121話 ハルシェット領潜入 その4
開けましておめでとうございます。
新年早々に地震で怖い思いをされた方も多いと思いますが、皆様は大丈夫でしたか?
被害に遭われた方々の上にお見舞いを申し上げると共に体調とお心の変調にはお気をつけ下さいませ。
※何度か読み返し、色々話がおかしくなっている所や誤字・脱字は不定期に修正・加筆をしております。(更新日が多々変更あり)
ロバートの病を完治させた雪華は、午後の店の準備をするという彼を送り出した、だが病のことはいっさい誰にも言わないことと堅く命じていた。
雪華にしてみれば結核菌をどうやってばら撒いたのかが気がかりだった、そもそもこの世界に何処からその菌を手にしたのかも気になる所である。
ロバートの妻は傷口から毒が入ったと言っていた、恐らくその時に感染させられた可能性がある。貴族街の疫病を治めるために貧民街に菌をばら撒く、そもそも辺境伯がその菌のことを知っていたのかという疑問もある、知っていてばら撒いたのなら知能犯であるが、菌の正体を知らされずにばら撒いたのならどうか……
「マクディナル……、ヤツなら結核菌の事は知っているはずだわね、じゃなぜ獣族との縁のあるハルシェット辺境領でそんな事をする必要がある?」
雪華はそんな事を思いながらピートに連絡を取った、ロバートが結核に感染していたから完治させた、子供達の方を頼むと。
ロバートと近しいキートンが一番感染しやすい、次いで彼とともに行動している他の子供達もだ。
「どっちにしてもこれは父さんと春兄ぃに報告して治療薬を作っておいて貰わないとダメね、いつ王都やウィステリアに持ち込まれるかわからんわ」
雪華の考え事や独り言など、誰も聞いてはいないのだが、現状危険であることには間違いない、そんな所に憲兵の役人が店に来たようだ。
「ロバート!」
「これは憲兵長様、このような所にどうなさったのですか?」
「なに今日店を畳むと聞いたのでな、料理長とともに挨拶にきたのだ」
「ロバートさん、寂しくなりますなぁ~」
「これはみなさま申し訳有りません、本来なら私から出向かねばならぬ所を……」
「いやいや、もうその年だ無理をして体を壊してはならぬ、よくここまで頑張ってくれた、礼を言う」
「そうですよロバートさん所の食材はこちらにとっても大助かりだったのです、良い品をやすく提供してくれるのだから」
「そんな事はありませんよ、天候に左右される物ですからね。高くなった時も合ったでしょう?」
「それでも他に比べれば安い方だったよ」
「今後の事もしっかりと対処してくれたからな、ハッチントンの所もお前が仕入れている同じ農家だと聞いた、ならば品は良いはずだからな、それにあそこは他の品も扱っているから我らにとっては好都合だった」
「憲兵さん達の衣服なんかも置いてあるので憲兵長さんもお喜びなんですよ」
「でぇ今後はどうするのだ?」
「日長余生を送ります、もう年ですしそんなに長くは無いでしょうから」
「そうか……あぁそうだ、これを渡しておく」
そういって憲兵長が取り出したのは何やら包みのような物だ、割と大きいものである。
「あの?」
「今までの礼だ、料理長と私からのな、貴族街で入手した毛皮だ、これから冬の季節になるだろう、暖かい物が良いだろうと思ってな」
「そんな高価なもの頂けません」
「いいや受け取ってくれ、息子夫婦が貧民街で亡くなって、奥さんもその後を追うように亡くなった、その後は一人で頑張ってきたんだ、あの時は何もしてやれなかったからな、上司の命令で貧民街での調査が出来なかった」
「そんな事は……」
「正直な所私にもっと権限があればと、あの時は思ったものだ、しかしロバートよ、ちょうど良い時期に店を畳んだのかも知れんぞ」
「えっ、それはどういう事ですか?」
「実はな、戦争が起こるかも知れぬのだ」
「戦争!」
「私も憲兵長さんから話を聞いた時には驚きました、だから今のうちに食材を多めに確保しろと命じられていたのですよ」
「ぁ~それは、また……」
「詳しいことは知らないんだがな、俺も上からの話で聞いただけだが、それでなお前のその腕輪を外しても良いという許可を取り付けてきた」
「えっ? それはどういう事ですか?」
「今まで我ら憲兵の為に無理難題な仕入れをして納めてくれていたのは知っている、それは上官にも話してきた、戦争が始まるかも知れぬのなら、その前にお前だけでも避難させたいと、俺から頼んだのだ」
「そんな事可能なのですか?」
「あぁお前の行動は上官も知っている、貧民街の孤児を守っていることもな」
「そっ、それは……」
「心配には及ばん、これも上司からの命令だ、その子供達と一緒に王都に逃げるよう許可が下りている」
「お待ち下さい、それは領主様や代官様の耳に入ったら、憲兵長が責任をとらされるのでは?」
「いいや、上官が代官様に上奏して下さったのだ」
「えぇ?」
「それで、お前を貧民街に送り届ける任を仰せつかった、店を閉めたら神殿に来るが良い、待っているぞ」
「……あぁはい、解りました」
思わぬ出来事にロバートが困惑していた、当然この話を聞いていた雪華も驚いていたのだ。何かが起こっていると……
憲兵長と料理長が帰った後、ロバートは二階にいる雪華の所に出向いた。
「あれはどういう意味?」
「解りません、腕輪を外す許可が下りたとか、キートン達の事まで知っているとは思いませんでした」
「あの憲兵長とはどういう関係なの?」
「昔なじみではあります、私が冒険者をしていた時はまだ門番をされていましたが、私が引退した頃には憲兵隊に配属になっていました。冒険者をしていた時に狩ったビッグベアを内緒であげた事が合ったのです、本来なら冒険者ギルド報告して買い取って貰うのですが、そのとき私の取り分を彼にあげた事が有りました」
「なぜそんな事をしたの?」
「彼には助けられた事があったのです、冒険者をやめる少し前だったでしょうか、ビッグアンテカウに襲われて、私たちのパーティでは歯が立ちませんでしたから、逃げるだけで精一杯だった時に、彼とその仲間の憲兵達が助けてくれたんです、それ以来のつきあいです」
「割と良い人だったのね」
「はい、中級貴族出身ですが、平民の気持ちを大事にしてくれる方です」
「中級貴族が平民を助けるとは、ハルシェットなら考えられないんだけどなぁ~」
「その後彼は私が店を出したと知ったのち、憲兵専属の食材卸として上官に掛け合ってくれました、結婚式も子供が産まれた時も子供の結婚祝いまで下さったのです」
「そうなんだ」
「息子夫婦が不当な扱いで貧民街送りになった時も、上官に掛け合って調べなおして欲しいと上奏してくれましたが、当時の上官は平民嫌いだったのでどうにも出来ませんでした」
「ちなみに息子夫婦の不当な扱いって何か知っているの?」
「息子夫婦はただ買い物に出ていただけでした、私たち夫婦も一緒に出かけていました。買い物が済んで少し休憩しようと立ち寄った所が貴族街に近い公園でしたので、息子夫婦が壁に近づきすぎたのです」
「えっ?? 壁に近づきすぎた??? それだけ?」
「はい、ただそれだけです、なのに近くにいた軍兵が壁に寄りかかったと言いがかりをつけて……」
「それで貧民街送り???」
「はい……」
「……あり得ん、何その馬鹿げた対応」
「証拠は何もありません、この領内では貴族の言葉が絶対です、その軍兵は中級貴族でも上位に位置する方だったので、当時一介の憲兵長でも反論が出来なかったのです。その後、店を出した時の上官と息子夫婦が貧民街送りになった時の上官が別の方だったのです、そして今もその時とは別の方が上官だそうです」
「なんか理不尽ねぇ~」
「仕方ありません、このハルシェット領はそういう所です。正しい行動をしていても、たとえ貴族であろうと地位の高い方の言葉には逆らえません」
「そう、じゃ仕方ないわね。とりあえず命令どおり行動して、それと、この店の権利書を持って行った方が良いわね、念のために……ここを出られるのであれば、それを担保にしても良い」
「この店をですか?」
「そうよ、憲兵長が言ったとおりなら恐らく戦場になり人は住めなくなるでしょうからね、権利書があれば彼ら憲兵は自分たちの権利だと主張出来るから、国から何かを行われても取られることはないでしょう」
「なるほど、それを彼らの礼すれば良いと?」
「そう、但しそれを渡すのは貧民街でって条件を付けること、先に渡して子供達が人質になっても困るからね、相手が言い出さない限りこっちから権利書の事は黙って置いてね。何も言わなければ、そのまま貧民街まで隠しておくのよ、子供の引き渡し、つまりあなたが子供を引き取って安全が確認されたら、権利書を代官かもしくは憲兵隊長宛にお礼だと言って渡した方が安全だからね」
「解りました、店を閉めたあと私は地下道の閉鎖にかかるわ、ロバートは神殿に行く用意と、持っていく物をまとめておいて」
「解りました」
雪華の指示の元ロバートは動いた、そして雪華もピートに現状報告をし、子供達には役人の言うとおりに動いておけと伝えた、但しピートは阻害認識魔法と隠蔽魔法で彼らの近くで見守るようにと伝えた。
夕方、店じまいを終えたロバートが戸締まりをして二階の雪華の所に戻ってきた。
「公爵様、準備が整いました」
「そう、私の方も一応整えた、地下道の入り口だけど、子供達の支援をしていることがバレている以上、下手に隠し立ては不味いと思ったから、倉庫から地下に入れる部屋の扉はそのままに、地下に降りる扉はには簡単には外れないように堅くして、その上に土を被せて解らなくしておいた、簡単に見つかるような事はさせないわよ、じゃなければあなたが今まで隠し通してきた意味がないからね」
「ありがとうございます」
「連中の思惑がどうであれ、恐らくあの地下道は何かに使おうと考えているはずだから」
「はい」
「じゃ出発しましょうか?」
「でも公爵様は極秘裏にここに来ているのでしょ、彼らに会うのは不味いのでは?」
「大丈夫よ彼らに私は見えてない、というか見えないように魔法を掛けるから心配ない、私の姿は見えなくても側にいることだけは覚えて置いてね」
「解りました」
雪華の言葉で一応納得したロバートは持って行く荷物を雪華に示した、そして雪華は魔道具でそれらを一切合切入れ込んで、雪華が持っておくと言った。ロバートはそれを驚いて見てから店に鍵をかけて出ていった。
雪華は一人店の中に取り残されたが、周辺警戒をして屋根の上にテレポートした。この地の精霊達に大精霊は何処にいるのか訪ねていた。すると地下深くに隠れていると返事が来た。
「なるほど人が入ることが出来ないわね」
教えてくれた精霊達に礼を言って、雪華はロバートを追った。言われたとおりに神殿に到着すると、憲兵長とその上官が待っていた。
「来たかロバート」
「憲兵長さん」
「久しぶりだなロバート」
「隊長様、ご無沙汰しております」
「ふむ、長い間ご苦労であった、今回はその腕輪を外す許可が下りた為、私も同行することになった」
「はい、でも本当に外せるのですか?」
「あぁ、そう心配するな」
そう言われても不安が過るロバートである。仕方なく二人の後追う形で神殿の中に入った、雪華も透過の術で神殿の中に入る、幾人もの神官達がいる中を通って神殿長のいる礼拝堂へとやってきた。そこには何故か代官がいた。
「えっ?」
「もうお越しでございましたか代官様」
「来たか、待っていたぞ、そなたがロバートか?」
「あぁはい、お代官様」
「そう硬くならずともよい、今回はそなたの功績を認めての対処だ」
「えっ?」
「この二人からの上奏でな、孤児になった子供を守りながら憲兵達の台所事情を潤してくれていたと聞いた。孤児になった子供には罪はないのだが、この領内では孤児院が無いからな、どうしても貧民街送りになってしまうのだ」
「私は……罰せられるのでしょうか?」
「何故だ?」
「貧民街の者を助けてきたことは秘密にしていました。公に出来ることではないのも知っています」
「確かにな、だが……これは私の一存で変えることが出来ない事だから、とは言え、憲兵隊に対しての功績を認めないわけには行かない、よって温情を与える事にしたのだ、すべての孤児を助けることは出来ぬ、だがそなたが守ってきた6人から10人程度なら許可しようと決めた」
「……ありがとうございます」
「でぇ実際の所今は何人いるのだ? 6人です、四人は病気でシスターに預けられているそうです」
「何っ、シスターに?」
このシスターという言葉を聞いた代官の表情が硬くなった、それを見た雪華は、どうやら代官は知っているようだと判断した。
「そうか……シスターに預けられている者は連れてはいけないな、ならば預けられていない者達を連れて行くが良い。名前は解るか?」
「あの……本当に子供達も連れて行って良いのですか? 子供達の腕輪も……」
「ああ当然外す許可は出してある」
「……そうですか……」
「さぁ名前を教えてくれ」
「はい……」
言われたとおり、ロバートはキートンを初めとして6人の名前を言った、その後ろで憲兵長が書き留めている。そして書いたメモを部下に渡してすぐに貧民街に赴き、メモに書かれた子供達を庇護するよう命じていた。
「さぁロバート神殿長の前に手を出して」
「はい……」
「本当によろしいのですか?代官様?」
「あぁ構わない、私の責任で許可する」
「畏まりました、ではロバート腕輪を外します、腕を出して下さい」
「はい」
ロバートは言われたとおりに腕輪のある方を差し出す、そして神殿長が何かのカードの用なモノで腕輪に翳すと解除され腕輪が外れた。
それを見たロバートは腕輪があった方を反対の手でなでている。その間に神殿長がカードを憲兵長に預けた。
「では憲兵長にこれを預けます、先ほど言った名前の者以外は外れませんので」
「わかった、お預かりします神殿長」
「ロバート、これは王都へ入る為の許可証だ、子供達の分も用意してある、持って行くが良い」
「ありがとうざいます代官様」
「ふむ、それとな、もしウィステリアの公爵様に会う機会が恵まれたら、一度お会いしたいと伝えてくれぬか?」
「えっ?」
この発言にはロバートもドキッとした、本人が姿を隠して側にいるはずだからである。
「えっとそれはいったいどういう意味でしょうか? 私のような者が公爵様にお会いできるとは、思いませんが」
「あぁそうだな、実はなお前は元冒険者だっただろう?」
「はい」
「一年ほど前だったか王都で冒険者ギルドの代理ギルマスをしていたらしいそうなのだ、その時の詫びをしたくてな」
「お詫びですか?」
「あぁ父上が大変無礼な行いをしたと私の方にも伝わっているのでな、ご挨拶代わりに謝罪をしたいと思っている」
「はぁ」
「なので冒険者ギルドの今のギルドマスターにその事を伝えて欲しいのだが、どうだろうか?」
「お伝えすることだけなら出来ると思います。ですがお会いすることは、無理だと思います。あちらは独立自治を許された領地と伺っていますので、勝手に入ることは出来ないと思います」
「ふむ、確かにそうだな、なら無理にとは言わん」
「ありがとうございます、私に出来る限りの事はさせていただきます」
「ふむ、それなら良い、では行け貧民街で子供達と会って安心させてやるが良い」
「はい大変なご配慮痛み入ります、本当にありがとうございます」
「ふむ、憲兵長後は頼んだぞ」
「はっ!」
そう言ってロバートは憲兵長とともに馬車に乗って貧民街へと向かっていった。
「これでよろしいのですか? 代官様」
「あぁこれで良い、後はヤツの住んでいた家が手に入れば申し分ない」
「本当にあるんでしょうか? 地下道なんて」
「父上はあるとおっしゃっていたからな、それがあれば防衛戦も敷けると言うものだ」
「しかし権利書がなければ我々のモノにはならないのでは?」
「住人がいなくなれば権利書なんか無くても没収できる」
「なるほど……」
二人の話を聞いていた雪華はやはりそういう事だったかと思った、連中は地下道を我がモノにするために表向き音便に退去させたと言うわけだ、貧民街の子供達はある意味囮かと雪華は警戒した。
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貧民街に続く道を憲兵隊に率いられて向かっている間に、雪華は大精霊の場所に向かっていた、ロバート達については精霊達に警戒をさせていた。
地下道から続く場所ではあるが、明日種の結界で隠蔽した場所がから更に地下深く、人の入れない場所に大精霊は隠れていたが、何故か人の気配を感じた。
「何だ? こんな所に人の気配がある?」
雪華は警戒しながら様子を見るために進むと、ハルシェット辺境伯本人がいた。
「どうだ? 大精霊よあの女に勝てる方法は無いのか?」
「ありませんと何度も言っています、それに何故人間が私を捕らえることなど……そなたには魔法を使うだけの魔素はない」
「そうか、でも魔法が使えなくてもこれがあるんだよ」
「それは、魔石……」
「そう、魔素をたっぷりと含んだ魔石、これを使って魔法を使えは扱える、だから言え、あの公爵を殺すことが出来るのか? 弱点は無いのか?」
「何故私が知っていると思うのです」
「お前達精霊はあの女と話が出来るんだろう? だったら何かしらの情報を持っているだろう」
「お前達人間風情にあの方を倒せると思ったら大間違いです、たとえどんな魔法でもあの方の前では役に立ちません、諦めなさい人間よ」
「やれやれ、ここまで言っても言わないとは頑固な……じゃ仕方ない、大精霊には死んでもらおうか」
「何をする!!!」
そう言うとハルシェット辺境伯は魔石に自分が持っているわずかな魔素を流し込み詠唱を言い始めた、すると強い風圧と共に大きな炎が大精霊に向かって攻撃を始めた。
「……うそぉ~~アイツにあんな魔法扱えないはずって事は魔石に魔法術式を込めてあったのか」
あまりの熱風に雪華も結界を張って身を守る、今手を出すことは出来ないと解っているため見守る以外にないもどかしさと腹立たしさで怒りを込めていた。
大精霊に向かって攻撃した炎系の魔法それはかなりの高等魔法と言っても良い、とはいえ消し炭に出来るほどのモノではない。
燃やされてしまった大精霊は黒こげになっている、それを見て舌打ちをしながら横穴から出ていったハルシェット辺境伯本人を睨んで雪華は大精霊の側にやってきた。
「ちょっと……」
「……その気配は……始祖姫様……」
「この領地のしかも貧民街の精霊達があなたを心配していたのよ、平民街に来なければあなたの気配を追えなかったわ、来るのが少し遅かったみたいね、悪かったわ」
「いいえ……お越し下さっただけでもうれしく……おもい、ます」
「これだけやられたら復活は無理か?」
「そう、ですね、大精霊である私は長い時を生きてこの地を守ってきました……ですがそれももう出来ません……」
「あなたは元々大地の精霊ね」
「はい……」
「って事はこの領地は荒れるわね」
「構いません、この領主は昔からイルレイア大陸との関わりが多く地を荒らしてきました……私はそれを正すために魔力を多く使ってきたのです、精霊達を使って神殿長に知らせることもしてきました……ですが……人は我らの声が聞こえなくなっていたのです」
「あぁ~そうでしょうね、魔素がなくなっちゃったんだもんねぇ」
「故にもうこの地を守ることができません、この地に住む精霊達はみな死に絶えましょう」
「それはあなたの命がつきるから?」
「……はい……この地の精霊達はみな我が子同然です、私の力を元に生まれたモノ達なのです」
「そう……」
「始祖姫様……最後のお願いを聞いて頂けますか?」
「何?」
「この地を再生しないで下さい」
「えっ不毛の地にするって事?」
「はい、ハルシェット家の者が死に絶えるまでは……」
「ちょっと! 精霊にあるまじき発言なんですけど!!!」
「そ、そうですね、ですが……私ももう許すことができないのです……再生するときは始祖姫様にお任せいたします……ですがどうかハルシェット家の血が絶えるまでは……どうか不毛の地に……」
「……そこまでか、解った、承知したから恨み置いて逝きなさい、精霊がそんな思いを残してはダメよ、それとあなたの種は私が預かるからね!」
「はい……お願いします」
笑ってそう言った大精霊はそのまま朽ち果てていった、消し炭にならなかった分魂は種となり雪華の手に収まっていた。
大きなため息をついた雪華はこの場の浄化をした、そして大精霊の恨みもともに浄化した。
稚拙な文章をお読みになって頂きありがとう御座います。
ご感想に対する返信返しは超苦手なので、出来ないことが多いかもしれませんが、出来るだけ頑張りますので、長い目で見ていただけると幸いです。