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19話 最初の襲撃

 ベルフィント領チヨリ村を夕刻出発した、ロドリア商隊は前衛に雪華と夏椰、後衛に霧島廉と浅井賢吾を配置し中央の商隊を守る形で移動していた。これも雪華の采配である。

 おそらくブランツ男爵の手の者が尾行しているという情報をロドリアに話した為、受け入れる形となったのだが、彼らの目的はただ尾行するだけで探りを入れているだけなら問題ない、しかし襲撃してくるとなると男爵家はウィステリア領を敵に回すことになる。


「姉貴、襲撃すると思うか?」

「絶対にないとは言えないけど、用心に越したことはないでしょ」

「そうだけど……」

「何? 何か言いたそうだけど」

「なんつぅか、こっちの連中って俺たちを知らないだろう、勝てると思ってるのかなぁって思ってさ」

「そうねぇ、知らないから勝てると思っている事もあり得る」

「その男爵ってベルフィント領主の手先かな?」

「……手先じゃないことを願いたわね、でもまぁロドリアさんが言ってた事は真実だと思うのよね」

「それってウィステリア領が警戒されているのは事実って事?」

「そう、歴史上の事を考えても妥当だと思う」

「……姉貴のシナリオなんだけどなぁ~」

「そうなんだけど、初期シナリオだからねぇ~その後なんて知らないわよ」


 姉弟の会話はロドリア達には聞こえていなかった、また同じ様な話を後衛の二人もしていたが、これも商隊の者には聞こえない程度の会話だった為、誰にも話は聞かれていなかった。


 チヨリ村をでてからかなりの時間が経っていた。おそらく宵の口辺りか、場合によってはそろそろ野営の準備に取りかからねばならない。そのため雪華はロドリアに領都までの距離を聞いた。その結果まだ半分は来ていないとの事。


「そうですか、まだ半分は来ていませんか……、ならば早朝の出立を考えて、そろそろ野営の準備をした方がいいですね」

「この辺りはまだ危ないと思います、出来ればもう少し先に行けば水場があります」

「なるほど、水場は大事よね、ではもう少し先を急ぎましょう」


 雪華がそう言うと、夏椰が後衛をしている二人に報告するために下がる、戻ってきたら少しスピードを上げて目的地まで走らせた。


 1時間ほど走らせた場所に湖が出てきた、そこで野営の準備を始める、当然雪華の結界を張り、索敵魔法を展開させている。

 魔物が近づいたら感知できるようにと罠も仕掛けていた。ロドリア商隊にとっては初めての経験の野営である、いや野営は何度か経験があるが、こんな見晴らしがよく魔物に襲われやすそうな場所での野営が初めてなのだ。いつもは岩陰や安全な洞窟等を利用してたからである。


「すてきな場所ね」

「水も綺麗だな」


 霧島廉が魔法で水質を鑑定していたが、魔物がいる気配も確認していた。それを雪華に話すと釣っておかずにしようか等と言いだした。賛成したものと反対した者がでたのは当然である。

 どの程度の強さか解らないこと、食べられるかどうかも不明である等の理由である。

 軽く軽食をとってから就寝となった。見張りはスキルマスターが交代で行うことを申し出ていた。最初は雪華と兼吾である。


「なぁ~雪華」

「何?」

「さっき簾とも話していたんだけど、男爵ってベルフィント領主の手下かな?」

「あぁ~~それ夏椰とも話してたわ、手下じゃないと良いなぁ~程度で思ってるんだけどね、どうして?」

「いや、同意見だなと思って、……それとさ、やっぱり尾行されてる」

「……そう、一人……じゃ無いわよね」

「あぁ数名いるな、でも全部が仲間って訳でもなさそうな感じだな」

「なるほど………、尾行者は複数系統って事か」

「どちらかが他領系統でどちらかが王室って事か?」

「うん、そうなるわね」


 雪華は溜息をつきながら目の前の焚き火に枝を放り込んだ、炎がパチパチと音を立てながら少しボッと火の勢いが増す、そして兼吾も同じように枝を放り込んだ。


「……でた所勝負かなぁ~」

「でた所勝負って……」

「おそらく王家側は他領の者に気がついていると思う、だから迂闊に近づけないんじゃないかな」

「どうして?」

「貴族からの召喚状は表向きの封書だったけど、中身は内密に極秘裏にって書かれていた」

「えっ、マジ?」

「うん、だから公に会うことはしないって意味だと思う、となれば今の状況だと、私と接触してこない、いや出来ないって事だね」

「……って事は」

「そう他領系統が襲ってくる可能性がある、そして襲ってきた事を襲われたと言いふらしてウィステリアに攻める口実を作るか……まっそんな所でしょう」

「ウィステリア領内は大丈夫か?」

「一応月宮達には現状報告もしているし、出領は認めるが入領は認めないよう通達してあるわよ、どんな理由であれ今は入領を許さないようにってね、私がいない間に領内で何かされても困るからね」


 雪華の言葉を聞いて兼吾は、少しホッとしたウィステリア領内には自分の迷宮もあるし、何よりも前世界のロストアイテムが割と残っている事に気づいていたのだ、それは神崎家関係者は全員知っている事だ。また領内の住民もロストアイテムが眠っている事だけは知っているが、どれがそれなのかまでは知らない、知っていても扱えないだろう、扱えるのはスキルマスターと神崎家の人間だけである。


「たぶんね、ロストアイテムだけど……」

「えっ?」

「全世界に多少有ると思う」

「えぇぇぇ~~」


 雪華の言葉で少し声を荒げた兼吾の口を塞いだ雪華は、苦笑いして言ったのだ。まだみんな眠っているからだ。


「転生ではなくて次元移動だからね、大地そのものはたぶんだけどあの世界のものだと思う」

「なんでそう思う?」

「私の島、覚えている?」

「榊島だろう?」

「そう、あそこ最後まで噴火していたでしょ、私索敵スキルで火口内を覗いたり、ドローンを飛ばしたりしていたんだよ。でぇ見つけたんだ。魔核を」

「魔核?」

「そう、魔核」

「何だそれ?」

「魔核は、そうね簡単に言えば魔素を生み出すもの……って言えば解りやすいかな」

「魔素を生み出す?」

「そう、あの末期で榊島の魔素量が膨大で増えていたの、当然それに呼応するように私の魔力も増えちゃった」

「……マジでか?」

「うんマジです、だから私も当時首都圏と神崎領を守るための結界を張ることが出来たんだけどね、あんなの魔力が増えてなければ無理だっての」

「じゃ首都圏も残っている可能性はあるのか?」

「どうかなぁ~神崎領は元々陰陽師達が活動しなければならない程度の怨霊やら妖怪やらが多かったから、魔素耐性も有ったのかもしれないし、とはいえ首都圏はそれ無いでしょ」

「でも首都圏と言えば皇室があるじゃん、あそこって何かの結界で守られてるんじゃないのか?」

「ん~~多少の結界は有ったはずだけどね、でもあの次元移動で弾き飛ばされた可能性が高いわ、神崎領の場合は榊島からの魔素がかなりえ影響していたから、ロストアイテムって形で残ったのかもしれないけどね、ただ……」

「ただ?」

「富士山が有るのがよくわからん!」

「あぁ~富士山ねぇ、確かにそのままあったな、しかもウィステリア領にすっぽり入っている樹海付きで……何でだ?おまえの話だと次元移動で吹き飛ばされているはずじゃ無いのか?」

「うん、私もそう思っていたんだけどねぇ~、それだけはわからん」


 そんな話を二人ではなしていた所に、見張りの交代だと言って夏椰と霧島廉が姿を現した、時間にして夜中の1時頃である。出発は4時過ぎだから三時間ほどの仮眠となる。


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


 雪華達が眠っている間だの見張りは夏椰と霧島廉が担当していた。丁度時間も4時まえである。そんな所に危険を感知した。


「先輩……」

「あぁ……数名いるな」

「姉貴の結界があるから怪我はしないと思いますが、用心して下さい」

「まっ、大丈夫だろう」


 警戒をした二人は周囲を伺っていた、すると数名の男が姿を表して襲撃してきた、だが結界に守られているため攻撃は当たらない。それを知った襲撃者は魔法を駆使して攻撃をしてきた。

 がだ反撃魔法が付与されていたようで跳ね返され、魔法を放ったものに自分の魔法が返ってきた。それを見ていた他の襲撃者達は「何だ今のは」とか何とか言っていた。


「あぁ~やっぱり姉貴付与魔法も付けていたか」

「相手には申し訳ないね、夏椰みんなを起こしてきてくれ」

「了解です」


 夏椰は余裕を見せながらみんなをお越しに行った。当然雪華は直ぐに起きて簾の近くに来ていた。


「簾……」

「おはよ、姿を見せたよ尾行者達」

「そうだねぇ~」

「でぇどうする?」

「どうするって、捕まえるに決まってるじゃない」


 その目は笑っていない、ただ襲撃者の口を割らせて後はどうするのか、そっちを考えると少々怖いと思ったのは嘘ではない。


 雪華はその場から拘束のための魔法を繰り出し、全員魔法の縄で縛られた。人数にして10名ほどだった。そのうち魔法が使えるのは3名程いた。

 雪華はロドリアさんに出発準備を指示してから、スキルマスター全員で襲撃者の前に立った。


「でぇ誰の命令?」

「言うわけ無いだろう!!」

「なるほど、そうだよなぁ、雇い主の事は言えないか」

「だいたい俺たち四人を相手にレベルの低い魔法使いをあてるってどう言うことだよ」

「バカにしてんの?」


 兼吾が言った様に相手のレベルが低すぎる、冒険者レベルも低ければ魔法使いのレベルも低い。


「俺たちはCランク冒険者だ」

「Cランクでレベル50未満だろう」

「300年前なら、まだ予備校生ランクだぜ」

「もう、そんなレベルやランクなんてどうでも良いわよ、弱いのは間違いないんだから、ねぇ~あんた達はいったい誰の差し金?」

「だから言うわけ無いって言っているだろう!」

「ふぅ~ん、そうでもたぶんブランツ男爵の差し金だと思っているんだけど」

「なっ!!」

「ちっ、違う!!」


 雪華の一言で全員が黙り込んだ、そして否定する。これで白状したものと同じだった。


「どうする?」

「このまま放置しましょう、そこの木に縛り付けてね」

「ちょ、ちょっと待て、俺たちを木に縛り付けて置いていくのか?」

「それだけはやめてくれ! この辺りの魔物に襲われちまう」

「……じゃそのまま襲われればいいわ、本当ならこの場で殺したってかまわないんだけど……」


 雪華がとんでもない事を言いだした、というか人殺しをする事に戸惑いを見せていない。それに対して他の三人は一瞬息をのむ。ただ夏椰だけはそんな、容赦のない性格を持ち合わせている姉であることを知っている。


「姉貴、こんな雑魚殺しても意味ないぞ」

「おい夏椰」

「先輩、姉貴はね、子供の頃から命を狙われて生きてきたんです、殺すことに対して躊躇はしませんよ」


 夏椰の言葉に、二人の先輩は驚きを見せていた。恐らく雪華の本性を知らないからである、知っているのは今は亡き幼なじみの二人、和宮聡と穂高篤の二人だけである。


「そうね、私たちが去ってから1時間半したら縄を解けるように制限をかけましょう」

「何だその中途半端な時間は!」

「追いつかれないために決まっているでしょう、それと雇い主に言いなさい、私とその大事なもの達に手を出したら潰してやるから覚悟しておくようにとね」

「そんな脅し聞くものか!!」

「あぁ~そうそう、さっきから魔法使いが何度か私たちに攻撃しようとしているようだけど無駄だから、その縄、魔法封じもかねているからね。それともう一つ雇い主に言っておきなさい。忠告を聞かなければ支配領域を消し炭にしてやるからっと伝えなさいね、忘れずに!」


雪華がそういうと襲撃者達は絶句した、そしてロドリア商隊を彼らの前から姿を消した。


稚拙な文章をお読みになって頂きありがとう御座います。


ご感想に対する返信返しは超苦手なので、出来ないことが多いかもしれませんが、長い目で見ていただけると幸いです。

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