26話 7人目のスキルマスターと二つの迷宮
フェスリアナ王国のレイモンド・フェスリアナ国王と現在滞在しているベルフィント領の領主マルク・ベルフィント伯爵と極秘に会って数日、一行は宿屋に居た。
彼らの無事な姿を見たロドリアは安堵していた。直ぐに出発したい所だったが、彼らとの話で疲れたのと、今後の方針を改める必要に迫られた為だ。
「なぁ~姉貴、やっぱりあそこまで暴露する必要ってあったのか?」
「まぁ~言い過ぎた面は確かにあったかもとは思うけど……あの菊花紋章見ちゃったらねぇ~」
「確かに……」
「っか何で皇太子が転生してんのさ、それも何度も?」
「それはこっちが聞きたいわ!! それに、魔王に関しても知っておいて貰いたかったってのは事実だから」
「本当に良かったのか?」
「私が対処しちゃったら、不味いでしょ」
「何で?」
「ウィステリア領は一応独立自治の治外法権を認められてるし、王国に反して動けば、まず他領が文句を言うに決まっている。他領が知る前に国王が知っている方が身の安全を守れる気がしだけ」
「でも本当に魔王はこっちに転生してんのかね?」
「…………だから……何が何でも見つけだすのよ、7人目のスキルマスターを……」
「アイツかぁ~」
「知ってるのか?アイツが?」
「……知ってるわよ、アイツは、確証がある」
「確証??」
「えぇ……絶対に締め上げてやる!!!!」
絶叫して怒り心頭の雪華をよそに、他の3人は姿を見せない7人目のスキルマスターの姿を思い出す。それはゲーム時代の姿、頭に角を生やした魔神族の姿だ。中身はメルリア人の男性だと聞いていた。
「今の所日本人ばかりだよな目覚めてるの、アイツ、メルリア人だろう?」
「そう言えばそうだな」
「他のギルドのメンバーは会ってないですね」
「夏椰の所もメンバーは誰一人いないよな」
「秋枝ちゃん所や春樹さん所もマキオさんも居ないみたいだしな」
「マキオさんの迷宮ってどこだっけ?」
「本来なら王都とウィステリアの間に合ったはず」
「次元移動で変わった可能性はあるな」
そんな話をしている仲間をよそに雪華は簡単に言ってのけた「マキオさんの迷宮はウィステリア内にある」とそれを聞いて驚いた面々が雪華をみる。
「はぁ??」
「マジで?」
「えぇ、マキオさんてリアルでは中央図書館の司書をしていたのよ。確か名前は……あぁそう、中崎真尚さん、私が子供の頃に通っていたあの図書館ね、当時はまだ一般司書さんだったんだけど、私が初等科を卒業する頃に司書長さんに昇進したんだって。それで迷宮は図書館にするって聞いた時には驚いたけど、面白そうだったから迷宮づくりに手を貸したってわけ」
「手伝ったの?」
「うん、ピートと一緒にね」
「アイツとか……」
「図書館の本を全部データ化してゲームで図書館を作るのが夢って言ってたから、ピートも自国や他国の本を出来るだけデータ化して協力してたわよ」
「つまり、あれか? その図書館迷宮にいけば300年前の本が読めるって事か?」
「うん、そういう事になるわね、専門書なんかもデータ化していたわね」
その話を聞いた3人は今の時代の人がそれを読むのは不味いのでは?と話していた。確かにそうである、生活環境が全く違うからだ、それに……文明がおかしくなりそうだ。
「大丈夫でしょう、だいたい読めないわよ」
「……読めないって、どうして」
「本のレベルによって、魔物のレベルも変わるし、言語系の本は秘匿扱いになっているんじゃないかなぁ、たぶん……」
「たぶんって何で?……」
「何となくだけど、ここ文明がかわっちゃうでしょ? 恐らくピートが何かしてるはず。アイツそういう所抜け目ないからねぇ」
ピートのこういう所は雪華にも似ている所がある、世界を変えるとか文明が変わるとか、いつもはどうでも言いような事を言ってるし、実際に破壊することもゲームではよくあった。
しかし何も考えていないわけではないのも知っている。それに今回の次元移動に関して、何故か雪華はピートを探して締め上げると言い続けている、この次元移動に何らかの関連があるのかもしれないと思ったのだ。
「確か読みたい本があれば魔物を倒すだったな、レベルって……」
「あそこのレベルは天井950だけど」
「…………」
「……この世界の冒険者は絶対にクリアできないレベルだな」
「あぁ、そうだな」
「無理ゲーだ」
「とにかく図書館迷宮にいく前にまず、王都にある動物園を閉めるのが先よ!」
「……動物園かぁ~~~」
「あれは閉めないと不味いよな」
「だな、危険きわまりない動物園……だしなぁ」
「一応一般人は入れないんだろう?」
「迷宮は地下だからね、とは言え地下は見境のない魔物だらけだから……入った瞬間に襲ってくるし、今の冒険者は一発で死ぬわ」
「だな……」
元々猛禽系等の飼育係を目指して動物園勤務をしていたが、家庭の事情で退職し軍人になった天神将メンバーでスキルマスターNo.3の迷宮管理者である。
軍人になったためゲームでは魔物召喚を目指し召喚士になったストラン人である。それもあり迷宮にはありとあらゆる猛禽・猛獣を含めた魔物が生息し、自身が召喚した魔物も居たのだ。
それを自由に徘徊させるというとんでもない迷宮となった。
一応スキルマスターと守護者には手を出さない様にはなっているらしいが、現状どうなっているのやら不明である。
「無事に行けるんだろうな?」
「まぁ一応レイモンド国王が手を回してくれるらしいからね、信じるしかないわよ」
「取りあえず下見をしてからにしないか?」
「だな、いくら国王の命令だからってウィステリアの者を簡単には入れないだろう」
そんな話をしている所に、ロドリアが部屋をノックして入ってくる。
「皆様、そろそろ出発したいのですが、如何でしょうか?」
「あぁ、済みませんね、長い間とどめてしまって」
「いえぇ……」
「取りあえず尾行に気をつけながら王都に向かいましょう。今から出発していつぐらいに到着するの?」
「ここからは半月くらいですね」
「そんなにかかるの??」
「ベルフィント領もウィステリア領程ではありませんが広いのですよ」
「……なるほど……」
取りあえず自分たちのせいで商隊の予定を狂わせてしまったのは事実なので、ここは素直にロドリアの言うことを聞いておく。
稚拙な文章をお読みになって頂きありがとう御座います。
ご感想に対する返信返しは超苦手なので、出来ないことが多いかもしれませんが、長い目で見ていただけると幸いです。