05話 元藤華SAクラスの会話
とりあえず、皆で夕食を共にして、広い居間に移動してから、話の続きをすることになった。お茶の準備などはNPCではなく、元神崎家の使用人でやることにし、NPCの使用人は退出して貰って、雪華に強力結界を張って貰った。
そして元クラスメートの廉と兼吾、VRMMORPGゲームハイフリーワールドのプログラミングをした元プロミン研部の霧島廉と宇宙飛行士を目指していた為につけられたあだ名の浅井兼吾の二人は、それぞれの目覚めた後は塔で生活をして情報収集と状況判断の分析などしていたという。この二人も塔は閉鎖しているとの事。
「廉さぁ、この世界のプログラムがどうなってるかわかる?」
「さっぱりわからん、運営は動いてないのは事実だと思うけど、超越者の迷宮の守護者は何故か動いているし、連中も理由は知らないみたいだね」
「やっぱりそうか、私の所もそうだった、運営が機能していないのに兼吾の天球の城が普通に浮いているのも謎だよね、どうなってんのその辺」
「あぁ、それな俺も調べたら魔石で浮いているみたいなんだよ」
「魔石? それって浮遊石みたいなやつ?」
「実際はよくわからんが、たぶんそんな奴だと思う」
「……このゲームに浮遊石なんて造ったの? っていうかそんなシナリオ書いた記憶がないんだけど」
「俺もそんなプログラム作ってないけど、製品化後運営側がプログラムを弄りまくってたから、その時もしかしたら造ったのかもだな、じゃ無けりゃ、兼吾の城は存在ができないだろう?」
「確かに……、私は浮遊魔法か何かだと思っていたんだけどなぁ~」
「俺も最初はそう思ってた」
「俺も浅井先輩に同意見だぜ」
兼吾も夏椰も浮遊魔法だと思っていたが、本当は違っていたといった。こんな元藤華中等教育学校のSAクラスの四人の話を聞いていた神崎家の面々とその使用人達、高度な話だと付いていけない者も数名は居たが、今は静かに聞いていた。
そこに割り込むように言葉を発する事が出来るのは、同じく元藤華中等教育学校で姉に続いてSA クラスに入ることを目標に頑張って念願を叶え、進級出きるほどの頭脳の持ち主で情報部門担当の神崎家末弟の夏椰である。
神崎家の中で唯一雪華と同等に近い学力を有していた。同じ学校に頑張って入学した三女の秋枝は一般進学科で上位置の成績だったがSAクラスには入れなかったというより初めから入る気がなかったと言った方がよい。
「浅井先輩、一度先輩の天球の城の魔石見せて貰っても良いですか?」
「あっ、私も見たいわ、その魔石鑑定して実際の所どうなのか調べてみたい気がする」
「だったら俺も行きたいんだけど」
「えっ廉ってばこっちに来て、兼吾の天球の城に行ってないの?」
「きっかけが無かったというより、自分の所と夏椰と情報分析するので時間が足らん」
「20年もあったのに?」
「そうだ、ほんと訳わからん亊が多すぎる」
「そうなんだ」
「それに夏椰はお前の代理を務めていたんだぜ、そう暇な時間なんてあると思うか?王都関係も他国関係も絡んでるしよ」
「まぁ半分以上月宮さんや小花衣さんに手伝って貰ってたけどな、でぇ姉貴よ、今度は全部任せたからな」
「えっ!! マジで言ってる?」
「当たり前だろう、ここは姉貴の統治領だし、姉貴は領主だろ」
「おい、雪華、お前もしかして冒険者に戻ろうとか思ってないか?」
「うっ……、まぁ~思っては……いる」
この発言で藤華SA組が雷を落とす、今までの苦労をどうしてくれる!とか領主だろうとか色々と苦情が出た。だが、雪華としてもどうしても探したい人物が一人いるし、一番何が起こっているのかを知りうる人物である、そして正体を公にはできない相手でもあるが、一応ゲームでは天神将のメンバーである。
「よし、じゃこうしよう、私分身造るからそっちで一人は領主として、本体は冒険者として動く」
「はぁ~~~~、何その分身って」
「そんな魔法やら術やらあるのか?」
「実はある、っと言うかできちゃったと言うか……」
「できちゃった??」
「あぁ~~前にさ夏椰に言った事無かったっけ? スライムのスキル奪った事があるって」
雪華のとんでも発言で、一同が目を丸くしたり、何をバカなことを言っているんだコイツはと言う家族の痛い目線と、何か言っていた様な気がすると思った兄妹と、使用人達からの主は正気なんだろうかと言った無言の表情に雪華は唸った。
「………あれ、本気だったのか?」
「嘘じゃないわよ」
「あっそういえば姉貴あれ、あっちの前の世界の話だろう、魔素のない世界で何でスキルが奪えるか、まだ理由を聞いていなかったよな」
「だからわからないって言ったじゃない、スライム倒したらスキル奪ってたんだもん」
「第一どこでスライムを倒したんだ?」
「私の島よ、榊島」
呆れた口調で質問してきたのは廉である、前の世界の末期に魔物が出始めていると言う話はニュースで知っていたが実際に目にしたことは無かったのだ、それも当然で殆どが神崎家の陰陽師が術で討伐していたからである。
「榊島って……」
「霧島先輩、姉貴がまだ小学校の時にお小遣いで買った小さな岩が噴火を繰り返してデカい島になった奴です、最後の日までずっと噴火をし続けていて有毒ガスもあれば魔物もでる変わった島だったんですよ」
「マジか……」
「魔素量が多くてね、結構強い魔物が多かったのよ、スライムは雑魚程度って感じだったけどビッグスライムやビックベアやキメラも出てたからね」
「ビッグスライム!」
「キメラ!!! あの世界に居たのか??」
「そう、時々なんかドロップ品持って帰ってきてたんで、正直俺もよくわからん世界になってんじゃないかって思ったくらいです」
「あの島の噴火口を結界張って見に行った事があったのよ、丁度噴火も下火にたった瞬間を狙ってね、そしたらびっくり魔素量がハンパなく多くて、マジで島を隔離しようかと思ったくらいだったからね、有毒ガスのおかげで人間は近づけなかったけど、私は定期的に魔物退治しに行っていたのよ、あれが本島に入ったら目も当てられないでしょ、スライムだけで神崎家の術者は手がいっぱいだったし」
雪華の話を聞いた面々は唖然とした、あのときにそんな事が起こっていたのかと、何故もっと早く言ってくれなかったんだとSA 組は言っていたが、ゲームじゃないし魔法が使えないのに、無理でしょという雪華の言葉に溜息混じりに納得せざるを得なかった。
「おかげで身分証明書(IDカード)が魔鉱石や魔晶石を加工して作れちゃったしね」
「あれ魔鉱石や魔晶石で造ったのか、だからゲームと同じ事が出来たって事だったんだ、魔物討伐してドロップした普通の魔石かと思ってたけど」
「普通の魔石程度ではあれは作れないでしょ、特殊な魔鉱石や魔晶石じゃないと、なので魔物が落とす魔鉱石や魔晶石とその辺に噴火で落ちてきた岩石の中から魔素がたっぷり含んだ鉱石だけを持ち帰って加工して身分証明書(IDカード)造ってたのよ」
それにしても、とんでもない事を元いた世界で既にやっていたこと事態に驚きを隠せない面々は溜息を付いていた。
そして何故分身を作ってまで冒険者に戻ろうと思っているのかその理由を聞くことにした。
「あぁ~それね、ピートを探したいのよ」
「えっ、ピート!! アイツこっちにいるのか?」
「わからないけど、たぶんいると思う」
「根拠は??」
「根拠かぁ~、それはちょっと正直わからん、ただアイツから何か聞き出せそうかなと思ったからってのが理由かな」
「ピートか、アイツ確かに変わってたからな」
「えっそうなんですか、俺はそんな風に思ってなかったですけど」
「アイツも俺たちと同じ天神将メンバーだけどさ、変に雪華びいきというか、雪華が絡むと容赦ないって言うか」
「だな、俗に言うナイト的な、護衛的な奴か、正直頭もいいし腕も立つ、雪華と同じで規格外だしな」
「でも日本人じゃ無かったですよね」
「メルリア人だったな」
「そっ、ただどこまで本当の事を言ってくれるかは別として、とりあえず探したんだよね、そして私としては締め上げたいわ、色んな意味で」
そう言った雪華の目が笑ってない、こういう目をした雪華に手を出すのは得策ではないと知っているのは天神将メンバー及び元プレイヤー達である。既に威圧・恐怖・怒気と言った負のオーラ出しまくっている。
「と、とにかくわかった、姉貴がピートさんを捜したいために冒険者に戻りたいってのはわかったから、そのとんでもないオーラを収めてくれない、怖いわ」
「あぁ~ごめん」
これがゲームをしていたときの雪華かと思った非プレイヤー達は、今じゃそのオーラを感じることが出きる為、冷や汗をかいていた。
「でぇ冒険者カードは本名だろう、どうすんだよ」
「そこはあれだ本部のギルマス交渉して対応して貰う、実際ゲームで使っていたネームを使うわよ」
「そっか、でもそうなると分身に領主の役目なんて出きるのか?」
「大丈夫よ、この分身とっても便利でね、私自身と同じだから思考共有も出きるし、同時に私がそこにいるのと同じだから、普通の人が見分けることは無理ね」
「冒険にでたら、そう簡単に戻れないんじゃないのか? もし領土で何かあったらどうするんだ?」
「それも大丈夫、テレポートすればいいから心配ない」
そう言った雪華の言葉に、思い当たる節を見つけた神崎家の面々とその使用人達、元々陰陽師や魔術師だけではなく超能力的な力も持っていたと思い出したのだ。
それもあって子供の頃は虐待されていたのだが、祖父母に育てて貰った事でひね曲がらなかったのだ。
稚拙な文章をお読みになって頂きありがとう御座います。
ご感想に対する返信返しは超苦手なので、出来ないことが多いかもしれませんが、長い目で見ていただけると幸いです。