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次元移動を越えて…(物理世界から魔法世界へコールドスリープ?)  作者: 混沌の夢
第5章 動き出す諸々編
136/158

110話 ハルシェット家の事情

※何度か読み返し、色々話がおかしくなっている所や誤字・脱字は不定期に修正・加筆をしております。(更新日が多々変更あり)

 セトレイア大陸の北部に当たる地域にハルシェット辺境伯領がある、イルレイア大陸に続く海沿いの領地でもあり漁業が盛んな土地柄である。また寒冷地でも育つ果物や野菜なども特産の一つである。


 大昔は一国の国だった、領主間戦争、いわゆる領地争いの戦争に負けて王家は断絶、主要な重臣達も共に死罪となった。その後はフェスリアナ王国の支配下に置かれて来た土地である。


 ただ領民の唯一の希望は王族の末裔であるハルシェット家である。領民を含め元ハルシェット王家に仕えていた近隣領地の者や領内の貴族達は支援を惜しまない者も中にはいる。


 そんな領地にカイゼル・ハルシェット辺境伯が城内で引き篭もり、領民にも姿を見せていない。本来なら王都で国王に仕え近衛隊の中隊長をしていた筈だったが、悪事が露見してイルレイア大陸に逃げ延びた。

 領地は代官として息子のカイル・ハルシェットが治めていた。子供の頃から父親に家系の事を聞かされて育った彼は領地を守ることに徹し、父の仕事も手伝っていた。


 そんな6月から7月にかけて父親のカイゼルが戻ってきた。どうやって戻ってきたのかは解らないが、仕事のために執務室に入ると、父が居たのだ。


「父上?」

「カイルか」

「どうやって戻ってきたのですか?」

「あぁ一度しか使えないという魔法で戻ってきた」

「……魔法って……」

「イルレイア大陸には戻る事ができる魔法が存在していたんだ」

「魔法……そうですか、でもご無事で良かったです。王都では大変な騒ぎになっていると情報が入っていましたので」

「そうか、現在の状況を教えて貰えるか?」

「はい」


 息子のカイルは現状を細かく父親のカイゼル・ハルシェット辺境伯に報告した。そして予てより計画を知らされている息子は、父親の指示通りに動いていた。


「そうか、では今はまだ私の存在は隠しておく必要がある為、城に隠るが報告を怠るな、それと同盟を結んでいる貴族には私と連絡は取れていると伝えておけ、そのうち会えるとな」

「解りました」

「ところでウィステリア領の動きは何かあったか?」

「いえ、今の所何も動きはありません」

「何もない……」

「はい、領主が領地から出たと言う情報もなければスキルマスターも動いていないとの事、現状内政に忙しいようです」

「なるほど……」


 ウィステリアは予想通り動かないのかと少し疑問に思ったが、以前の謁見時に権力者は嫌いと公言していた為、現状で動いていないと言うのはあながち嘘ではないのかも知れないと思った。

 イルレイア大陸の協力者に対しては五分五分と言ったのは間違いではないと確信した。


「カイル、事を起こすにはまだ時期早々とは思う、もう少し準備と警戒と団結が必要だ」

「はい」

「だが王都側の情報収集は必須ではある、引き続き偵察を続けるんだ」

「承知しています、また極秘裏に武器の準備もしておりますが、領内への出入りを厳しく制限が必要と思い検閲をしています」

「検閲?」

「はい不公平にならないように、領内と常連取引をしている商会も例外なく」

「怪しまれないか?」

「王都の騒動がありましたので、父上は現状脱獄者という立場ですから、王都からの刺客や情報屋等には十分注意が必要と思われます」

「そうか、わかったお前の判断は間違いはないだろう、だが武器の入手は慎重に行え、万が一王都に知れたら不味い」

「承知しております」


 カイゼル・ハルシェットはイルレイア大陸のハグレ魔族が用意した転送魔法陣を使って戻ってきた、事前に魔法陣が書かれていた紙を受け取っており、それを自分の寝室に置いていたのだ、戻るまでの間誰も、部屋には入らないよう通達していた。故に魔法陣の紙を見られることも無かったのだ。

 しかもその魔法陣を書かれていた紙はカイゼルが戻った瞬間に燃えて消えてしまった、跡形もなく証拠も残らなかった。

 実際は魔素が暫く残滓の様に残るのだが、人族には魔素関知の魔法が使えない為解らなかった。これがスキルマスターなら直ぐに判別できる。


 翌日からは自室でゆっくりとした日々を送り本を読んだり、息子からの情報を聞いて二人で論議したりする日々を続けていた。

 当然同盟領や味方をする貴族達はカイゼルの所在を知りたがっていたが、現状は危険な為所在は隠したまま息子のカイルを経由して連絡を取り合うことを継続していた。


 そんなある日マイケル・ローランド伯爵がカイルの元を訪ねてきた。表向きは商人としてである。そして高級宿屋に泊まって衣服を整え、フード付きのマントを付けてハルシェット家の息の掛かった男爵家に向かった。


「失礼、マイケル・ローランド伯爵だが」

「これはお待ちしておりました、私がロイ・ゴーダ男爵です、中でお待ち下さい」

「ハルシェット代官はまだ来てはいないのかね?」

「はい、ですがもうすぐお越しになります、少し遅れると連絡がございましたので」

「そうか……」


 マイケル・ローランド伯爵は中肉中背の男である、口ひげを生やして紳士敵ではあるが、何を考えているのか解らない様な表情をしている伯爵である。

 逆にロイ・ゴーダ男爵は背の高い細身の男で、一見して優男に見えるが、こちらも心の内を見せない人物である、社会的には食堂経営者で貴族用と平民用など複数経営している男である。


 20分程してハルシェット代官が訪れた。彼はまだ若いがハルシェット領を良く治めている。父親のカイゼルと同じくらいに力量があるとローランド伯爵は認めていた。


「お待たせしてすみません、ローランド伯爵」

「いや、そんなに待ってはいないが、何かあったのかね?」

「えぇまぁ……」

「ふむ、……男爵少し外してくれないか? 二人だけで話がしたい」

「はい、畏まりました、ではお飲物と茶菓子の準備を致しまして下がらせていただきます」

「ふむ、そうしてくれ」


 ローランド伯爵の言葉でゴーダ男爵はテキパキと使用人に指示をして席を外していった。


「でぇ何があったのかね」

「実は大したことではないのですが、ウィステリア公爵が王都に来るという情報を得まして、そのことで父と連絡を取っておりました」

「あぁ、そのことか、それについての報告をしようと思ってきたのだ」

「やはり事実なのですね?」

「あぁ、来月公爵が執事とスキルマスターを一人連れて王都に来るらしい、そして陛下と謁見予定と言うことだ」

「それは決定事項と言うことですか?」

「そうだ、これは既に王都で決定事項として知れ渡っている。但しこの謁見は見つかっていなかったスキルマスターを王に会わせると言うことが目的だと公式に発表されている」

「スキルマスターを会わせるためだけの謁見?」

「そうらしい、何でも『至高の存在』のもう一人らしい」

「と言うことは男性の方ですね」

「そう言うことだ、ウィステリア公爵自身も『至高の存在』でもあるからな、男女各1名ずつとギルドでは公式認定している」


 ローランド伯爵の報告で、セトレイア大陸に『至高の存在』が二人揃うと言うことになる、またスキルマスターもセトレイア大陸にだけしかいない事が判明している。他の大陸では発見されていないのだ。


「動くでしょうか……」

「さぁな、王都に来てから何が話されるのか気になる所ではあるが、公爵自身が以前『権力者や為政者が嫌いだ、特に私利私欲にまみれて考えながら動く者が嫌い』と言っていたからな、我々の行動をどう認識して動くか解らん」

「ウィステリア領は下手に手を出せない領地ですからね」

「あぁそれは間違いない、あの地は神々の庇護のある地だからな、それに魔素が多すぎて魔物が多くランクも高い」

「そんなに高いのですか?」

「最近の冒険者の話ではウィステリア領周辺の魔物はランク5がでるらしい」

「魔物ランク5ですか?」

「あぁワイバーンが出たという話もある」

「一般の冒険者では歯が立ちませんね」

「無理だろうな、だがロドリア商会はウィステリアで支店を出しているし、昔から有名だった『暁のファルコン』という冒険者パーティーはウィステリアの迷宮の一つで『初心者の塔』に挑戦しレベルアップをして3桁になったという話もある」

「三桁レベルの冒険者ですか?」

「あぁウィステリアの冒険者は三桁レベルを増やしているという情報があるくらいだ」

「またなぜそんなに高レベル冒険者が……」

「まぁあの領地周辺の魔物の強さを考えれば必要なのだろう」

「では、まさかと思いますが王都の軍や憲兵などが、そのウィステリアで訓練しているという事は無いのですか?」

「それは今の所聞いてないな、私も王宮への立ち入りは許されているが、その辺は近衛隊に所属していたお父上の方がご存じではないのか?」

「父が王都にいる頃はまだウィステリア公爵が目覚めて日が経っていない頃でしたから、今はそうではないと思いまして」

「……なるほど、ではその辺も少し探ってみるとしようか」

「お願いします、もし軍のレベルが上がっているとなると、こちらも対処しなくてはなりません」

「確かにそうだな」


 雪華が小物扱いしたのが、このマイケル・ローランド伯爵である、彼自身は王太子派である為、王宮ではあまり目立たないようにしているのだが、実際はハルシェット辺境伯の手の者である。

 今回のような王都の情報を伝えるのが彼の仕事の一つでもあり、王都にいる王太子派やハルシェット辺境伯の味方の貴族達との連絡役でもあった。


「それより伯爵は数日此方にいらっしゃるので?」

「いや、明日には戻る、此方に長居をすれば怪しまれるのでな」

「そうですか、いつもと同じですね」

「あぁ、あまり目立つと計画が水の泡となす。お父上もそれを警戒されるはずだ」

「えぇ承知しております、ですがご無理はなさらないで下さいね、密偵のような事ですから」

「十分気を付けているから心配ない」

「では、いつもの店で特産物をお持ち帰り下さい」

「承知した、いつもの様に商会としての取引として帰らせて貰う」


 二人は商会での買い付けを実際に行って、情報交換をしている、これは怪しまれない為である、

 実際ローランド伯爵は小さな食品を売る店を経営している。当然国中の特産を扱ってはいるが、どうしても扱えない物はウィステリア領の物だけだった。なぜか許可が出なかったのだ。

 故にロドリア商会との取引をすることで情報を得ることにしていた。


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


 カイル・ハルシェットはマイケル・ローランド伯爵と別れた後、いくつかの仕事周りをして城に戻った。

 城の中でも家令と執事長とメイド長以外の使用人はカイゼルが戻っていることは知らない、どこから情報が漏れるか解らないため家族や使用人にも秘密にしている。


「お帰りなさいませカイル様」

「ただいま、夕食の後は書斎に行く、暫く誰も近づけないようにしてくれ」

「畏まりました」


 カイルは家令にそう伝えると一度自室に戻ってから着替え、夕食を取るために食堂に向かった、既に妻ミリアと息子のマクシミリアンが待っていた。

 息子の名前はカイゼルが付けた、ハルシェット王家の生き残りの赤子だった王子の名前を付けたのだ。


「お帰りなさい、あなた」

「ただいま、待たせたかい」

「いいえ大丈夫ですわ」

「父上はお忙しそうですね、今度時間が空いた時で良いので剣の稽古を付けてくれませんか?」

「あぁ良いとも」


 息子はまだ10歳であるが、利発な子供である。

 夕食を家族の団欒として楽しみ、その後のティータイムも必ず家族と過ごす、これは普段忙しい為、この時間だけは大事にしていた。カイルにとって母親が早くに亡くなった為、家族団欒は大切にしていたのだ。

 ティータイムが済み、仕事に戻ると言い残してカイルは執務室に行った。そこには既に父が待っていた。


「家族団欒は済ませたのか?」

「はい父上、今度は父上と家族団欒ですよ、お酒を飲みながらですが」

「あぁ構わない、酒も摘まみも準備してくれたからな、有能な家令だよ」

「えぇ」


 カイル達が夕食中に家令がカイゼルの食事の準備と給仕をしていた、そして同じようにティータイムで本を読んで息子を待っている間に、家令は酒と摘まみの準備をキッチリ済ませて出て行ったのだ。


「でぇ、何か収穫はあったのか?」

「そうですね、例のウィステリアの件で少し」

「動いたのか?」

「いえ、来月王都に来るそうです」

「王都に?」

「はい何でも見つかっていなかったスキルマスターを陛下に謁見させる為だけに来ると公式発表されたそうです」

「謁見だけのために来るのか?」

「現状ではそのようですね」

「ふむ」

「それと最近のウィステリア領の周辺にでる魔物が強くなっているそうです」

「魔物が強くなっているのは当然だと思うが……」

「ランク5の魔物が出ているそうですよ、ワイバーンも出ていると冒険者達が言っているとの事でした」

「それはまた強すぎるな」

「ウィステリア領ではそれもあってか三桁レベルの冒険者が出てきているそうです」

「三桁レベル!」

「はい、有名どころの『暁のファルコン』が既に3桁らしいです」

「一般の冒険者は近づけないと言うわけか」

「えぇどうやらそのようです」

「だが……魔族なら問題はないな」

「三桁レベルの魔族ですか?」

「あぁもし、ウィステリアが動くなら彼らに頼るしかないだろう」

「そうですね、それと気になるのですが王都の軍や憲兵がウィステリアで訓練などしているのではと思ったのですが、父上は聞いたことありませんか?」

「私が王宮にいた時期では聞いていないが……」

「やはりそうなんですね」

「まさか……」

「いえ、実際の所伯爵も聞いてないし解らない様でした、ですが少し調べてみると仰っていました」

「そうか、その情報は必要だな」

「はい」

「しかし……あの女が動けば危険だからな」

「そんなに危険なのですか?」

「スキルマスターの上、至高の存在だぞ、レベルは1000を遙かに越える、それにあの覇気は侮れん」

「王宮で会ったのでしたか」

「王宮と動物園迷宮と王都に屋敷でだがな、只の小娘と思っていたら痛い目を見る、あれはただ者ではない」

「かなりの強さと言うわけですね」

「王都の屋敷では弟も来ていたが、アレも相当に強いがあの小娘の方がもっと強いだろう」

「魔族でも太刀打ちできませんでしたか?」

「無理だったな、三桁レベルのハグレ魔族を差し向けたが全滅だった」

「ある意味化け物ですね」

「そうだな、今の時代に三桁レベルは魔族くらいだろう、獣族にもそんな高いレベルはいない」

「300年前は普通に三桁はいたらしいと歴史で習いましたが、本当だったというわけですね」

「そうだな、おとぎ話としか思っていなかったのだが」

「動かないで居てくれた方が、此方としては助かると言うことですね」

「あぁそう言うことだ、王宮で言った言葉を信じるならばな」


 雪華が王宮で言った言葉は彼も覚えている、手を出さなければ無害であると言うことだ。ただ守るのはレイモンド・フェスリアナ国王のみ、それ以外の王族も貴族も守ることはしないと宣言していたのだ。

 国は王だけが居ても成り立たない、王を支えるものと国民が居なければ意味がない。レイモンド・フェスリアナだけが生き残ったとしても王都を占領すればヤツの命は無いものと同じだとハルシェット辺境伯は思っていた。


「……復権をかけての復讐は成功させなければならない」

「はい、父上」


 ハルシェット王家の復活、彼はそれを望んで今まで生きてきた。王太子派ではあったが、王太子暗殺には関わっていない事で生き延びることが出来た、以後は生き残るため、王家復活の為に中立派を装っていた、そして目立たずに過ごしてきたのだ。

 資金源だった王都の各ギルドや闇市、全ては計画のための資金集めである。だがあの雪華・ウィステリアが目覚めたことで全てが狂い始めたのだ。

 資金源が潰されたことで、悪事が露見し捕縛された、生きるためには一度イルレイア大陸に逃げる必要があった為、協力者に連絡をして大陸を離れたのだ。そして戻ってきた。

 計画実行の資金は十分に貯まっていたが、それ以後の事も考え続けていたのだが、潮時だったのだろうと思うことにした。

 今度は此方から仕掛けるために、今はもう少し静観し情報を集めることに徹することにしたのだった。


稚拙な文章をお読みになって頂きありがとう御座います。


ご感想に対する返信返しは超苦手なので、出来ないことが多いかもしれませんが、出来るだけ頑張りますので、長い目で見ていただけると幸いです。

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