2話 リアルでの会話
バード大学で素粒子や物理を研究している雪華の元に宇宙工学を学んでいる元クラスメートの浅井賢吾が訪ねてきた。休日だというのにオンラインではなくリアルで会っていたのだ。
「雪華、ちょっと良いか?」
「こっちも聞きたいことが合ったからかまわないわよ、何?」
「出来たら場所を変えたい」
真剣にいう宇宙飛行士というあだ名持つ浅井賢吾は、藤華の前期生時代からのクラスメートで「将来の夢は宇宙飛行士になること」と言い続け夢に近づきつつある強者である。そしてゲーム内では「ノア」と名乗り同じギルドメンバーでもある。
雪華は自分が経営しているホテルの一室に案内し、執事の小花衣瑛斗に外に出ておくよう伝え、結界を張った。賢吾は彼女が霊感の強い陰陽師の家系であり実質当主であると言うことを知っている為、何も言わないで様子を見ていた。
「でぇ、どうしたの?」
「……執事さんいいのかよ」
「あれ聞かれちゃまずい話なんじゃないの?」
「あぁ、まぁ、内容を聞いてお前が判断してくれて良いけど」
「そう」
賢吾は大きな溜息をついてどこから話せば良いかと悩みあぐねている。そんな彼を見て雪華の方から切り出した。
「もしかして、自転の擦れが原因?」
賢吾は驚き、何で知っていると言わんばかりの表情で雪華の顔を見ていた。そんな彼に対して雪華も溜息をついて、説明をしていった。
自身の研究分野は素粒子がメインであるが、それ以外にも物理関係には手を出している。個人でデータをとったり色々しており、更に言えば籐華に通っていた頃はSAクラスの全員でブラックホール探しの研究を6年間+αしてきたのだ。
地球の自転が擦れ始めていることや軌道も擦れ始しめていることにも気づいていた。賢吾が来たのはその話であると当たりをつけていたのだ。
「はぁ、そっかやっぱりお前は気づいていたか」
「まだ大きな擦れではないでしょうけど、気象や地殻変動への影響は出始めてるわよね」
「そうなんだ、この間宇宙開発局に行く用事があって研究者と色々話をしていたらそんな話をしてたからさ」
SAクラスは優秀な生徒しか集まっていないクラスだった事もあり宇宙開発局を含め色んな研究所や教授が指導していた事でも有名だった。そんな関係から宇宙開発局の研究者にも知り合いはいるのだ。
「取り敢えず、もう少し様子を見ましょう、それに政治家や財界人は今の内から避難するためにどうするか考えている様だけど、考えるだけ無駄だと思うわよ」
「何で?」
「自転や軌道の擦れだよ、宇宙船をそんな大量には作れないし、宇宙ステーションだって何人住めるのよ、月やら火星やらにも考えているだろうけど、生きていけないわよ、それに太陽の黒点が活発すぎる」
「あぁ~そうだった」
「自然災害対策と食糧保持対策が先よね普通、それでもどれだけの人間が生き残れるかも解らない」
「お前がそう言うって事は……、なんか見た?」
賢吾が怪しげに雪華の顔を見て言った、霊感の強い陰陽師だ、何かの啓示でも合ったのかと。
「見た…というより感じたと言うべきかなぁ、さっき地殻変動が出始めてるって言ったでしょ」
「あぁ」
「実際海底火山の爆発が観測されている、一般的な数ではないわよ、それに連動するように少しずつ休火山が活火山になりつつあるって感じかな、私が所有する榊島だけど噴火収まらないしね、溶岩台地が広くなっている」
「マジか…」
「観測できない程度の噴火の方が今は多いんだけど、そのうち大爆発があちこちで起きるかもね、ただまだ確証がないから誰にも言ってないんだよ、だから宇宙飛行士もまだ内緒にしててよ」
「……わっ、わかった」
雪華はそう言いながら、お茶の入れ直しのため立ち上がり、入れながら話を変えた。
「それより、最近あっちに入ってる?」
「あぁ~たまにな、そういやお前あの戦争クエスト以来イン少ないな」
「あぁ~~こっちの研究が大詰めだったのもあるんだけど、正直あの異名がねえ」
それは一昨年の事珍しくメンバー全員が集合して戦争クエストの話をした時の事だ、結局初めはロロロア帝国は静観していて僑国と連合国が戦争をした。
期間は1週間、しかしこれにロロロア帝国加わり三国戦争となったのだ、その為連合国は同盟国であるフェスリアナ王国に援護要請をしてきた。リアルと違ってゲーム内である、あの9条なんぞは適用外である。
当然プレイヤー達は運営に苦情を出す、本来戦争クエストは二国間でのみ行われるものだからである、従って同盟やら数カ国対一国などというクエストはないはずなのである。多くの苦情はフェスリアナ王国からのものであった。
仕方なくフェスリアナ王は兵士や魔術師などを含めギルドパーティにも出撃要請をした。結果当然のように、「天神将」のパーティにも直接要請が来た。普通冒険者ギルドからの要請なのに、である。
「天神将」は単独パーティでも良いが、他のパーティはいくつかのパーティと一時的に臨時グループとなり戦っていた。
開戦6日目にとうとう三国全てがフェスリアナ王国を標的に無差別攻撃を始めてしまったのだ。これに対応していた冒険者達も必死に攻防を続けていたが三対一では分が悪い、その為天神将パーティが最前線に置かれた。
更に天神将メンバー全員の怒りが頂点に達していき、問答無用でLv6~8程度の魔法攻撃で敵を排除していく。
最終日の7日目にはレティシアが本気で怒り上空高く飛び、魔力を高めるその姿が光り輝きながら最大メガトン級「星落としの魔法 LV9」を三国同時に全てに落とした。星=半径系10キロメートルから16キロメートル程の隕石が無慈悲にも落とされた結果、三国全てが崩壊消し炭になった。
当然そこに居たプレイヤーや味方で余波を受けた者も死に戻りをした。
この大惨事はゲーム開始以来の大事件であった為、運営側が大量の苦情を受け調査の結果バグであると公表し、取り敢えずバージョンアップを含めて国を再生した。それ以来天神将のレティシアに「無慈悲なる魔女」「破壊神」という二つ名がつけられた。
以後リアルで仕事を理由にし、もっぱらオフラインかオンラインで森や自分の領地を中心に遊ぶことが多かったが、そろそろオンラインやせめて仲間に顔を出そうかなぁとも考えていたのだ。
「まぁ~あれは確かに酷かった、ルール無視で三国が一国を集中攻撃だっがからな、天神将の多国籍の五人も怒り心頭でフェスリアナ王国の守護に回って味方をしてくれたし」
「そうなのよね、でぇあれから味方をしてくれた五人は大丈夫なの?」
「ん~まぁ一応ゲーム内でのことって亊で済まされているようだけど、本音の所は裏切り者と思われているようだ」
「そうかぁ~、まぁ今は私たちもメルリアにいるわけだけど……」
「俺たちが天神将のメンバーだってことはわからない筈だから、しらばっくれる意外ないな」
「バレたらどうなるのよ」
「そりゃ、お前三国全てを崩壊させて消し炭にしたのはお前だし……」
「………仕方なかっただけよ、それに一応ゲームだし……、でも……このままにしておけないわね」
「何だ? 何かあったのか?」
雪華は目を細めて何かを考えている様子であり、その表情を見た兼吾は、今回のバグ騒動の裏に何か合ったのかと感じて直接聞いてみた。
「……今回の戦争クエストは、バグ扱いで公表したでしょ」
「お前のその顔は何か隠してるな」
「……はぁ、やっぱり気づかれるか」
「何かあったな、それに一応あのVRMMORPGゲームハイフリーワールドは、お前の会社が子会社化したんだよな、なんか情報持ってんじゃねぇの?」
「えぇそうよ、正式β版公表から各国が協賛したこともあって、内容は殆ど変えられてしまったけれどね、でぇそれが良かったのか悪かったのか、今じゃ悪かったって思った方が良いかもしれないわ」
「どういうことだ?」
ため息をつきながら苦虫をかんだ雪華の顔をみて兼吾は、運営側上で何かあったのではないかと思ったのだ。
「子会社には一応うちの会社の幹部たちはいるけど、各国からの代表みたいな職員もいるわけで、その連中がそれぞれの国のお偉いさん達から色々な接待を受けていたみたいなのよね」
「接待?」
「そっ、表向き公務で来日するお偉いさん達と極秘で会ってたりするわけ、恐らく大使館とか領事館とかそんな所じゃないかな、あそこは治外法権だし」
「何だそれ? 変なのか?」
「別に変じゃないわよ、普通にプライベートなら問題ないわよ、そこまで干渉する必要もないし、……でも……」
「でも、接待を受けていた?」
「そう、各国がそれぞれの職員に対して、リアルで出来ないことをゲーム内で出来るように便宜を計らえとか何とか言われたそうよ」
「それがあの戦争クエスト?」
「最初は断っていたそうなんだけど、ルールに従うふりをしながら少しずつ、そうなればいいなぁ~的な感じでね」
「何、それ最低じゃん」
「戦争クエストの後にフェスリアナ王国所属の顧客からの苦情が大量に来ていると報告を受けた時は、私も当然だと思ったわよ、だから、どういう亊か追求してやったら、白状したし改竄データの痕跡も見つけたから、言い逃れが出来なかったって所ね」
「為政者達って欲深いね、ゲームでも優劣を付けたがるのか?」
「人間のする亊だからねぇ~、それに為政者だけじゃなかったからね」
「政治家だけじゃない?」
「そう、政財界の人間も含まれているわ、日本の関係者も一度は社員に近づいたらしいけど、私がいるから諦めたようね」
「でぇ、お前はどうするんだ?」
兼吾にそう言われて雪華は天井を仰いで溜息をついた、そして言ったのだ「少し様子を見てから日本は撤退かな」と、それを聞いた兼吾も溜息をついた。
「それも良いかもな、今の状況だと電力不足になりかねない」
「電力不足だけならいい方じゃない? 地球規模の大災害が待ち受けてる状況だと顧客は経るし赤字になるわ」
「そうだな、その辺政財界の人間に危機感が少ないのが問題だな」
「だねぇ~」
二人は戦争クエストの真相を話した後、今後の大災害に対して自分たちはどうするか話をしていた。
稚拙な文章をお読みになって頂きありがとう御座います。
ご感想に対する返信返しは超苦手なので、出来ないことが多いかもしれませんが、長い目で見ていただけると幸いです。