105話 真相を知った転生者と調査報告
※何度か読み返し、色々話がおかしくなっている所や誤字・脱字は不定期に修正・加筆をしております。(更新日が多々変更あり)
ピートと雪華が亜空間で話してしている間に、浅井賢吾と霧島廉が中心になり神崎家の助言を得ながら、現状の全てを転生した二人に話していた。全てを聞いた二人は唖然として言葉が出なかった。
「……って事は何か雪華のオリジナルのシナリオが本来の歴史」
「あぁ」
「でぇ雪華が始祖姫の生まれ変わりで、いつか人ではなくなる?って事?」
「そうだ」
「………待て待て、その元凶魔王を物理世界に弾き飛ばしたのは始祖姫?」
「雪華じゃなくてな、初代始祖姫だ」
「でぇ元の世界に戻ってきた?」
「そう言うこと」
「さっき雪華と出て行った男が神族で降臨している? 雪華の親衛隊長?」
「そうだ」
「まぁ~いきなりの情報量だから混乱するのも無理はないけど、とりあえず、雪華はこれにお前達を巻き込む気はないから心配するな」
「嫌々、聞いてしまったら巻き込まれたのと同じだろうが!」
「現状で言って、お前達二人はこっちで生まれ育っているし、冒険者レベルから言っても足手まといでしかない」
「レベル上げは必要だけど、俺たちにとっても巻き込む気はさらさらない、理由は危険すぎるからだよ」
「でも……、それでいいの? 自分の国は自分たちで守るのが冒険者や剣士とかじゃないの?」
「まぁそうだがな、冒険者が育つまでどれだけ時間がかかると思う? それに元凶魔王の力が不明すぎるんだよ」
元クラスメートに言われたら反論できない、全てが事実である。そんな所に雪華が戻ってきた。部屋の空気や様子から全てを悟った。
「雪華……」
「全て聞いたのね」
「あぁ、俺たちでは力になれないって事はよくわかった、でも何か手伝える事ってないのか?」
「……それは有るわよ、あんた達二人はここで生まれ育った、ここでの人生を謳歌して欲しいってのが私の希望、でぇ手伝える事って言えば、このウィステリア領地の発展に手をかして欲しいって事くらいかな」
「えっ?」
「領地の発展?」
「そう、私がここを納めるためには人員不足も甚だしい、300年前の記憶を持っている者にはそれを手伝って貰えると、こっちは助かる」
「それでいいの?」
「俺は冒険者だぞ、そっちの方でも助けになるのか?」
「そうね、レベルを上げて本来の三桁レベルになって領地周辺の魔物退治をお願いしたいくらいよね、後は若い冒険者育成、神崎家だけではもう手に余るのよ」
「……わかった、俺たちはお前の言うとおりにしよう、その方が死なずに済みそうだ」
「そうねぇ」
転生組と雪華の会話が一段落したのを確認して、今度はスキルマスター達が雪華に質問してきた、ピートはどうしたっと、それを聞いて雪華は表情が険しくなった。
「おい、何があった? さっきのピートは尋常じゃ無かったぞ」
「あぁゲーム内でもあんな顔をしたことはねぇ」
「……悪い、話す前にちょっとお茶を貰えない? 有る意味深刻だから……特に私たち元プレイヤーにとってはっ、というか天神将にとってはと言うべきかな」
雪華の言葉で天神将の二人や元プレーヤーはお互いの顔を見合わせた。雪華が真顔でこんな事を言うのは滅多にないのだ。そのため元プレーヤーで雪華の執事である小花衣がすぐさまお茶を主の前に差し出した。それを一口、二口、三口程飲んで、大きな溜息を付いた。そしてゆっくりと全員を見回して口を開いた。
「……結論から言って、やはり転生していた」
「マジで?」
「雪華の予想ドンピシャって事か」
「でも、それは確証とまではいかないのよ」
「何で?」
「私が知っているのはマクディナルの魂、神界が知っているのは元凶魔王の魂、今回転生していると認定してはいたけど……」
「けど?」
「今現状においてはどちらなのか確証がとれない」
雪華の言葉で皆がどう言うことだと質問してきた、当然である、転生しているのなら判るのではと思うのが人間の心情である。
「神界は私たちがいたあの物理世界にまで手を伸ばしてくれたのよ、でもそこで元凶魔王の魂の存在が確認されていない、またマクディナルの魂も確認されなかった」
「えっ……あの物理世界に行って調べてくれたって事?」
「そう、それだけじゃないわ、あの次元移動の間も魂は存在していなかった、それでも転生していると認定したのは、元凶魔王の魂の残滓をこの世界で認識できたから、そういっていたわ」
「……マジか……」
「その残滓って追えるのか?」
「神族が下界に干渉は出来ない、故に追うことは出来ないらしい、後は私たちで何とかする必要がある」
「それって現状無理だよな」
「冒険者が育ってない」
「えぇ、そう下界の事は下界に住む者が対処するべき事だからね。それともう一つ、こっちが一番問題ね」
「何だ?」
雪華はそう言いながら苦々しい表情で全員の顔を再度見回してゆっくり話し始めた。
「………天神将の他のスキルマスターが全員、次元移動前に殺されていた」
「はっ?!」
「今、何て……」
「私たちのギルドメンバーが殺されていたのよ、既に魂は存在しない、転生も出来ない状態だったそうよ」
「どっ、どういう事だよ」
「待て雪華何で殺されるんだ?」
「うちのギルドだけじゃない、天神将と懇意にしていたギルドも殺されていた」
「えっ? それってどういう意味姉貴」
「ちょっと待って……天神将と懇意って……」
「そう夏椰の所も秋枝の所も、そして春兄ぃの所も皆、殺されていた」
「何でぇぇぇ~~~???」
「お待ちください、お館様……では我ら六花のメンバーもですか?」
「えぇあなた達は先に保護されていた為手が出せなかったみたい、でも他の六花は保護が間に合わず殺されていた」
「ですが事故死が2件だけです、あとは次元移動に巻き込まれた可能性では?」
「事故死に見せかけて殺したのよ、証拠も挙がらないようにね、また次元移動の影響を受けた魂の中に六花の者がいなかったと言っていた」
「……いない……」
雪華のあまりの報告に元プレイヤーは唖然とした、プレイヤーではない者達は何が起こっているのかと不思議に思っていた。
「雪華、何か根拠があるのか?」
「お爺ちゃん……」
「お前は根拠なくそんな事は言わん」
「……元凶魔王について調べていたのは皆知っているわよね?」
「あぁ」
「その元凶魔王が獣王かもしれないという仮説を立てていた」
「それは知っている」
「それを元にお前はピートと迷い家に行ったんじゃなかったか」
「そう、領外にいる悪魔の件もあって迷い家に行ってピートの上司に会って話をした、あっちは全面協力をしてくれると言っていたから任せたのよ、……その答えをピートがさっき持ってきた、それが今回の答え」
「なっ……」
みんな閉口してしまった、内容が余りにも酷いものだったからだ、しかし惣摩はそれだけではないと感じて、再度雪華に説明を促した。
「ねぇ兼吾、廉私たちが垢バンした中にプレイヤーキラーをしているギルドが何組もいたわよね?」
「あぁいたな」
「結構多かったけど」
「その中に『幻魔凶』と言うのがいなかった?」
「……幻魔凶……」
天神将の二人は雪華が口にしたギルドがいたか思い出そうとしていた、そして思い出したのだ。凶悪なギルドだったことを。
「アイツらか!」
「思い出した、いたな徹底的に痛めつけて殺していた奴らだ」
「そうだ、ギルド総数は不明、どういうやり方でやっているのかも不明で運営もお手上げだと言っていた」
「そう、それを私たちは垢バンしたのよ、全員1人残らずね、私は会社のサーバーから割り出した」
「そうだ余りに酷いから珍しく俺たちのギルドが全員で相手にしたんだった」
「でぇ垢バンしたアイツらに関係があるのか?」
「あのメンバーだけど、リアルでは殺し屋だったのよ」
「はっ? 殺し屋?」
「そう現実に人を殺してお金を稼ぐプロ、垢バンしてメンバーが割り出されたけれど、全員が足の付かないアカウントだった、でもメンバーの顔は覚えている」
「アバターだとそんなのわかんねぇだろう?」
「わかるのよ、私はね」
「姉貴……」
「個々に動く殺し屋だったりグループだったりはあったけど……私に喧嘩を売ってくる連中は、だいたいが裏社会の住人だったからね、殺し屋の1人や2人くらい知り合いがいた、組長からの情報も有ったしね」
雪華の言葉で皆が呆気にとられた、ヤクザや殺し屋に知り合いがいる?などという単語が飛び出すとは誰も思っていなかったのだ。いやルイスだけは雪華の敵に裏社会の人間がいるのは知っていたが、知り合いがいるなどと言う話は聞いたことがなかった。
「お前の人脈ってどうなってんだよ」
「まぁそれはおいといて、あのギルドはリアルで私たちに関わる者を殺していった、当然他の殺し屋に頼んだ者も有ったのだろうけど、その中のリーダー格だった奴、ギルドではレクトと名乗っていた、リアルでの名前はハディ・クラン、裏社会では超有名スナイパーだった、単独行動が主流だったのだけど、あの末期マクディナルにリアルで会ってしまった」
「はぁ? マクディナルってあのマクディナル大司教???」
「そう、彼も裏アカで『幻魔凶』のメンバーだった、ギルド内ではハデスと名乗っていたわ」
「ハデスって……冥府の王??」
「大司教だったよな、アイツ」
「裏アカって事は表も有るって事か?」
「恐らくね、ただその表がわからない、裏アカに付いては垢バンした時に徹底的に皆で対応したからわかったんだけど」
「でもよぉ~何でリアルで俺たちの事がわかるんだ?」
「裏社会の情報網を舐めちゃダメ、政治家や裏社会の人間相手なら警戒するから有る程度の防御も可能だけど、素人相手に防御も何もない、自然死に見せかけるくらい簡単で造作もない」
そこまで言った雪華はもう一度お茶を口にする、乾いた喉を潤して続きを話す。
「レクト……ハディ・クランはとても優秀なスナイパーだった、分析力も作戦立案も恐らくスナイパーの中でも上位クラス、奴の指示で殆ど仲間が死亡している。でも奴は最後にマクディナルに殺されている」
「えっ、あの大司教って人を殺すの?」
「……言ったわよね、あの大司教が元凶魔王かもしれないって」
「あっ……」
「なぁ雪華、お前はその表のアカウントを探すって事か?」
「アカウントは機能しなくても表のアバターはわかるでしょ」
「とはいえ、こっちに移動して人族はセトレイア大陸に流されているだろう?」
「……アイツは只の大司教じゃない、裏社会と繋がっている事を隠せる程度の人脈はあった。自身の手を汚さずに人を殺すことに躊躇いはない……それにこのセトレイア大陸に奴の魂は感じない。それもあって神界も獣王については怪しいと睨んでいるらしい」
「神界もか……」
「アバターがわからなければ、所属ギルドの名前がわかればおおよそ見当が付くんだけど……」
「ギルド名かぁ~」
「表垢のギルド名として考えるなら、全うなギルドかな」
「攻略組もいるよな」
「廉、うちのデータから一緒に見てくれない?」
「まぁ~それは構わんが……ピートはいいのか?」
「あぁ~まぁピートは暫く迷い家で上司と話をするんじゃないかな」
「っとなれば暫く帰って来れないな」
「うん、そうなると思う」
雪華は今現状のピートを人に会わせるわけにはいかないと思っていた。あのマクディナルに殺されたレクト、奴の魂の残滓はピートの過去の知り合いだったのだ。過去に何があったのかは知らない、けれど彼があそこまで落胆、あるいはショックを感じているのだから余程の事だと雪華は理解していた。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
その夜中、皆が寝静まった深夜のこと、雪華は自室で眠れず起きていた、昼間のピートが気になっていたのだ。アレはかなり傷ついているそう感じていた。何が彼をそうさせたのか気になる所ではあるが、それは過去に繋がる事、そして自身の過去にも繋がるのだ。
「転生前って何があったのかなぁ」
そんな事を思いながら、布団に入り溜息を付きながらも寝ることにした。
夢を見た、戦いの夢、とても怒っている。
地上は火の海である、あちこちから炎があがっており人も獣族も入り交じって殺し合いをしている、逃げまどう者もいる。
その様子を高いとこから見下ろしていた。
目の前で繰り広げられている光景の中心にいるモノ……
あれは何だ! 人か? それとも……
それは何かを叫びながら、向かってくる……
周りには白い羽を持つ者達が周りで抵抗し、襲ってくるものを斬っていた。
向かってきたそれは、既に人の顔ではない闇に身を染め汚れしモノ
この現状を作り出したモノ……
怒りが更に膨れ上がり、手に持つ剣で一振りした。
向かってくるモノはそれに斬られ胸が裂けた。
さらに自身の持つ剣は目の前のモノに対して突き出していた。
魔核である。
四つの魔核を剣で砕き、そのモノの命を絶った。
そして何かの呪文を唱えると、目の前の惑星が別の方向に向かっていった。
それを見て思いっきり力を込めて弾き飛ばした。
目の前に漂うのは命を絶ったモノの残骸、剣はその魂を斬っていた。
怒っている、怒りが収まらない……
この現状を作り出したモノに対して……
目が覚めた、既に陽が昇っている。珍しく寝坊した?侍女のエルルーンが起こしに来ていた。
「お館様、お目覚めですか?」
「……あぁ~、ごめん今何時?」
「もう8時でございます」
「………8時! 嘘、寝坊じゃない」
「大丈夫でございます、大旦那様から昨日は忙しかった為、ゆっくりと眠らせるようにとのお言葉を頂戴しています」
「お爺ちゃんが……、そう」
「朝食はこちらにお持ちいたします、まずはお召し替えを……」
「あぁわかった……」
夢見が悪い、戦争の夢を見ていた。しかも凄く怒りの波動を感じていたのだ、それも何故か自分が、何だ?と思った。あれは何だったのか、自分が斬ったモノあれは何?と人ではなかった。
そんな事を考えながら服を着て身だしなみを整えている間に朝食の準備が整っていた。
「はぁ~」
「如何なさいました?」
「あぁ~いや、何でもないわ、気にしないで」
朝食を摂りながら夢のことを考えていた時、執事の小花衣が部屋にやってきた。今日のスケジュールを報告するためである。
「お館様?」
「あぁ~何?」
「聞いておいででしたか?」
「えっと、ごめん……」
「どうされたのですか? いつもは聞き逃すことはございませんのに」
「うんごめんね、ちょっと夢見が悪くてね、考え事をしていた」
「夢見が悪かった……あのお館様? 何か悪い予兆でもあったのですか?」
「えっ………何で?」
「お館様の夢見の力は100%なのです、何か予言でもございましたか?」
「あぁ~~そういえばそうだっだわね、忘れてた」
「お館様!」
「あぁ~大丈夫よ心配ない、これは別に悪い予兆とか予知とは違うから」
「……本当ですか?」
「本当よ! 心配しなくて良いわよ」
そう、あれは予知ではない、あれはもしかしたら過去視だったのかもしれない、または始祖の魂の記憶、そんな感覚だった。
「それより予定は?」
「……はい、朝食後の午前中は書類の決裁をお願いします、その後、ギルド総本部での書類決裁が残っております」
「そう、わかった午前中は書類決裁をさっさと済ませましょう。ルイスとリリアナはどうしている?」
「お二人は浅井様が冒険者ギルドにお連れしてしています、またリリアナ様の冒険者予備校入学の手続きなどもお引き受けいただいています」
「廉は?」
「今日は夏椰様と共に『火龍の島』で魔物討伐に向かわれました」
「そう、夏椰のレベルもあがっているのかな、最近聞いてないんだけど、それより暁のファルコン達は?」
「現在初心者の塔の1階層突破を試みているようです。もうすぐ2階層に進めるのではないかと」
「順調そうね」
「この所冒険者達が初心者の塔に挑む者が増えております」
「いい傾向じゃない」
「はい、子供達も冒険者予備校を通じて採集が出来るようになる者も増え、親達も家の仕事などをギルドに依頼して予備校生の仕事として定着してきております」
「そう悪い方向に行かないよう目を光らす必要はあるから気をつけないとね」
「はい、もう一つカレンダーですが、昨年の体験で慣れた者が増え、親子でクエストをこなして購入する家が増えているとロドリア商会ウィステリア支部からの報告がございました」
「へぇ~それはまた、親子でクエストをこなすなんて、王都のような、コソコソとするわけではないのね」
「当然です冒険者カードを持たぬ者は採集に出られませんし、報酬も得られません、その事もだいぶ定着しています」
「魔物の出現率も気になるんだけど、そっちはどう?」
「しっかりランクにあった討伐を行っているようですね、そして討伐に失敗した場合のペナルティを出来るだけ減らす努力をする者が増え、初心者の塔に行く者が多いのです」
「そう、とりあえず今は順調そうに進んでいるわね」
「はい」
「先走らず、今は現状維持をメインに注意を怠らないように指示を出しておいて」
「畏まりました、それで初心者の塔なのですが……」
「何か問題でも?」
「いえ、問題は有りません、先ほども申し上げた通り『暁のファルコン』のメンバーがそろそろ2階層に進めるのではと話をいたしました」
「……あぁ~そうか2階層の解放の事ね、ルイスも2階層以上にはいけるだろうから、頃合いかもしれないわね」
「はい」
「まぁ、とりあえず2階層に進めそうな冒険者を見極めてから決めるわ、午後から冒険者ギルドに行く時間は取れそう?」
「調整いたします」
「お願いね」
雪華は朝食後のお茶を飲みながら小花衣に指示を出し、仕事場である執務室に向かった。
稚拙な文章をお読みになって頂きありがとう御座います。
ご感想に対する返信返しは超苦手なので、出来ないことが多いかもしれませんが、出来るだけ頑張りますので、長い目で見ていただけると幸いです。