大丈夫か? 他領の物とかって…」

「ねぇ~ロドリアさん他国の品物なんか輸入してたりする?」

「そうですね、一部ですが、無いわけでは有りません」

「なら、うちって多種族共生だから、種族によって食べ物や使う物が違っていたりするはずなのよ、本来ならね、でも物資が無いって事で諦めてる種族がいるかも知れないので、そういう点を補えるならいいのだけど、どう?」

「そうですね、確かにウィステリア領にはリザードマンや兎人族などもいらっしゃいますし、そういう点においてなら有益な取引が出来るかも知れませんね、少し調査をさせて頂いてもよろしいでしょうか?」

「えぇ、もちろんよ、それが済み次第で支店の出店を話し合いましょう」

「畏まりました、それでかまいません」


 なぜか、朝からこんな簡単に商談をする姉を見て夏椰は呆れ、同級生も驚いていた、商談はもっとこう真剣に内密に行うものだと思っていたからだ。そこで少し疑問を生じた事を言ってみる男ども。


「ロドリアさん、つかぬ事をお伺いしますがね」

「はい、何でしょう浅井様」

「ロドリアさんは犬族ですよね?」

「はい」

「そうか、この王都は人族ばかりだ、何で犬族のロドリアさんは店を構えているんだ?」

「あぁ~それはですね、私がではなく私の先祖が人族で、ここで既に商いをしていた為ですよ、人族であった祖父が犬族の女性と結婚し勘当されて、一度家を出されたのですが、跡取りが死亡した事で渋々戻されたんです、そして生まれたのが人族の姿ではなく犬族の姿をした私の父でした。犬族は多産と言われていますが、父以外はみな死亡してしまった為、父が跡取りになり、父は人族と結婚したかった様ですが、容姿が犬なので人族からは忌み嫌われた為、犬族の女性と結婚して、私が生まれたと言うわけです」

「……つまり元は人族の家系と言うわけか?」

「はい、そうです」

「犬族は多産なら、ロドリアさんの姉弟は?」

「みな店の切り盛りをしてくれています、私も犬族と結婚していますからね、子供も5人いますし姉弟とその子供達で店を大きくしました、色々と困難も有りますが、理解してくれる人族もいますので」

「なるほど」


 込み入った個人情報を聞いてしまった事に謝罪した浅井に、ロドリアは笑って気にしないでくださいと言ってきた。

 今は極端に獣族を嫌う人以外は、店に来てくれるお客がいるのと、縁有ってウィステリアとの商談も有るからと笑顔で答えてくれた。


 朝食後ロドリアはウィステリアまでの道中での売買に必要な物を調達しに行き、ついでにウィステリア組の帰宅に必要な物資も頼んだ、雪華を除いた男三人は霧島廉のカメラもどきの試作品からの実験をするために外出して行き、雪華としては再び動物園を訪ねていた。出迎えたのは飼育員を纏めているクリス・ブランだった。


「これは領主様」

「ごめんね何度も、でも久しぶりの動物園だから見てみたくて」

「それは構いませんが、私どもは仕事があります、その領主様をおもてなしする余裕がなく……」

「あぁ~~それは気にしなくても良いわよ、いつも通り仕事をしていて、私は適当に園内を回って動物達を見るから、それに精霊達がいるから心配ないわよ」

「左様でございますか」

「うん、気にしないでね、ここは広大だからあなた達も大変でしょうから、手を煩わせたくないわ」

「ありがとうございます」

「じゃ行ってくるわね」


 雪華はそう言うと一人でブラブラと園内の奥の方に草食系動物のいる方に歩いていった。それを見送るクリス・ブランは溜息をつき、先だっての話を思い出しどうするかと悩んでいた。


「多種族共生領のウィステリア領の学校かぁ~、行ってみたいが……」


 彼は単身者である、家族も妹以外はみなここの飼育員だったが、既に妹以外は他界している、動物の世話をしての過労死を含めた事故もあったからだ、それに嫌気をさして妹は動物園に関わるのをやめて冒険者となり、今は音信不通になっている。


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


 それぞれが宿屋に戻ってきたのは、既に夕方である。男3人組はテスト結果に満足気味であるが、改良の必要性も考慮していた、明日は天球の城にも行ってテスト魔導具を設置して来ると話していた。これがうまく作動すれば上々と子供に返ったような表情をしている。


 それを見て呆れてみていた雪華は、動物園をひと周りして、すべての動物のチェックをしてきた、当然水族館もだ、これで今後の飼育に関しても精霊達に命じて結界を強化をしてきた、当面今の飼育員以外の者、人族を含めた全ての種族は入れてはならない、入れるのは雪華が認めたスキルマスターのみとした。


 そして飼育員5人がウィステリアに行くと決めた場合は全面的に動物飼育をするように命じた、また各動物達に対しても念話で話しをして、動物達と意志疎通を図って同意を得ている。魔物化していない動物達は雪華によって保護された。


稚拙な文章をお読みになって頂きありがとう御座います。


ご感想に対する返信返しは超苦手なので、出来ないことが多いかもしれませんが、出来るだけ頑張りますので、長い目で見ていただけると幸いです。

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