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18話 尾行と出発

 翌日、宿屋の一階で全員が顔を付き合わせて朝食を摂っていた。よく眠れたか、この宿屋の食事は美味しい。この後買い付けに出かけるとか世間話に終始した。


「ロドリアさん一人で買い付けに行くんですか?」

「大丈夫ですか、パロル隊長もいないし」

「私がついて行きましょうか」

「ありがとうございます、でも大丈夫です。ここチヨリ村はウィステリア領に一番近いので多少なら問題なく取引が出来ますので」

「そう、なら良いけど、もし問題があるなら遠慮なく言ってくださいね」

「そうですよ、俺たちも協力するからさ」

「はい、何か有った時はよろしくお願いします」


 そんな話をした後、食後はスキルマスターだけが雪華の部屋に集まって今後の話をしていた。


「男爵が探りを入れている?」

「そう、関所を通って暫くしたら尾行されているのに気づいたんだけど、あんたたちは気づかなかったの?」

「俺は気づいていた」

「俺も」

「えっ、先輩たちも気づいてた?」


 そう言ったのは天神将メンバーだけだった、情報が得意な夏椰は気づかなかったのだ。


「気づいてなかったのか?」

「てっきり気づいていると思っていたんだが」

「う~~ん、感知スキルは持っていますけど……」

「村の情報に意識を集中させてたって所かな、夏椰の場合」

「はは……さすが姉貴」


 姉である雪華は弟の性格をよく知っている、情報操作や情報集めは好きな子で、子供の頃からそういう亊はよくあり、立ち入り禁止の蔵に入ろうとして、よく祖父と雪華に叱られていたのだ。    

 そのため剣道の腕も上達するにはどうすればいいか等も自分で、その手の文献をよく読んでいたのを雪華は見ていた。


「でぇ、姉貴はその尾行どうするんだ?」

「そうねぇ、危険がなければ放置でも良いけど……」

「危険があれば?」

「そんなの分かり切ってるでしょ!」


 その言葉を聞いて盛大な溜息をついたのは天神将メンバーである。当然雪華に手を出した相手は全て返り討ちに合っている。


「殺すなよ、ここはゲームじゃないんだから」

「そうそう、それに蘇生魔法なんて禁忌! ロストマジックだからな、絶対に使うな!」

「解ってるわよ、殺さなきゃいいだけでしょ」

「……ってことは殺さず痛めつけるのか……姉貴ってやっぱりそう言う性格だよな、家にいる時の方が猫被ってねぇ?」

「被ってません、基本的には」


 嘘だっと全員が心の中で思っていた、ただ夏椰だけは半分だけ嘘ではないことを知っている、それは祖父母と父、そして夏椰以外の家族が雪華にしたことを考えると、本来の性格を隠すしかなかったからだ。


「それはそうと、今回王都にいく目的は観光なんだから、尾行と攻撃に注意をしながら楽しみたいんだけど」

「そうだな、しかしこの村は正直何もない」

「まぁ~途中の村だからな、こっちの冒険者レベルじゃ大したことはないし、俺たちの敵ですらないだろう、それより俺が気になるのはベルフィント領主のことなんだけど」

「どうしてですか霧島先輩」

「ベルフィント領の隣はウィステリア領だろ、ウィステリアの領主が来てるからな、接触してくる可能性もあるだろう」

「そうだな、領都に入れば接触してくる可能性はあるだろう」

「政治的な関係でってことですか?」

「そうねぇ、それは私の仕事よね、仕方ないわ」

「雪華、おまえ喧嘩するなよ」

「相手次第よ! 私に喧嘩を売った時点で泣けばいいわよ」

「おまぇ~~」

「当然よ、私はウィステリア領を守るために義務は果たすわよ。当然私の関係者に手を出した時もね。うちは独立自治を許されているんだから」


 確かに雪華の言うとおりである、フェスリアナ王国の中に多数の領の中でもウィステリア領だけは、独立自治が認められており、領内に関しては治外法権である。

 

 他の領は王国の指示の元に統治されている。いわば王都から派遣される軍や騎士がいる。反面独立自治が認められているウィステリア領に王国の軍関係者などはいない。

 ウィステリア家に忠誠を誓ったようなとは言わないが、領軍が存在していた。そのためウィステリア領に出入りするのは容易ではないのだ。

 また、人族意外の種族も受け入れている唯一の領土である。それもあり、世間一般には「蛮族領」とか言われており、近隣領の領主たちは心穏やかではないのは言うまでもない。

 理由は何故ウィステリア領だけに独立自治を許されているか知らないからである。


「それにしても何で認められてるんだ? この国の統治形態って前世界と似てるだろう、領主は貴族だけど都道府県知事って感じだし、領主家の私軍は認められてはいるが人数制限がかけられていて、あくまでも屋敷を中心とした警護で、それ以外は国から派遣されている軍や騎士たちがいる。ゲームでは各領はそれぞれの貴族が領主として領土を守っている、いわば藩政って感じだったのに」

「だよな、ウィステリア領だけがゲーム時代の藩政って感じの完全独立自治」

「それはこっちが聞きたいわ、ただ元のシナリオでは元々人族も多種族もある程度理解し合って生活しているって設定をして、人族から魔王が誕生し、人族は嫌われ者になる、みたいなシナリオを書いたはずなのよね、でもβ版から正式版になって、かなりいじられシナリオ自体が変わってしまった事もあって、私はゲームで自分の領土に多種族も受け入れて仲良くできる様にと思って統治していたけど独立自治じゃ無かったわね、実際のゲームでは始めから種族を選ぶことが出来ていたし、問題なく仲良く共存していたのよね。まぁ、爵位に関してはクエストで領土を増やす度に昇格してしまったのは意味不明だったけど、でもこっちではもろ最初のシナリオ通りになっちゃってるし、何でウィステリア領だけがゲームと似ていて独立自治が認められてるのか不思議なのよねぇ~わからん」


 確かに雪華の言うとおりである、領土拡大の為の戦争クエストで雪華は少しずつ領土を広げていたが、この世界ほどの領土ではなかった。しかも爵位は上がっても冒険者としてクエストをこなしていたし、独立自治では無かったのも事実だった。


「とにかく領都に近づくにつれて警戒度を上げた方がいいな」

「だな、雪華と夏椰は領主家だし、雪華なんて当主だしな」

「尾行されていたなら、バレている可能性がたかいなぁ~」


 スキルマスターの男三人はそれぞれの考えを言って、雪華もそれに同意していた。


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


 昼食後、雪華達四人は散歩がてらに防具や等を見て回っていた、良い物があれば自己鑑定して購入するか決める等も含め、このベルフィント領の物価などを調べるのに丁度良かったからだ。そして一通り見て回った後に宿屋に戻ると、ロドリアが待っていた。


「外出をされていると伺って、お戻りになるのを待っておりました」

「何かあったの?」

「もしかして取り引きして貰えなかったんですか?」

「いえ、それは大丈夫でした」

「じゃ、何かあったんですか?」

「どうかしたんですか?」

「必要物資の一つが本日夕方にならなければ到着しないと報告が有りまして」

「って事は……」

「はい、もう一泊することになりました、ただ明日早朝に出発となります」

「明日の早朝か」

「この村からベルフィント領の領都までは丸一日の行程になりますから、早朝に出発し何もなければ夜中には領都に到着します」

「夜中について領都に入れるの?」

「場合によっては入れると思いますが……」


 話を聞いた四人は顔を見合わせて少し考える。そして雪華をみた。雪華は彼らの顔を見てから、宿屋の外にでて領都の方角に目を細めて見据えている。


『残滓の見通すもの、この辺に監視している者はいる?』

『はい、複数名確認しました』

『攻撃してくる気配は?』

『今の所は有りません』

「ロドリアさんその物資が搬入できるのは夕方と言っていましたね」

「はい」

「ならば搬入後直ぐに出発しましょう」

「えっ? しかし、そうなれば野宿になりかねないですが……」

「かまわないわ、明日の早朝に出発しても夜中に到着して領都に入れないならば、その近くで野宿という事になるでしょ、どっちにしても野宿なら、今日夕方出発しても同じ事よ」


 雪華の意見に他のスキルマスターも同意していることから、ロドリアはその意見を受け入れ、隊員に指示を出す。そして出発までに夕食をすませておくよう通達を出した。


稚拙な文章をお読みになって頂きありがとう御座います。


ご感想に対する返信返しは超苦手なので、出来ないことが多いかもしれませんが、長い目で見ていただけると幸いです。

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