01話 超越者迷宮、花の神殿
兎人族の女性とロドリア商隊とその護衛の「暁のファルコン」のリーダーパロルのついて行くこと、10分程歩いた所に村はあった、のんびりと静かな村だなぁと思いながら、村に入った、その村には色んな種族の者が仲良く暮らしている様子が窺える。
「着きました、ここですよ」
「白兎亭?」
「そう、夫が白兎なんです、それにちなんで名付けたんです、食事だけでもいいし泊まりも出きますよ」
「へぇ~」
「それでは、皆様宿泊台帳にお名前をお書き下さい」
ここで雪華は悩むどうすればよいか、そこで脳内残滓が借り名としてゲーム時の名前を言っておくようにと助言があった。先に商隊や護衛の人たちが台帳に名前を書いていた。
「ほれお嬢ちゃんも」
「あぁはい」
雪華は言われたように台帳に名前を書いた、驚いた事に普通にこの世界の文字を読めて書くこともできた、何でだ?と思いながらスラスラかいたのだ。
「レティシアさんですね、私はここの女将でエマと言います。では皆さんの部屋の鍵を持ってきますので、そちらに座ってお待ち下さい」
「あんたレティシアさんっていうのかい」
「えぇまぁ」
「しかし凄かったですねぇ~あの一撃は」
「そ、そうですか?」
「そうそう、20年ほど前にもあんたみたいに足蹴りでビッグベア2匹倒したお人と会って助けて貰ったんだ」
「さっきも言っていましたね、そんな事」
「えぇその時もパロルさん達に護衛を頼んでいたんですよ」
「あの時はまぁ驚きの連続だったがな」
「驚きですか? 何かあったんですか?」
「パロルさん!」
「あぁぁ~~すまん」
そこで犬族のロドリアが少しキツメに何かを言いたそうにパロルを睨んでいた。それを見た雪華は何か言えないことでもあると感じ取った。そんな所に女将であるエマさんがそれぞれの鍵を持って姿を見せた。
「ロドリアさん今回は何日くらいいらっしゃるの?」
「きつい旅だったんだけど、三日ほどで立ちます」
「あら、短いですね、いつもは一週間程いらっしゃるのに」
「早めに領都に届ける必要があってね、とはいえ休息は必要なので」
「そうですか、わかりました」
「すまないね、女将」
「気にしないで下さいな、パロル隊長」
女将と商隊の人たちが話をしている間、雪華は周りを見回した、ゲームをしていた時はもっと賑やかな村だったと記憶している。なのに静かなのは何故か?
「あのぉ~ここメレル村ですよね、って事はウィステリア領の城下町の北方に位置する所ですか?」
「そうですよ」
「そうなんだ、それにしては少し人が少ないような気がするんですが……」
「前に来たことがあんですか?」
「えぇまぁ、聞いたことあるなと思っていたんですけど、賑やかな村と聞いたことがあって」
「確かに昔は城下町が近いため人の往来も多く賑やかな村だったらしいですよ、それに超越者の迷宮「花の神殿」今じゃ通称「深淵のダンジョン」って言われてるけど、それが近くにある事もあり冒険者ギルドも置かれていた、けれど300年程前の大戦争と大災害で、めっきり人は来なくなってしまって」
「300年前……? でぇどうして迷宮があるんだったら、挑戦する人がいるんじゃ……」
エマと雪華の話を聞いていたロドリアとパロル隊長も話に加わった。
「本来ならそうなんだろうがな、どうも深淵のダンジョンに挑戦して戻ってきた者は誰もいないって言われてる。まず魔物が出る、さっきの魔物よりも強い魔物を倒さなければ神殿に近づけやしない」
「あそこは季節によって色とりどりの花や樹木があるって言われており、香草や薬草も豊富だって言われているので、我が商隊もそこで採れる薬草や香草が欲しいんですがね、それに神殿にいかずとも、花や木々を見るだけでもできたらあなぁって思うんだけどねぇ、強い魔物がいちゃ一般人には無理なんですよ」
「討伐専門の冒険者に依頼すれば、行けるんじゃないですか?」
「バカいっちゃ行けないよレティシアちゃん、あそこは冒険者ランクAのパーティーが何組みが合同で組んで行かなきゃならないって話だ」
「はっ? Aランクのパーティーが何組みも組んで………」
「Aランクってのは超一流の冒険者を言うんだよ、冒険者ギルドの本部にいるギルドマスターがそうだね、でもAランクの冒険者はそう多くは居ないんだよ」
「Aランクが少ないんですか??」
「そうBランクで辛うじてLV100かそれに近いくらいだからなぁ、Aランクは多くない」
「えっ………」
「それにあの神殿は魔女の神殿とか破壊神の神殿とか言われているしなぁ」
「……そう、なんですか……」
雪華はエマやロドリアとパロル隊長の話を聞いてタラリと冷や汗が出る思いだった。とりあえず部屋の鍵を貰って自室に行き、現時点での情報を整理することにした。
まず自分が管理していた神殿がまだ存在している。そしてゲーム内では定期的に戦争クエストがあった事とブラックホールに飲まれる前までは、確かに戦争も大災害もあった、残滓「見通すもの」は重なってるって言っていた。極めつけに冒険者ギルドが撤退ってあり得んとも思ったし300年前って何だって事になる。
「これは自分の神殿に行くしかないわね。それより残滓! 私の質問に答えてくれる?」
『はい』
「300年前って何? 次元移動でそんなに経ってるの??」
『理由はわかりません』
あっさりとわからないと言い切った。それに対して雪華は唸りながら窓を開け放ち、見える全てに神経を行き渡らせて神殿の気配を探った、暫くすると見つけたのだ。そして明日行くことにした。
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翌日目覚めた雪華は朝食を食べた後に出されたコーヒーを飲んでいた、少し苦いと感じながら飲んでいた。
「昨日はよく眠れました?」
「えぇよく眠れました」
「そうですか、それは良かった」
「あの、少しお伺いしますが、魔物がでるって言っていましたよね?」
「えっ、あぁ村の外は魔物が出るけど、昨日の様な強すぎるビッグベアは滅多に出ないんですよ、深淵の迷宮に行くまでの森の魔物は、その辺のとはかなり違うらしいですよ」
「かなり違うんですか?」
「昨日ロドリアさんやパロル隊長さん達が話していたでしょ、冒険者ランクが低いと森にすら入れないんですよ」
「そっ……そうですか」
昨日のビッグベアを倒せない冒険者ってのも気になるけれど、とにかく神殿に行くしかないと思ったが、正直に話すと厄介な為、村を散歩してきますと言って宿を出た。
そしてこっそり村を出て神殿の方へ向かった。暫く行くと森の中に入ったが、出てくる魔物は殆どいない。
気配はするのだが雪華に近づかないのである。ここで雪華は一つの鍵を取り出した。自身の神殿の鍵、ディナの花を象った鍵だ、それを空に掲げてキーワードを言った。
『始祖を守りし神々よ、花の神殿の扉を開ける事を願い賜う!』
すると足下に魔法陣が現れそれが自身を包み姿が消えた、そして一瞬にして神殿の深層部にある場所に出てくる。周りは薄暗く長年放置されたままの様相、古代神殿の様な部屋の玉座に一輪のディナの花があった、それに魔力を注ぐと古代中国の服を着た式神が姿を見せたと同時に部屋も綺麗になった。
「マスターお久しぶりです、お会いしとうございました」
「お久しぶり、最後の日以来かしら?」
「はい、マスターは戻ってこられたのですね」
「戻ってきたというか、よくわからないのよ、いったい何があったのかを聞こうと思ってここに来たんだけど、知っていることを全部話しなさい」
「かしこまりました」
雪華はディナの花が置いてあった玉座に座って目の前で膝を付きマスターである雪華に何があったのか知っていることを全て話した。
稚拙な文章をお読みになって頂きありがとう御座います。
ご感想に対する返信返しは超苦手なので、出来ないことが多いかもしれませんが、長い目で見ていただけると幸いです。