22話 国王との極秘の謁見
※何度か読み返し、色々話がおかしくなっている所や誤字・脱字は不定期に修正・加筆をしております。(更新日が多々変更あり)
手紙を受け取った翌日の夜21時、指定された場所に来ていた4人は周りを見回していた。誰か来る気配を探っていたのだ。
4人が来る決断をしたのは、当然手紙の内容もだがその書き方である。どう考えてもこの国の人間が、それも国王が書く感じでは無いからだ。
「どう思う雪華?」
「ん~~私たちと同じかもって事?」
「あぁ」
「じゃ誰だろう?」
「魔素耐性がある神崎家の人間と神崎領の人間なら解るけど……、そうじゃない場合ってあるのか?」
「心当たりはあるだろう?」
「ピートか……」
「あぁ~っとピートは別物だと思った方が良いわね、あれはちょっと問題な奴だから」
「問題って……」
「じゃ誰?」
「……この世界を次元移動させる原因になった奴」
「えっ、そんな奴いた?」
「私たちがいた前世界じゃないわよ、元々ここにいた奴」
「……って事は、あいつか!」
「そうマのつくアイツ」
そんな事を話していた時、人の気配を感知した4人は気配を探った、すると男が一人姿を現した、事前にロドリアさんから聞いていたラントという男、雪華はロドリアの記憶を探って顔を確認していた、その本人が目の前にいる。
「ウィステリア領主、ご一行様ですね」
「誰だ?」
「私はある方の使いで皆様をお迎えに上がりましたラントと申します」
「お前がラント……手紙を持ってきた奴か」
「作用でございます」
「でぇ俺たちをどこに連れて行く」
「どうぞ、こちらでございます」
男黒ずくめでの細身ではあるがレベル180の力量があり騎士の称号を持っていた。隠密スキルも持っている様だが、スキルマスター相手には通用しなかった。
森から少し離れた所に二階建ての小屋があった、案内されたのはその小屋だったが、小屋と言うには少し大きめである。
「こちらでございます」
「ベルフィント領主の屋敷と手紙にはあった筈だが?」
「はい、こちらもベルフィント領主の所有物です、詳しいことは存じません、ただこちらにお連れするよう命じられております。どうか中でお待ち下さい」
男はそういうとドアを開け中に4人を通す、そして一礼をして出て行った。鍵をかけられた様子はない。そして中に入れば一人の男が立っていた、身なりは上級貴族の様な出で立ちである。
「ようこそお越しくださいましたウィステリア領主様とスキルマスターの方々、私はこのベルフィント領の領主マルク・ベルフィントと申します、爵位は伯爵です。お見知りおきを」
「その証拠は?」
「証拠ですか?」
「確か領主は国王から佩玉を授けられるんだったな?」
「あぁ~そう言えば、どの時代の王に仕えたか解るものだったっけ?」
雪華が思い出したように言った、そうこのゲームの貴族はどの国のどの時代の国王に仕えたか解るようになっていた。というかそういうシナリオにしていたはずだったが、正式版になってからははずされてしまった設定の一つだった。
「これは失礼をした、ではお見せいたします、これが私の佩玉です」
4人の中で現国王の印を知っているのは夏椰だけである。
一度拝謁しているため顔も知っている。その国王の印は円形に形作られた双頭の鷲である。そしてマルク・ベルフィント伯爵は自領の紋章である紅葉がその円形の双頭の鷲の中に描かれている。
「姉貴、間違いない」
「そう」
「間違いないのか?」
「えぇ、今の国王の印にベルフィント領の紅葉の印です」
「では確認も済んだことですし、こちらにご案内いたします、あなた方に会いたいと望んでおられるお方に」
「それ、極秘で会わなければならなかったんですか?」
「はい、詳しくはお会いになってからご本人にお聞き下さい」
そう言われて、4人は溜息をつきながら、でも少し警戒しながら後に続いて二階に上がっていった。だいたい何で小屋なんだと思いながらついて行く、そして伯爵は二階に上がると奥部屋のドアをノックした。中から入れという声がした。その声は割と若い者の声に聞こえた。
中からドアが開き、伯爵を先頭に4人は中に入る、すると正面のイスに座っている男がいた、まだ若い男性30代になったばかりくらいだろうか、国王というより一般人を装っている感じである。
「ご苦労だったマルク」
相手に労われて伯爵は一礼をした。そして国王の側仕えは4人に対して目の前にいる方が誰かを説明し礼を尽くせと言ってきた。他の3人はともかく雪華は素直に頭を下げることはしない。どうも胡散臭いと思ったからだ。
「ウィステリア領主、国王陛下に対して無礼ではないか」
「……悪いけど、私はまだ信じられないもので……」
「何だと!」
「ちょっと姉貴!、この方は確かに今の国王陛下だよ」
弟が申し訳なさそうに姉を注意するが、雪華は気にした風ではなかった。そもそも雪華は気に入らないのだ。
「いいのだ、ウィステリア領主に失礼が合ってはならん、お前達は下がっていなさい」
「しかし……陛下あまりにも無礼が過ぎます」
「大丈夫だから心配ない、マルクもいる」
「……承知いたしました」
ベルフィント伯爵以外の側仕え達が全員出て行ったのを確認して、国王は改めて自己紹介をした。
「申し訳なかったね、改めて自己紹介をしよう、私がこのフェスリアナ王国の国王レイモンドだ。故あって急に呼び出しまた、極秘になどと失礼なことを言ってしまったことを重ねて謝罪する」
そう言って頭を下げた国王に対して、皆は戸惑って顔をお上げ下さい等と言っていた。ただ雪華だけはその姿を見ながら溜息をついていた。
「……一国の王が簡単に平民に対して頭を下げるとは……、それに私は気に入らないんですがね、今回の一見を含めてすべて」
「ウィステリア侯爵、陛下に対してその物言いはあまりにも失礼ではありませんか?それにあなたは平民ではない」
「……失礼? 失礼なのはあなた方ではないのですか? 我が領内にスパイを入れていますよね、もちろんあなた方だけではなく他領の貴族達もですが」
雪華はハッキリと王や伯爵に向かって苦言を呈していた、それを見た弟や同級生は何とか止めようとするのだが、いっこうに気にした風はなく話し続ける。
ただ廉はこういう雪華を一度見たことあると何かを思い出そうとしていた。
「……そうだな、確かにウィステリア領に探りを入れるよう密偵に命じたのは、この私だ。だが必要だった」
「必要だった?」
「そう、必要だったのだよウィステリア侯爵、彼ら他領の貴族達よりも早くあなたに会って話をしなければならなかった、そのために密偵を差し向けて、いつあなたが領を出るのかを探らせていた。領内では他領の者が目を光らせているからな」
「ここでは大丈夫だと? こちらでも他領の者達から襲撃を受けていますが」
「あぁだから、ベルフィント伯爵に頼んだのだ、ブランツ男爵が動いていたのを知っていたからな、彼はハルシェット辺境泊の手の者だ、君達が殺さずに撃退したことは報告を受けている」
「ハルシェット辺境泊……」
「そうだこのベルフィント領の隣にある領土で、ウィステリア領やベルフィント領よりは、そう広くもない領地だから気に入らないのだろう」
「……なるほど貴族どうしてのイザコザですか、そんなものに巻き込まれたくないんですけどねぇ~」
「ふむ、了解した、考慮しよう」
王はそう言うと、改めて今回会わなければならなかった理由を話し始めた。
「今回、どの領主よりも先に会わなければならなかった理由は、これから話す祖父から聞いた話を、聞いてもらい確認を取りたかったからだ」
「……確認ですか?」
「そうだ、正直他者が聞けば荒唐無稽なと言われるような話だ」
「……荒唐無稽ですか」
「そうだ、だが……まず話をする前に一つ頼みたいことがある、良いかな?」
「内容によりますが何です?」
「さっきも言ったとおり、荒唐無稽で他人に聞かれると不味い話もあるので、出来れば領主の力で結界を張っていただけると助かるのだが、頼めるかな?」
「……伯爵は良いので?」
「彼に全てを知っている、そして信じてくれた」
「少し聞きたいんですが……」
「何だね?」
「私たちがスキルマスターである事を何故知っているんです?」
「冒険者カードにランクで確認した」
「って事は検問時にランクが見える者がいて、報告したって所ですか?」
「そのつもりだったのだが、確認させた者は一応Aランクの冒険者資格を持っているが、4人に全てのランクはおろかレベルすら見えなかったと報告があった」
「でしょうね、あのAランク冒険者とはいえ、今のランクでしょうから、そんな者に私たちのランクが見えるはずがない」
「ふぬ、そうらしいなAランクでも高位レベルでなければ見えないと聞いた、そうなれば高位のAランク以上かSランク以上の冒険者という事になる。だから冒険者ギルドで現状のスキルマスターはいるのか確かめた、その結果、現在7人のスキルマスターが存在しているのが解った」
「7人!!」
国王が7人いると言った所で雪華以外の3人が声を上げた。自分たちが知っているのは6人である。自分たち4人とウィステリアで残っている2人だ、では後1人それは誰か、だが雪華だけが目を細めながら怒りを見せた。
「あっ、姉貴?」
「あぁ~~気にしなくて言いわよ、7人目は私が探し出して締め上げるから」
「……って事は奴か?」
「奴ってアイツかぁ~~」
「やっぱり居たんだ」
4人が言い合っている話を聞きながら、王と伯爵は顔を見合わせている。そして再度結界を張ってくれるかと聞いてきた為、雪華は王と伯爵の顔をじっと見つめ、溜息混じりに承知したと言い、レベルを上げた遮断結界を張った。
稚拙な文章をお読みになって頂きありがとう御座います。
ご感想に対する返信返しは超苦手なので、出来ないことが多いかもしれませんが、長い目で見ていただけると幸いです。