15話 夜明けの強襲
8月中旬に雪華が総理と通信で話した二日後の夜明け、いきなり爆撃された。その音で叩き起こされた領民や国民は何が起こったのか解らず呆然としていた。
「雪華様! 起きてください」
「何っ今の音!」
「解りません、領内やその周辺だけでなく首都を含めて攻撃されています」
「何ですってぇ~~」
雪華は飛び起きて窓を開けて事態の把握に勤めた、時計の針は四時をさしていた。精霊や式神を飛ばし自身も術を使って情報を取ろうとした。そんな中、家令の月宮が駆け込んできた。
「雪華様、首都圏総理から緊急通信が入っています」
「解ったわ、直ぐにいく、小花衣達を含めてすべての術者や地域の指導者に通達を出し、事態の把握に勤めなさい、そして住民の避難と被害状況の把握を急いで、総理と話をした後神崎家に行きます」
「畏まりました」
雪華は窓から事態を把握を行いながら月宮に命令をしていた。そしてメイド達は雪華の着替えを準備している。
一階に降りてきていた雪華の家族全員はいったい何があったのかとリビングでテレビをつけて情報を得ようとしていたが、映像が映らない。
「いったい何が起こっている」
「今の音何?」
「何なんだ、まだ朝の四時だぜ」
「テレビ移らないわよ」
「ラジオは?」
子供達は言いながらテレビをつけたり驚いたりしていた。また親たちは音が何なのか探るように耳を澄ませている。
「なんか爆弾の様な音だな」
「爆弾って、そんなおじいさん」
「戦争を知らん私たちでも昔子供の頃には終戦記念日なんかに見せられただろう、あれの音に似ている気がする」
「そういえばそうだな」
家族がそんな事を言っている時に雪華が着替えを済ませてリビングに入ってきた。それも普通の服ではない、パンツ姿でシャツに一枚と言う簡素なものである。外ではけたたましい爆撃音の中でも御陵屋敷の使用人達は月宮の指示の元的確に行動を示していた。
「雪華いったい此は何?」
「お婆ちゃん心配しないで、対処するから」
「対処ってお前何をするつもりだ」
「今総理からホットラインが入ったからそれを聞いてくる」
「総理からか、お前は何か解るのか?」
心配して祖父母や父親が雪華に色々聞いてくる、術師でもある雪華なら何か知っているのではと思ったのだ。
「テレビは?」
「だめだ、映らない」
「ラジオは?」
「試しているけど、まだちゃんと拾えないなぁ」
「そう、御陵屋敷と神崎家の家は結界が張ってあるし、学校関係の避難場所も結界は張ってあるから大丈夫だとは思うけど、何が起こるか解らないから避難できる準備だけはしておいてね」
「おい雪華いったい何が起こっているんだ、此は爆撃の音だな」
「どっかの国が日本を制圧か侵略しようとして襲ってきた……と考える方が自然だわね」
「制圧!」
「侵略って……」
雪華の言葉でみな一同が絶句、そして何故という疑問が浮かびメルリア軍は?自衛軍は?という言葉を吐いている。
「メルリア軍は恐らく自国に見捨てられたんじゃないかな、補給物資も本国から届けられるほどの余裕はないし、自衛軍に関しては沿岸警備に徹するようにと前回の総理とのホットラインで話して今後の対応もしていた、けど……間に合わなかった」
「……どうなるんだ俺たちは……」
「……大丈夫よ……心配ない、私が対処する」
「お前が……って相手は軍隊だぞ」
「軍隊だから何…、この異常気象で魔物もでてる状況で、戦争を始めたバカどもだよ、メルリアは自国の軍隊を見捨てた、戦争をしてこの機に領土拡大を狙っているバカもいる、それは放置をしたとしても、この国への侵略なんかさせないわよ、私は……絶対に赦さない」
「しかし……」
「私は言ったわよ、この異常気象の原因の一つに地球の地軸のズレや軌道のズレで衛星が落ちる、太陽の黒点が増えていると……、正直人は生きられないって言ったと思うけど……」
「確かに言っていたけど……」
「最後の最後まで自由に平和に暮らせたらって思って私は神崎領を守ってきたの、それなのに、神崎領を標的にした、その周辺を標的にしてきた! 首都圏はついでよ」
「神崎領を標的にしてきた?」
「首都圏はついでって……、それって初めからここが狙われた……」
「そう恐らく私への恨みからの攻撃、そしてついでにこの国を乗っ取るつもりでしょうけど、そうは行かない、最後の日まで神崎領は平和で暮らすんだから……」
そういって雪華はリビングで一杯のお茶を飲んだ後、総理との通信をする部屋に行く為にリビングを後にした。残され家族は、雪華の様子を見て不安な面もちになった。
「なんか……あの子すごく怒っている気がするんだけど」
「うん、怒ってたな」
「あの怒り方って、ゲームの時に似ている気がするんだけど」
「えっ、ゲームってあの?」
「うん、俺も一応スキルマスターだからな、姉貴と一緒にイベントモンスター討伐に行ったこともある。そのときに本気で怒った事があってな……ありゃ怖かった」
「雪姉ぇのパーティーと組んだの?」
「いや、姉貴一人に頼んだんだ、天神将って変人・奇人の集まりで有名だったし、いつも一緒って訳じゃ無いみたいだったしな、直ぐに連絡とれんのは姉貴だけだったんだ」
「でもイベントモンスターだったら他のパーティーだっているだろう?」
「最初は他のパーティーと一緒に行ったんだけど、無理だった、そこで姉貴を入れて俺らだけで行ってみようって話になって、頼んでみたら暇だからいいよって言ってくれてさ、一緒に行ったんだけど、基本俺らが討伐して姉貴は守りって感じでさ、でも最後に俺のパーティーに怪我人が多く出て、俺もやばいってなったときに、姉貴の一発で討伐完了だった」
「はぁ~?」
「俺に手を出したって事で怒ったわけ、ついでにパーティーが弱いって怒るし、その後数日は姉貴の地獄の特訓で俺らのパーティーは強くなったって落ちもあった。あれは容赦なしの地獄だった」
リビングで家族がゲーム時代の話をしている時、雪華は通信室で総理や国防大臣と情報交換をしていた。
「事前に情報は得ていなかったのですか?」
『おかしな動きをしているため警戒はしていたし、メルリア軍からも注意勧告は受けていた』
『メルリア軍の総司令官から連絡があった時にはもう遅かった、彼らも武器弾薬が無くこのままでは危ないという事でこちらに助けを求めてきた』
「メルリア軍が自衛軍に助けを求めた? それは以外だわね、それでそのメルリア兵は?」
『総司令官は部下を我らの所に逃がすために最後まで残ったそうだ』
「っという事は亡くなったか」
『今残っているメルリア兵は基地内に居るが食料もないとの事だ』
「解りました。我が領とその周辺を攻撃されているので、それを片づけたら首都圏に行きます、それより総理は国際機関を含めてマスコミに対して、この間私が話した事を通達しました?」
「通信状態が悪くて直ぐには出せず、何とか今日良好になったために発表する予定にしていた」
「では内容は変えます『攻撃宣告もなしにいきなり夜明けの強襲に遺憾思う、しかも軍事施設もない民間領に対しての攻撃は許せるものではない、直ちに攻撃を停止するように願う、但し神崎家当主より伝言を伝える。神崎領とその周辺を中心に攻撃していることに対して神崎雪華は反撃すると言っている、この攻撃から逃れたいものは直ぐに退避するように、さもなくば一切容赦せず攻撃する』と今直ぐに発表をしてください。もう他の大臣と相談なんかしている状況では無いでしょう」
『わかった通信状況を確認して通達はするが……しかし、この間も言ったが君一人では無理だ』
「心配には及びません、まぁ見ていてください、では」
雪華はそういって通信を切ると、直ぐに神崎家に赴き状況を説明し神崎領内を守ることに専念するよう伝える。反撃は雪華一人ですると伝え。そのまま飛び出して空に飛んでいった。飛行術である。
稚拙な文章をお読みになって頂きありがとう御座います。
ご感想に対する返信返しは超苦手なので、出来ないことが多いかもしれませんが、長い目で見ていただけると幸いです。