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18話 物理世界の終焉

いつも稚拙なお話を読んで頂き、ありがとう御座います。

今回で第1章「物理世界編」が終了となります。


次回は第2章 次元移動後のお話になります。

稚拙なお話ですが、今後ともよろしくお願いいたします。


 11月中旬、隕石の報告が入ってから雪華は直ぐに浅井賢吾に連絡を取った。彼も日本に戻ってきており国立天文台に行っていた。


『雪華か!!やっと起きたのかこの寝坊助』

「悪かったわね寝坊助で、でぇいったいどうなってんの?」

『以前から観測していたんだが、太陽付近から飛んできているようだ』

「何で太陽付近? あそこそんな隕石無いでしょ」

『黒点が増えていたのは知ってるだろう?』

「えぇ知っているけど……太陽の活動が変になってるの?」

『それもある、周辺の星も太陽に吸い込まれている』

「……吸い込まれる? ぶつかるじゃなく?」

『重力場がつよくてな、ぶつかるという表現よりも吸い込まれるっていう方が正しい』

「それさぁ…よくないよね」

『良くないどろこじゃねぇ、それ以外にも問題がある』

「問題?」

『太陽の近くになんか知らんが巨大ブラックホール並の重力場を検知した』

「はぁぁ~~~???」

『だから、太陽に吸い込まれるというか太陽が吸い込まれているんじゃないかっていう科学者もいて、もうこっちは訳解らん状態』

「なんでいきなり、巨大ブラックホール並の重力場が出来るのよ! そんな兆候あった?そこにブラックホールなんてなかったはずじゃ、もっと奥だったと思うけど……」

『だからわからんって言ってんのぉ~~~』

「いっ、隕石はどこに落ちるの!! 規模は??」

『まだ計算中だ、突然できたブラックホールの件もあるしな』

「とにかく何か解ったら教えて、連絡難しいかもだけど」

『わかった』

「危険だと思ったら逃げなさいよ!!!」

『おうぉ、わかった』


 通信を終了して、雪華は空を見上げて見えている隕石と日本の衛星を睨みつけた、恐らくもう時間がない、最後の日は近いと感じた。

 そしてまだ誰にも話していない夢の事、ここにきて漸く夢の事を思い出した事、胸に手を当て今ではハッキリと自覚できている、あれは自分の魂の欠片であること。

 周りを飛んでいた光の筋は既に死んだ者達の魂だった事も理解できていた。


「はぁ~~~~。どうすんのよ、これ……」


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


 元クラスメイトの賢吾と通信をして一週間後の11月下旬に入った頃、アジア大陸に隕石が落ちた。

 おかげで大津波が日本を襲い、日本海と宋国半島は消えてしまいクレーターが出来ていた、半径10Km程のドデカい隕石だ、そのため気象環境が更に悪化、豪雨と落雷があちこちで発生した。


 大津波の後に落ちたため一体の海水は水蒸気と化していた。影響は首都圏や神崎領にまで及んでおり、結界で守られてはいたものの雪華の結界力を越える、地震という形で影響はあり地割れがおきて道路の遮断なども頻発し避難活動に影響を及ぼしていた。


 12月に入り今度は日本の唯一残っていた人工衛星が隕石の軌道に押されてインドシナ海に燃えながら落下した。これで更に津波が発生落ちた周辺国は壊滅状態になり、これで国内にいても通信は完全に遮断された。

 残る情報は天文台からの情報だけであるが、これをどうやって伝えるかという所で政府筋は紛糾していた。既に突然できた巨大ブラックホールの存在が明らかになり、逃れるすべがないからだ。

 少しずつ地球も引っ張られている様だとの報告があったばかりであるが、国民には知らせるすべがない、いや知らせてもパンデミックになるだけであった。

 ぞんな中神崎家では雪華がリビングで呟いた一言が家族を驚かせていた。


「ん~~~もう限界だわねぇ」

「ん? 限界?」

「何が限界なの雪華」

「もう間違いなく今月中が最後の時だわ」

「最後の時って……それって」

「うん、もう何も出来ない状況って事、恐らく地球はあの突然できた巨大ブラックホールに飲み込まれるわね」


 あっさりした言い方で言う妹を前に姉の春菜は唖然とし、他の家族もとうとうその時がきたかとか、何とかならないのとか雪華の物理攻撃回避の魔法が張られているから大丈夫とか色々言い始めていた。

 しかしそれに対して雪華はあまりにも絶望的な言葉を言った。


「いくら私が張った物理攻撃回避魔法でも、相手が巨大ブラックホールの様な超重力磁場から逃れられる様な魔法とは思えないんだけど」

「でもいくらかは持ちこたえられるじゃないのか?」

「父さん……あの質量だよ、その前に太陽飲み込んだ瞬間に地球は凍るわ」

「あっ……」

「それにね、地球のオゾンはもう殆ど無いのよ、結界で守っているから、辛うじて日本人は生きているけど、恐らく各国はもう生きてないかもしれない」

「オゾン層がない……」

「ねぇ夏椰中央政府との連絡って今も出来てる?」

「隕石が落ちた時点で出来てない」

「やっぱりね、っとなるとあそこもかなり被害を受けているだろうし、今の状況で下手に首都圏を出れば自殺行為でしかないわね」

「じゃここは。どうなんだ?」

「一応結界を張ってある場所は大丈夫だけど、巨大ブラックホールに吸い込まれたら。もう個々に何をしてもどうなるか解らないと思うわよ。ちょっと想像したくないけどスプラッタと思った方がいいかも」


 雪華の言葉で皆が口を押さえたり、顔をしかめたりした。状況的に想像は付く、特に理系を、学んでいる人間にとっては。


 雪華の言葉を受けてから家族だけではなく使用人達にも通達し、思い残すことのない過ごし方をするよう命じた。

 そして領民には黙っておくようにと通達をしたのだ。ここでパニックになられても困る、普段通り普通に生活をしてほしかったからだ。

 ただ分家の神崎家にだけは報告し、同じように領民には口止めをするよう通達した。そして体調を崩すのを覚悟の上で御陵屋敷の信之介と璃桜の墓参りをした。最初で最後の墓参りであった。


「大丈夫ですか雅彰叔父さん、成彰兄さん」

「あぁ大丈夫だ、最後にちゃんとお参りが出来て良かったよ」

「無理を聞いてもらってありがとうございます。雪華様」

「分家とは家身内ですから」

「おまえはこれからどうするんだ?」

「私はいつも通りですよ、最後までいつも通りに過ごします、悔いは残したくありませんしね、だから成彰兄さんも好きなことをしてください、勿論叔父さんもね」


 雪華が二人にそういうと笑顔で屋敷を出ていく二人を見送った。既に重力の影響で日本の周りの大陸は崩壊し上空にあがっていく様子まで見られるようになっていた。

 首都圏と神崎領だけは結界で守られているため、まだそこまでの影響は出ていないが、日本の大陸も少しずつ崩れてきているのは地震の揺れで確認がとれる。

 この頃になると、領民も不安を抱き始め巨大ブラックホールの情報が流れ始めている。あわてても仕方がないと領主自ら話しているため、皆覚悟を決める事に意識を向けるよう努力をしていると言った所だ。


 そして少し前、夜明けの強襲がある直前に中央から強制的に保護するようにと連れてこられた皇室の皆さんがいた、正直請け負いたくは無かった雪華は、かなり中央と激しい言い争いをしたのだ。

 皇居には昔から結界が張ってあるからと言っても聞き入れない、最後には陛下まで出てきてしまう始末に諦めて受け入れた。

 

 当然領外の神崎家の屋敷に避難をさせた。彼方の方が神崎家としての対応が出来ると判断したからだ。そして現在12月中旬に陛下の所から使者がやってきて雪華を会いたいと言ってきた。拒むわけにもいかず、小花衣を伴って神崎家に赴いた。


「お呼びと伺い、拝謁致します陛下」

「当主……そう固くならずとも良いですよ、顔を上げて下さい」

「しかし……」

「構いません、そしてあなたにはお伝えしておくべき事が在ります。我々は知っていますので」

「えっ?」

「代々天皇なる直前に口伝があります」

「口伝……ですか?」

「はい、それはあなた方神崎家の始祖に関することです」

「はっ?」


 天皇がいきなり話した「始祖」に関すること、神崎家の興りが神々の頂点にいる「始祖」が人と交わって生まれた一族であることを、そしてその生まれ変わりが雪華である事を啓示を受け知っていると話した。


「もう時間が無いのだと、伺いました。そのため口伝の事をお伝えしておこうと思ったのです、もう口伝を続ける必要がなくなりましたので、そしてお礼を申し上げたいと」

「……えっと、何故礼を言われるのですか?」

「国民を守って下さるために力をお使いになったとか」

「あぁ~それは違います。一応私も日本人ですから、それに神崎領民を守るために動いただけで、国自体に結界を張ったのはついでです」

「それでも、感謝を致します」

「……はい、こちらこそお会いして頂きありがとうございます」


 雪華は天皇にそういうと横にいる皇后にも頭を下げた、そして更に本来なら次の天皇になるはずの皇太子がそこにいた。


「……申し訳在りません、皇太子様の御代が続けられません」

「それは気にしなくても良いのです、ここまで頑張って下さったのですから」


 若い顔立ちでまだ、既に30代で未婚である。未来を夢見ていただろうと思いながら皇室の方々に一礼して挨拶を終えて帰宅した。


 12月25日雪華の26歳の誕生日、屋敷内は雪華の最後になるかもしれない誕生日会をしようと準備をしている。それに対して雪華はそんなことしなくて言いと笑って言いながら御陵にお参りしてくると一人で出かけた。

 同じ神崎家の敷地内でもあるため、護衛はいらないと断り一人で御陵に来ていた。既に璃桜も彼方に渡って久しい、そこには誰もいないが雪華はここでの思い出が割とある。

 昔住んでいた榊家の蔵での思い出や、璃桜との会話、そして怨霊となった信之介が少しずつ邪気を薄めていく様子も見ていた。


 いろんな術を教えてもらったこともある、当主としての心構えなどは昔と今ではだいぶ違うことではあったが基礎として素直に聞いていた。


「もうお別れだよ、信之介様、璃桜様、恐らく今日飲み込まれると思う、でもね私にやれることはやったの、悔いはない。自分が始祖の魂を持っているって事は何となく理解は出来たけど、正直それで何って感じなんだよね、私は私だし……」


 そんな話をしている間に風が強くなり重力を感じるようになってきた。そろそろ飲まれるなと感じながらも、しっかり今の藤ノ宮の姿を目に焼き付けていた。雪華は何度か自身の術で立っているが、恐らく屋敷のもの達は立っていることは出来ないだろうと解っていた。


 そのころ屋敷では雪華の思った通り皆が床に這い蹲って重力に逆らおうともがいていた、人の力ではあらがえない自然の力に負けていた。そしてその重力のため気を失っていく者も出てきた。


それから暫くして、地球はそのまま巨大ブラックホールに飲み込まれていった。

稚拙な文章をお読みになって頂きありがとう御座います。


ご感想に対する返信返しは超苦手なので、出来ないことが多いかもしれませんが、出来るだけ頑張りますので、長い目で見ていただけると幸いです。

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