06話 神崎家と始祖の話
※何度か読み返し、色々話がおかしくなっている所や誤字・脱字は不定期に修正・加筆をしております。(更新日が多々変更あり)
夕食を終えての話し合いはまだ続行中、その間月宮以外の使用人は主たちと客人の世話に奔走、お茶を入れ替えたり菓子を追加したりとよく働いていた。
「でぇ、姉貴が冒険者として出る理由はわかったけど、何でピートさんを締め上げたいほど探す理由があるんだよ?」
「あぁその前に、例の曾おばあちゃんの日記をこの二人に見せておきたいんだけど、いいかな? それと神崎家で私がなんて言われているかとか」
「なんて言われているか?」
ここで日記に関しては聞いていたが、雪華がなんて言われていたかのって事を公表するとは聞いていなかった神崎家の面々達は、惣摩が代表して雪華に聞いていた。
「それはあれか、神崎家の宗主の事を言っているのか?」
「そう」
「それって必要なのか?」
「だってゲームに似たこの世界の歴史に出てくるじゃない、運営側の事を『始祖に仕える神々』って、私が作ったシナリオには神々は出てくるけど始祖は出てないもの」
「あぁ~そういえば、ここの歴史には出てきてたけど、姉貴のシナリオには無かったな」
「そうだな、俺と廉もこっちで歴史を聞いた時に始祖ってのを聞いたことがある、滅多に出てこないから忘れてたわ」
「だな、殆どは神々で済ませてた、お前のシナリオを貰って読んだ時にはそんな名前出てこなかった」
「でしょ、だから必要かなとは思う」
雪華の説明で、夏椰と兼吾、廉が続いて思い出した事を話していた、これに対して神崎家の面々は難しい顔をし使用人達の動きは止まった、神崎家の隠されている真相を知らない二人は何だと思った、それほど重要なことなのかと。
「なぁ雪華? 家族の秘密をばらす様な事なら言わなくても良いと思うぞ」
「そうだな、皆さんが困ってるみたいだし」
「別に困ることではないわよ、元々私たちは神崎家の直系一族だけど、分家に疎まれ殺されそうになった為に榊姓を名乗って生きてきたのよ、それにこれは私個人の事だしね」
「そうなのか?」
「えぇ」
「雪華、それを公表してお前は、今後困ったことにはならないのか?」
「困ったこと?」
「そうだ、お爺ちゃんの言うとおり、お前がそれで何か不都合な事になったら」
「そうねぇ~逆に反撃するけど……っていうか私自身認めちゃってるのよ」
「認めた!」
「そう、実はブラックホールに飲み込まれる前に数ヶ月眠っていた時に見た夢の事とか、ブラックホール内での事とか、当時は記憶が曖昧で思い出せなかったんだけど、時間が経つにつれて徐々にだけど、認めざるを得ないのかもって思うようになったというか……、まぁそんな感じ、とはいえ全面公表って訳じゃない、この二人だから言うって事だから」
「この二人だから……か」
「二人は藤華の前期生の時から一緒だったし、私たちの事は多少なりと知ってるでしょ。家にも遊びというか勉強しに来ていたし」
「確かに、SAクラスの皆は全員家に来ていたわよね、お食事をしたり、お泊まりしたり、賑やかで楽しかったわねぇ~、あの頃の雪華って生き生きしていたわよ」
「お婆ちゃん……」
懐かしそうに言う祖母の楓に祖父と父、弟夏椰が苦笑し、その他の家族は知らないことだった、何せ一緒には住んでなかったのだから。
夏椰は父と共にたまに来ていた事もあり、その光景を覚えていて、クラスの子達も小さな夏椰を可愛がって勉強を見ていたりもした。
「わかった、雪華がそう言うなら仕方がない、だが危険を伴うものなら一人で抱え込まずにちゃんと相談しろ、お前は昔から何でも一人でしようとするからな」
「相談できることはするわよ、でも出来ないこともある、もし……本当に覚醒したならば……」
「覚醒?」
「ん、私は人じゃなくなるからね」
「……はぁ~そういう事になるのか、やはり」
雪華の一言で頷いたのは祖父の惣摩だけで、他の皆は驚いた「人じゃなくなる」この事に付いては神崎家の使用人すら驚いたのだ。
「雪華様、人じゃなくなるとはいったい?」
「あなた達神崎家の使用人は、神崎家の興りを知っているでしょう」
「はい、存じ上げています」
「それは人じゃ無かったでしょ?」
「……はい、そう伺っています」
「じゃ、私は誰の魂を受け継いで生まれたかも覚えているわよね」
「…………はい」
「そういう事よ」
「ですが、それは魂を受け継いで生まれたと言うだけではないのですか?」
ここで使用人達の表情が不安になっている、また何の話しかさっぱり解らない廉と兼吾と、雪華の話を認めたくないと言いたそうな家族がいた。
「違うわ……小花衣! 兆候はあった」
「兆候?」
「最後の日に近づくにつれて私の魔力の増大が続いていた、その前に超能力という力も手にしていた。もっと言えば子供の頃から悪しき妖怪達が私の命を狙っていたわ。その理由は彼らが私の魂を手に入れたら膨大な妖力が手にはいると信じていたから」
「雪華様の魂を食べる……と言うことですか?」
「そう、全ての妖怪が悪しきものでなかった、人に哀れみを持つもの、人に対して優しいもの、そういう妖怪達もいる、そんな優しい妖怪達は私を悪しき妖怪から守ってくれた事もある、まぁ~死んだら魂頂戴ねってことなんだけど」
雪華はそう言って笑っているが、他の者は笑って済ませるようなことかと言っている。
「終末のに近づく前に数ヶ月眠っていた間、私は多くの魂達が何処かに飛んでいく不思議な場所にいたわ、そこで声を聞いた」
「声?」
「そう、初代始祖の魂の欠片の残滓……姿を保つほどもう力は残っていないと言っていた。だから声だけで、伝えるべき事を伝えると消えていったわ」
「伝えるべき事?ですか?」
「そう、こう言っていたわ」
『覚醒すれば、全てを思い出す、でも神崎雪華という人格は残る、今までと何も変わらない。今の貴方は、神崎雪華という人間としての持つ力、貴方自身のもの、覚醒すれば始祖だった時の全てが使えるようになる、貴方自身の持つ力に加え始祖の全てが使えるようになる。いつか本来居るべき所に戻ることになる、そこに導く者がいる、覚醒すれば思い出す、人を導いて……』
「……正直聞いた時は何の事かさっぱり解らなかったし、自身が始祖の魂を持つ者っていうのは神崎家から聞かされてたから知っていたけど、自覚は無かったし認めたくなかったけどね」
「始祖の魂を持つもの?」
「お前がか?」
「うんそう、兼吾、廉、私たち神崎家の興りは、人の世界に降臨した始祖と言われる者、人である神崎の人間と交わるため人として降臨し名前をフェリアナと名乗っていた、あの数ヶ月の眠りの時に見たのは死んだ魂達の通り道だった、当時殆どの国が戦争をしていたし、災害で多くの命が失われていたでしょ、たぶんそれかなって思ったのよ」
雪華の説明で一同が沈黙した、初代始祖の魂の残滓が示唆してきた。と言うことは全てを知っていた事かと何人かは思った。
「なぁ~雪華こういう事か? 本当にお前がその始祖の魂を持っていて、いつか覚醒とやらが起こったら人間じゃなくなる……って事だよな?」
「私が聞いた話じゃそうなるわよね、元の私の陰陽師やら魔術師やらの力だけでも結構な強さなのに、それに加えて始祖の持つ力も加わるってんだから、それってもう化け物でしょ、普通に考えても人間じゃあり得ない」
「……じゃ、何でお前はそう平然としているんだ? 人間じゃなくなるって言われて」
「ん~~そうだねぇ、二人には解らないかもしれないわね、物心つくずっと前から変なものが見えたり話をしたりしていたし、でもそれを不気味がる母親達から存在を消されて生きてきたからねぇ~、遊び相手は幽霊とか妖怪とか精霊とか、とにかく人間じゃないものだったのよ、そのうち霊感が働くようになるわ、物を浮かせて遊んだりしていて気味悪がられたりしていたし、その時にさあぁ、私はみんなと一緒じゃない、別のものなんだなって思っちゃったのよね、だからかな人間じゃなくなるって言われても、そりゃ一瞬驚いたけど、なんか受け入れちゃってる私も居たんだよ」
その雪華の言葉を聞いた祖父母や父親に兄弟姉妹達は心が痛い思いをし、視線を逸らしていた。過去の自分たちの行った過ち、そんな不憫な孫を引き取った祖父母が雪華を見ていた。
「でも少年野球楽しそうだったじゃん、聡や篤となんか一番仲が良かったじゃん!」
「そうだね、野球をしていたおかげで人との関係性を学んだ気がするわ、それでも命は狙われていたんだよ、あの二人はそれを知っていたし、他の野球部の皆は私の家庭事情や神崎家との関係も知っていた。だからいつも私を守ってくれていたんだよ、特に聡と篤は霊感無いけど絶対守ってやるって言ってくれていたんだ」
雪華の話を聞いた二人は嘗ていつも雪華と一緒に居て、成績も競い合ってクラスのトップスリーと言われていた三人だった事を思い出していた。
絶対守ってやると言い切れるほど三人の絆は深かった、それもよく覚えている、聡が事故で死んだ時も災害で篤が死んだ時も雪華は泣いていた。唯一心を許せる相手だったことはクラス全員が知っていた事だった。
「でもまぁ、直ぐに覚醒はしないんじゃないかと思う、そんな気配はしてないし」
「姉貴、その辺結構楽観的だよな」
「そうでも思わないとやってられないわよ、だいたい始祖の魂なんて何で私なんだよって話しなんだから。でも持ってしまったのは仕方ないでしょうが、受け入れるしかない」
母親や兄姉達からの虐待を経てここまで来た雪華、ある意味少年野球クラブやSAクラスの皆は雪華にとって人間性や人生観などを学ぶ場所だったのだろう、だから反れた人生を歩むことはなかった。
稚拙な文章をお読みになって頂きありがとう御座います。
ご感想に対する返信返しは超苦手なので、出来ないことが多いかもしれませんが、長い目で見ていただけると幸いです。