28話 濡れ衣で、投獄される
軍に連れて行かれた4人は同じ牢屋に入れられた、当然手枷も付けられてはいるが、この程度でどうにかなる4人ではない。
「なぁ姉貴、どうするんだこれから? ロドリアさんがギルドに迎えに来るとか言っていたじゃん」
「そうね、ロドリアさん達は商人だからねぇ、情報は正確を期すのが当然の生業だけど……、連中がロドリアさんの話を素直に聞くとは思えないわね」
「確かにな、犬族のロドリアさんの話を聞くかは不明だ、それにしても、なんだあのヘイゼル・ロイズってギルマスあれでランクAとか信じられん」
「レベル180だったね、AランクではなくてEランクが本来のランクなのに、威張りすぎだわ」
「松永さんより低いじゃん、確か松永さんのレベルって200近かったよな、本来ならそれでもDランクだけど」
「引退するとか何とか言ってたけど、もったいない」
そんな話をしている時に、さっきの隊長がやってきた。何故かロドリアさんを連れていた。
「みなさん、大丈夫ですか?」
「ロドリアさん、どうしてここに?」
「それはこっちのセリフですよ、どうしてこんな事になったんです?」
「いや、普通に換金しにいったら、ジャイアントベアは軍が討伐する事になっているのに、何で冒険者が討伐できるんだって因縁付けられた」
「そうそう、ジャイアントベア程度を討伐できないなんてあり得ないんだけど」
「そりゃあなた方なら当然でも、今は誰も怖くてしないんですよ、そのため王都では暗黙の了解で軍がやっているだけです、ですが冒険者が討伐してはいけないなんて話は聞いたことがあリませんし換金も出来るはずです」
「だったらそこの隊長に言ってくれ、換金すら出来ずにそいつに強制的に連れてこられたんだぜ」
「本当なんですか?」
ロドリアが隊長を見て言った、そうすると隊長は言ったのだ、ギルマスがこの者達がランクを偽っているって、そしてジャイアントベアを倒したと言っていると、聞いたから捕まえたと。
「隊長、ちゃんと調べて下さい、彼らの冒険者カードは本物です、それに彼らはスキルマスターですよ、それなのにこんな仕打ち、国王陛下が知ったらどう思われるか」
「何っ! スキルマスター! それは本当か? ロドリア」
「本当です、私が何年この方々と関係を持っていると思っているんですか。今回もこの方々のお陰でここまで旅が出来たんですよ」
隊長とロドリアの話を聞いていた、雪華はため息混じりに言った。今の王都支部にあるカード鑑定魔導具はウィステリア製ではないと言ったのだ。
それと本部の松永の通達を受け付けずにいるとのこと、それを調べて欲しいと頼まれたことも話した。雪華の話を聞いた隊長は上官に話して、改めてカード鑑定魔導具で鑑定すると言った、そのときに雪華は一言追加した。
出来れば王が持っている物の方が正確だろうと、そう言われて確かにと言った隊長は、その場をいったん離れた。
「あの隊長の上官とやらが、まともな国王寄りの貴族なら安心なんだけどねぇ~」
「あぁ~確かに……」
「それはどういう意味ですか?」
「ロドリアさんの耳には入っていませんか? 王室の王の派閥とそれ以外の派閥の事」
「あぁ聞いた事があります、陛下は先王寄りの方だった為、王太子側の貴族とは相容れないと、まぁ王太子側は謀反を起こしたと言われていますから、それもあり謀反人の息子が国王になるのを反対する者も多かったと聞いています、なので陛下の味方になる貴族は少ないと」
「そうらしいわね、それもあってあちこちの貴族がウィステリアの動向を探っているんだと思うのよね」
「それはあれですか?陛下がウィステリア領を味方に付ける可能性を危惧していると?」
「そう、それにしても、今回の事で私の正体バレるわね」
「あぁそうだな、確実にバレる」
「冒険者カードは返して貰えるんだろうか?」
「そんな悠長な事を言わないでください」
「それはそうと、犬族であるロドリアさんは王都では煙たがられないの?」
「それは煙たがられますが、この王都に店を持っているのです、なので多少の事では負けません」
「うふ、強いわね、でも忘れないでね、ロドリアさんの後ろには私たちが見方だって事」
「はい、心強い見方です」
そんな事をいいながら笑っていると、先ほどの隊長が戻ってきた、今度は上官貴族を連れていた。
「このもの達がスキルマスターだと?」
「はい、ロドリア商会のロドリアがそう申しておりまして」
中肉中背のきりっとした男である、武人に相応しい風格を持っていた。それでも冒険者レベルにしては低い185程度だった。
「私はジョージ・グラマン大佐である。おまえ達が本当にスキルマスターなのか?」
「……そう言っている」
「疑うなら王にでも頼んで魔導具を貸して貰って確かめればいい、ギルドのカード鑑定魔導具は正規の物ではないようだからね、偽物に鑑定されて偽物扱いされちゃ叶わないわ」
「ならばお前達の冒険者カードを預からせても貰う」
「カードはあのギルマスが持って行ったままなんだけど! ちゃんと返してくれるんでしょうね?」
「ヘイゼル・ロイズがもっているのか」
「えぇ、まっ一応悪用されないように術はかけてあるけど、それに悪いけど、王都の人間を信用できないんでね」
「ロドリアは王都の者だが、信じているのだろう」
「ロドリアさんとは長いつきあいよ、それにあなた方他領の者と違って犬族はウィステリアでは普通に生活しているし、もっとも信頼度が違いすぎるわ」
「……よかろう、ヘイゼル・ロイズからカードを預かり鑑定日を決めて、その日に一緒に来て貰うとしよう、それまではここに居て貰うが、かまわないか?」
「いいわよ」
「ふむ、ロドリアは帰ってよし、暫く彼らはここに居て貰う」
「申し訳ありませんが大佐、彼らに失礼なことがないように願います」
「……まだ犯罪者と決まったわけではない」
「よろしくお願いします」
ロドリアはそう言って大佐と共に出ていった。残ったのは隊長とその部下である。そして隊長は部下に見張りをしっかりとか何とか言って出ていったが、部下達はスキルマスター相手にどう見張れと、等とぶつぶつ言っている。
「それよりあんたは王都に来たことがあるのよね?」
「あぁ一度だけな、王に謁見した時に」
「その時に知り合った貴族とか居ないわけ?」
「居るわけ無い、だいたい針の筵だったぞ」
「ウィステリア領は蛮族領ってやつか?」
「そうですよ、先輩! その時にも言われましたからねぇ~」
「蛮族領ねぇ~、俺はそんな異名より破壊神が怖いわ」
「何よ……」
「お前が本気で怒ったときの方が怖いって言ってんの!」
「うん、そうだな、怖い!」
「ちょっと2人ともそれは酷くない?」
「酷くない! これでアイツとセットになるともっと怖い!」
同級生の言葉にぶつぶつと文句を言う雪華に、弟夏椰は笑えない冗談だと思った。
稚拙な文章をお読みになって頂きありがとう御座います。
ご感想に対する返信返しは超苦手なので、出来ないことが多いかもしれませんが、長い目で見ていただけると幸いです。