14話 魔素過壊病の正体と治療
別室に医者の海李と春樹、領主の雪華とパロル隊長にロドリアさんが顔を付き合わせていた。そしてこの病気の事を知っているパロル隊長に色々質問をしていた。
「子供の頃に見ただですが、当時俺も10歳くらいだったかなぁ、病気になった奴は幼なじみのミックって名前の同い年でした、よく遊んでいたし予備校も一緒に行ってたんですが、ある時からミックが体調を崩す日があって、体調を見ながら外で遊ばず家で遊ぶことが多くなったんです、それで丁度半年くらいたった頃だったかな、大人が何かを隠すようにしているなぁって思ってたんです」
「隠す?」
「えぇミックに会わせてもらえなくなりまして、でぇ病気だって聞いていたのでお見舞いに行こうと思い出かけたんですが、どうも様子が変で、村の人たちがミックの家に誰も行かなくなったんです、俺も母親から行くなって言われてましたけど、内緒でお見舞いに行こうとしておやじにバレて、ミックの病気の事を教えて貰ったんです」
「それが魔素過壊病だったんですね」
そう言ったのはロドリアさんである、彼も魔素過壊病については知っていたが、滅多に見られる病気ではないし、それに罹るのは殆どが人族だったそうだ。
「人族独特の病気って事か?」
「魔素過壊病は体内の魔素が膨大すぎて身を滅ぼす病気です、基本的に魔素を持たない人族にとっては死を意味する。獣族も魔素はそう多くは無いから、又に魔素過壊病に罹る者がいるけど、人族よりは少ない。それに多くが予備校にも行けない子供が多いから早死にするんです」
「子供の頃は魔素のコントロールどころか魔素を自分で関知することもままならないのか、親も魔素を関知することが出来ないって事?」
「魔素の関知は出来るものとそうでない者がいますから、誰でもって訳じゃないんです」
「そうなんだ」
「それに人族から魔王が生まれているからこの病気に罹って、もし直ったら魔王になるって噂にもなります。俺の先祖はオーガの血を引くから魔素のコントロールは出来ますが、純粋な人族は魔素があってもコントロールの苦手な奴の方が多いですし、魔素を持つこと事態があまりありませんからね」
「ある意味偏見よねぇ~~、私たちウィステリア家は皆人族で魔素を持ってるわよ」
「歴史がそう言わせているんですよ」
歴史がそう言わせているという言葉で、この世界のあの魔王蹂躙の歴史が思い出される。そしてその該当者がこっちに転生している可能性があるという事はウィステリア家と元プレイヤーだけの秘密である。
「ねぇ父さん、春兄ぃ今後もこんな症状が出てくる可能性ってあるわよね?」
「そうだな、無いとはいえないだろう」
「だな、何せお前の迷宮が近いし」
「いやそれだけじゃないだろう、他の管理者の迷宮はこのウィステリア領に半分はあるんだろう、魔素が多くなっても不思議ではないだろう」
父と兄の話を聞いて雪華は唸った、ウィステリア領事態が何故か魔素量が多い、元榊島などはその数倍の濃度である。しかもあの富士山、何でここに有るのか不思議である。
まさかと思うが榊島の様に魔核が有ったりしないか不安である、もしそうなら領地の魔素量の増加は理解できると言うものだ、でぇ、今後はどうするか毎回自分が吸収いてもいいが、罹患者が増えればどうするのかという問題もある。
「吸魔石があれば……何とかなるのかな?」
「吸魔石??」
「ちょっと待ってください、そんな高級でレアな魔石そうそうありませんぞ」
「あっ、あるんだ」
「まぁ俺も聞いたことはあるが見たことはないな、ロドリアさんはあるのか?」
「昔一度だけ見たことがあったんですよ、持ち込まれた物だったのですが、その時はそれほど大きな魔石ではなかったのですが、鑑定をしたら魔素を吸い取る吸魔石って出ていたので、でも私も当時は話に聞いていただけで実際に見たのは初めてだったんです」
「それ、どうしたんです?」
「王都の貴族が買っていきました、驚くほどの金額で」
「ちなみにいくらで?」
「小金貨1枚」
「小金貨1枚ぃぃ~~~~~~何だその金額!!」
小声で海李が春樹にいくらだ?と聞いていた、それを横から雪華が答えた「日本円で1千万」と、それを聞いた二人はあまりの金額に唖然と開いた口がふさがらない。
「まぁそんなレアもん無くても、普通の魔石に魔法付与して作るって手もあるわよね」
「魔法付与ですか?」
「そんな魔法聞いたことないが?」
「えっうそぉ~~」
「付与魔法は基本中の基本でしょうが!! 武器に炎の魔法を付与して魔物倒すなんて普通でしょう!!?」
「しらんなぁ~」
「えっ、春兄ぃ~~~!! 持ってるいますよね???」
「あぁ付与魔法なら俺も持ってる、けどお前ほどのレベルはない」
雪華の言葉でロドリアさんとパロル隊長は唖然とし、兄は当然持っていると肯定してくれた。雪華はというと、何で無いのよって正直愕然としていた。そして何かを決断したかのような表情をした妹を見た兄春樹は嫌な予感がした。
「おい雪華……、お前何を考えている??」
「……別に、何も……」
「いいや! お前のその顔は何かを企んでいる顔だ!」
「……さすが春兄ぃも気づけるようになったんですね……そうですよ、もう容赦しません、領民改革に取り組みます!」
「何だよその領民改革って!!!」
「確かに魔素の持たない人族よ! でもね生活魔法を使える程度の魔素をもっている人だっているんでしょう、初等教育課程で魔素と魔力コントロールの指導をもっと徹底してやる! 魔王が何よ! あんな奴私とピートであの世に送ってやるわよ!!!!」
「おい雪華、いきなりそんな事やって領民が驚くだろうが!」
「大丈夫よ、父さん学校で! 指導するんだから問題ないわ、それと春兄ぃ!」
「なっ、何だ?」
「今日からその魔法付与のレベルアップして下さいね、指導しますので覚悟して下さい」
「何ぃぃぃ~~~」
「医者の春兄ぃが付与のレベルアップしてなきゃ意味ないでしょう」
「えぇぇ~~~」
そう断言した雪華の顔は怒ってるというか魔女の呪いのような笑みを浮かべていた、それを見た面々は恐怖に慄いていた。
「そうそう、暁のファルコンの皆もランク上げとLvアップをするんだからね、忘れてないわよね」
「えっ、アレマジで言ってんですか!!」
「マジよ!、うちの高レベル使用人を指導者にするからがんばって頂戴!」
「ちょっとお待ちを領主様、パロル隊長達には我が商隊の護衛をお願いしているのですが……」
「それなら私が変わるわよ、私1人で十分でしょ?」
「……確かにそうですが……先ほど初等教育課で魔素と魔力のコントロール指導をすると仰っていたと思いますが?」
「あぁそっちは大丈夫適任者を回すわ」
「ですが、ウィステリア領は多種族を受け入れている関係上、魔素を持つものは他領に比べると多いですが、それをコントロールできるようにするとなると、ますます他領から警戒されるのではありませんか?」
「確かにそうね、まぁそこは私が対処するから心配しなくても大丈夫よ」
勝手にすべてを決めてしまった、恐るべしウィステリア領主の雪華、家族もそれ以外の者達もみな愕然とした。
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雪華の宣言より1週間が経った、暁のファルコンのメンバーは領主家に泊まって、元六花の守り手メンバーから魔素の流れの精密なコントロールと体術の訓練を祖父の惣摩からは剣術の訓練をみっちり仕込まれている。
そして魔法やスキルに関しては三女の秋枝が徹底指導。春樹の付与魔法のレベルアップには天球の城迷宮の管理者浅井賢吾が担当していた。夏椰は霧島兼吾と共にカメラもどきの改良に忙しそうにしている。
ロドリアは材木の買い付けのみで、急ぎの仕事はない事もありウィステリア家に泊まり領主と今後の話をしていた。
「王都から召喚状ですか?」
「そう、これってどっかの貴族の紋章だよね?」
「そうですね、これはマーモント公爵家の物ですね、いつ来たんですか?」
「1週間くらい前かな、期日は指定されていなかったのでそのままにしているんだけど」
「マーモント公爵家は、王妃様のご実家だったと思いますが……」
「王妃様の実家かぁ~、何で私に召喚状なんてだすのよ? 王室なら、まぁ納得も出来るけど……」
「王妃様のご実家からの召喚状に対してそれは不味いのでは?」
「まぁそうは思ったんだけどね、貴族と王家からスパイが入っているし、急ぎなら接触してくるかなと思ったんだけどねぇ、まだ無いのよ」
「スパイが入っているって……」
「でね、1週間皆の訓練を見てきて、もう任せても大丈夫と感じたからロドリアさんと一緒に王都に向かおうかと思ってるんですけど、いかがですか?」
「彼らも行くのですか?」
「まさか、彼らはまだまだ訓練続行です、今回行くのは私と弟と二人の迷宮管理者も同行することになったの、代わりに執事の小花衣は留守番になるわね」
「えっ、それって迷宮管理者が四人も同行してくださると?」
「そう言うこと、だから危険はない」
「確かに安全ですが、マーモント公爵様からの召喚状はどうされるのです?」
「それは向こうに着いてから考える、基本的に観光目的で王都行きをするって事で動くつもりだから」
雪華の提案でロドリアは唖然とした、公爵家からの召喚状は保留扱いをしたと思ったら、王都までの道のりを最強の冒険者が護衛としてきてくれる、そのうち1人は規格外でウィステリア領主である。どんな護衛よりも安全である。とはいえ護衛料が高くなる事が気になった。それを察知した雪華は護衛料はいらないと言ってきた。
「えっどうしてですか?」
「こっちが頼んで連れて行って貰うんだからね、いらないわよ」
「しかしそれでは」
「気にしないで、今後ともロドリア商隊で買い物をさせて貰うもの、それに観光目的よ一応ね、今の王都に行くのは初めてなので、信用がおける人に案内を頼みたいので、手配して頂けるかしら?」
「あぁ~それはもう、私でよければご案内いたします」
「そう、じゃお願いします」
とっても軽く今後の計画が立てられて呆気にとられるロドリアは、苦笑をしている。世間で畏れられている相手が、実際付き合ってみると気さくな人であった等と思ってもいなかったのだから。
稚拙な文章をお読みになって頂きありがとう御座います。
ご感想に対する返信返しは超苦手なので、出来ないことが多いかもしれませんが、出来るだけ頑張りますので、長い目で見ていただけると幸いです。