107話 迷宮の一部解放と不審な噂
※何度か読み返し、色々話がおかしくなっている所や誤字・脱字は不定期に修正・加筆をしております。(更新日が多々変更あり)
迷宮から戻った雪華は、領地周辺の魔物を討伐してそのまま冒険者ギルドに向かった。午前中に出発したのに既に夕方だった為かギルド内は冒険者が多くいた。
「レティ様、お帰りなさいませ」
「ただいま、討伐してきたんだけど買い取って貰える?」
「はい、って事はまた大物ですね?」
「そうね、まだまだ冒険者では手に余るモノを討伐したから、それなりの獲物だわ」
領地周辺に出てきている魔物はすべて三桁台である、しかも以前よりも強くなっている。一般的なスライムが魔法と使ったり、稀少スライムだったり知性のないゴブリン、ワイバーンが最近は多い、当然ジャイアントベアなど今までの魔物もいるが、そのレベルがあがってきている。
「またランク5ですか?」
「だねぇ~最近多いね」
「以前はまだランク3程度だったのですけど……」
「それでも一般冒険者では討伐に無理があったでしょ?」
「まぁ~そうですけど……」
「早く三桁レベルを倒せる冒険者が増えて欲しいわ」
「初心者の塔で一般冒険者に3階層まで解放して頂いておりますので、最近はそこで力を付けているパーティやソロの冒険者が多いそうですよ、1階層ボスを倒す度にスキルが一つ貰えるという情報も増えている要因と思います」
「あら、階層ボスを倒せる者も出てきているの?」
「はい、現状2階層に進めたパーティが一組いたのです、その時にそれぞれ全員が何らかのスキルを手に入れたと言っていました」
「でも希望のスキルばかりじゃないはずよね」
「確かに、手に入れられるスキルはランダムで、本人のLVや職名にあったモノらしいですが、必ずしも欲しかったものや使えるとはいえないと言っていました」
「あぁ~~それはあれだ、使用スキルのLVに魔力が追いついていなかったり使用時スキルLVが足りてなかったりって事もあるわね、スキルって育てる系のモノも結構あるからね、鍛錬を怠ったり研究をしなかったらスキルLVってあがらなかったりするのよ」
「そうなんですか?」
「えぇ、だからまぁ、そういう説明もして頂戴、今の状況は良い傾向だからね、でぇLV100越えの数名冒険者はどの程度まで進めているのかしら?」
既にLV100を越えているのは『暁のファルコン』とルイス・ウィルシュタインである。彼らに対しては、雪華の許可で各階層ボスを倒して進めるよう、本来の攻略に基づいて挑戦をして貰っている。つまりLV100を越えた者だけが先の3階層以上に挑めるようになったのだ。
当然雪華の三人の兄弟妹や六花の元プレイヤー達も三桁を越えているため、初心者の塔攻略擬きに勤しんでいるが、夏椰に関しては島でのレベル上げと、初心者の塔の地下階層への挑むために、40階層と50階層辺りでの鍛錬も追加していた、その結果どんな魔物がいてどんな攻略で対応できるのかという情報が出回るようになった。
「今現在は『暁のファルコン』が7階層辺りで踏ん張っているようです、ルイス・ウィルシュタイン様は既に8階層に挑まれております、他の六花の方や領主家の方々も上層部に挑んでいると伺っています」
「なるほど、さすがルイスね、こっちに来た時点でLV120はあったからねぇ~当然と言えば当然か、他の連中にとってはランク1の魔物は雑魚でしか無いだろうけど」
等と受付嬢と話していた、転生した級友がウィステリアに到着した翌朝に小花衣からの打診があって以降、雪華は冒険者達の腕を競わせる模擬戦を半月ほどかけて開催して見極めていた、当然予備校クラスもその模擬戦に参加をさせていた。その結果一般冒険者に対しては3階層まで解放しても大丈夫だろうと結論を出したのだ。とはいえまだまだランク1の魔物しか出ないので領地周辺の魔物には対処に苦戦しているのが現状ではある。
ただ最近冒険者や商隊から噂程度に流れている話がある、王都の周辺の貴族達の動きが変だと言うのだ、詳しく話は聞いていないが気になる所でもある。
雪華は獲物の換金が終わって、そのまま屋敷に戻った。
「お帰りなさいませお館様」
「ただいまぁ~」
門番を通り越し普通の人間なら徒歩で30分程度の道のりを走って数分と言うトンでもない早さで玄関の門までたどり着いて、門番を驚かせた、だが最近は漸く慣れてきた様子で、一瞬の驚きで直ぐに正気に戻る。
「お帰りなさいませ」
「なんか慣れたようね」
「もう何度も驚かされていますからね」
「そうですよ、いい加減慣れます」
笑って言う門番2人に、「それはよかったけれど警戒は怠らないように」と付け加えておいた。「承知しました」と言う返事を聞きながら家と言う城に入っていった。当然の使用人勢ぞろいので迎えである、さすがに慣れてしまった。
「お帰りなさいませお館様」
「今日は月宮が屋敷にいるって事は……」
「はい、小花衣が島に向かっております、夏椰様が休暇になりますので」
「なるほど、でぇ何か変わった事はあった?」
「浅井様と霧島様のお二人がお館様に話があるとの事でした」
「……そう、でぇ今は何処に?」
「戻ったら知らせて欲しいとの事だったので自室におられるかと、夏椰様も一緒にいらっしゃると思います」
「そう、ならば執務室に呼んで貰える?」
「畏まりました」
雪華はそういって、一度自室に戻ってシャワーを浴びて着替えをしてから執務室に向かった。既に男3人が揃っていた。
「お帰り雪華、ピートには会えたのか?」
「まぁね、でももう少し時間がかかりそうね」
「そうか、ちょっと心配でもあるんだが、仕方ないか」
「『皇騎士団』の存在は教えてきたんだろう?」
「まぁ~一応ね、たぶんそれを聞いたら動き出すかもとは思うけど……、とりあえずピートの事はおいといて、何かあったの?」
「あぁいくつか報告があるんだが、人払いをして貰って遮断結界を張っても良いか?」
「遮断結界? 必要なの?」
「まぁ、とりあえず今は王都に行った者だけで話をしたい」
「なるほど、解った。でぇ誰がする?」
「一応一番強力なのを張れるのはお前だから、頼んで良いか?」
「それほどのことなの?」
「場合によってはなぁ~」
「……解った、遮断結界の最高位で張っておくは、これじゃ現状ピート以外入って来られないでしょうからね」
「その方が安全だ」
そういった元クラスメートを含めた王都行き組のSAクラスの4人は大きな溜息をついた、人払いをしてから雪華は遮断結界を張った。
「でぇ、いったい何?」
「天空の城からの偵察状況を報告しておこうと思ってな」
「……偵察報告をするのに遮断結界が必要な程なの?」
「実は俺と廉と2人で天空の城を偵察衛星代わりに移動して調査していたんだ、もちろん隠蔽魔法をかけてあるから、地上からは見えないし関知はしえ無いと思う」
「でなぁ、王都周辺の領地の動きが怪しいんだよ」
「怪しい?」
「あぁどうも調べてみたら、ハルシェット辺境伯と繋がりのある領主とか王妃と繋がりがあるとか、そんな感じの連中だった」
「……夏椰も調べていたの? あんた島でレベルアップしていたんじゃないの?」
「もう限界突破した」
「はぁ! いつ??」
「最近漸くだよ、でもまだ天神将の先輩達には届いていないけどな」
「って事はLV1000は越えたって事?」
「そっLV1010だ!」
「ほぉ~~ピートの言う通りみたいだったわね、限界突破の可能性が有るのは夏椰だけだろうって言ってたから」
ドヤ顔の弟を見て雪華は笑顔で喜んだ、そして言ったのだ『初心者レベルの50階層を突破したら、地下階層に行ってみると良い』と、そこはスキルマスターや限界突破予備軍が潜り、まだまだ見たこともないモノや桁外れの魔物がいると言われていた。
「夏椰のレベルアップの情報は冒険者仲間にも広がっているから自分たちもレベルアップできるかもと言って、初心者の塔に挑む冒険者が続出しているらしいけどな」
「あぁ冒険者ギルドで聞いたわ、これでうちの領地から強い冒険者が増えるわね」
「フェスリアナ王国内ではトップクラスの冒険者じゃねぇか?」
「そうだなぁ、他の領地の冒険者はあまりレベルあがってないみたいだからな」
等と少し話がズレた感もあるが、とりあえず必要な話でもあったのは事実のようだった。
「でぇ本題として、王都周辺の領主達が変って事で良いのかな?」
「そうだな、それとなハルシェット辺境伯の魔素を関知した」
「えっ……? イルレイア大陸に行ったはずではなかったの?」
「お前はそう認識したんだろう?」
「姉貴は霊感も強いから間違いなくハルシェット辺境伯の気配は追えたんだと思う、だから間違いなくイルレイア大陸に入った、それは間違いないと俺は思っている」
「まぁその辺は俺たちには解らないんだが、とはいえハルシェット領で辺境伯の気配はあるのは間違いない」
「何か可能性は思い出さないか?」
「可能性……」
同じ天神将の2人から言われた言葉を反芻する雪華、そして暫く考えてゆっくり顔を上げた。
「……転移魔法?」
「あぁ」
「ちょっと待って、あの男にそんな魔法使える魔力はないわよ!」
「そう、だから考えてみた、場所がイルレイア大陸ならハグレ魔族がいるし、獣族もいる魔力を持つ者がいるんだ、転移魔法くらい使える者がいる可能性がある」
「まって、転移魔法は今のこの現在ではロストマジックの部類になっている筈でしょ」
「ロストマジックの部類には入っているが、魔族なんかだともってそうだけどな」
「…………まさか…………」
「何か思いついたか?」
「ねぇ、転移魔法陣よ」
「転移魔法陣!」
「ちょっと姉貴それこそ魔法陣の内容を理解してないと書けないだろう」
「だからゲーム時代の転移魔法陣がどっかにあったとしたら? 前に陛下に言ったことがあったのよ、三橋を陛下に会わせる時に転移魔法で行ったからね。それに転移魔法に関しては高等魔法にあたり魔法陣の内容を理解し得ないと書くことが出来ないって説明したことが合ったわ」
「ゲーム時代の転移魔法陣かぁ~」
「ピートが言っていたでしょ、少しの遺跡も残しておく必要があったって、だから転生者の手紙が見つかったりした、ゲーム時代なら、期間限定戦争はよくあったし、罠として転移魔法陣を書いていた者もいたわよね!」
「……そう言えば道具やで希に転移魔法陣を書いた紙が高値で売っていたりしていたな」
「でも魔法陣を書いた紙ってのは魔力に作用するから、殆どは使用後消えるよな」
「そう一回限りのモノが多かった、発動に使う魔力が多かったからね、だからLVの高い冒険者以外、特に神官とか魔術師なんかじゃなければ扱えなかった」
「そう言えばそうだ、俺たち天神将は魔力も多かったから何度も使えるし魔法陣に指定条件を付与することもできたな」
「そう殆どの道具屋で希に見かけて売っていた魔法陣の紙は付与魔法が付いていないモノが多かったし一回限りの限定品だったわ」
「まさか、ハルシェット辺境伯がそれを使用して戻ってきたって事か?姉貴!」
「ヤツ自身にそんな魔力はない、となるとイルレイア大陸の住人、特にハグレ魔族の方が獣族よりも魔力は多いわね」
「一人で発動するのは恐らく無理があるだろうな、大陸間の転移の場合、かなりの魔力を消費する」
「っとなると複数のハグレ魔族って事になるのか」
ハルシェット辺境伯がイルレイア大陸でどれほどの人材を味方に付けているのか不明ではあるが、もし魔法陣を使用しているとしたら可能性は大きい。
「姉貴どうする?」
「………領主間戦争には一切関知しない、国が特に王室と配下の領主達との戦争であってもよ、ただしレイモンド・フェスリアナ国王自身には庇護魔法をかけてあるから、まずは問題ないでしょう」
「戦争になっても静観するつもりか?」
「えぇ、ウィステリア領は独立自治に治外法権が認められている、貴族共からすれば独立国家扱いだからね」
「でも姉貴、貴族以外の国民や王都からの要請が来たらどうするんだよ」
「そうだよ、お前以前言っていたよな、独立自治を認められていたとしても、一般的にはフェスリアナ王国の国民であると言う事だと」
「そうねぇ言ったわね……でも今私が表立って動くのは不味いと思う」
「何で?」
「ハルシェット辺境伯の思惑が解らないからよ」
「確かに情報量が足りないな」
「王都周辺の貴族の動きが怪しいって事だけで動くのは確かに不味い」
「……国王宛に手紙を書くわ」
「はぁ?」
「何を書くんだよ?」
「そうね、王都周辺の状況かな、それに対してどういう返事が来るのかを見極めたいわね」
「国王宛に書いたら他の貴族も読むだろう?」
「それはない、私が直接書いて送るのよ、陛下の魔素は知っているからね、陛下以外が封を開けることは出来ない術をかけておく、これは神崎家に伝わる術でも有るんだけどね」
「しかし、時間がかかるだろうが」
「あぁ、それも問題ない、ロドリアさんに預けてある転送魔道具が有るからそれに入れて頼むわよ」
「一介の商人が王宮に手紙を持っていけるのか?」
「あら、そこは宰相さんに頼むのよ! いつも私たちがされたような方法を使ってね」
「……マジか……」
「えぇ、いつもいつもヤラレっぱなしは嫌でしょ、お返しくらいしたいわよ」
えらく不適な笑みを浮かべて言う雪華をみた面々は、こういう笑顔の雪華を怒らせる方がもっと怖いと内心呟いた。
稚拙な文章をお読みになって頂きありがとう御座います。
ご感想に対する返信返しは超苦手なので、出来ないことが多いかもしれませんが、出来るだけ頑張りますので、長い目で見ていただけると幸いです。