127話 休息擬きの視察と王都の大火災
※何度か読み返し、色々話がおかしくなっている所や誤字・脱字は不定期に修正・加筆をしております。(更新日が多々変更あり)
10月に入ってウィステリア領に戻ってきた雪華一行、当日に主要メンバーと今後の話をした後、ピートと雪華は1日休息の日を取った。
雪華は散歩がてらに領都ウィスリア内を歩いて見聞していき、冒険者ギルドを含めて領内の様子を見て回った。
午後からは医学部に行き父親と兄に結核菌に付いての話をするため赴いた。
「でぇ~何か解った?」
「あぁマジで結核菌だったわ、この世界にもあるとは思わなかったんだけどなぁ~」
「治癒魔法のおかげで研究する者がいなかっただけでしょ」
「うちには旧世界の研究室が揃っているため何とか調べられてよかったよ」
「そう安心しないでよ父さん、細菌兵器よ、結核菌だけとは限らないわよ、獣王がマクディナルである可能性は決定しているからね、他の細菌兵器もある可能性も捨てきれないし、だいたい催涙弾なんぞ作るんだったら毒ガス兵器も作っている可能性だって否定できないんだから」
「あぁそうだな、まさか催涙弾なんて出てくるとは思わなかった」
「お前はよくわかったな催涙弾の事」
「あぁ~メルリアにいた頃に一通りのガス兵器も学びましたからねぇ」
「お前軍に入っていたのか?」
「入ってはいませんけど、退役軍人が色々教えてくれたんですよ、父さんの知り合いの知り合いだった人、特殊部隊で隊長をしていたって言っていましたね」
「ジェネラルハリーだったか? 彼は将軍にまでなっていたはずだが、隊長?」
「階級は将軍で間違ってないわよ、でも本人は隊長だって言い張っていたわね」
「特殊部隊の将軍ってあるのか?」
「ハリー隊長は特殊部隊のAチームの隊長だったそうです、その後に昇進して部隊を離れて陸将になったらしい、父さんが知っているのは既に将軍時代じゃないのかな」
「お前はそんな人に教えて貰っていたのか?」
「はじめは知りませんでしたけど、私は自己防衛の為にと思っていただけなのに、本格的の徹底的に訓練させられました、ですがお陰で政治家やその刺客とも渡り合えたんだけど」
「お前の身体能力は人並み外れていたからなぁ~、そこに目を付けたんだろうなきっと」
「雪華は軍にスカウトとかされたんじゃなのか?」
「されたわね何度も何度も、でもメルリア国籍じゃないし、自衛軍に入る気もサラサラなかったから断ったわよ、私はあくまで自分を守るために格闘術や銃火気の扱いを学んだだけだから」
自分の娘がこれだけの才を持っているとは思っていなかった、霊感が強くて母親からは存在を否定されて毛嫌いされていた。故に子供の頃から死と一番近い場所で生きていた娘だった、それが理由なのか自分で自分を守るためにあらゆる事に神経を張り巡らせ手段を手に入れてきたのだろう、父親であるのに守るにも限界が合ったのは事実だから、そこを自分で解決をしようと思ったのだろうが、今では守るられる側になってしまったと海李は思った。
「雪華には苦労をかけているな、今も昔も……」
「父さん、別に苦労とは思っていないわよ。これは私の生きるべき道だったんだとは今は思っている」
「雪華……」
「まぁ~家族との縁は薄いとは思うけどね、でもそれでも血の繋がりは切れないから、仕方ないわ」
「………家族との縁は薄い………かぁ……」
雪華の言葉を聞いた兄春樹は、妹と和解をしたつもりでいたが、実際はまだ和解できていないのかも知れないと思った、正直祖父母と父、末弟の夏椰以外の家族に対しては敬語を使って話している、まだ信用されていないということなのかと思った。
「とにかく、今後の為にも治療薬と細菌兵器の研究も必要になってくるわ、武器を含めたものはこっちで考えるけど、毒ガス兵器なんかもあると不味いから、そっちは藤華の関係者で考えることにするわ、父さん達は治療薬とか抗体とか、そういう医学的な所からアプローチして欲しいんだけど、頼める?」
「あぁ解った、出来る限りのことはやってみる」
「忙しいけどお願いね、医学系は基本専門じゃないから、二人に頼むしかないわ」
「解っている、俺たちよりもお前の方が一番忙しいからな、無理だけはするな」
「心に留めておくわ」
雪華は笑ってそう言って、医学部を出ていった。残された二人は大きなため息を付いてドアから出て行く雪華を見送った。
「俺たちはやはりまだ信用されていないんでしょうね……」
「雪華の言った言葉か?」
「あぁ、血の繋がりの絆とは言ったけど、父さん達程信用されていないって、今改めて解った気がする。和解できたと思っていたんだけど……」
「そうだなぁ、和解は出来ていると思う、だが信じられるかという点においては根が深すぎるだろうな、特に春菜に対してはお前達よりも傷が深すぎて雪華は信じられないだろう」
「そうだね、未だに余所余所しいからねぇ~」
「春菜も意地っ張りだからな、素直になれない性格をしているせいもあるだろうが……」
海李と春樹は出て行った雪華の事を思いながら話していた。いつか本当に心を開いてくれることを願う春樹であった。
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医学部を出た雪華はそのまま「火龍の島」と名称に変わってしまった榊島に向かった。ここは元々雪華がお小遣いで購入した海に少し顔を出した小岩だったモノだが、海底噴火の繰り返しでデカい島になってしまったモノで、300年前の次元移動前には完全にデカい山が出来て噴火をし続けて陸地が広くなり島といえるほどになった事で日本の領土を大きくしてしまった要因でもある島だ。
ただこの島は只の島ではなく、昔は噴火に伴う有毒ガスを吐き続けるため人が簡単に立ち寄れない島のため所有者以外の立ち入りは許可が必要であり、末期には魔素が増え魔物も増えていた特殊な島だった。現在はウィステリア領と地続きに繋がったっているのだが、魔素が更に増えてしまった為、ウィステリア家の一部の術者以外の立ち入りには制限を設けられている。
「こんにちは」
「これは領主様、おひとりでお越しですか?」
「えぇ一人よ、みんなそれぞれ忙しいからね」
「ですが領主様おひとりでの外出は危険ではありませんか?」
「あらぁ私に喧嘩を売って生きていられるなんて、あり得ないでしょう」
「そりゃそうでしょうけど、この先は魔物が強いのですよ」
「大丈夫じゃないか? 領主様はスキルマスターの中でも至高の存在でもあられるのだから」
「……お前、たとえそうでも護衛は必要です!」
雪華の前で言い争っているのは「第一門」を守っている門番のウィルとロブである。最初はピートと小花衣達と訪れて以降はスキルマスターを必ず一人は派遣するよう命じていたのだが、最近はそのスキルマスター自身が忙しすぎて派遣するのに大変だと小花衣からは聞いていた。
それもあって雪華が状況確認に来たのだった。
「今日は中の状況を確認の為に来たのと適当に魔物討伐に来たのよ」
「魔物討伐ですか?」
「そう、この場所には三桁レベルに達した冒険者が対応できる様になって欲しいから、その状況も調べに来たのだけど」
「ここを冒険者に対応させるのですか?」
「さすがにそれは無理があるのでは?」
「だから三桁レベル以上って事にしているのよ、出ないと冒険者は育たないでしょう」
「ですが……」
「いつまでもウィステリアの術師だけでは手に余るからね、今後のことも考えての事よ、だから第一門番であるあなた達の仕事はとても重要なんだから、がんばってね」
「はぁ~がんばってと仰られても、身分証明書(IDカード)を確認するだけですよ」
「それが一番大事なんだって、身分証明書(IDカード)は基本的に冒険者カードになるから、ここに入れるのは冒険者カードを持っていて、更に三桁レベルの者だけってことになるからね、ただ三桁でも低レベルは入れるわけには行かない、それを踏まえての調査も兼ねてここに来たのよ」
雪華は門番達にそういうと、そのまま中に入って加速して走っていった。それを見送った門番達は、自分たちの仕事が今後かなり重要な仕事になりそうだと何となく認識したのだった。
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雪華が火龍の島に入った頃、王都スリアでは、問題多発が勃発していた、雪華の要求通りの広い敷地を探すよう部下に命じていた王は、この事態に対して頭を抱えて対処をしていた。
「陛下いかが致しましょうか?」
「……これが陰謀で行われたのか、事故によるものなのか大至急調べよ!」
「はっ」
雪華が王都を去って1ヶ月後、丁度雪華が領都ウィスリアに戻った日の深夜の出来事だった。冒険者ギルド周辺の民家や店を含めた十数件という数の火災が発生していた。当然国王レイモンドは叩き起こされて対応に追われていた。その地域は一般の平民が住む場所だけではなく貧しい者達も混在した場所まで火災が広がっていたのだ。
また、冒険者ギルドの付属である予備校や孤児院も少し被害を被っていた。ギルドマスターであるロイド・三橋は早急に子供達を避難させ、水魔法でギルドや予備校を含めて孤児院も守るために尽力した。幸い修繕すれば何とかなる程度で収まったが、ギルドの右側にある道路を挟んだ一体は焼け野原になっていた。
当然国の兵士も消火に尽力していたが、火の勢いが大きすぎて追いつかない状況だったのだ。鎮火後憲兵達が調べるためにあちこちで作業している。その様子を三橋は見つめていたが、ギルドに対して作業協力の依頼が殺到していたのは言うまでもない。
三橋はその対応を職員に任せて直ぐにギルド本部宛に連絡をした。そしてレイモンド・フェスリアナ国王自らも火災現場の視察に来ていた。護衛にはゴラン隊長がついている。
「このような大火災が起ころうとは……」
「まだ原因を調べている最中でございます」
「犠牲者はどれほどいるのだ?」
「100人程にございます」
「……100人!!!」
「死者100名、けが人が30名です」
「けが人は病院で治療を受けておりますが、治癒魔法使いがそう多くおりません、神殿長達もまだ回復しておりませんし……」
「何てことだ……だが早急に医療ギルドと治癒魔法使いを召集して対応に当たらせろ」
「畏まりました」
「けが人の中で話が出来る者がいるか?」
「軽傷の者は何人かいます」
「では直接会って話をする、案内せよ」
「陛下がですか?」
「そうだ、このような事態を放置できぬ」
「ですが……」
「早く案内せぬか!」
王に命じられてゴラン隊長は渋々と軽傷者がいる神殿近くのテントに向かった。軽傷者は神殿のシスター達が治療に当たっている、低レベルの治癒魔法を使えるためである。
国王自ら来たことで全員が驚いて平伏している。
「そのまま治療を続けよ、ここの責任者は誰か?」
「私です陛下、シスターマリーと言います」
「そなたがここの責任者か?」
「はい神殿の責任者が不在のため、代わりを勤めております」
「そうか、軽傷の者を見てくれているそうだな、どういった状況か説明できるか?」
「はい私の治癒魔法レベルは30程度です、そのため傷の浅いものや軽傷の火傷は治癒できます。ここに運ばれている者はそういう者達は殆どです」
「なるほど、ではそういう者達は治癒後どうしているのだ?」
「家が無事だった者は家に帰ったか、そうでなければ避難場所に移動して貰っています」
「避難所はどこになっている?」
「現在は神殿が避難所になっております」
「そうか助かった、そなたも無理をせぬよう治療に当たれ」
「お言葉感謝いたします」
国王レイモンドはその後ゴラン隊長と共に神殿に向かった。既に治療を終え行く宛のない者達が床に座っている状態である。
「陛下!!」
「神殿長! お前体は大丈夫なのか?」
「はい、動ける程度には……」
「無理はするな! まだ完治していないのだろう?」
「ですが、この状況を放置できません。神殿の奥には医官がおり重傷者の治療に当たっております」
「病院ではないのか?」
「町医者はどこも一杯で手に負えない者がこちらに運ばれています。そして後は避難所として解放をしております」
「そうか……そういえばお前の治癒魔法力は高かったと思うが?」
「はい私の治癒魔法レベルは90ございます、なので骨折等も治癒できます」
「そうか、それは助かる、悪いが体調に気をつけて治療に当たって欲しい」
「ありがたいお言葉、感謝いたします」
「でぇ治療済みや避難者に話を聞きたいのだが……」
「あぁ、でしたらこちらのお部屋でお待ち下さい。対象者を呼んで参ります」
「いやこちらから行く、避難してきている者達を煩わすわけにはいかぬ」
「畏まりました」
レイモンド・フェスリアナ国王は神殿長の案内によって多くの避難者や軽傷者から出火原因となるヒントはないか聞いていった。
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王宮に戻ってきたレイモンド・フェスリアナ国王は宰相であるマルク・ベルフィントと護衛のゴラン隊長と共に執務室で協議をしていた。
「現在の所、鎮火はほぼできたと報告があがっております」
「ただ犠牲者がことのほか多く、軽傷者は治癒魔法を使える者に当たらせておりますが、重傷者の治療には医官の数が足りておりません」
「避難者の住処の心配も必要だな」
「確かに……」
「陛下は神殿で民の声をお聞きになったと伺っていますが、何か解ったことがありましたか?」
「うん、それなんだが……火災現場は主に冒険者ギルドの近くにある店が大半だった、つまり冒険者にとっては大事な道具屋や武器屋といった店だな、その中には貴族に武器を納めている鍛冶屋もいた、国王派と王太子派がいるが、区別なく店は消失している」
「それは本当ですか?」
「あぁ、だから余計に気になってな」
「気になるとは?」
「もし今回の大火災が自然発生だったら、それは仕方ない。過失だとしても平民が寝煙草でなら、それも仕方がない」
「はい……」
「だが、もしこれが仕組まれたものだとしたら……」
「王太子派によるものだと?」
「それもあるが、それだけではなく国王派の場合もある」
「まさか!」
「なぜ陛下の味方である国王派がこのような大それたことをするというのですか!」
「私も否定したいのだがな、ただ……」
「ただ?」
「ウィステリア公爵の言葉を知っている者、もしくは知らなくても私が広い土地を欲していると言うことで忖度した貴族がいたとしたら……」
「……陛下のために……ですか?」
「あくまでも可能性の話だ、王太子派の可能性は濃厚と思いたいのだが、あまりにも大規模すぎる火災だからな」
「陛下まだ出火原因は調査中です、軽はずみな判断はお控え下さい」
「……あぁそうだなマルクの言うとおりだ、だからこそ詳しく調べて欲しいのだ」
「陛下のお気持ちは理解できました、調査の方は慎重かつ厳しくいたします」
「頼んだぞゴラン隊長」
「はっ、では私は直ちに現場に向かい指示をして参ります」
ゴラン隊長はそういうと部屋を出ていった。それを見送る二人は扉の方に目を向けていた、ただ直ぐに視線を戻したのは宰相である。
「陛下、明日は転移する日です」
「あぁそうだな、この話を公爵に報告をせねばならぬ」
「今回の件は王都の事件です、公爵様に報告の必要があるのですか?」
「当然だ、あの方は言った鍛錬施設は冒険者ギルドの近くが良いと、なのに大火災で鍛錬所を建設するための敷地が出来てしまったのだからな、疑われないかと心配になる」
「だから国王派の者の仕業も視野に入れたのですね」
「そうだ、あの方に嘘は一切通じないのだからな、もしこちらの調べ不足などで不手際でもあれば、お叱りを受けるだけで済むかどうか……」
国王の懸念には一理あるとベルフィント宰相は納得した。あのウィステリア公爵は今は人であるが、その後人ではなくなると話されていたのだから、直ぐに感づかれるだろうとマルク・ベルフィントも改めて考え直していた。
稚拙な文章をお読みになって頂きありがとう御座います。
ご感想に対する返信返しは超苦手なので、出来ないことが多いかもしれませんが、出来るだけ頑張りますので、長い目で見ていただけると幸いです。