128話 謁見と神界の契約魔法
※何度か読み返し、色々話がおかしくなっている所や誤字・脱字は不定期に修正・加筆をしております。(更新日が多々変更あり)
王都スリアで大火災が合った翌日、ベルフィント辺境領主家のある一角にある別館擬きというか小屋擬きの建造物で、今回の極秘会談が行われる。
既に到着していたのはフェスリアナ王国の国王レイモンド・フェスリアナ国王と宰相であるマルク・ベルフィント伯爵である。
「どうやら我々が一番乗りだった様だな」
「そのようですね」
「しかし明かりがついているとは、事前に息子に話していたのか?」
「一応使用目的も内容も伏せてございます。ただウィステリア公爵の魔術道具で今夜ここに来るから明かりだけ灯しておけと命じておき、誰も近寄らせないようにと伝えております」
「そうか、なら誰かの目に触れることが無いのだな?」
「はい、しかし警戒は必要と存じます」
「ふむ」
二人が話している時に玄関ホールの一角に魔法陣が輝き始めた、二人がそちらを向くと、今度はウィステリア一行が到着した。
「どうやら先を越されたかしら?」
「公爵……」
「我らも今しがた到着した所ですよ」
「そうですか、じゃとりあえず紹介だけしますね。ピート・ルゥ・パートは知っているだろうから放置して、こっちの魔族と言うか悪魔を紹介します」
「悪魔!」
「まぁ~悪魔といってもデーモンロードになちゃってるんだけど、一応通り名ではあるけれどノワールです、覚えておいて下さい」
「デーモンロードですか!」
「一応私の支配下にあるので私の命令に従っています。もちろん何か命令違反や害を行うことをすれば仕置きしますからご心配なく」
「あぁ既にコイツ一回仕置きされているからな、半殺しの目に遭ってるから心配するな」
「半殺し……ですか?」
「まぁな、俺も驚いたわ。コイツがボコボコにされるとは思ってなかったからな」
「ピート様……その辺でご勘弁を……」
「あぁ解った」
笑いながら言うピートに苦言を呈した悪魔は、通り名のノワールこと「ルフェル」という名は主につけられている。基本的に悪魔や精霊と言った者達は真の名前は秘匿している、支配下に置かれかねないからである。ただ上級悪魔や上級精霊はその範疇外であるが、中級悪魔以下は他者に名を知られないように通り名を使っているだけである。つまり『名無し』であり主を持って初めて名を貰い最初の進化をすると言うことだ。
ただ主に恵まれない悪魔はそのまま通り名で自力で力を付けて進化に至る者も希にいる。これが現在の魔王ルージュである。
「今回魔王との謁見ではこのノワールが居てくれると何かと助かるので、つれてきました」
「それはどういう意味ですか?」
「ピートは神族で魔王とも知り合いらしいけど、ノワールは冥界で魔王とともに『冥界二大デーモン』の一柱でもあるので、魔王とは旧知の仲なんですよ」
「それはつまり魔王も二大デーモンのもう一柱と言うことですか?」
「そういうことだ、だから人の手に余るからコイツもつれてきたわけだ」
雪華とピートの説明を受けた二人は少々戸惑いながらも唸っていた、そんな所に今度は魔族側の者が転移してきた。
姿を見せたのは二人である。魔王とそのお付きのタナキと言う者でこちらはノワール同様デーモンロードである。そして魔王のルージュが姿を見せた。
「待たせたようだな」
「私達もさっき来た所よ、そっちは側近のタナキだけ?」
「あぁアモスは留守番をさせてきた」
「なるほど、アイツなら力も強いし獣族が来ても対処可能だな」
雪華やピートと魔族が会話しているのを聞いていたのは人族側である、特に初対面のレイモンド・フェスリアナ国王は魔王を見て思った、一見して細身ではあるがしっかりと筋肉の付いた肉体を持つ、身長も高く魔力量もかなり持っていると肌で感じるくらいだ、そして名前の通り赤い髪しているが長髪ではない、その姿と魔力量にレイモンド・フェスリアナ国王は少し気圧されそうになっていた。
「でぇ、魔王ルージュこちらが我が国フェスリアナ王国の国王レイモンド・フェスリアナ様です」
「ほぉ、この者が国王か、私は今公爵殿から紹介された魔族の国サタキア王国の国王をしているルージュという」
「あぁ、私はこの国の王レイモンド・フェスリアナだ、こっちが宰相のマルク・ベルフィント伯爵である」
漸く国王同士の紹介も終わったことで、宰相マルク・ベルフィント伯爵が2階の部屋へとみんなを誘導した。少し広めのサロンといった場所である。
「ここは以前使った部屋とは少し違う気がするわね」
「あの部屋では少々手狭と思いましたので、こちらにお通しいたしました」
「そうなのね」
宰相マルク・ベルフィントの説明で納得した雪華、そしてその宰相がそれぞれの席に案内をした。今回は魔王の方から会いたいとの事だった事もあり、双方の王が対面で座る位置にいる。そしてテーブルの中心に、何故か雪華が座るよう案内された。
「あのぉ~これはいったいどういう趣向なのかしら? 陛下?」
「当然公爵がその席にふさわしいからです」
「……違うでしょう! この国の王はあなたであった、ここに座るのはレイモンド・フェスリアナ国王でしょうが!!!」
「いいえ、あなたは雪華・ウィステリア公爵である前に始祖姫であるのは事実です、その場合そちらに座っていただくのが妥当だと私は考えております」
「ふむっ、なるほどフェスリアナ国王の判断は正しい。公爵殿私もその考えに同感ですので問題はありません」
「私はまだ人間よ!!!」
「確かにおまえはまだ人間だよ、でもこの面子の前では、おまえは始祖姫としての立場になっているって事だよ、諦めろ」
「ピートまでそんな事を言うの??」
「雪華様、ピート様の仰ることには間違いがございません、第一ルージュはあなたの魂が誰か知っています。当然ここにいる人間も知っているのならば何も問題はありません、しかも結界まで張っているのですから」
「……お前までそう言うのか!」
「はい」
丁寧なお辞儀で主となった雪華に頭を下げているこの悪魔に舌打ちをしながら睨み返した、当然ピートも睨まれたがこっちは苦笑しているだけである。
それを見て雪華は大きなため息を付いて、この提案を渋々受け入れて座った。当然雪華の後ろに控え立っているのはピートとノワールであり、国王の後ろには宰相、魔王の後ろには側近の一人であるデーモンロードのタナキである。
「では今回の謁見の理由と今後の話をしたいと思うがフェスリアナ国王は宜しいか?」
「あぁ、公爵様からだいたいの話は伺っている、それで我が国との魔族側との関係を今後どうするかと言うことだと」
「公爵殿から伺った話では、貴国では近々内戦が起こる可能性があるとか」
「……何故それを……」
「公爵殿からお聞きした、それに伴い魔族を貴国に入国させないようにして欲しいと頼まれたのだ」
「ん……、それは……」
「我ら魔族は、ハグレ魔族を認めてはおらぬ、ましてや獣王を殺したいと考えている」
「魔族がハグレ魔族を認めていないというのは真か?」
「そうだ、魔王である俺の臣下にならぬのなら、放置かあるいは始末している、だがハグレ魔族の中でも召還されてた仕事をした後、冥界に戻っていないハグレ魔族はどうやら獣族側に付く者が多いのが現状だ」
「ハグレ魔族が獣族に?」
「あぁ、獣族としては魔力が少ない代わりに、彼らを使って配下にして魔法を使わせたり、魔力の多い獣族が居れば魔法を教えているようだな」
「なんと、獣王とはそういう人物か?」
「300年前の領地戦争で我ら魔王軍は敗退し豊かな領地を取れなかった、故に獣族とは仲が悪い、だがハグレ魔族の大半は悪魔召還で呼ばれた者が多い、それ故本来魔族側に来るはずの者が召還主である獣族側に行くことが多い」
「何故、そのような事になっている」
「獣王が悪魔召還が出来るという話がある、実際に見たことは無いが、あの獣王が即位した300年前くらいからハグレ魔族の召還が多くなった」
「……ちょっと待ってルージュ! あんたの話だと今の獣王とは別の獣王があんたと戦った様に聞こえるんだけど?」
「あぁ、これは説明不足でしたね、実際300年前に戦った相手はあなた方が知っている今の獣王の父親ですよ、ただ何故かその場にまだ子供である、今の獣王が次期獣王として側で指示をしていた」
「はぁ~~~、子供が戦場で指示をする??」
「えぇ、戦争はある意味長がったのですが、初戦から中盤あたりは我らが押していたんですよ、ただ途中で獣王が怪我をして代わりに次期獣王である今の獣王が指示出してから魔王軍が劣性に立ってしまい負けたんです」
「途中で指揮系統が次期獣王に変わってから魔王軍が劣性になったの?」
「はい、そうです、あの頃の噂で流れた程度だったので当時は信じられないと考えられていたんですが、あの子供は当時12才程度でした、ただ戦争が起こる前に事故で頭を打ち大怪我をしていたらしいです、それによって何故か色んな知識を手に入れたり本を読んだりして大人の獣族からの信頼を得て戦場に来ていた、しかも例の武器を作った本人だと、後になって解った事です」
「……ちょっと待って、それって何? どういう事???アイツの魂は間違いなくマクディナルよ、事故で怪我をして知識を得た?」
「これは……アレだな魂は既にこっちに来ていたが記憶だけが思い出せていなかった……お前の級友二人と同じ状況って事と思えば良いんじゃねぇ~か?」
「……マジか……、それで記憶を取り戻して最初にやったのがあの武器開発ってか?? ふざけてるのか!!! 許せん!マジでぶっ殺す!!!!」
突然の怒りを見せた雪華を見てピートはやれやれと思い、他の面々は驚いていた。
「ねぇ~ルージュ……」
「はい、何でしょうか?」
「獣王は私に譲ってくれない?」
「……それは獣王を公爵殿が倒すと言うことですか?」
「えぇ~~300年以上前からの因縁もあるんだけど、魔族としてはどうしても自分たちで殺したいでしょうけど、アイツだけはこの手で殺さないと気が済まないわぁ~~」
どうも雪華が眉間をピクピク動かしながら怒り心頭であると、この場の全員が感じた。途轍もない波動で畏怖に値する程の魔力を感じていた。
ピートに至ってはここで怒りを爆発させて封印が解けるか覚醒なんかされると目も当てられないと感じて、雪華の怒りを収めるための説得を試みた。
「おい、雪華! 今ここでその怒りを爆発なんかさせるなよ! 只でさえ結界を張っているんだ、お前が封印を解いたり突然覚醒でもされたら、この一帯何も残らん! 生きている者が全て死ぬぞ!」
「止めるつもりか! ピート!」
「今は止めろと言っているんだよ、アイツを殺すのは奴が元凶魔王として復活してからでも遅くないって言ってるんだ。今は人と魔族の話し合いだろうが!」
ピートの言葉を聞いて暫く睨みつけると、ため息を付いて解ったと言って怒りを収めた。とはいえ腹立たしさは消えていない様子である。
「じゃルージュと陛下は話しの続きをどうぞ、コイツは俺が止めますので」
「あぁはい……」
「承知しました」
魔王ルージュはピートや雪華に対して礼儀正しい。それも当然である相手は自分たちの上位である神族である、今雪華が怒りの波動を発しただけで、魔王は少し冷や汗をかいていたのを隠したくらいだったのだ。
絶対に怒らせてはならない相手とはこういう方であると再度思い知ったのは、魔族も人族も同様だった。
「ではフェスリアナ国王、先ほど話した通りこちらは暫くの間、貴国に関して干渉はしないと約束をしよう、ただハグレ魔族に関しては我らの手を放れているので対処が困難であると言うことは知っておいて貰いたい」
「承知した、ハグレ魔族の状況はどういった立場か漸くこちらとしても理解ができたので、魔王殿の話を信じよう、しかし暫くの間というのは、どの程度の期間をさしていうのか?」
「それは最終的に内戦が終了するまでという事ではどうか? それ以後はまた話し合いをすれば良いのではないかね」
「話し合いですか……」
「そうだ、こちらもウィステリア領が存在する国と敵対はしたくない思いはあるのでね」
「ウィステリア領は我が国において治外法権であり独立自治の領地です、我が国も簡単に口出しが出来ない領地でもある」
「っと言うことはウィステリア公爵殿の言葉一つで状況が変わると考えていいと言うことか?」
「そう考えていただければいいでしょう」
二つの国の王が揃って雪華の顔を見た、ピートに宥められて漸く静かに話を聞いていた雪華は、溜息を付いた。
「まぁ~確かに我が領地は特別だし、陛下の言う通り治外法権の独立自治を認められていますよ、それに陛下を含めて貴族の思惑なんかに関わる気もサラサラないです。ですが我が領地に手を出してくるなら同じ国の人族であろうと多種族であろうと関係なく反撃します、それに陛下には伝えてありますが、内戦にはいっさい干渉しませんので」
「ほぉ~公爵殿は同じ国にありながら内戦には干渉しないのですか?」
「しないわよ、めんどくさい! だいたい陛下以外の貴族がちょっかい出してきてる現状でも正直排除してるくらいなんだから、自領の統治を含めて色々忙しいのよ、内戦なんかにまで気にしてられないっての!」
「ですがもしウィステリア領に攻撃でもされた場合はどうされるのですか?」
「あぁ~ルージュそれは心配ない、こいつが見境のない反撃魔法を組み込んだ結界を張る予定らしいから、ウィステリアに攻撃してきた相手に自動反撃されて自滅するだけだ」
「……それは、また……」
「実際前の世界、つまり物理世界でこいつがやった防衛手段の結界な訳だが、えげつなかったのは覚えている、当時俺はこいつとは別の国の人間として生活していたんだが、最悪だったぜ」
「つまりそれはピート、あんたも被害を被ったわけ?」
「俺が住んでいた町に軍事基地があったんだよ! それで反撃攻撃が返ってきた」
「ほぉ~同盟国だったはずのあの国がやっぱり我が国に攻撃を仕掛けていた訳か、でぇあんたは逃げたんだよね?」
「俺はとっさに自己防衛結界を張ったからな俺だけは生きていたけど、周りは焦土化していたぜ、市民も巻き添え喰っていた」
「一般人も被害にですか?」
「だから見境のない反撃魔法だったんだって、こいつは自分の国を攻撃した相手国の人間に対して容赦しないからな」
「それは人聞きが悪いでしょうピート! 自国民を守れない軍が悪い、こっちは被害者よ!」
「まぁ~そうとも言う」
「だいたいあんたの国の大統領が喧嘩をふっかけてきたのと同じでしょう、マクディナルと協力していたしね」
「確かにあの時マクディナルが居たんだなぁ~」
「居たわよ! 思い出しても腹が立つ!」
次元移動前の話をしている二人を見ていた現在の人々は、やはり敵に回すと怖い相手だと再認識していた。
「では、とりあえず話を戻しましょう、今回の謁見で魔王殿は我がフェスリアナ王国には現時点から内戦終了迄の間干渉せず、魔族も入国させないでくれると言うことで宜しいか?」
「あぁそれでいい、ただその見返りは欲しいのだが……」
「当然だな、無条件というわけには行くまい」
「ふむ、我が国は夏が短い、どちらかというと氷の世界と言っても過言じゃない。故に野菜や果物といった物を輸入出来ないだろうか?」
「それは貿易で国交をしようと言うことですか?」
「そうだな、公には出来ない間は控えた方が良いだろうが、内戦が終われば正式に国交を開いて貿易が出来ればと考えている」
「なるほど……、ではそちらから氷を輸入する事は可能ですかな?」
「ほぉ氷ですか?」
「えぇ我が国には四季がある程度存在しますが氷を長期に保存は出来ないので、夏の間は民も暑さに苦しむのでな、出来れば貿易品として入れて貰えると助かるのですが、いかがか?」
「それは良い提案だな、我が国は氷がたくさんある、問題はない」
「あぁ~~それならルージュ、氷で貿易するならば鮮度や質もしっかり良い物にしないと価格に影響するわよ」
「鮮度や質、ですか?」
「そう魔族と違って人族は氷に関して不純物が混じれば食することが出来ないし、品質がおちて値が下がる」
「なるほど、魔族はそういう事を考えることはない、ましてや食べるなどとは思わない……ですが公爵殿、人族は氷を食べるのは事実なのですか?」
「食べるわよ、私は夏に氷を削って蜜をかけておいしく食べるけど」
「あぁ~そういえば俺も夏は食べていたなぁ~300年前は……」
などとかき氷の話をしているピートと雪華は懐かしそうに思い出している。それを見ていたレイモンド・フェスリアナ国王が質問をしてきた。かき氷とはどんなものか?と……
「そう言えば無かったわねぇ~、いいわ今度氷が手に入ったら作ってあげるわよ」
「それはありがたい、氷は貴重品だから食べるという発想には至らなかった」
「そういえば、食材を冷やすという程度にしか利用価値がないと思っているみたいだな」
「ねぇピート、氷の鮮度と質に関して魔族に教えて貰えないかしら?」
「えっ俺がか??」
「そうよ、今はあんたの方が手が空いてるでしょ?」
「……冒険者ギルドの方はどうするんだよ!」
「あれはそんなに長くかからないでしょ? その後で良いわよ、それに氷の貿易はまだまだ先の話だし」
「……おれ氷の専門家じゃないんだけど?」
「私も専門家じゃ無いわよ。でもあんたの知り合いには氷の専門家はいくらでも居るんじゃないの?」
雪華に言われて色々思い当たるピートである、言い出したら決定事項と言って良い雪華の言葉にピートは唸るしかない。
「解った………」
「では、魔王と陛下の話し合いはこれで終わったと思ってもいいのかしら?」
「そうですね、ある程度の話は済んだと思います」
「こちらも異論はない……」
「ならば今回の話し合いの結果を魔法契約として署名して貰いましょう」
「魔法契約ですか!!」
「そう、双方のどちらかが約束を破れば命に関わるというもの」
「その魔法契約は一般的な普通の契約という事でしょうか?」
「雪華が言い出す魔法契約だからな、当然普通じゃないというか現実的に魔法契約は神々に対しての契約だからな」
「えっ、そうなの?」
「おい、それを知っていて言ったんじゃねぇのか?」
「あぁ~いや魔法契約って神々に対してと言うのは知らなかったんだけど……」
「魔法の根元は魔素、つまり本来魔核からでる魔素量で魔法が使えるんだ、そして魔核の管理は神界がしている、だから魔法契約は神々との契約になるんだよ」
「えぇ、確かに本来の魔法契約は神々との契約を指します、ですが我々が知る魔法契約は神々との契約ではなく、双方の差し出すペナルティをもって契約をするものです」
「それってたとえばどんなもの?」
「例えて言うならば貿易の場合はどちらかが契約違反をすれば契約破棄が自動的にされて、相手の契約書が燃えると言うものでです」
「罪人が罪を犯して償った後、釈放されるときにも契約魔法をする場合がありますね」
「うそ、そう言うときにもするの?」
「えぇ再犯を犯さぬようにするために、その場合命の場合もあれば再度強制的に牢に転送される様な契約になります」
レイモンド・フェスリアナ国王とベルフィント宰相が一般的な契約魔法の説明をしてくれた事で、雪華はなるほどと納得した。だが今回の雪華の言葉から出た契約魔法は神界直結の神々との契約魔法という意味合いになっている。その違いは雪華がどう認識するかによって決定されるのだとピートが補足した。
「まぁ今回はそっちの契約魔法で良いんじゃねぇか?」
「どうしてよ!」
「相手は魔王でしかもルージュだし、現状の人族が魔族に勝てる見込みは全くない。それくらいしたほうが人族は安心だと思うぜ、それに悪いが神界から今回の謁見で決まった事は神族経由の魔法契約にしろと命令が下ってるんだよ」
「うそぉ~~~」
「本当だ、だから神界から魔法契約に使う紙とインクを持たされた、これで契約書を雪華が書いて、二人がサインをすればそれで契約成立だ」
「ピート様から神界の意思が伝えられたのならば従わねばならんだろうな」
「魔王殿は良いのか? それで」
「神界を敵に回す事などできんのでな、さすがに我らも種族を守らねばならん」
「解りました、では雪華様お願いします」
「……二人とも本当に良いんだ……」
「覚悟は出来ております」
雪華は二人の顔を見ながら少々困った様子を見せたが、彼らの心が堅い事が感じられた事で、溜息をついて了承した。そしてピートに説明を受けながら、今回の契約書を作成し、二人に内容を確認させた後、サインを書いて血判を押して貰う。すると契約書は中に浮いて金色に光って消えた。
「ちょっとピート何で消えるの? 署名用紙は残らないわけ?」
「血判を押した署名用紙はそのまま神界に転送されたんだ」
「……転送??」
「そう一般の契約魔法は特別な魔素の込められた紙とインクで書いて双方が一枚づつ持っておく物だが、神界の契約魔法は神界のソーマ、つまり神界の魔素で作られた紙とインクで書いた物と言うことだから、契約書は一枚でそのまま神界に転送される」
「じゃその転送先は神界の誰かが持つって事になるの?」
「お前の側近中の側近だな、俺たちでも見ることは叶わない、故に神界の契約魔法はよっぽどでない限り使わない、今回は魔王と謁見をして、その立ち会いに俺たちが二人が同席する為、上層部が俺にこの契約魔法の道具を一式持たせたんだ、使う可能性を考えてな、そしたらお前が契約魔法をすると言った、そのペナルティに命を差し出すことになるともいった、それはつまり神界の契約魔法を使うことを意味するんだよ」
ピートの説明を聞いて雪華は背筋がゾッとした、自分の言葉一つで神界がこうも動くなど、予想だにしていなかった、見ているだろうとは思っていたし自分の言葉に従っているのは知っているが、言葉の内容一つで神界上層部がどう動くか変わることが怖いと思ったのだ。
稚拙な文章をお読みになって頂きありがとう御座います。
ご感想に対する返信返しは超苦手なので、出来ないことが多いかもしれませんが、出来るだけ頑張りますので、長い目で見ていただけると幸いです。