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36話 動物園の現状と調査

 動物園前での一騒動の後、雪華が精霊達に命じて漸く中に入れるようになった、出迎えたのは5人の飼育係りである。

 一悶着をしている間に精霊の一部が飼育係に知らせて出迎え準備をしたのだ。国王や貴族が一緒という事で緊張をしながら挨拶をしてきた。


「初めまして、この動物園の管理をしております、クリス・ブランと言います」

「同じくロッド・ルワンドと言います」

「私はミリア・ロンドと言います」

「はっ、初めましてカイル・アニマルと言います」

「私はロン・チーです」

「初めまして、私は雪華・ウィステリアよ。精霊達から指導を受けて動物達の世話をしてくれていたと聞いたのだけど、本当?」

「はい、私がとりあえずまとめ役となっております、そつ、その他の方々は……」

「わぁ悪かったわね、紹介するわ」


 雪華はそう言って、ウィステリア籍の者を全員紹介し、ロドリアの事も紹介した、そのついでとばかりに国王はじめ随行者を紹介と随行した理由を説明した。

 雪華の次いでとしての紹介に腹を立てたのは言うまでもない、ハルシェット辺境伯であるが、レイモンド・フェスリアナ国王に黙らされた。


「とりあえず、一度事務所に行って詳しい話を聞いてみたいんだけど、良いかしら? ……えっとクリス・ブランさんだっけ?」

「はい、どうぞ此方です」


 クリス・ブランに案内されて全員が移動した、その間雪華は彼ら5人の飼育係を観察していた。5人のまとめ役のクリス・ブランは30代半ばと思われる男性である、見た目でもしっかりとしたリーダー気質がある様だ。

 そしてロッド・ルワンド冷静な判断が出来るような面差しが見える30代前半の男性である。

 唯一の女性であるミリア・ロンドは優しそうな笑顔を見せながらも意志の強さを感じる眼孔を持っている20だ代前半の女性である。

 そしてカイル・アニマルは背が高くて恰幅もよく元気いっぱいの20代後半という感じの男性である、名前にアニマルとついていることに、スキルマスター達の苦笑を誘った。

 最後にロン・チー華国系のなまえで、どこか暗くそれでいて無口な20代半ばの男性である。


「すみません、あまり広くはなくて……、その陛下やお貴族様には申し訳なく……」

「気にするな、それにこの動物園の正式な管理者であるウィステリア領主は侯爵である、立派な貴族だぞ、その方が此方でも平気にされているのだ、我々の事は気にすることはない。それに今回は侯爵に無理を言って同行させて貰っている。我々などは居ないものとして話せば良い」

「はぁ~」


 国王陛下や宰相に公爵、辺境伯などという貴族を出迎えるなど今まで無かった者達だ緊張するな、居ないものと思えと言うのが無理である。それを察して雪華は飼育係に質問をしていく。


「今現在どの程度の動物がいるの? 世話はどうやってしているのか教えて貰えますか?」

「数は多いです、なので5人でするにはかなりの負担があり寝泊まりも交代で行っている状況です、また手が回らない所は精霊様がお手伝いして下さいますが、作業効率としては悪いです」

「では種類別に言うとどの程度?」

「草食動物、肉食動物はおります、猛禽類もおり昆虫、もちろん小動物もいます、細かな種類は我々には解りません」

「解らない?」

「はい精霊様が残してくれるメモを見て、動物の名前を知るという程度です」


 ここまで聞いてウィステリア組は頭を抱えた。調べ直す必要に迫られた。


「えっと、餌はどうしているの?」

「餌は精霊様が準備して下さいます」

「ちょっと待て、そもそも飼育の方法などはどうした? おまえ達は300年前の事は知らないんだよな?」

「はい、存じません、我々はスキルマスター様である、エドガー・スティーブン様の元で飼育法方を学んだ者達の子孫です、残された手記に従って飼育をしています」

「その手記って今ここにあるのか?」

「はいございます……一部ですが、これです。我々には読めませんので必要な部分のみ精霊様が翻訳してメモに残して下さいます」


 受け取った手記は10冊以上は有るだろうか、雪華はその一冊を手に取ってページをめくっていき溜息をついた。中身は英語で書かれた飼育員としての専門書の様な手書きノートだった。それをウィステリア組が全員で読み回した。


「英語かぁ~」

「エドガーさん、確かストラン人だったよな」

「えっそうなんですか?」

「あぁ俺たちと同じギルドだったからな」

「……っにしても、さすがね詳しすぎる、これがメモノートなんて、さすがとしか言いようが無いわ」

「どういう事だ姉貴」

「彼は元々猛獣系の飼育を目指して動物園で勤務していたのよ、でも家庭の事情で仕事を辞めて軍に入ったの、だからここで動物園を作って夢を叶えたって所かな」

「えっマジ? 本物の飼育係をしていたんだ!」

「そうそう、だからなのか召還魔法も得意だったなぁ、戦士のくせに」

「アイツの召喚獣ってえげつなかったよな、魔物も含まれてたし」

「そうそう、全く変人だった」

「あぁ只の飼育員じゃないわよ、彼、獣医資格も持っていたわ」

「獣医資格! マジか……」


 4人の話を聞いていた面々全員が驚いて聞いてきた、特に飼育員の驚き様は半端ではない。


「あの、その手記読めるのですか?」

「えぇ読めるわよ、っと言うかこの言語を読めないと、他の国の人と会話が出来ないもの」

「でぇ雪華どうするよ、これ……」

「そうねぇ、5人で飼育して全ての世話は出来ないんじゃない?」

「はい、無理があります、ですが全ての動物の顔は見ています、お世話の出来ない日は精霊様が助けて下さいます」

「マジか? 精霊って動物の世話できんの?」

「……たぶんこの手記通りで何とかって所じゃない。獣医も居なけりゃ回復魔法でも使ったのかもだけど……」

「それって限界が来るよな、きっと……」

「仕方ない、私たちで調べよう、手伝ってよ」

「マジで言ってる?おまえ?」

「マジで言ってるわよ。当然、実際に動物を知っているのは私たちだけな訳だし、区画づつ飼育係一人に付きスキルマスター一人ついて、スキルマスターは何の動物が何頭いて、出来れば性別も、体調も見てきてね、一匹も漏らさずに!」

「待て、肉食獣もいるって言ってたよな、ってことはライオンなんかもいるって事か?」


 浅井賢吾の言葉にクリス・ブランは肯定した、ただ怖いのであまり飼育員は近づかないらしい。近づかないって言葉に反応したの当然雪華である。


「……肉食獣に近づかない……」

「おい、半分野生化してる可能性あったりするんじゃ」

「待て待て待て、人になれてない肉食獣は不味くないか?」

「解った、そっちは私が行く」

「姉貴が行く???」

「アブねぇよ、ライオン、虎、チーター、熊、オオカミとかだよな代表的な物って?」

「まぁ~その辺だな」


 雪華はそう言いながら区画を見るために窓を開けて俯瞰スキルを発動して動物園全体を見ていた、甲子園が2桁以上は入りそうな範囲であると同時に地下は迷宮である。


「えっと、こういう振り分けにするから、みんな手分けして、今後のことはまた考えるから」

「草食動物中心だな、猛禽類はどうする?」

「そっちも私が行くわ、割と広い檻に入っている様だからストレスは無いでしょう」

「広いってどの程度?」

「この動物園自体の広さで言うならば、ウエストミッドランド・サファリパークとアドベンチャーワールドを合体させた程度の広さだね」

「げっ………」

「広すぎだろうぉぉ~~~それ」

「それと同じくらいの地下の迷宮だからねぇ~」


 雪華の言葉で、3人のスキルマスターが沈黙で返してきた。


「……忘れてた?」

「……忘れてた……」

「忘れたかった……」

「思い出させるな」


 とにかく指示を出した雪華の言うとおりに皆が動くことになった、そして面倒な貴族は雪華が対応するため、猛獣・猛禽関連の調査に強制的に同行させることにした。

 雪華にはまとめ役をしているクリス・ブランがついた。


「侯爵、その今から行く場所は危険な場所なのでは?」

「動物自体は有る意味危険かもだけど、ここ一応動物園だからねぇ~、そんなに怖がらなくても良いわよ」

「そもそも動物園とはいったいどういう物なのだ?」

「そうねぇ、普通の動物園は前にも話した様に檻に入れて観賞するのが目的な場所って事、本来は野生で暮らす動物達を檻に入れて、滅多に見ることが出来ない野生動物の生態を観察する事かな」

「観察……」

「共存するための知恵とでも言えばいいかな、里山、山の麓に住む村なんかだと、熊、鹿、ムササビ、フクロウ、狐、狸など言えばキリがない程の動物が山で生活をしていたわ、そういう動物は基本的に人は襲わないし、山の木の実や弱い動物を狙って補食しているの、山に食べ物が無くなれば、里山に降りてきて畑を荒らしたりするから、そういう場合は猟銃を使って眠らせて山に帰していた、そういう共存生活をしていたのよ。だから動物の生態は知っておく必要がある、またそういう事を子供達に学ばせるために動物園があった」

「人の領域に来るならば殺せばいいのでは?」

「動物といえど命有る生き物だからね、命の大切さは子供の頃から学ばせる。人を襲う動物は襲うだけの理由がある」

「理由ですか?」

「基本的に動物は人間を怖がる生き物なのよ、人間の臭いが近くに有ったり、姿を見れば逃げるのは本来の生態。でも人間を襲う動物の場合は人に対して怖い思いをした場合、敵と認識して襲うようになる、また子供を連れている親は人間の臭いを付けられると子育てをしなくなる、そういう場合は子供は死を意味する。だからを人が捕獲し人工飼育をしてから野生に戻る教育をし山に帰していた、どうしても野生に戻れない場合は、動物園に預ける事になるけど、基本的に自然と共存する世界だったのよ、300年前の私たちがいた所は……そして絶滅希少種の保護の為に動物園があった。もちろん海にいる生き物も同じよ、海にも生き物は居るからね、海や山の生き物から命を貰って人は生きていた、だから同じように感謝を持って命を守るために増やす努力もしていたわ、山の生き物は動物園がメイン、海の生き物は水族館と呼ばれていた」

「動物は大事にされていたと言うことですか?」

「陛下、魔物は多く居なかったのよ、というより魔素が無いため魔物が見えなかったからね、人を襲わない動物は人が家でペットにしていたわ、犬とか猫、鳥、小さな豚も飼って可愛がっていた人もいたわね、牛や大きな豚、鶏なんかは人が食べるものだったから、野生の物とは別に人が食べるためにあえて育てられていた物も居たわよ、そういうのは農業、畜産業などに当たるのだけど」

「なるほど、農業、畜産業か、それは確かウィステリア領にある職業だったな」

「えぇ、彼らが居るから私たちは食べることに困らない」


 雪華の説明を聞きながら、猛獣区域の飼育領域に着いた。雪華の知っている動物園の設備とほぼ同じであるが広さは大きかった。

ストレスのない程度に配慮がされて作られている。さすがはエドガーさんだと思ったものだ。


稚拙な文章をお読みになって頂きありがとう御座います。


ご感想に対する返信返しは超苦手なので、出来ないことが多いかもしれませんが、出来るだけ頑張りますので、長い目で見ていただけると幸いです。

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