プロローグ3 夏椰……冒険者ギルドでの真実
「暁のファルコン」のリーダーパロルさんに連れられてケセウスの町にある冒険者ギルドにやってきた。
ここでの目的は自身の冒険者登録である。とはいえVRMMORPGゲームハイフリーワールドと同じ体制であるならば、冒険者予備校に行かなければならないはず、と言うことを今更ながらに思い出した夏椰は、そのことをパロルに聞いた。
「あぁそうだ、だから俺が連れていくのは冒険者ギルドではなく、予備校の方な」
「やっぱり……」
「でもお前さんビッグベアを倒していただろう、しかも足蹴りで、たぶん直ぐGクラスを卒業してFクラスになれるだろうよ」
「……一応冒険者カードは持っているですが、それが通用するか解らないんですよ」
「冒険者カードを持っているのか、早く言えぇ!! 見せて見ろ!」
パロルはそういって夏椰に言った、夏椰の方は持っているカードに対して苗字がでている事で見せるのを躊躇った。
「何だ? 見せられないのか?」
「あぁ~~まぁ見られたくないものもありまして……」
「なるほど、それなら仕方ない、じゃこのまま冒険者ギルドに行こう、だがそこでは見られるから覚悟しておけよ」
「解りました」
パロルはそういって来た道を少し戻って別の道を行く、暫く歩くと冒険者ギルトがあった、中にはいるとゲーム時代と同じだなと言う感慨だった。
「ようパロルさんじゃねぇか、久しぶりじゃねぇか」
「最近見なかったけど、どこに行っていたんだ?」
「ロドリア商隊の護衛で遠方に行っていたんだ、この後もまだ護衛の契約は続いているんだよ」
「じゃ何しにきたんだよ、そっちの兄さんを勧誘しに来たのか?」
「違げぇよ、この兄さんの冒険者登録にな」
周りから色々言われているが、パロルのレベルは72程度だ、まだここでは高いほうである。
夏椰はギルドに入った時にある程度サーチをしたがパロル並のレベルの者はいない、殆どが30~50前後といった所である。
そんなパロルや他の冒険者の話を聞きながら、案内されたカウンターで夏椰は大きな溜め息とともに冒険者カードを提示し登録が出きるのかカードが使えるのか確認をした。
だが受付の兎人族のお姉さんが驚いた顔をして何度も夏椰とカードを見比べて、「少々お待ち下さい」とカードを持って奥に入っていった。
「ん、おいミラなんなんだ?」
「ミラ?」
「あぁあの受付の兎人族のねぇちゃんの名前だよ、お前のカードを見て驚いていたけど、お前何かしたのか?」
「何をするんだ?」
暫くすると戻ってきたミラと言われる兎人族のお姉さんが、夏椰に対して丁寧に接して二階のギルドマスターの部屋に通された。この町のギルマスはエルフであった。
「えっと……エルフ族?」
「はいそうです。あなたが夏椰・ウィステリア様だったんですね」
「…………やっぱりか、カードの名前の確認ですね」
「はいウィステリア領の領主様の弟君でお間違いないですか?」
「ちなみに聞くが、ウィステリア領主の名前は?」
「雪華・ウィステリア様です、今現在もって行方不明です」
「はぁ~~~やっぱりか」
夏椰は再び大きな溜め息をついて納得した、やはり姉貴の統治しているウィステリア領で間違いないと、そして以前名乗っていた神崎と言う姓は完全にウィステリアという姓に変わっている事を認識した。
「悪いがいくつか聞きたいことがあるんですが、お答えいただけますか?」
「はい、私で解ることなら」
「ここに来るまでの間、ロドリア商隊の方やパロルさん達から色々聞いてはいるんですがね、正直よくわからなくて、何があったのかを」
「300年前の戦争は領主様の結界のおかげで王都とこのウィステリア領は守られましたが。その後の大災害で地形が変わり、地図も変わりました、ただウィステリア領は領主雪華様の結界のおかげで大きな壊滅は免れた様です。ですがウィステリア領主家の方々と迷宮管理者の方々が行方不明になったのです。そして神々のお告げから領主家は今はそれぞれの場所で眠りについていると伝えられています」
「眠りにつく??」
「はい、あの戦争や大災害で多くの魔力を消費した為との事です、そして丁度去年ウィステリア家のSランク冒険者の家令をされていた方が戻られたと報告があり、もしかすると領主様一家も戻られるのではないかと領民は期待を込めて待っているのです、そんな時に貴方が現れましたもので」
「その報告ってどこからあったんですか?」
「王家からです」
「王家??」
「はい、王家に神の使いが来られたそうです」
「領主家が行方不明になっている間って誰が領地を守っていたんだ?」
「それは精霊達だと」
「……精霊達……って本当に信じてるのか?」
「はい、領外や領内にでる魔物は精霊達が排除しています、これは魔素を多く持つ者が確認していますので、間違いないと思われます」
話を聞いた夏椰はますます解らなくなった、正直何が起こって眠っているだの精霊が守っているだのという話になるのか、元々神崎家は陰陽師一族であるのは確かだが、榊性を名乗っていた直系一族で陰陽師の力を持っていたのは雪華以外いなかった。
だがここはVRMMORPGゲームハイフリーワールドの世界そのものであり、自身はゲーム時同様魔法を使えておりステータスは一部の違いはあるが完全にゲームの自分自身である。これは一年前に戻ったという家令に聞くしかないと思った、恐らくは月宮さんだろうとあたりをつける。彼もVRMMORPGゲームハイフリーワールドのスキルマスターだったはずだからだ。
「あの夏椰様、如何されました?」
「あぁ~すみません何でもありません、少し考え事をしていただけです」
「そうですか、何か粗相をしたのかと」
「……粗相って、何で?」
「えっと…、その領主様の弟君ですし、あの領主様を怒らせてはならないと王家からの通達もありますので」
「……それは、あれか姉貴の異名破壊神だの無慈悲なる魔女とかいうあれ?」
「はい……まぁそうです、あの方は家族に対して何かあれば大変ご立腹され、下手をすれば国が消えると伝えられておりますので」
あぁぁ~何となく納得した夏椰、実際VRMMORPGゲームハイフリーワールドで遊んでいた時、たまたま雪華と待ち合わせをしていた時に、気性の荒いパーティーに絡まれた事があった、しかもプレイヤーキラーをする連中である、そこに雪華が現れたものだから、あとはもう、相手は酷い状態にされていた。
極めつけに「私の弟に何するのよ!」っと本気で激怒して相手に報復していた後パーティー全てに垢バンしたのを思い出した。
それ以降自分のギルドはレティ(雪華)の名前で守られていた気がする。
「なるほど……でもまぁ、今はまだ姉貴は戻ってないんだし気にすることはないと思うよ、それより俺の冒険者カードは使えるんですかね?」
「はい、それは大丈夫です、ステータスもそのままで、スキルマスター冒険者でいらっしゃいますからSランクとなります」
「人外レベルって事か……」
「いえ、Sランクはスキルマスター冒険者と言われるランクです。つまり神々に与えられし迷宮管理者という証でもあるという事です。300年前のSランクは人外レベルと、そう呼ばれていたようですが、今の人外レベルというのはLランクになります、それはレジェンドマスター冒険者と普通は言いますが、今の時代では神々に選ばれし超越者という意味の事です。さらにその上にSLランクと言うのがありまして、これが規格外レベルと言われて、一部では至高の存在とも言われています。今ではEランクでもLV50に届きません、CランクでLV50前後という所でしょうか、Bランクで辛うじてLV100かそれに近いくらいです」
「何っ!」
「恐れながら夏椰様の冒険者ランクは判定に表示されても、高レベル数値の場合は一般の者には見えないでしょう、私は判定人でもありますのでランク表示もレベル数値の表示も本来なら見えますが、夏椰様の様に高レベルの方は、つまり自分よりも高い数値の方は、ランク以外の数値は見えません、またSランク以上の方々が何人居るのかまではわかりますが、誰がどの迷宮管理者かまではわかりません。更にLランクやSLランクの方々の場合はランクの人数しかギルドマスターにもわからないのです」
ギルマスの話を聞いた夏椰は唖然とした、そしてギルマスをサーチしてみて更に愕然とした、レベル200以下で190代のAランクであった。冒険者レベルの低下を目の当たりにした気がしたのだ。そして頭を抱えた。この世界にはAランク以上が希であること、それ以上が居ないこと、というか三桁レベルがほぼ居ない事を意味する。とりあえず月宮さんに会う必要があると結論づけた。
「とりあえずギルドマスター、俺の事は暫く内密にして欲しい」
「内密とは、また何故」
「俺としてもまだ情報不足があるし、領主家の人間が戻ったなどと知れたらパニックになるというか、俺が自由に動けないからだと理解して欲しい」
「しかし冒険者ギルドの本部には報告しなければならないのですが」
「本部への報告は仕方ないが口止めしておいて下さいよ、最低でも姉貴が戻るまでは内密に、それと王家にもまだ話さないで欲しい、屋敷に戻って家令の月宮さんと話をしてからこっちから報告する」
「解りました」
「後もう一つ!」
「はい、何でしょう」
「……魔物のランクとレベルは300年前と全く変わってない、今のレベルの冒険者だと死人が量産されるぞ、その辺ギルマスとして考えておいて欲しい」
「かっ、畏まりました」
ギルマスとの話が終わり冒険者カードの更新を済ませた夏椰は、1階で待っていたパロルさんと共に宿屋へ向かった、途中何でギルマスに呼ばれたのかと色々聞かれたが、冒険者カードの更新をせず討伐したから、ちょっとした注意とお説教と誤魔化しておいた。
稚拙な文章をお読みになって頂きありがとう御座います。
ご感想に対する返信返しは超苦手なので、出来ないことが多いかもしれませんが、長い目で見ていただけると幸いです。