109話 国王と極秘会談
※何度か読み返し、色々話がおかしくなっている所や誤字・脱字は不定期に修正・加筆をしております。(更新日が多々変更あり)
7月下旬にレイモンド・フェスリアナ国王の寝室で極秘会談をするため転移魔法で王都にきた雪華。魔道具を陛下に預けて使い方を説明した。
「ではこれで説明終了ですけど、何か解らないことはありますか?」
「いや、ない、割と簡単なものだった」
「そう、なら問題ありませんね」
「ふむ、では本題に入ろうか?」
「えぇ、実は陛下のお返事を読んで、直接聞いた方が良いと考えたんですけど、以後何か進展や変化はありましたか?」
「そうだな、商業ギルドからの報告でハルシェット領への出入りがかなり厳しくなっているようだ、常連の取引商会に対しても同じ対応をしているとか」
「出入りが厳しくとは具体的には?」
「手荷物から荷台までくまなく調べ上げられたうえ、身分確認を徹底的にしているとか、後貴族に対しては領主の許可証がなければ入領できないという事だ」
「……なるほど」
「何か気になることでも?」
「そうですねぇ、手紙にもそれとなく示唆しましたけれど、転移魔法陣が使用されている可能性がありますね」
「転移魔法陣?? あれはロストマジックで現状どこにあるか解らないと言っていなかったか?」
「それが……あるバカが転移魔法陣に関しては放置したらしくてね、300年前の領主間戦争時には転移魔法陣を罠として使用していた事はよくあったんですよ」
「領主間戦争で罠として使っていた?」
「えぇまぁよくある話なんですけどね、敵の転移魔法陣は隠蔽魔法で隠されている為、索敵魔法とか探知魔法とか、あと魔素関知魔法を持っていなければ、その罠にハマって敵陣のど真ん中とか、魔物の多くいるど真ん中に誘い込まれたりとかね」
「そんなことがあったのか?」
「まぁ、私も自分の領地を守るためにはそんな手段も使っていたんだけど、戦争終了後には魔法陣の撤去をしていたわよ、でもそのまま放置している者もいた、それらがどこにあるかは現状は不明なんですけどね、ただ……」
「ただ?」
「イルレイア大陸は少なくても魔法を使える獣族や、魔法を主体に戦うハグレ魔族が居るわけで、ハルシェット辺境伯はそんな連中と関わりがあるでしょ。ハグレ魔族ほどの魔力を持っていれば転移魔法陣の場所とかは解るかもしれない」
「……ではそれを使って戻ってきている可能性があると?」
「えぇ、でもねぇ、大陸間での転移魔法陣の使用は膨大な魔力が必要なのよ、昔は3桁レベルの魔術師が多かったけれど、今は3桁レベルは少ない、となれば一人二人で何とか扱えるモノじゃない、少なくとも5人以上は居るはずなのよね、でも魔族なら3桁レベルの魔法を使える可能性はある、でもそれは転移する距離に比例するから何とも言えない、現状もしハルシェット辺境伯が戻っているとするならば、それを使用して城に引きこ隠っている可能性がありますね」
「なるほど……筋が通る」
「でも、解らない事があります」
「解らないこと?」
「えぇハルシェット辺境伯はなぜこんな事をしているのか? と言うことです、恐らく彼に賛同する貴族も同調している可能性は否定できないと思うのですけどね」
雪華の説明を聞いたレイモンド・フェスリアナ国王はここで雪華に対して敬意を示すため口調を変えて、ハルシェット辺境伯の家系説明をした。
「あなたには知っていてもらいたい事があります」
「私に?」
「えぇ、ハルシェット辺境伯の家系についてです、300年前の領主間戦争の事はあなたもご存じだと思うのですが」
「まぁある程度はね、うちも近隣との争いもしていたし、ただ途中で私たちは眠らされちゃったからねぇ~その後の領主間戦争は知らないわよ」
「そうですか、実はハルシェット家は元々は王族です」
「王族??」
「フェスリアナ王国は元は中堅国です。周辺国を領主間戦争で勝利をおさめ支配領地を増やしして来たのです、ウィステリア領は元々フェスリアナ王国の領地内ですから問題は無かったのですが、フェスリアナ王国に属していない他領地の者との領主間戦争をしていました。その中にハルシェット王国という我が国より少し小さい国があり、そことの領主間戦争で勝利し、領土を手にしました。ただ反撃もかなり強かった事もあり当時の王家は断絶、全員処刑されました」
「処刑! そこまでするの?」
「はい、当時はそう言うこともしていました、ただハルシェット王室にまだ生まれて間もない王子が一人居たのです。流石に赤子にまで手を下すことはできず、人質という名目でフェスリアナ王室内で育てられました。当然普通に一人の人間としてです、赤子に罪はありませんから」
「それで?」
「その赤子を含め子孫は代々王室の近衛兵として生きていました、当時は名字を与えられておりませんでしたが、現ハルシェット辺境伯の曾祖父の功績が認められて漸く本来の家名であるハルシェットを名乗ることができたのです。」
「ではハルシェット辺境伯はその末裔ってわけ?」
「はい、故に家名を継承できた時から、水面下で王室は彼らが謀反を起こさぬか注意深く見守っていました。300年前の戦時を末裔達には知らせては居ませんが、かの王室に関わりを持つ領主達も居ますので、真実を話さないとも限りません。それ故に謀反を起こさない限りは見守るように……それが代々王が継承してきたものです」
「それって口伝みたいなヤツ?」
「そうですね、ただ王室の者は公然の秘密として口に出す者は居なかったのです」
「って事は、ハルシェット家の事を知っている元臣下達や近隣領はハルシェット辺境伯に同調してもおかしくないわね」
「はい、それと王妃の件もあります」
「王妃?」
「はい、元々王妃の実家は先王派です、ですが王妃の父親であるマートン公爵の妹リズベット嬢が王太子派のカールトン伯爵家に嫁いでいるのです」
「王太子派かぁ~」
「王太子派は謀反の罪で処刑されています。まだ小さかった王妃にとって叔父、叔母に当たる者達が処刑された事になり、先王派であるマートン公爵は妹一家が処刑された事で、先王に恨みを募らせていた様です、その結果娘を私の王妃にと薦めてきました」
「その結果がアレか……」
「恐らく雪華様が予想したとおり、王妃が先王に対して何らかの道具を使って魔素過病にしていた可能性があるという事です」
「でも証拠が無いでしょ?」
「えぇ、ですが、前もお伝えしたと思うのですがマートン公爵が水面下でハルシェット辺境伯と内通しているとの報告もあり、きわめて雪華様の予想は確定に近いと考えています」
レイモンド・フェスリアナ国王の話を聞いた雪華は、もうこれは確定だなと思った。陛下は王妃と床を共にしておらず子供もいない、つまり世継ぎがいないのだ。そんな時にハルシェット辺境伯の動きだ、これは謀反と言う名の復習劇でハルシェット王国の復活をもくろんでいる可能性が濃厚だと思った。
「レイモンド、以前も話したが、我々ウィステリアは領主間戦争には一切関わらない、当然協力もしない」
「はい」
「だが私は先王との約束は守る、お前だけは守る、それだけは覚えておけ、どんな事があってもお前の命は私が預かっていると言うことを……、でも人として命の限りこの難局を乗り越えよ」
「……それは、領主間戦争が起こると言うことですか?」
「ただの領主間戦争ではないだろう、恐らく謀反だ、ハルシェット王国復活をもくろんだモノだろう」
「謀反……」
「お前には世継ぎがいないからな、ならば王都襲撃を可能にしてハルシェット王室の復活を考えてもおかしくはあるまい、ハルシェット王室に仕えていた貴族は水面下で存在しているだろう? お前の先祖が処刑したのは王室のみ、恐らく重臣も処刑対象だっただろう、しかしその子孫は生かされている。カイゼル・ハルシェットがその子孫から真相を知った可能性を考えると、現状の貴族達の動きの異変に納得がいく」
雪華の説明を聞いてレイモンド・フェスリアナ国王も納得がいった、だがここまでの考えに至らなかった自分を恥じていた、確かに警戒はしていたが、本当に実行するとは考えていなかったのだ。
「……レイモンド、別にお前が恥じることはない。お前の先祖が残した言葉を守っていただけだろう、だったら今はそれをどうするのかを考えればいい。この国の王として行動すれば良い。多くの国民を守り、兵を動かし国を守る。それが王としての勤めでもある。ただこの国の場合軍や憲兵は国からの派遣という組織になっている、そこを付け込まれない様にする事、また裏切り者と言うか寝返る者も出てくるという事を視野に入れて動く必要に迫られるだろう」
「はい……」
「その中に我々ウィステリア領に関しての守りは含まなくても良い。我々は自衛ができるから攻撃に晒されることはない。っと言うかウィステリア周辺の魔物は強すぎるから直ぐに人は死ぬだろうがな。ハグレ魔族が仮にウィステリア周辺に来ても問題はない、そいつ等を撃退する方法があるから気にするな、良いな」
「畏まりました……」
「それともう一つ、領主間戦争が始まった時点でウィステリア領は領民を含めて入領中の者の領外への出入りを一切禁じる」
「それは……」
「現状ウィステリア領の身分証明書(IDカード)を持った者以外の出入りを禁ずると言うことだ、他領の受け入れは一切しない、また戦争が始まればこちらの領民が人質にでもなれば困るからな」
「では避難民が出たときは……」
「それもお前が考えよ、これは王としての資質を問われると思え、300年前より領主間戦争がない状況でどこまで国として王として戦争を勝ち残れるか、恐らく神界も見ているはずだ」
「……神界も?」
「忘れたか? ウィステリア領は神族の庇護領であることを」
「……そうですね、確かにその通りです」
「それともう一つ別の話をしておく、戦争が始まるまでまだ時間があるだろうし、カイゼルが確実に戻っているかの確認も必要だから、日を改めてやっと見つけだしたスキルマスターNo.1とお前の面通しをしておきたい」
「見つかったのですか?」
「あぁ引き篭もりだったからな、あのバカ」
「そうですか、ではもう一人の至高の存在がいらっしゃるのですね」
「……まぁそうなんだが、お前にだけは伝えておく事にする」
「私にだけ?」
「お前は私が誰の魂を持って生まれているのか知っているな」
「はい、始祖姫様の魂を持っておられます」
「そう魂だけなんだがね、ただ覚醒しても、この人格もこの身も雪華でしかないんだけど、とはいえ神族はそう見ていない。雪華と言う人間ではあるが始祖の魂を持つため、私を始祖姫と呼ぶ。私としては迷惑この上ない話なんだけど……」
「それは……」
雪華はそう言って大きなため息を付いて、レイモンド・フェスリアナ国王の顔を改めてみた。
「今回お前に面通しするヤツ、以前話した天神将のメンバーでもあるから他のメンバーも見知ってはいる、当然だがな」
「天神将メンバー……」
「そう、表向きはそうなっている」
「表向き?」
「これは300年以上前からのことなんだけど、そいつは人ではなく神族だったんだよ、人の姿をして神族としての力を封じて降臨していた、そして私を守っていたらしい……」
「なっ! 神族が降臨!」
「そう面通しする相手がその降臨している神族だった。私も真相を聞いて呆れるどころか殺してやろうかと思ったくらいで、ヤツを見つけた時はその場で喧嘩という決闘擬きをしたんだけどね」
「決闘! 神族相手にですか?」
「まぁ私とヤツの喧嘩はいつもの事だから、天神将メンバーはみんなは知っている事だから溜息を付いていたけど、アイツは人として降臨している為、神族としての力を封じて私と対峙していた。結果は引き分けだったのだけどね」
「引き分け……」
「そう、とりあえず引き分け、とはいえ300年前から天神将メンバーの友人としての付き合いだけど、間違いなく私が覚醒したら本来の神族として臣下として常に側に居ることになるだろうね……面倒くさいけど」
「神族がいらっしゃる……、本当に……」
「あぁ~でも本来の神族としての姿を見ることはできないよ、今は人として降臨しているから、人の姿だからね」
「あぁ~はい」
「でぇ、ヤツの正体はレイモンドお前の心の中に仕舞っておいてほしい」
「内密にと言うことですか」
「そうウィステリア家の家族と天神将メンバーと、あともう二人は転生した友人だけは知っているが、転生した二人には口外しないよう口止めの術をかけている、他の者達はウィステリア家の関係者だから今更なのでね、だいたい今の情勢で神族降臨なんて話が出てきたら五月蠅い貴族共がウィステリアに押し寄せてくる可能性があるし、私としては覚醒していないから公表するつもりもない」
「……そうですね、あなたにご迷惑をお掛けするわけにはいきません」
「まぁ~本人も人として楽しんでいる様だし、口も悪いし令を欠く様な態度もあるから、貴族とは相容れないだろうけどね、でも彼を怒らせることだけはしないようにね、アレでもどうやら軍神の愛弟子のようだし、私を守る親衛隊の筆頭らしいから、人として喧嘩していてもアイツとは相打ちが多かったしねぇ~昔から……」
「軍神の愛弟子……」
「そうらしいわ、恐らく神族としての力を解放したら国が滅ぶんじゃない?」
雪華の話を聞いたレイモンド・フェスリアナ国王は、まさか神族が降臨しているという事の方が衝撃だった、その理由も目の前の公爵を守るためと言うことに、改めて始祖姫の魂を持つ方であったと思い知ったのだ。
雪華は王都に来るときは事前に転送ボックスに連絡を入れると言って帰って行った。
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翌日朝食前に執事の小花衣から今日のスケジュールを聞いていた。そして朝食後のティータイムの時に王都行きを皆に話した。
「えっまた王都に行くのか?」
「えぇ今度はピートを陛下に会わせるためっていう名目で行くわ、でも実際はハルシェット辺境伯関連の調べで行くことになる」
「えっ俺が王都に行くのか?」
「そうよ、陛下に会っておいてもらいたいからよ」
「必要なのか?」
「必要よ! 絶対に」
「……そうか」
雪華が絶対と言ったことで、ピートは何かを感じた、こういう時はなぜか神族の感が働く様だ。
「ちょっと待って姉貴、それなら俺も行く、王都の情報をもっと欲しいし」
「ダメ、今回は私とピートと小花衣を連れて行く、あんたは限界突破して正式に天神将メンバーになってるから私の代わりに領主代行をして貰うわ」
「ちょっと待て、何で俺が領主代行?? お爺ちゃんが居るんだから!」
「お爺ちゃんが戻るまであんたが代行していたでしょ、それにスキルマスターでもある、月宮とお爺ちゃんの補佐でしっかり守ってね」
「えぇぇ~~~~」
突然の雪華の決定に皆は色々疑問が生じているため説明を求むと言ってきた。当然である。
「第一にカイゼル・ハルシェット辺境伯の存在の確認、第二にピートと陛下との面通し、当然冒険者ギルドにも寄るけど、第三にこいつが放置した転移魔法陣の状況を調べに行くのよ、そしてもう一つ第四として王都周辺の様子ね、貴族同士の領主間戦争になる可能性を秘めているから」
「領主間戦争???」
「そう、ゲームでやっていた戦争クエストだね、実際は」
「うそぉ~~それって今もあるのか?」
「形は変わってしまっているけれど、どうやらハルシェット辺境伯って王族だったらしいよ」
「王族???」
「そう300年前の領主間戦争時にフェスリアナ王国と他領との戦争でハルシェットは王国だったらしい、でその末裔が……」
「ハルシェット辺境伯って事か?」
「そう」
「って事は……謀反……」
「可能性の話だけどね、実際起こらないようにして欲しいけど、それを踏まえていくつかの指令を出して置くから、小花衣はそれをすぐさま実行する事」
雪華は今後の行動予定を一応皆に説明をした、そこで祖父である惣摩が雪華に質問をしてきた。
「雪華、もしその戦争が起こった場合、このウィステリア領はどうするんだ?」
「私は陛下に対して、ウィステリアは一切関知しないし協力もしないと言ってあります、また避難民の受け入れもしないと通達しています」
「それは流石に不味くはないか?」
「別に不味くは無いですよ、最初の謁見の時に貴族に対しては釘を差していますし……今回の場合は貴族同士のイザコザという表向きの騒動ですが、実際は王家というかフェスリアナ王国と元ハルシェット王国との復習劇という謀反ですからね、そんな物にウィステリアは関わる必要はない、むしろ王の采配に全てがかかっていると言っていいんじゃ無いですか?」
「王の采配……」
「間違いなく神界はこれを見ているだろうし……」
「そうなのか? ピート」
「そうだな、静観して見ているっていう程度だろうよ、雪華が動かないなら神族は動くことはないだろうが、雪華が動いても命令が無い限り上は動かないからな、ただ静観しているだろう、そして王の器を見ているって感じだろうな」
「王の器をみるっか……」
「雪華が王に対してそう言ったのなら、上はそれに従うだけだ」
「……あのさぁ~ピート」
「何だ?」
「私、まだ覚醒してないんだけど?」
「覚醒していなくても、お前は既に俺たちの主だ、既に神力を無意識に使ったり、神剣を使ったりしているからな、反論の余地はねぇぞ」
「………反論したいわ」
既にウィステリア領内ではウィステリア資料館の解放を許可した為、雪華が始祖姫の転生者である事を知る領民が増えつつある。だた雪華自身がまだそれを公にしていない事で、領民は口をつぐんでいる状態である。
ウィステリア領が昔から神族の庇護領であることは歴史から見ても間違いがない為、疑う領民はいないのだ。
稚拙な文章をお読みになって頂きありがとう御座います。
ご感想に対する返信返しは超苦手なので、出来ないことが多いかもしれませんが、出来るだけ頑張りますので、長い目で見ていただけると幸いです。