16話 超越者迷宮、スポーツジム
森に入った浅井賢吾と霧島廉と雪華の三人は、ワラワラと出てくるゾンビやアンデット系の魔物を次々となぎ祓い、浄化魔法で消してしまったりと、まぁ~簡単に倒していった。
15分程歩いた先に少し開けた所にでると、何とも場違いな建物が出てきた。
「おい、これか?」
「入り口のようだな」
「あれ? 一回来たことがあるでしょう? 場違いな外見の入り口を」
三人が目にしているのは前の世界にあったゲームセンターの入り口である。大きな看板に「スポーツゲームセンター」とかかれている。迷宮の正式名称は確か「スポーツジム」の筈なのに、ゲームセンターの入り口と看板である。
「まぁ確かに来たことはあるけど、来る度に突っ込みを入れたくなるような看板だな」
「マリンって日本人だったよな」
「そう日本の女性よ」
「戻っていたりして」
「守護者に聞かないと、解らないわね」
三人三様の思いを吐き出すと、管理者だけが再奥に入れる呪文を口にした。『始祖を守りし神々よ、スポーツジムの扉を開ける事を願い賜う!』三人で唱和しながら唱えると、迷宮債奥に出た。
そこは周りが暗く、何やら荒れた風になっている。部屋の構造は各階のゲームを監視してトーナメント表が管理しやすいようなコンピューター機器が並んだ管制室だった。
メインコンピューターらしきものが部屋の中央にあり、そこにあるボタンに魔力を注ぐと守護者が現れた、中央の画面に出てきたのはイケメンキャラの顔をしたAIが映し出された。
魔力が注がれた瞬間に室内は自動的に修復され綺麗になっていった。
『ようこそお越し下さいました、そして魔力を注いで下さって、とても感謝しております、この迷宮の管理者はスキルマスターNo.10のマリン様です、あなた方のお名前をお教え願えますでしょうか?』
「……私たちはマリンと同じ天神将のメンバー、スキルマスターNo.2のレティシアよ」
「同じくスキルマスターNo.6のロインだ」
「同じくスキルマスターNo.7のノアだよ」
『マスターと同じく天神将の方々でしたか、失礼しました。……ですがお名前が違うような気がいたします』
イケメンAIはあっさり言った、名前が違うと、そして今の名前とここに来るまでの話を簡単にした。
『了解致しました、大変失礼なことを申し上げました』
「解ってくれたら、それで良いわよ。それよりもちょっと聞きたいことがあるんだけど」
『はい、何でしょう』
「あなたここの守護者のAIよね?」
『はい、そうです』
「運営がいない状態で、あなたのようなAIが起動できるの?」
『その辺は私では解りかねますが、魔素を注いでいただくことで起動が可能です、また魔素がなくなれば自動的にシャットダウン致します』
イケメンAI守護者の言葉を聞いた天神将メンバー達はどういうことだと頭を抱えた、いったい何をどうしたらそういうことになるのか、解体したい気分である。
「じゃもう一つ、この迷宮に近づいたり入り込んだ人はいる?」
『何人かはいましたが、クリアせず魔物と戦って死んだものが多数いました、それ以後は誰も来ていません』
「それっていつ頃の話だ?」
『200年ほど前です』
「それ以後は誰もか、まぁ当然だな」
『ゲームのルールを知らない者ばかりでした』
「だろうな……」
「あのね、あなたのマスターはここに来ているの?」
『私のマスターはもうここには来られないと言われました、最後に皆で集まって楽しかったと』
「最後のあの日か……」
それは日本が運営から撤退しゲームが停止する前の日のことである、天神将が無事に全員集まって拠点で会った後、それぞれが自身の迷宮に別れを言ってゲームからログアウトしたのだった。
『それと、スキルマスターNo.1のピート様がお越しになっていました』
「ピート!!!」
「あいつここに来たのか?」
「いつ????」
『最後の日のすぐ後です、マスターがお帰りになった後、我がマスターが戻らなければ迷宮管理者をスキルマスターNo.2の雪華様にお渡しするようにと言い残されております』
「私に?」
『はい、ですので、こちらの鍵をお渡しします、私のマスターになって頂けますか?』
イケメンAI守護者はそう言うと中央画面のボタンの横のスライドカバーが開いて、下からせり上がるようにして迷宮の鍵が出てきた。鍵の持ち手がバレーボールネットになっているもの、これがこの迷宮の印でもある。それをじっと睨みつけていた雪華に、二人の同級生が促す。
「私でいいの?」
『はい、ピート様に次いで限界突破の規格外は雪華様だけですので』
「なるほど、規格外に預ければ安心ってことだな」
「でもピートも規格外だったよな? なのに雪華に預けるのか?」
『理由は私には解りかねますが、そのように指示をしていきました』
「指示って……」
『超越者迷宮のマスターが何らかの事情で管理できなかった場合は、規格外マスターが管理マスターになるようプログラムされております、これは全ての超越者迷宮がそうプログラムされています、従って現在起動している迷宮はそれぞれのマスター自らが起動させたたか、あるいは規格外マスターが起動させたかのどちらかと認識しております』
「……マジか……」
「じゃ、俺らもここで目覚めなければ雪華が管理マスターになるってことか?」
「ピートも対象者だな」
そこまで話を聞いて雪華は溜息を突きながら、出されたスポーツジムの鍵を受け取った、そして更にピートに対して絶対に締め上げてやる、と改めて思ったのである。
「あぁ~ところで、この迷宮の入り口って閉めることは可能?」
『はい、可能ですが、どうして閉めてしまうのでしょうか?』
「今の冒険者のレベルが三桁に達していないからだよ」
「そうそう、お前も200年前に経験して知っているだろう、これ以上の死者は出したくないしな」
「今ね、三桁レベルの冒険者を育てようと思っている所なんだけど、ここの迷宮の場合ゲームのルール事態、というかゲームを知らない人が多すぎるのよ、なので攻略すら出来ない状況って訳、だから安全を期するためにも暫くの間だ閉めておきたいのだけど、かまわないかしら?」
『そういうことでしたら、了承致しました』
「ありがとう、助かるわ」
「これでこの迷宮管理者は雪華になったなった訳だが、魔力不足とか他に何かあったら、俺たちの守護者に連絡をしてくれ、三人の誰かが対応するようにしておくから」
「あぁそうそう、後三人迷宮管理者が戻っているから、それも確認しておいてくれ、1人はここより少し離れた場所に待機して貰っているスキルマスターNo.15と、後二人はウィステリアの防衛に残してきているスキルマスターNo.11と12がいるからさ」
「三人も一応迷宮の起動はしているけどNo.12の初心者迷宮だけは1階だけ解放して、後は閉めて貰っているわ、No.11は完全に閉めてるから、守護者同士の連絡は出来るわよね?」
『はい、起動しているのであれば可能です』
「なら、今後はそちらでよろしくね」
『畏まりましたマイマスター』
スポーツジムのイケメンAI守護者は素直に従った、とりあえずここでの用事は済んだとばかりに立ち去ろうとすると、イケメンAI守護者が声をかけてきた。
『マスター周辺領の貴族達がウィステリア領を警戒しているようです。時々兵などを数名様子をうかがうように、この森の近くにいることがあります』
「兵?」
『はい、いかが致しましょう?』
「そうね、放っておきなさい、もし武力攻撃でもしようものなら、森に誘い込んで魔物の餌にでもされればいいわよ」
「おい、雪華それって……」
「かまわないわよ、私に手を出すってんなら容赦しないわよ」
「っか、守護者にそんな亊できないだろうが」
「あぁ~そうね」
『森に入った時点で命は失うでしょうから、放置ということでよろしいでしょうか?』
「えぇかまわないわ」
『畏まりました』
「じゃ俺たちはこれで帰るけど、何かあったら連絡しろよ」
『はい、皆様もお気をつけて』
そう言うと、三人はそのまま転移で迷宮の外に出た。当然入口の前である。そして来たとき同様、魔物を蹴散らし、倒してドロップ品を回収、売れる魔物も回収して、夏椰達の待っている場所に戻っていった。
稚拙な文章をお読みになって頂きありがとう御座います。
ご感想に対する返信返しは超苦手なので、出来ないことが多いかもしれませんが、長い目で見ていただけると幸いです。