122話 ハルシェット領潜入 その5
※何度か読み返し、色々話がおかしくなっている所や誤字・脱字は不定期に修正・加筆をしております。(更新日が多々変更あり)
ロバートは憲兵達と共に貧民街へと向かっていた頃、雪華はこの地に住む大精霊と会っていたが、ハルシェット辺境伯本人によって殺された。それを見届けて飛行魔法を使用しロバート達を追った。上空から見ている限りでは今のとこ問題はない。
そして軍関連施設のある区域に入ったのを確認していったん地表に降りた。ここでもまた結界に阻まれているため雪華は土魔法で地下道に向かってロバートの霊気を追いながら軍関連区域を抜けて貧民街に出た所でピートと合流した。
「ピート!」
「雪華ロバートはどうした?」
「こっちに向かっている途中よ、もうすぐ城壁を出てくるわ」
「今の所は大丈夫そうだな」
「とりあえずはね、でぇ子供達は?」
「言われたとおりに軍兵が迎えにきた、今の所手を出す様子はないな」
「そう、こっちは色々大変だったわよ」
「なんか合ったのか?」
「連中はやっぱりロバート達を追い出したかったみたいね」
「追い出したかった?」
「あの家の地下道が欲しかったみたい」
「って事は軍事利用するつもりか?」
「恐らくは、でも簡単に見つからないように細工はしてきたから時間をかけて見つければいいわ、こっちはロバート達が無事なら問題ない」
「でぇロバートの腕輪は外されているのか?」
「えぇ外されたわよ、しかも代官自ら出てきて謝辞を述べていたし、ついでに私に会いたいなんて言っていたわよ」
「はっ? おまえに会いたい? 何で?」
「王都で父親がやらかした詫びをしたいとか何とかね」
「何だそりゃ」
「でも口実でしょうよ、それに途中で大精霊に会ってきたんだけど……」
「あぁ~~そうだ! それこっちの精霊全員いなくなったぞ!」
「大精霊が死んだからよ」
「何だって? どうしてまた」
「あの大精霊は元々この領地の大地の精霊だったみたいね、ハルシェット辺境伯が捕まえて、殺していた」
「何だって! ハルシェット本人がいたのか?」
「えぇいたのよ、私を殺す方法を大精霊に聞いていて、言わないなら殺すって言って魔石を使って炎系の高等魔法を繰り出してたわね」
「待て、アイツにそんな魔法使えないだろう」
「だから魔石よ、魔素をたっぷりため込まれた上に、魔法術式を書き込まれていたみたいね、消し炭までいかなかったけれど致命傷だったわ」
「マジか……」
「しかもあの精霊にとんでもない願いを頼まれた」
「何を頼まれたんだ?」
「この領地の大地を再生しないでくれって頼まれたの」
「えっ、何で? そんな事をしたらこの領地は不毛の土地になるだろうが」
「それが望みみたいよ、最低でもハルシェット家が絶えるまでは不毛にして欲しいって言ってた」
「……精霊の恨み言って初めて聞いたけど」
「私もよ、放置したら精霊の怨霊になりかねないし、そんなの対処不能以外何ものでもないでしょ、だから引き受けることにして、その場所を完全浄化してきた」
「そうか……」
そう言って、二人は子供達が連れて行かれた所に向かっていた。そして軍関連の城壁から一台の馬車が入ってきて、二人の目的地に向かっているのが見えた、それを見ながら雪華はあることをピートに質問した。
「ねぇ、子供達に結核菌は無かった?」
「あぁ、そっちに関しては全て完治しておいたが、一部の菌は確保しておいた、お前父親に対処するように考えているんだろう?」
「あら、よく解ったわね、そうよ父さんと春兄ぃに治療薬を頼もうと考えていたんだけど、菌そのものを保管するのを忘れてたのよ、でも助かったわ」
「お前にしては珍しいなぁ~そう言うのを忘れるなんて」
「あまり時間が無かったからね、午後の開店が迫っていたのよ」
「そうか、まぁ菌が無くてもお前の父親と兄なら何とするだろうが」
「でもやっぱり培養とかするなら必要よ!」
そんな話をして、子供達のいる場所まできて様子を窺っていた。当然隠蔽魔法と阻害認識魔法は掛けてある。
ちょうどその時軍の関連施設にいる子供達とロバートが再会している頃であった。
「お爺さん!」
「キートン! 他の子達も皆無事に様だね」
「うん……」
「お爺さん、怖かったよぉ~」
「もう大丈夫だよ」
怖かったと言ったのはまだ5歳のナンシーである。一番小さい子はまだ3歳のリリーとロアの双子である、兄妹両親ともこの貧民街に来て親は病死でる、それをリーダーのキートンが連れてきて保護したのだ。
最後に強がって「だから大丈夫だっていったのに」と言ったのはマックス9歳の男の子、両親が平民街で疫病で死んだため、姉と共に貧民街に送られた。姉は1歳上のマリア、病気になってシスターの預けられて死亡。
「これで全員だが、ロバートお前が保護してきた子供達に相違ないか?」
「はい、間違いありません」
「そうか、では子供達をここに、腕輪を外す」
「はい、さぁキートンから憲兵長さんの所に行くんだ」
「えっ? どうして?」
「腕輪を外して貰って、みんなで王都に行けるんだよ」
「……どう言うことだよ!爺さん!」
「許可が出たんだ、私とお前達6人だけ腕輪を外して王都に行くことをお代官様がご許可されたんだよ、だから素直にここは従いなさい、私もほら、平民街の神殿で外して貰ったんだ、しかもお代官様が目の前にいらっしゃって領外に出ても良いとおっしゃった」
ロバートがそう言いながら自分の腕を子供達に見せて安心をさせる、ロバートの手に腕輪がないのを確認した子供達は怖々としながらも指示に従って腕輪を外して貰った。
自分の腕から腕輪が無くなった事で安堵する子供達、そして何事もなく子供達の腕輪が全員外され自分の側にいるのを確認して安堵するロバートである。
「さて、処置も済んだし、これからあの馬車に乗って場外に出るんだ」
「こんな時間にですか?」
「こんな時間だからだ、その方が誰かに見られず騒がれずに済む」
「一応私が関所まではついていくから安心しろ」
「憲兵長さんが護衛を?」
「そうだ、夜だからな魔物が出ないとも限らん」
「解りました」
そういって憲兵長は数名の護衛軍を連れて壁外へと誘い、門兵に許可が出ている事を伝えて出ていった。雪華達は飛行魔法でそれを追う。
関所は馬車で30分程先にある、その先は王都までの道のりとなっており、同じく馬車で30分程行った所に王都の関所があると言われた。その時に代官から預かった王都行きの許可書を見せると言いと言われたのだ。そんな説明を聞いていると30分経ったのかハルシェット辺境領の関所に到着した。
「これは憲兵長、どうかされましたか?」
「あぁ代官の指示でこの馬車に乗っている者を通過させる。これが代官からの通行書だ、確認してくれ」
「はい」
憲兵長が渡したのは直接預かった領内の関所の通行書である、これがなければ関所は通過できない。
「……はい、確認をしました。通ってもかまいません」
「ふむ、ありがとう」
憲兵長はそう言うと、馬車に乗っているロバートと子供達に向かって言った、自分はここまでしか案内はできない。この関所を通過し30分ほどで王都の関所が着くから、何としてでもそこまで行け、魔物が出ても逃げ切るんだと言ったのだ。
「憲兵長さんなんてお礼を言ったらいいやら、ここまでの道中本当にありがとうございました」
「いや、気にすることはない、大変なのはこの先だからな、油断せずに行け」
「はい」
「お前達も危険だが、ロバートの言うことをよく聞いて行くんだぞ、それと少しだが道中の食べ物も積んであるから、休憩の時に食べるんだ、良いな」
「はい、憲兵長さんありがとうございます」
キートンが代表してお礼を言うと、下の子供達も同じようにお礼を言っていた。それを受けて憲兵長は笑って答えて馬車を出発させようとした時、ここでロバートが憲兵長に対して雪華から命じられたモノを渡した。
「これは? 代官様か隊長さんにお渡し下さい、お見せすれば解ります。私からのお礼だとお伝え下さい」
「解った、必ず渡して伝えよう」
そう言って、今度は本当に馬車が壁門を通過していくのを見送った憲兵長とその他の兵士達である。
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関所を通過して20分程たった頃だろうか、すでに関所は見えないが、暗い夜道には馬車にランプを吊している、だが子供達にとっては魔物の出る夜は怖いものである、小さい子は泣き出しそうなのを我慢しているのだ、キートンはロバートと共に御者台にいて周囲を警戒している。
荷台ではキートンのすぐ下の年齢12歳のルルが小さい子をなだめている。9歳のマックスはと言うと強がって大丈夫だ!と自分も怖いはずなのに、我慢してルルと一緒に下の子達を怖がらせないようにしていた。
そんな所に襲撃があった、ハグレ魔族である。何故か関所を通るまではいっさい姿を見せなかった、しかも魔物も出なかった。今は魔物よりも目の前のハグレ魔族が驚異である。しかも一人ではない、5人程いるのだ。
「こいつらか?」
「そのようだな」
「なら俺たちが頂いても問題無いってわけだ」
「だな」
「お前達はいったい……」
「俺たちは関所を通った者を刈る役目が仕事だ」
「刈る!」
「そうそう」
「待てよ! 俺たちはお代官様から許可が出ているんだぞ!」
「はははっ、子供か! 何も知らないようだな」
「どういうことだ!」
「お前達は初めから殺される事が決まっていたんだよ」
「何?」
「あの代官が許すわけ無いだろう」
そんな話をロバートとキートンが話している間だ、に馬車の中にいる子供達は泣き出した、時に小さな子は大声で泣いている。また強がっていたマックスも涙顔である。
「やっぱりねぇ~、そんな事だろうと思ったわ」
「誰だ!」
「親子揃って汚いまねをするもんだ!」
「誰だ! 姿を見せろ!」
言われてハイと言って姿を見せるような二人ではない、魔法で一人の魔族を瞬殺、そして雪華が地に降りたった時、一瞬で残りの魔族は命を狩られていた。
「あっ! お姉さん!」
「公爵様!!」
「おまえ容赦ねえなぁ~相変わらず!」
「魔族相手に手加減なんかするつりはないわよ! それよりそいつ等も腕輪をしているんだけど、ちょうど良いから回収しましょう、それで分解して解析してやるわ」
「そういうのは嬉しそうだな!
「当然よ!」
姿を見せたのは雪華とピート・ルゥ・パートである。雪華の正体を知らない子供達は「お姉さん」と呼んでいたが、ロバートとキートンはちゃんと公爵様と呼んでいた。
「ロバート!」
「あの助けていただいてありがとうございます、公爵様」
「守るって言ったでしょ、それより例のモノは渡したの?」
「はい公爵様の言うとおりに関所を出る間際に憲兵長に渡しました」
「そう、なら良いわ、彼なら間違いなく横領もせず上司に差し出すでしょう」
「本当にあれで良かったのですか?」
「えぇ、神殿であなたが出ていった後、あの代官が部下に話していたのを聞いたのでね、予感的中よ!」
「そうでしたか」
「それより、この先は私たちが馬車を引くから、あなた達は荷台で休んでなさい」
「いいえぇ、公爵様に馬車を引かせるなんてとんでもない、我々が致しますから」
「気にしなくても良いわよ、力有り余ってるし、ロバートこそ年齢考えなさい! 子供達も心配しているでしょ」
雪華は笑顔でよう言うと、ピートに馬車に被害はないかと訪ねていた、大丈夫だという返事が返ってきた為、後5分ほど先に休憩できる場所があるからそこまで行こうと皆を促した。
その間、ロバートとキートンは、他の子供達に雪華達の事を話して説明した。決して無礼の無いようと念押しまでしていた。
「この当たりで良いな」
「そうで、魔物除けの結界を張っておくわ」
「そりゃ助かる、おまえの結界は頑丈だからな」
「それは逆でしょう!」
「いやいや、自覚しろ!」
雪華とピートがなにやら言い合っている間だ、ロバートと子供達は持たされた食事を取り出して食べようとしたが、それに気づいてピートが止めた。
「どうして?」
「毒入りだぞ、それ」
「えっ!!」
「何で……」
「おおかた無事に抜けた後の事を考えたんでしょうね、ハグレ魔族をやり過ごした場合は、もしくは出会わなかった時のために、毒入りを食べて死ねば魔物の餌食になる」
「そんなぁ~」
ピートがその食事を全て放り投げると、近くの動物や魔物がよってきて目の前で死んだ。魔物を殺すほどの毒を人間に与えることの方が驚きだと雪華とピートは思った。
「とんでもない奴らだな!」
「どんな毒を仕込んだのやら、あり得んわ」
「どうする? この魔物?」
「放置しましょう、毒入りなんて買い取って貰えないわよ」
「だなぁ~」
雪華はアイテムボックスから軽くサンドイッチを作っておいた保存食を皆に渡した。一息着いた所で、王都側の関所に向かって再出発した。あと10分弱程度で関所が見えてくる。憲兵長がいうにはそこで代官から貰った王都にはいるための許可証を出せば良いと言われていたのだ。ロバートはそれを準備していた。
暫くすると関所が見えてきた、そこで馬車は一旦止まる。そして御者台にいる二人に向かって通行書を要求してきた。そして二人は冒険者カードを提示、それを確認した兵達は驚きの顔を見せて無礼をわびていた。
「申し訳ございません、公爵様方が領外に出ているのは存じませんでしたから」
「まぁバレないように出たからね、悪かったわ」
「極秘で出ていたからな、それよりあの荷台にいる者達を王都に入れたいんだが……」
「どなたでしょうか?」
「一応王都へはいる許可証を貰ったって言ってたんだがな」
そこでロバートが呼ばれて、他の兵は荷台にいる6人の子供達を見て確認していた。そしてロバートは預かった書類を見せると門兵は怪訝な顔をしていた。
「これは何だ? これが許可証か?」
「えっと、中身は見ていませんが、それを見せれば王都に入れて貰えると代官様から言われたのですが……」
「何? ちょっと見せて?」
「公爵様……」
「………あの代官……ここまでするか??」
「何だ雪華?」
「見て、これ! このもの達を殺せって書かれてる」
「はぁ~~!!」
「アイツ、どこまで行っても腐ってるな」
「悪いけど門番さん、このままここ人達を王都に連れて行きます」
「ですが……公爵様これでは……」
「大丈夫よ、あのバカ代官はこのロバートの家を欲しいが為だけに、彼を家から退去させる行動をとっただけよ」
「そうだ、さっきそいつ等が彼らの道中の食事にって渡されたモノに毒が仕込まれてた」
「それだけじゃないわハルシェット辺境領側の関所を通って20分した当たりでハグレ魔族に彼らを殺す命令を出してたわ」
「初めから殺すのが目的だった様だが、俺たちを特に雪華を欺けるなんてあり得んバカだよ」
スキルマスターであり『至高の存在』二人に言われたら彼らとて反論はできない。王宮からは彼らを怒らせてはならないと指令が出ているのだから。
「解りました、ではお通り下さい、ですが上官に報告はさせて頂きます」
「かまわないわよ、このまま王宮に行くから」
「王宮にですか?」
「えぇ陛下との約束があるのよ」
「その彼らも連れていくのですか?」
「当然よ、重要な報告は彼らからして貰った方が陛下も納得できるでしょうからね」
「解りました」
「うん、ありがとうね」
雪華はそう言いながら、再びピートと一緒に御者台に乗って関所を通過、王都に向けて出発した。そしてロバートからは何故王宮なのかと色々な質問が相次いだが、ハルシェット辺境領の現状を偽りなく報告できるのはあなた達だけだからと告げた。
それを聞いてロバートが心配になっている、貴族のそれも国王陛下に謁見する事になるためである。
「心配はいらないから。私たちも一緒だから」
「そうだ、大丈夫だから心配はいらない」
雪華とピートがそう言いながら馬車を進めている間に、雪華は式紙を放ち小花衣に王宮に来るよう連絡を入れた、そして当然国王に対しても簡単な情報の手紙を例の魔道具宛に送っておいた。
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関所を通ってから暫くして王都に入った。当然スキルマスター権限で通過、そのまま王宮に向かったのだ。
城門ではすでに情報が伝達されていたようで、普通に通過し、城の玄関口まで行くと、小花衣とエルルーン、そして宰相のベルフィント伯爵が待っていた。
「ただいまぁ~~」
「お帰りなさいませお館様」
「……怒ってる?」
「そうお見えで?」
「……何となく」
「なら自重なさって下さい」
一応出かけるときには報告したはずだった、極秘に行くと、しかし返ってきたときは、しっかり関所を通っていることに対して騒ぎとなり掛けて国王が大変だったと説明を受けた。
「そう、悪いことをしたわね」
「なら陛下に謝罪をお願いします」
「解っているわよ! ところで伯爵、できたら極秘で話したいのよ、彼らも含めて何とかできないかしら?」
「畏まりました、直ぐに陛下にご報告をし部屋の準備を致します、その間は以前お使いの客間でお待ち下さい、それとご一緒に来られた方の衣服を整えさせていただけますか?」
「あぁ~そうね、ロバートはともかく子供達の方は着替えないと不味いわね」
「ご了承頂ありがとうございます」
宰相はそう言いながら、ロバート達を別室へ案内して着替えをさせるようメイド達に命じていた。そして雪華達もまた別の部屋で衣服を整える羽目になった、当然だ旅をして誇りだらけであった為である、故にエルルーンが張り切っていた、その後はそのまま客間に移動した。
稚拙な文章をお読みになって頂きありがとう御座います。
ご感想に対する返信返しは超苦手なので、出来ないことが多いかもしれませんが、出来るだけ頑張りますので、長い目で見ていただけると幸いです。