03話 ウィステリア城への帰宅
翌日、朝食を済ませると商隊と護衛について雪華も同行することで合意を得た。村のみんなと別れて出発することになった。
「ここからどのくらいで領都に着くんです?」
「ここからだと半日とちょっとって所ですね、夕方前には到着すると思います」
「領都の門番に身分証明書(IDカード)を見せなきゃならんが、レティシアちゃんは持っているかい?」
「えぇ大丈夫ですよ」
守護者経由で夏椰から身分証明書(IDカード)と冒険者カードは通用すると聞いた。それにしても半日ちょっとって言うのはどういう事かと思った、ゲーム時代はもう少し距離があったはずだと思ったのだ。
そのため地図を見せて貰うと完全に知っている地図ではなくなっている。いや正式には自分が造ったシナリオの地図になっていた。これも次元移動とかの弊害かと思ったのだ。
途中魔物も数体でたが、護衛パーティーが撃退していた、一番レベルの高いパロル隊長以下は現時代のCランクが殆どだ、と言うことは300年前で言えば、まだ予備校ランクである。
ただLVはそれぞれ違うようだが、とりあえず領都までなら乗り切れるパーティーという事らしい。が、雪華としては可笑しいを思っている、本来ウィステリア周辺は強い魔物が盛りだくさんだったはずだからだ、なのに、これランクでレベルの冒険者が通れるはずが無い。その疑問をパロル隊長に聞いてみた所、領主家の方々が強い魔物を狩って下さっているという返事がきた。それで一応の納得はしておくことにした雪華である。
夕方近くに領都に到着、門番に身分証明書(IDカード)の提示を求められロドリア商隊は領主家の依頼を受けていると話した。
それを聞いた雪華は驚いた、依頼って家かと、続いて「暁のファルコン」の隊員達が身分証明書(IDカード)を提示した、彼らも領主家まで護衛をする依頼との事だった。
そこで雪華は溜息を付いて門番に自身の身分証明書(IDカード)を提示して「口を開くな、そのまま黙ってここを通しなさい」と命令口調で言った。
「はっ、はい! ですが少々お待ち頂いてもよろしいでしょうか?」
「理由は?」
「上司への報告をするよう命じられています、そう時間をお取りすることはありません」
「却下! ここで騒がれたくはない、私たちを通した後に報告しなさい、私がそう言えと言ったといえばばいい、それで貴方に何か罰則でも与えるなら、逆に私が貴方の上司に対して罰則を与える、そう言いなさい」
「はっ、わかりました。ではお通り下さい」
このやり取りを見ていたロドリア商隊や暁のファルコンの皆は驚いて、雪華の顔を見ていたが、雪華が先を急ぎましょう後がつかえていると急かした。
「あのいったいどういう事ですか?」
「門番が驚いたりしてたな」
「気にすることはないわ、城に向かいましょう」
雪華がそう言うと、そのまま領主家の城に向かって馬車が走り出した。途中ロドリアさんがレティシアさんは宿屋に行かれるのでは?と聞いてきたが、宿屋に用はないから、そのまま一緒に領主家にいくと伝えた。
雪華は馬車の中から町の様子を見ていたが、所々に藤ノ宮の面影が残っている、とはいえ昔の高層建造物は存在しない。
「でぇいったい何を領主家から依頼されたの?」
「それは依頼主にお渡しするものですのでお見せできませんが、鉱石ですよ」
「鉱石?」
「はい、とても貴重なもので滅多に採れないものだと言われているものでして、火龍の島と言われる所から採掘されたものを受け取って、それを持ってくるのが依頼です」
「火龍の島? そんな島あったか?」
『かつての榊島です』
そこで久しぶりに声を聞いた残滓の「見通すもの」が説明して納得した。そこは魔素が多すぎて普通の人間には対処できないはずだ、というか最後の日までずっと噴火していたはずだけどと思い出した。誰が採掘なんてしているんだ?と不思議に思った。
「噴火を続けている山があって、そこで採れる鉱石です、領主家の所有島なんですが、誰が採掘しているのかは不明なのです。ただ島の入り口で受け渡しを行って居ます」
「島の入り口? えっと海の孤島じゃ無かったっけ?」
「いえ、一応陸地で繋がってはいるんですが、魔物が多くしかも強いので、必ず護衛が居なければ入り口まで行けません」
「その入り口以降はもっと強い魔物がいるって噂だせ」
そりゃそうだろうと雪華は納得している、次元移動前から魔素が多かったのだ、しかも次元移動後のこっちは空気も含めて何もかもが全て魔素でできている、あの島の魔素もその影響を受けていて然るべきなのだ、なのでいったい誰が採掘しているのか謎である。そんな事を考えていると山裾に近づき、屋敷が見えてきた。
「………でかい」
「そりゃ領主家ですからねぇ、大きいですよ」
「いや、そういう意味じゃなくて……」
何なんだと雪華は頭を抱える、自身が造った城であるのは間違いない、しかし規模がでかくなり過ぎていると思ったのだ。
「さぁもうすぐ城門です、また身分証明書(IDカード)を提示しなければなりませんので、準備をしておいて下さい」
「わかったわ」
「おい、どうしたんだ、レティシアちゃん何か怒ってる?」
「別に怒ってはいないわ」
雪華の目は据わっている、そしてデカくなった城を睨みつけていたのだ、何がどうなってこうなるのか、そしてこの意味不明の状況に対して怒っている。恐らくヒントを持っている人物がこの世界に居ることを願っており、居たら締め上げると誓っていた。
馬車は城門に着き門番が皆の身分証明書(IDカード)の確認をしている最中に、雪華も馬車を降りて城全体を見上げた、そして僅かに結界が張られているのを確認する。そしてロドリアさんから声がかかるとズカズカと門番に詰め寄った。
「月宮はいるわよね?」
「こ、これは領主様!」
「えっ? 領主様?」
「領主って、じょうちゃんが??」
「居るわよね月宮!!」
「雪華様、よくお戻り下さいました」
「お待ちしておりました」
「月宮、小花衣あなたたちだけ?」
「雪姉ぇ~~~」
「姉貴!」
門番は驚き、ロドリアさんとパロル隊長は誰が領主?と不思議顔、そして勢いよく城から飛び出してきた月宮と小花衣、そして夏椰に続いて他の家族も全てが出迎えた。
「雪姉ぇやっと戻ったわね」
「秋枝も居たんですか」
「もって何よ!」
「……あっごめん」
「とりあえず詳しい話は中でしなさいよ雪華」
「春姉ぇ……ご無沙汰ですね、お元気そうで」
姉妹で話をしている間だ、夏椰は混乱状態のロドリアさん達の所に行き説明を始めていた。月宮と小花衣は商隊からの依頼を受け取っていた。
「夏椰様これはいったい?」
「あぁすみませんねぇ、姉貴って俺と同じでスキルマスターなんだよ、だから姉貴の迷宮が起動を始めたと俺の迷宮の守護者から連絡を受けて、姉貴が戻った事がわかったんだけど、姉貴から城に戻るまでは内密にしろって言われてて」
「そうだったんですか、どうりでお強いはずです」
「強い?」
「夏椰様と会った時と同様にビッグベアを足蹴りで一撃でしたから」
「はは……、足蹴りだけで済んだならマシなほうだよ、姉貴なら消し炭くらいしかねないからねぇ」
そんな話をしている所に雪華がやってきた。
「夏椰、聞きたい事が山ほどあるんだけど……ちゃんと説明してくれるんでしょうね??」
「……わかってるって、説明する、っつか何でこっち来るの遅いんだよ!」
「こっちが聞きたいわ!」
「まぁまぁえっとレティシア、じゃなくて領主様ですよね、どうして名前を変えていたんですか?」
「私自身混乱もあったんだけど、レティシアって名前は私の偽名でもあるのよ、主に外で遊ぶために……本名出したら気晴らしできないでしょ、それに冒険者も出来ない!」
「まぁ確かに……」
「だから今後外で会ったらそっちで呼んで、レティでも良いからね」
そう言われた二人はどっと疲れが出た気ぶんである。まさかまた領主家の方と関わりを持ってしまったと、しかも今度は領主その人であったのだ。雪華は月宮に道中のお礼もかねて多めに依頼料支払うよう命じた。
稚拙な文章をお読みになって頂きありがとう御座います。
ご感想に対する返信返しは超苦手なので、出来ないことが多いかもしれませんが、長い目で見ていただけると幸いです。