09話 冒険者本部長との会話
昼食が終わってから、廉と兼吾は自分の迷宮へと帰って行った。そして今日は休日でもあった為、医者の父と兄は家にいるが祖父は冒険者予備校を休んだ。
代わりに剣道で学生優勝経験を持つ春樹と夏椰が代わりに冒険者学校に行って剣術指導を行う、二人とも元プレイヤーである、予備校生相手では思いっきり手加減をする羽目になる。
楓は夕飯づくりに厨房へ向かい春菜と秋枝は自室へ向かった、長い話で疲れたのだ。
食後のティータイムをしていた雪華の元に冒険者ギルドのギルドマスターがやってきた。割と老齢である。ギルマスは松永と名乗った、LVは196 この時代でいう冒険者ランクAであるが、前ならDランクである。
雪華はなるほどと思った、サーチしてギルマスでさえAランク、本来でいうDランク止まりとは、どうしたものかと思ったのだ。
「雪華様、冒険者ギルド本部のギルドマスター松永さんです」
「初めまして松永と申します、領主様」
「初めまして雪華です、どうぞお座り下さい」
そう促されて雪華の前に座ったギルマスは、少し雪華を見ていた、おそらくサーチでもしているのだろうと予想した。
「如何です? 私のLVは見えました?」
「あぁこれは失礼を致しました。さすがに上位のお方、やはり私程度ではLV値までは見ることが出来ませんでした」
「そうですか、これ私の冒険者カードなんですけど」
名前:雪華・ウィステリア
種族:人族
性別:女性
LV:ーーーー
称号:魔術師・マジックマスターNo.1・スキルマスターNo.2・神に選ばれし超越者(限界突破) 無慈悲なる魔女・破壊神
雪華は秘匿事項は非表示にして提示した。LVは隠していないが、高すぎてギルドマスターには見えていないだけである。それを見たギルドマスターは納得していた、ギルドカードのランク表示は自動的に変わる、カードの真ん中に表示されるのだ。
「でぇ、一つ相談があるんですけど」
「相談とは?」
「実は冒険者としての仕事も続けたいんですよね、でもこの名前で冒険者として出るのは目立って困るので、偽名を使いたいんだけど、何とかなるかしら?」
「……なるほど、領主の仕事をしながらと言う意味でですか?」
「当然です、領地を放っておく気は更々ありません、とはいえ私にもある目的があって冒険者として動く必要があるので、そのために相談をしているんです」
「なるほど、問題はありません、このギルドカードの名前の下に名称と追加すればよろしいのです、本来は簡単には出来ませんが、本部のギルドマスターが許可した場合に限りそれが出来ます。ですので領主様がご希望なら手続きをさせて頂きます。もちろん本名のほうも秘匿操作出来ます」
「そう、助かります、幾日かかかりますか?」
「明日一度冒険者ギルドにお越しいただけますか?」
「解りました、伺いましょう、あぁそれと一応家族の分もお願いしたいんだけど、特に末弟の夏椰とか」
「承知致しました」
雪華はニッコリ笑って対応した、肩書きが肩書きだけに相手を絶対に怖がらせてはならないと思っての事だった。
「あぁそれと領主様、王都にはどうご報告をしたらよろしいですか?」
「あぁ月宮から口止めを頼んでいたんだったわね。助かります、状況が解らないのでむやみに公表は避けようと思っての事で、ずっと隠すつもりはないのですよ」
「状況と言いますと?」
「まずこのウィステリアの状況の把握が第一だと考えてます、それを解ったうえでないと王都に連絡などしては何をふっかけられるか解ったものでは無いでしょ? スパイも入り込んでいる様だし、それに仮にもこの領地には超越者迷宮がいくつもありますからね、警戒でもされたら困りますから」
「そうですね、領主様の所を併せて現在五つ起動していますから」
「起動しているのは解るんですか?」
「冒険者ギルド本部には超越者迷宮の起動が解る物が存在しています」
「そんな物があるの?」
「ごらんになりますか?」
「見せていただけるの?」
「はい、領主様は迷宮管理者でもありマジックマスターでもありますから」
「それはありがたい」
「それだけではありませんよ」
「っというと?」
「ウィステリア領主様は、全ギルド総本部運営責任者で総本部長というお立場です、いわば全てのギルドのトップに立つお方なのです。そのためどのギルドも総本部長である領主様の命令には従います」
「うそぉ~~~本当にそうなの?」
「はい、領主家不在の間は精霊様方が助言を下さっておりましたが、夏椰様がお戻りになってからは領主代行として夏椰様がされておりました、今回領主様自身がお戻りになったので、本来の形になります」
「………マジか……」
雪華少し頭を抱えた、領主業とギルド総責任者なんて仕事を両立して良いものなのかと、政治的にまずいのでは等と考えていた、そんな領主を見ながら、ギルドマスターは長年の疑問を聞いてみようと思った。
「ただ、少しお伺いしたいことがあるのですが?」
「何でしょう、私に解ることならばいいのですけど」
「夏椰様や他の迷宮管理者を含め領主家の方々が行方不明になっていたこの300年の間だどこにいらっしゃったのかと思いまして、どの方々にお聞きしても解らないと仰るもので」
「あぁ~それね、正直みんなと同じなのよね、眠っていたと伝えられているようだけど、たぶんそれは間違いないと思う。ただみんな記憶が曖昧すぎて解らないって言うのが正直な答えよね、この300年の間に人族はだいぶ代替わりもしているのでしょ? 私たちの事をよく覚えていたわよね、こっちとしてはそれが不思議でならないわ」
「我々は王家に神々の使いが来たことは事実として歴史で残されています、それ故にみな知っているのです、またハイエルフ族などの長命種族が伝えていますので」
「なるほど、長命種なら私たちを知っていてもおかしくないか……それと松永さん、冒険者予備校の事なんですが」
「何かありましたか?」
「あぁいえ、特には、ただ300年前に比べるとLVアップが低い気がするんですけど、だいぶ変わっているようですね」
「そうなのですか、300年前の事は人族である私には解りかねますが、そんなに低いでしょうか?」
「まぁそうね、魔物のレベルやランクは殆ど変わっていないのに、冒険者のレベルが低すぎるわね、昔は予備校を卒業する頃にはLV90~100前後、EランクだとLV150くらいにはなれる者が多かったから、常に三桁レベルの冒険者って普通だったのよ」
「そう言えばケセウスの町のギルドマスターもそんな事を言っていましたね、自分はまだまだ冒険者としては初心者だと」
「ケセウスの町のギルマス?」
「はいあちらはエルフ族なので、300年前の事も知っていると思いますので」
「なるほど、出来れば最低でもLV100の冒険者を増やして欲しいと思っているのだけど、どう思われます?」
「どうと言われましても」
「今じゃ古代スキルとかロストスキルとか言われてようだけど、迷宮攻略すれば手には入るスキルなんだけど、欲しいと思う者はいないの?」
雪華はギルマスの様子を観察していた、現状の冒険者達は何を思って、冒険者をしているのか知る必要もあるかなと思ったのだ。
「元々大昔の人族は魔力を持っている者が多くいたそうですが、今の人族は魔力を持つ者が殆ど居ないのです、ですから冒険者になってもLVをあげるには限界があるのです、ですが多種族では魔力を使いこなす種族も居るので彼らの方がLVが高い者が多いと聞きます」
「なるほど、多種族か……、あっ獣族は魔力を持たないと聞いてるけど、それは変わらない?」
「はい、魔素が少ないため魔法をあまり使えないと聞いていますが、生活魔法を使える者はおります」
「貴方は剣術など武器を使用してLVをあげていったのね、でも少し魔力も持っている様だけど」
「先祖にオーガ族がいました、かなり昔のことなので、だいぶ血は薄くなっているはずです」
「なるほどオーガか、彼らは戦闘民族だったわね」
「それは今も変わりませんよ」
「そうかぁ、じゃ種族間戦争なんかは無いの?」
「偶にあるようですよ、このセトレイア大陸だけは人族が多く住んでいますが、それ以外は殆どが魔物の種族ですから、彼らは弱肉強食の世界です」
「あぁそうね、そうだったわ」
何となく懐かしそうな表情を浮かべた雪華、そう懐かしいのだ、何でだろうと思いながらもゲームではない何かを知っている、そんな気がしてならなかった。
稚拙な文章をお読みになって頂きありがとう御座います。
ご感想に対する返信返しは超苦手なので、出来ないことが多いかもしれませんが、長い目で見ていただけると幸いです。