10話 驚異・雪華のステータス
翌日ギルマスの言っていたように、冒険者ギルドに小花衣を伴い向かった。ウィステリアの冒険者が多い場所にあり大きな建物である。中にはいるとどこにでもあるような賑やかな冒険者達が話をしたり、何かを飲んだりしていた、ここはゲーム内と変わらない。
中に入ってきた小花衣と雪華を見て何か話をしているが、雪華の地獄耳にはハッキリと聞こえていた。「小娘が何のようだ」とか「予備校卒業生じゃないか?」とか、あまり好意的ではない視線が多い。
それを無視して二人は受付カウンターに向かい、雪華の代わりに小花衣が受付嬢にギルドマスターと約束をしていると伝えた。少々お待ちくださいと言って奥に言ったのを見送り、雪華は周りを見ていた。
「やっぱりあまりLVの高い者はいないわね」
「そのようですね」
今見ていても最高LV70程度である。これではパロル隊長の方がLVが上だと断言した。それでも70台かぁと雪華は溜息を付いた。この世界ではサーチスキルを持っていなければ相手のLVを見ることが出来ない。しかもそのスキルは本来なら割と簡単な採取クエストや運が良ければ魔物討伐で手に出来るものであるが、彼らにはそれが出来ないようだ。
だいたい採取クエストで手に入れる者が多かったはずなのに、そのスキルのレベルをあげていけば相手のLVも見ることが出来るようになるものなのだが……と考え事をしていると、受付嬢に呼ばれて別室に案内してもらった。
部屋は二階の奥のギルマスの部屋である。受付嬢が中に声をかけて入室の許可が出た所で二人を中に案内をした。
「お待ちしておりました」
「忙しいのに申し訳ありませんね」
「いいえ、領主様がお越しいただけるのは光栄の極みなのです、しかも在職中にお会いできたのですから」
「あら、お辞めになるのですか?」
「今すぐという訳ではありませんよ、ですがそろそろ年を取りましたから、予備校の校長もかねてますからね、あまり休みが取れないもので」
「あぁ~それはそれは、改善の必要があるわね」
笑いながら職場事情を聞いた雪華は、自分が居ない間に領内を統治していた夏椰はここまで手が回らなかったのかと思った。
そんな話をしていると、三人分のお茶を持って入ってきた人物がた。一見して人当たりの良さそうなその人物は、ギルマスに匹敵するほどのレベルであるとはいえ300年前のランクで言えばDランクである。また腕っ節も良さそうだと見抜いた。
「ご紹介しましょう、彼はロイド・三橋と言います。私の右腕をしているものです」
「そう、初めましてロイド・三橋さん、雪華・ウィステリアです」
「初めまして領主様、どうぞ三橋と呼び捨てにして頂きたく」
「あら、いいの?」
「はい」
「解ったわ、以後はご希望通りにしましょう」
「では領主様、冒険者カードを一度お預かりしてもよろしいでしょうか?」
「えぇ、これで」
「………えっと、領主様は本当にSLランクだったのですね?」
「……ん~何かそうなってるわよね、昔はSランクが最上位だったと記憶しているんだけど、今は増えてるの?」
「今はSランクがスキルマスター冒険者と言われており迷宮管理者のことを言います。そしてLランクがレジェンドマスター冒険者と言われ人外レベルと言われており、レジェンドマスター冒険者のLVは1000以上の方をさして言います。ですがSLランクは規格外レベルで、噂でしか知らないのですが、LVは1200以上だとの事です」
「なるほど……でも昨日は見えていなかったわよね?」
「はい数値もランクも見えませんが、領主様が規格外であると浅井様達から伺っておりましたので、ただ信じられなくて……その本物を見たこともないものでしたので」
「なるほど、見たことも、会ったこと無いのね」
「はい……正直な所鑑定スキルを持つ者は殆どいないのが現状です。冒険者カードにまともに表示されるのはSランクまで、それでも見ることが出来る者はAランクの上位レベルのものだけ、レベルの低いAランクだと辛うじてうっすらと見えるっという感じなのです」
だが、ギルドマスターはまだ何か言いたそうに。何か言いにくそうに、言葉を続けた。
「でぇ、まだ何か言いたそうだけど、何かある?」
「先ほども言いました様に、SLランクと言うのは、今現在誰も見たことが無く名前を覚えてはいないでしょうが、男女一人ずつ居るという事は、皆知っておりますので、恐らく領主様が名前を隠し名称を使ったとしても、規格外レベルの至高の存在という事が知れ渡ることになります」
「……至高の存在って……今そんな呼ばれ方してるの? でぇ男女一人ずつ居ることまで知られてる???」
「はい」
SLランクは至高の存在なんて、どういう理由でそんな言われ方をしているのかと思いつつ、正体を隠すのも短い間だけかなぁ~と溜息を付いた。とりあえずランクは見られれば手を出して喧嘩をしようと思う者など居ないだろうと思うことにした。
「………はぁ、解ったわ、仕方ないものね、本当に二人だけだし、もう一人のSLランク者も、たぶんどっかに隠れているんだろうけど……絶対見つけだしてやる」
「もう一人の?」
「えぇアイツもう一人の男のSLランクの者よ、どうも私と不思議な腐れ縁らしいから、きっと会える」
「……さようですか……いらっしゃるのですね」
ギルドマスターの松永にしてみれば、ここでSLランクの「至高の存在」が二人揃ってしまったら、そしてその二人を怒らせでもしたらこの世はどうなるのだろうかと一瞬身震いした。
「でぇ改めて聞くけれど、昨日頼んだ事は出来るのよね?」
「はい、それは出来ます、ただ……」
「ただ?」
「……えっと、これから話すのは、とても申し上げにくいのですが、この操作をするにあたり秘匿事項が表示されてしまいますが、私が知ることになります。」
「………マジか……」
雪華は大きな溜息を付いて唸った、バレる事が不味いと言うより口止めできるのかという方が正直な気持ちである、ずっと秘匿できるわけでもないだろう事は覚悟の上であったからだ。
「わかった、けれど条件がある」
「はい、何でしょう」
「見て知ったからには、命を懸けて口を閉ざして欲しいんだけど」
「それはつまり、見なかったことにしろ、誰にも言うなと言うことですか」
「そういう事、王都にもダメ話さないようにって事を約束できるのならば……」
「解りました、神々にかけて誓いましょう」
「……神々にかける??? そんな事していいの? 見てるかもしれないよ」
「それほど重要な事なのでしょう? ならばそうすべきだと……」
呆気にとられた雪華は、笑って「解った」と言い許可した。
そして雪華は自分の冒険者カードを提示した、するとギルマスとロイド・三橋氏は、ギルマスの机の上にある機械にセットし、なにやら作業を作業をした。しばらくすると表情が硬くなっていくのが手に取るように解る。
当然だろう。雪華の秘匿情報が全て見えているはずだからである。
名前:雪華・ウィステリア
種族:人族
性別:女性
LV:1200
称号:始祖の魂を持つ者・魔術師・マジックマスターNo.1・スキルマスターNo.2・神に選ばれし超越者(限界突破) 無慈悲なる魔女・破壊神
加護:全ての神々
攻撃力(HP):550,000/550,000
体力:250,000/250,000
知力:3000
魔力(MP):550,000/550,000
スキルランク及びレベル:全てMax
技能:固有スキル「完全予測」
「霊感」
「錬金術全般」
「陰陽術全般」
ユニークスキル「見通すもの」
ユニークスキル「捕食者」
ユニークスキル「知識の探求者」
ユニークスキル「溶解,吸収,自己再生」
ユニークスキル「超速再生」
常用スキル:スキルマスターの為全て使用可能
戦闘スキル:スキルマスターの為全て使用可能
生活スキル:スキルマスターの為全て使用可能
錬金スキル:スキルマスターの為全て使用可能
魔法スキル:マジックマスターの為無詠唱で全て使用可能
耐性:物理攻撃無効・魔法攻撃無効・状態異常無効・精神攻撃耐性・聖魔攻撃耐性
備考:普段は温厚で優しいく自由奔放だが、怒らすと怖い
「とりあえず、新しく更新した冒険者カードはいつ頂けるの?」
「領主様、これは……」
「だから内緒にして、面倒事はごめん被りたいのよ」
「……畏まりました、申し訳ありませんでした、では続きの作業に入らせていただきます、名称はなんと致しますか?」
「あぁレティシアでお願い」
「レティシア様……ですね、畏まりました」
それから暫くすると、新たに冒険者カードが更新され以下のようになった。
所属国:エリシェント王国
所属領:ウィステリア領
名前:雪華・ウィステリア(秘匿事項に出来る)
名称:レティシア(追加された)
種族:人族
性別:女性
LV:1200
称号:始祖の魂を持つ者・魔術師・マジックマスターNo.1・スキルマスターNo.2・神に選ばれし超越者(限界突破) 無慈悲なる魔女・破壊神
加護:全ての神々
攻撃力(HP):550,000/550,000
体力:250,000/250,000
知力:3000
魔力(MP):550,000/550,000
スキルランク及びレベル:全てMax
技能:固有スキル「完全予測」
「霊感」
「陰陽術全般」
ユニークスキル「見通すもの」
ユニークスキル「捕食者」
ユニークスキル「知識の探求者」
ユニークスキル「溶解,吸収,自己再生」
常用スキル:スキルマスターの為全て使用可能
戦闘スキル:スキルマスターの為全て使用可能
生活スキル:スキルマスターの為全て使用可能
錬金スキル:スキルマスターの為全て使用可能
魔法スキル:マジックマスターの為無詠唱で全て使用可能
耐性:物理攻撃無効・魔法攻撃無効・状態異常無効・精神攻撃耐性・聖魔攻撃耐性
備考:普段は温厚で優しいく自由奔放だが、怒らすと怖い
「名前は秘匿事項として操作可能に変更してありますので、常の表示は名称の方になっています、後は今まで通りでございます」
「うん、ありがとう、助かるわ、でぇこの鑑定機器だけど、他のギルドもこれと同じ物を使っているの?」
「いえ、他のギルドは別の物です、高レベル冒険者になれば見られたくないスキルなどもありますから、秘匿する者もいます。ですが隠蔽魔法を持っていない者は秘匿できません」
「隠蔽魔法かぁ~、じゃ私も隠蔽魔法使えば良いってことね」
「はい、ただ他のギルドに配布されているカード鑑定具はギルド総本部から配布されている物しか使用を許可されていません、これは国が決めている事なので、なので隠蔽魔法を掛けていたとしてもレベルが低ければ見破られます」
「なるほどぉ~、了解した」
「では直ぐに依頼をお受けになりますか?」
「その前に、このSLランクの有効期限とかは変わっているの?」
「いいえ、Sランク以上の冒険者は基本的に降格規定や資格失効は御座いません、ですが年1回は依頼を受けていただくことは必須となります」
「なるほど、了解した」
「では、如何なさいますか?」
「そうね、今日は止めておくわ、暫く領内を様子も見ておきたいし」
「畏まりました、何かありましたらいつでもお越しください、私に出来ることでしたらお受けいたします」
「ありがとう気持ちだけ受け取っておくわね」
雪華は笑ってそう言い部屋を出ていった、残されたギルマスとロイド・三橋氏は溜息を付いて、自分のいすに座った、そして見てしまった秘匿事項の内容にあったもの、それは「始祖の魂を持つ者」という項目と加護に「全ての神々」とあった事だ。
これは大変なもの知ってしまったと思った、口外できない一番の項目であると認識した。
「始祖」それは大昔に人族で魔王になった者を含め混乱を招いた罪を裁くために世界を魔素のない所へ弾き飛ばした張本人であると伝承にはあったからだ、その始祖の魂を持つ者となると、始祖が人の世界に降臨していると言うことに他なら無いと考えたのだ。
「あの方を怒らせるわけにはいかない、王家が言ったことは事実だ」
「松永様、これは絶対に口にしてはならないものと思われます」
「あぁ、そして領主様が言ったように王家にもまだ話すわけにはいかない事だな」
「はい」
自身の側近であるロイド・三橋と共に、そう心にも誓ったのだ、そして恐らく神々もこの事実を見ているだろうと感じていた。
稚拙な文章をお読みになって頂きありがとう御座います。
ご感想に対する返信返しは超苦手なので、出来ないことが多いかもしれませんが、長い目で見ていただけると幸いです。