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次元移動を越えて…(物理世界から魔法世界へコールドスリープ?)  作者: 混沌の夢
第5章 動き出す諸々編
140/158

113話 冒険者ギルドと神殿の秘物

※何度か読み返し、色々話がおかしくなっている所や誤字・脱字は不定期に修正・加筆をしております。(更新日が多々変更あり)

 雪華が持参した新しいカード鑑定魔道具でピートの冒険者カードの鑑定をした、三橋もそれを確認して納得した。


「ありがとうございました、領主様以外のSLランクの方のカードを始めて見ることになり嬉しく思います」

「そんな事が嬉しいのか?」

「はい、滅多にお目にかかることすらありません、今はお二人が知るように3桁レベルの冒険者が殆ど居ませんので」

「ウィステリアは増えてきているけどなぁ~」

「それは領主様の政策のおかげでございます、王都にもそういう事が出来れば増えてくれるのでしょうけど、なかなか……」

「レベルが上がらないのか?」

「いえ、上げられる筈なのですが、魔物が強くなっていて手も足もでないという冒険者が多くて……」

「………こっちはまだ2桁程度だろう?」

「その2桁の魔物に苦労してるのよ、王都の冒険者は」

「えぇ~~~」

「だいたいそのLV50程度のビッグベア如きを一人で倒せない冒険者ばかりよ、あり得ないでしょうが、だから私が複数で倒すようウィステリア以外の冒険者ランクと魔物ランクの改訂表をわざわざ作ったのに、それでもランクが上がらないってのも不思議だわ」

「50が無理って……マジかよ!」

「冒険者の不平が多いのです、子供も冒険者予備校に通わせなければ採集に行けない様になりましたから」

「はぁ~悠長に構えていたら、そのうち魔物に町が襲われて崩壊してしまうわね」

「町が崩壊って……」

「2桁レベルの魔物も倒せないようなら、そうなるな、ウィステリア周辺は3桁が普通だし、レベルも高くなってきている最近では500レベルはいるからな、それがこっちに来ないとも限らない」

「その話は本当だったんですね」

「あれ松永から報告は来てなかったの?」

「来ておりましたが……その様に高レベル魔物を見たことがないもので」

「情報はこっちにまで来ていなかったって事か……」

「これは不味すぎる……」

「なぁ~雪華今回もお前が魔物の情報を出してやれないか?」

「それって絵を描いてって意味で言っているの?」

「そっ!」

「嫌よ、絵画は得意じゃない!」

「念写しろ、出来るだろう?」

「………念写かぁ~、まぁそれなら出来るか……」

「念写?」


 ピートから提案された念写は超能力の部類である、一般的に獲得できるスキルではない、普通の冒険者でもレジェンドランクでも獲得は出来ない固有スキルとでも言うものだ。これは雪華以外使えないモノである。かくゆうピートも念写は出来る、人ではない力ならと言う意味でだが。


「あぁ~固有スキルみたいに思ったらいい、雪華にしか扱えない特別な力だ、それなら正確に魔物の姿を映し出せるからな」

「そうねぇ~ついでにレベルと特性も記載しておくか、三橋紙をある程度多めに用意して貰える?」

「はい、畏まりました」

「おい、今するんじゃないのか?」

「ここでそんな事やってたら時間の無駄よ、それは宿屋を確保してからするわ、それよりもこの後神殿に行くんだから」

「あぁそうだった」

「宿屋にお泊まりですか?」

「えぇ王宮何かで過ごせないわよ、宿屋の方が何かと動きやすいからね」

「では、以前お泊まりの?」

「えぇそこにするわ、確か『妖精の宿』って名前だったかしら?」

「はい、ロドリア氏のお墨付きだった筈です」

「そうそう、近くに食事の美味しいお店も合ったわよね」

「なんだその『妖精の宿』っていう名前?」

「詳しいことは解らないんだけどねぇ、ロドリアさんの紹介してくれた宿だったから気にしなかったわ、っというより前は忙しすぎて宿屋の店主と話しすら殆ど出来なかったのよねぇ~」

「そのドロリアってウィステリアに支店があるあの何でも屋か?」

「そう、そこの店主よ、良い人なんだから」

「ふ~ん」


 雪華は何故か嬉しそうに言った、ロドリアとは久しぶりに会う為楽しみだったのだ、そして紹介してくれた宿屋の女将と店主も良い人だったのだ。


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


 冒険者ギルドを出て真っ先に行ったのは宿屋確保である、『妖精の宿』は冒険者ギルドからそう遠くない場所にある。店主はハーフエルフで女将はエルフ族である。


「こんにちわ、お部屋空いてますか?」

「いらっしゃいませ、あら公爵様ご無沙汰していますね」

「去年以来かしら?」

「えぇ、そちらの方々は?」

「私と同じギルドの仲間でピート・ルゥ・パートって言うの、それからこっちが私の執事で小花衣、でぇ侍女のエルルーンよ」

「まぁ、エルフ族ですか?」

「そう、エルルーンも同族と話が出来ると何かと気安いかもとお思ったのだけど、あなた達にとっても言い話し相手になるかしら?」

「はい、エルフ族はあまり人の多い所には出てきませんので、嬉しく思います」

「そう、良かったじゃ二部屋あるかしら?」

「はい空いていますよ、準備を致しますのでそちらでお待ち下さいね」

「女将、隣どうしで頼む!」

「畏まりました」

「あらテーブル、前は無かったわよね」


 雪華がそう言うと女将は姿を消していたが、代わりに店主が出てきた。


「いらっしゃいませ、久しぶりですね公爵様」

「ルーラン久しぶり、前はここにテーブルなんて無かったじゃない、どうしたの?」

「あぁお客様の為にお茶を提供できる様な場所を作ったんですよ、部屋に入れたくないお客様も居るようで、かといって食堂では五月蠅いからとか、まぁ~うちみたいな宿屋に泊まってくれるお客さんは多くありませんからね」

「なるほど……やっぱり変わらないのね」

「この王都スリアでは、まだマシだと思いますよ、エルフ族はどこにでもいますから、でも私がハーフエルフなのでエルフ族からも嫌われてますからね」

「それって差別よねぇ~」

「ところで、今日は公爵様としておいでですか? それとも冒険者のレティさん?」

「今日は公爵として王都に来ているのよ」

「では貴族のお泊まりになる宿の方が良かったのでは?」

「冗談でしょ! 私はあんな堅苦しい所はごめん被るわ! それにここがお気に入りなのよ」

「それは嬉しいことを仰る」

「それだけじゃないわよ、私の侍女がエルフ族だからね、あなた達に彼女を頼みたいのよ」


 店主と話す雪華を見てピートは小さな溜息を付いた、そんな所に女将が戻ってきた。


「準備が整いました、これがお部屋の鍵になります」

「鍵? 前は内側からしか掛けられなかった様なぁ~」

「えぇ公爵様がお泊まりいただいた後、ロドリアさんや冒険者ギルドのギルドマスターさんと相談して外からも中からも鍵を掛けられるように致しました。ウィステリアにはこういう物があると伺ったのですが……」

「えぇあるわよ、そうあの二人に相談したのね」

「はい、以前お泊まり頂いた時に護衛兵が部屋の前にいらっしゃいましたし、他のお客様が少々怖がっておられたので」

「なるほど、そりゃ怖いわ、悪かったわねぇ~」

「いえ、理由を知っていましたので」

「じゃ一度部屋を確認してくるわ」

「どこかにお行きになるのですか?」

「えぇ神殿に用があってね」

「神殿ですか……」


 雪華が神殿の話をすると、二人は少し困った顔をした、何か会ったのかと訪ねると、最近神殿の様子が変であると、ただ何が変なのか解らないと言った。


「特に何かと言うわけではないのですがね」

「何か隠しているとかそう言うこと?」

「いえ、それも解りません。ただ礼拝人数に制限が掛かって居るのです」

「制限?」

「はい一日に礼拝できる時間は午前中と午後の2時間ずつです」

「……どういう事?」

「わかりません」

「この時間はどうなの?」

「ぎりぎりだと思います、午後は1時から3時迄です」

「今、2時半か急いだ方が良いな」

「そうね、じゃ部屋の確認はエルルーンに任せましょう、頼める?」

「はいお館様」

「じゃ、とりあえず私達の部屋だけは確保しておいてね、遅くなっても戻ってくるから」

「解りました」

「留守番のエルルーンの事、頼んだわよ!」

「はいお任せ下さい」


 雪華は鍵と荷物をエルルーンに預け小花衣とピートと共に急いで神殿に向かった。

 宿屋の二人が言うように神殿の前には行列が出来ている、短時間である礼拝をするためだった。


「これに並ぶのは無理ね、時間切れになりそうよ」

「レイモンド紹介状が合っただろう、それを見せたらどうだ?」

「……そうね、ちょっとズルをするからイヤだけど、今は仕方ないわね」

「私が持って行きましょう」

「じゃお願いね」


 雪華はそう言うと三人揃って並んでいる列から外れて直接入り口の神官に取り合った、レイモンド・フェスリアナ国王の直筆紹介状である、これに対して文句を言うなら国王召喚するしかない。


「少々お待ち下さい、今神殿長に確認をとって参ります」

「なぁ雪華、ここの神殿長ってどんな奴だ?」

「あぁヘンドリック・マールセンっていう名で中肉中背で背が高く一見して武術も心得ていて、また魔力もそこそこ持っている人物ね、私に対して国王を操るのかって言ってきた奴よ」

「お前にそんな事を言ったのか?」

「言った……」

「……バカな奴、死にたいのか?」

「さぁ~?」


 二人がそんな事を話していた所に、先ほどの神官が戻ってきて神殿長が直接会うとの事で案内をすると言ってきた。横目で並んでいる者達を尻目に、今回はどうやら素直に聞く耳を持つようだと雪華は思った。

 そして通された場所は神殿長室である、そこには数名の神官がいた。揃いも揃って何やら深刻そうな顔をしていた。


「ウィステリア公爵様、ご無沙汰しております、去年のご無礼をお詫び申し上げます」

「……いやぁ、詫びは良いから何なのよ、この辛気くさい雰囲気は! それに外の長い行列も前は無かったわよ」

「礼拝に時間制限が掛けられて変だって言われたんだが」

「あぁ~あの公爵様、そちらがもうお一方の?」

「そうよ私と同じギルドで同じSLランクの冒険者だけど、そしてそっちの彼は小花衣と言って私の執事よ」

「左様ですか……」


 雪華がヘンドリックを見ると以前の風貌とは少し変わっている気がする、いや変わったのではなく疲れ切った?感じがするのだ。


「ねぇ神殿長いったい何があったの?」

「今回公爵様が此方にお越しいただいたのは神のご加護かも知れません」

「はぁ? ご加護??」


 この神殿長の発言を聞いたピートは笑ってしまった、神は目の前にいる、というか神族が二人揃っているのだ、一人はまだ覚醒していないけれど、その相手にご加護とはおかしな話である、しかもまだ人族である雪華はともかく、ピートは人間に加護なんぞ与えていない。


「実は以前公爵様がごらんになった秘物ですが、嫌な気配を放っているのです」

「何ですって!」

「おい、それで何か影響が出たのか?」

「いえ、まだ大きな影響とは言いませんが、私を含め上級神官の数名が体調を崩す事が度々ありまして」

「でもあの部屋は限られた者しか入れないようになっていなかった?」

「そうです、上級神官でもここにいる私と副神殿長と神官長の三人だけです」

「三人同時に体調を崩すことがあり、しかも決まってあの部屋の巡回を終えた日に体調を崩しています」

「最初は1日体調を崩す程度なのですが、最近は3日、4日と長く寝込む事になってきています」

「それで神殿の仕事に滞りが出てしまい、礼拝の制限をしています、一般の者達よりも魔素が少し多い我らがこれでは、信徒に影響が起こるのではと心配したからです」


 集まっている神官達がそれぞれの言葉で説明をしていった。今は副神殿長が寝込んでいるという。雪華はその病状をみたいと言った為、神殿長が案内を勝手出た。それに付いてきたのは神官長とそれぞれの付き人神官達である。

 案内された場所は神殿の敷地内にある神官達の生活区域に当たる場所である、医務神官がそれぞれの部屋に訪問をして診察をしていると言う形である。


「ここが副神殿長のお部屋になります」

「こんな大勢で入るのは無理でしょうが」

「私と神官長とお二人が入ります、お前達は外で待っていなさい」

「畏まりました」

「小花衣も一緒に来なさい」


 神殿長ヘンドリックは他の神官を外で待たせた、中に居るのは副神殿長の付き人神官と医務神官である。


「どうだ、副神殿長の様子は」

「これは神殿長、今日はいつもよりも体調が悪いようです」

「そうか……」

「あのぉ、そちらは?」

「あぁ紹介しよう、雪華・ウィステリア公爵とピート・ルゥ・パート様だ、共に『至高の存在』であらせられる、そしてもうお一方は公爵様の執事で小花衣様、この方もスキルマスター様であるとの事だ」

「そうでしたか」

「あなたは医者ね、どういう病状?」

「はい、高熱が続き魔素が滞りってます」

「魔素が滞る?」

「おい、雪華よく見て見ろ」

「……これは、お館様これは妖気では無いでしょうか」

「だねぇ~」


 ピートに促されて、寝込んで苦しんでいる副神殿長を見ると、医務神官の言うとおりではあるがどうも可笑しい、魔素が停滞しているだけじゃない、何かに侵されている。


「これって……あれ! 只の妖気とは少し違うわね」

「俺はこれを知っている」

「ご存じなのですか?」

「あぁ例の部屋を出た後に体調を崩すと言ったな」

「はい、左様でございます」

「って事は、かなり不味い状況だ」

「それはいったいどういう事ですか!」

「説明は後だ、神殿長その例の部屋に俺を先に案内しろ! 雪華達はその神官を治して直ぐに来い!」

「解った!! 神殿長ピートの言うとおりにして、これは急を要する!」

「解りました、神官長治療が済んだら後で公爵様達を部屋にご案内をしてくれ」


 雪華は医務神官をどかして自分が副神殿長の体の上に手を置いて治癒魔法を掛けた、全体に行き渡っている妖気を全て排除して魔素の通りを正常に戻して体調を整える。悪霊払いに多少似ているで雪華はお手の物である。

 小花衣は主が対処なさるのであれば手を出すことはしない、様子を窺っていた。

 雪華は処置が済んだら神官長に頼んで例の部屋に案内して貰った。部屋の前では神官が待っていた。


「どうした、何故ここに?」

「中には先ほどの男の方と神殿長だけが入られました」

「そうか、本来お前達は入れないからな、ここで待っていなさい」

「公爵、私と一緒に……」

「ちょっと待って」


 雪華はそう言うと扉に手を当てて中の様子を感じ取る、安全かどうかの確認が必要なのだ、そして一つ溜息を付いた。


「ねぇ神官長、小花衣も連れて三人で中に入った後、結界を張るから私から離れないでね」

「小花衣殿もですか?」

「そうよ、彼もウィステリアの術師だからね、結界くらい張れるわよ」

「あぁはい解りました」


 雪華はそう言うと、扉を開いて小花衣と神官長と共に入り、中の様子を見る前に結界を張った、これは取りあえず悪霊除けの結界である。もう少し強めの結界でも良かったが、ピートの判断が必要と考えたのだ。


 そのピートはと言うと、例の秘物に対して両手を突きだし結界を張ろうとしている。それを見た雪華は助勢するため足を進めようとしたが、神殿長はピートの張った結界の中にいた。それを確認して神官長もそこに行くよう伝え、小花衣にはもし何らかの原因でピートの結界が破られた場合に備えて、二人を守り結界を維持するようにと命じ自分はピートの側に行った。


「ピートいったいどうなってんの!」

「神界が張った結界が弱まっているんだ」

「はぁ? この結界って神界のものだったの?」

「あぁ俺では無理だ、これは特別な結界術になる、雪華耳環を両方外してくれないか?」

「良いけど、どうするの」

「俺のソーマを少し流す、恐らくそれでお前の本来のソーマが反応して神族結界を張る事が出来るだろう」

「それで大丈夫なの?」

「いや、これは気休めにしかならん、もちろんお前が覚醒していたら別だが今は無理だ」

「むちゃくちゃなぁ~、神族結界なんて張る自信はないわよ、っというかそんな術知らないし! 悪霊封じならともかくぅ~」

「……悪霊封じ?」

「えぇさっき治療したときその術を使ったのよ、妖気が満たされていたからね」

「……なるほど、ならそれでも良いから封じる事を念じて張ってくれ」

「ちょっと待ってこれは悪霊って言うより怨霊よ!」

「だったら怨霊封じの術ならあるのか?」

「それはあるけど、コイツに通じるのか?」

「やってみなけりゃわからん!」

「えぇ~~~」

「とにかくやってくれ!」

「あぁ~もう解ったわよ!」


 雪華はむちゃくちゃなと思いながらも両耳の耳環を外して魔素の巡りを感じる、そして怨霊封じの結界を張るために自身の霊気とピートのソーマを融合させて結界封じの印を結び術の発動を行った。


 ピートの結界の中にいる神殿長と神官長は二人が何をしているのか解らず不安ばかりが募っている、ただ小花衣だけは状況の把握に勤めていたが、神殿長達はただ目の前で繰り広げられている事に固唾をのんで見守った。


 二人の放つソーマと霊気の融合した波動は元凶魔王の秘物に注がれていく、そしてさらにその周囲にも及び結界を張っていく、二人の力が増していき目映い光に輝きながら一瞬閃光の様な光に包まれた後、部屋を満たしたのは静寂だった。

 二人は結界が無事張れた事を確認してからその場に座り込んだ。力の使いすぎである。同時にピートの張った結界も霧散して神殿長達も呆然としている。


「あぁ~~もうダメ、疲れた」

「俺もだよ」

「ねぇ~これいつまで持つの?」

「わからん、気休めだって言っただろう」

「じゃ、またやんなきゃダメじゃん」

「その前に上に相談する」

「そうしてくれぇ~もうしんどいよ」

「お前がそんな事いうのは珍しいな」

「普通の怨霊ならここまで言わないわよ、これは普通じゃないでしょ!」

「お館様様! 大丈夫ですか?」

「疲れただけよ、心配ない」

「お前俺の心配はしねぇのかよ」

「ピート様は大丈夫だと確信をしておりますので」

「………なんかそれ差別っぽくないか?」

「そうでしょうか?」


 相変わらず嫌みが上手い小花衣は神族相手に怯むことはない、だがそれは彼が人の姿をして神力を封じているからにすぎない。力を解放したピート相手では、小花衣すら立っていられないだろうと雪華は思っていた。

 そんな事を言い合っている三人の側に神殿長と神官長の二人がやってきた、いったい何が起こったのかと訊ねて来たのだ。


「あぁ~詳しく説明は出来ねぇよ、でもこれが何だかあんた達は知っているのか?」

「一応嘗ての魔王ダミアスの体の一部と言うことだけです」

「そうだ、あの魔王の肩から手首までの部位だ」

「えぇじゃ手のひらはどうしたのよ」

「わからん」

「えぇぇ~~~~」

「あのぉ~何故あなたはそのような事をご存じなのですか? この秘物に関しては王室から極秘扱いになっており、世間には知られていないのです、神官すら副神殿長と共に我ら三人しか知り得ません、そしてその任が解けたらこの記憶は消えるのです」

「消えるの?」

「はい、この任は極秘なので、知ってはいけないこととなっています」

「そう、なの?」


 雪華はそう言いながらピートを見た、そしてそのピートは溜息を付いて頷いている。って事は神界の仕業かと雪華は理解した。


「ただ記憶が消えると言うことは代々神殿長より聞かされることなのです、ですが陛下だけはその事実をご存じです」

「まぁ~国王は知っておかないとダメよね」

「お館様はご存じなかったのですか?」

「記憶が消えるなんてのは初めて聞いた、秘物は何となくそうだろうなぁ~とは思っていたけど、最初にこれを見たときに確信に変わったけどね」

「そうですか、では何故ピート殿はご存じだったのですか?」

「………お前達はこれが結界で守られていたのは知っていたのか?」

「はい、ただ誰がどうやって張ったのかは知りません」

「今回の騒動はこの結界が弱まったせいだよ、結界が弱まった事で妖気が流れ出たんだ、だから巡回していたお前達が体調を崩した、俺たちが張った結界は、まだ気休め程度だ」

「ではまた結界が弱まる事があると?」

「あぁ、でもその前に対処を考えるから、それまでこの扉は結界で開けられないようにしておく、お前達はもう巡回の必要はない」

「いえ、それは出来ません、これは秘物、今回のような事がまた起こるのであれば決して見過ごすわけには参りません」

「だから対処を考えるって言っただろう、心当たりがあるから任せろ、お前達に対処は不可能だ」

「神殿長、悪いけど今回はピートの言葉に従ってくれない、今回コイツがいなければ対処不能だったのは間違いないのよ」

「しかし……」

「陛下には私達から報告しておくからね、それに正直これは放置できないのよ、とはいえ普通の人間に対処は出来ないからね」

「……解りました公爵様がそう仰るのでしたら、従います」

「ありがとうね、なるべく早く対処するって約束するわ」

「はい、お願いいたします」


 雪華と神殿長とのやり取りを見ながらピートは扉だけではなく念の為に内側からも結界が必要かと思い、今日は神殿に泊まることを雪華に提案した、そして雪華もそれを認めた。

 宿屋には神官に伝言を頼んで宿泊代を預けた。


稚拙な文章をお読みになって頂きありがとう御座います。


ご感想に対する返信返しは超苦手なので、出来ないことが多いかもしれませんが、出来るだけ頑張りますので、長い目で見ていただけると幸いです。

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