101話 新年と転生者二人
前回から1ヶ月の期間が空いてしまいましたが、今回から第5章の始まりです。
書いている私自身も少々悩みながら?
っというかどういった流れになるのかまだ予想が曖昧ですが、宜しくお願いします。
※何度か読み返し、色々話がおかしくなっている所や誤字・脱字は不定期に修正・加筆をしております。(更新日が多々変更あり)
年が明けて新年である、雪華が復活させたカレンダーがいよいよ本格的に使われ始める最初の年だった。そして今年のカレンダーには以下の休日が設定された。但しこれはウィステリア領のみ対応するものである。
1月1日:元旦(新年を祝う日)
2月3日:建領記念日(後の公国記念日)
雪華がシナリオを完成させウィステリアの領地ができた日
5月1日:豊穣祭(春の訪れを祝う日、豊穣を祈る日)
9月1日:防災の日(夏の終わりを示す日)
250年前に富士山が大噴火を起こした日のため領民の多くが被害に遭い死亡者が多かったと記録が残ってる。王都にまで灰が飛んだと記されていた。
新学期前の休日
11月第四月曜日:収穫祭(秋の収穫を祝う日)
12月25日:始祖祭(雪華の誕生日)
上記を決めるに当たって、元々の王国の祭りを聞いて領内限定の休日とした。昨年無料で配った物は練習用というか使い方の説明をかねていた物だったが、理解力のあるら者は去年からカレンダーを活用していた。
年の最後の祝日については雪華がかなり抗議したが、領民も認めているし、雪華自身が始祖である以上問題ないとウィステリア家全員に言われた事と神族にも肯定された為覆らなかった。
そして今、新年あけて3日目、既に仕事が始まっている世間では当然雪華も領主としての仕事がある。その休憩の間に年末の中旬に届いた水原拓馬からの手紙を読んでいた。年末年始は忙しく領内のあちこちから挨拶に訪れる客の相手をしていた為、手紙を読む時間が無かったのだ。
『久しぶり、晩餐会以来だな、カレンダーは貰った。コレはまだ未完成か?祝日がねぇよ。来年分は在るんだろうと期待するぜ。
あぁ~それとな一応俺も家族にカミングアウトしたわ、っと言ってもそれ以来音信不通だがな、でぇ以前話していたウィステリア行きだけど、本当に良いなら年明けに行きたいと思っている。
学費の事も旅費の事もあるからちょっと時間がかかるかもだが、そっちでこの世界の医師免許取って叔父さん達の手伝いをする。勿論生活費のために冒険者は続けるけど、大丈夫だよな?
でぇそっちの大学に行くに当たって何か準備するものとかあるのか? あったら教えてくれ用意してから行くから。霧島廉と宇宙飛行士の浅井賢吾によろしくなぁ~、じゃまた。
ルイス・ウィルシュタイン(水原拓馬)』
「なるほど、そっか拓馬もカミングアウトしたか」
「拓馬様とは水原拓馬様の事でしょうかお館様」
「そう、今はルイス・ウィルシュタイン伯爵家の次男よ、家族仲があまり良くないようでねぇ~、今は王都の大学に通っているんだけど、授業料と生活費は冒険者になって自分で稼いでる様よ」
「それはまた、ご苦労をされておられますね」
「でぇこっちに来る予定にしているらしいのだけど、大学への編入に何か必要な物はあるかって書いてある。彼なら問題ないように思うんだけど、何か必要なものって在るの?」
「そうですね、大学の成績表は必要だと思います。取得単位がどれだけあるかもよりますが、元藤華国際大学卒業生ですからね、念のためって事でいいのではないかと、詳しいことは海李様にお聞きした方が宜しいかと存じます」
「そうだよねぇ~父さんが大学の学長も兼務していたんだっけ……時間とれるかな? 忙しいと思うけど」
「そうですね、今日は当直と仰っておりましたので、明日お帰りになってからで宜しいかと」
「うん、じゃ話だけ通しておいて」
「畏まりました」
雪華は執事の小花衣にそう伝えると、仕事に戻っていった。翌日には拓馬と似たような手紙を琴音が送ってきていた。
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1月15日、リリアナ・ベルフィント令嬢が王都の市井に住むという300年前の友人でありクラスメートだったルイス・ウィルシュタインを極秘に探し出し家を訪ねてきた。しかも侍女と護衛の2人の付き人だけで来ていた。
「……お前……何の様だ?」
「話があるのよ、あんたの家で話そうかと思って」
「家はダメだ、それにそんな格好じゃ目立つし、お前は一応伯爵令嬢だろうが、男と一緒はまずくねぇのか?」
「あぁ~じゃちょっと平民の服を調達してくるわ、でも話長くなるかもだけど……」
「場所を変える、冒険者ギルドに来い」
「分かったわ」
そう言って2人は一度別行動を取った、それを見送りルイス・ウィルシュタインは冒険者ギルドに行き、ギルマスに交渉して部屋を借りることにした。
「お嬢様、何も平民の格好などせず……」
「ダメよ、ルイス・ウィルシュタインに迷惑を掛けることになるわ」
「ですが……、あの方も伯爵家のご子息であっても今は、家を出ていらっいますし、次男でございますよ」
「だから何? 次男だからって何が悪いのよ!」
えらく突っかかる護衛と侍女に対して睨みつけながら反論して、平民の服を物色してお気に入りを見つけて購入、その場で着替えをして、冒険者ギルドへ向かった。
冒険者ギルドでは既に話が通っていたのか受付のマリンが二階の応接室に案内した。
「ありがとう」
「いえ、ギルマスからの許可は出ておりますので、お茶の準備などは部屋に置いて御座いますので、ご自由にご使用下さいませ」
マリンはそう言って扉を開けて中に通した、リリアナの侍女がお茶の準備をする、護衛は扉の側に立っていた。
「早かったな」
「まぁね、平民の服をあれこれと悩む必要はないでしょ、それよりあんたもカミングアウトしてウィステリアに行くんでしょ?」
「……知ってんのかよ、お前……」
「雪華の手紙に書いてあったのよね、あの子私たち宛には日本語で書いてくるからさ」
「あぁ~なるほど、俺の所にも日本語だったな」
「まぁうちはともかく、あんたの場合はまだご両親と色々あるからって理由だと思うわよ」
「お前の所はどういう理由だよ」
「何となくだけど、雪華におちょくられている気がする」
「……アイツにか?」
「そうよ、この手紙見てよ、最初にカレンダー寄越した時の手紙よ!」
「……なるほど、確かにそう見えるなぁ~、でもアイツこっちの文字書けるよな?」
「勿論よ、書けるし読めるわよ、兼吾も廉もこっちの言葉も文字も理解しているわよ」
「そうかぁ~」
そんな事を言いながら2人は日本語で話していたのだが、気づいていない、周りの使用人には理解ができなかった。それに気づいたのは侍女がお茶を配った時に『どこの言葉ですか?』と聞いてきたためだった。
「あぁ~~~あはは、まぁ気にしないでよその国の言葉だから」
「お嬢様は他の国の言葉も学ばれていたのですね」
「そ、そうなのよ……」
「……バカ……」
「何よ! あんただって話してたわよ!」
「そう言えば、無意識だったか」
自分たち2人だけで無意識にも日本語で話していた事に驚いていた。その後はこの世界の言葉で話をしていた。
「でぇ雪華はなんて言ってきている?」
「あぁ~私たちの準備が整ったら迎えを寄越すって書いてるわね」
「迎え?」
「えぇ道中危険だからってさ、魔物の強さが王都近辺とでは比べものにならないみたいね」
「そうか……、じゃ早めに書類を出して貰わないとだな」
「そうね、書類がそろったらすぐにでも出発できるように準備だけは必要かな」
「いつぐらいになると思う?」
「書類だけなら今月中にはでると思うけど、あんたは?」
「そうだな俺も同じ様なもんだな」
「しかしこの冬にウィステリアまで行けるのか?」
「そうなのよねぇ、私もそれが気になっているんだけど、雪華の手紙には大丈夫って書かれているのよね、何でかしら?」
「俺の方には廉と兼吾を向かわせるって書いてあったぜ」
「マジで?」
「あぁ、雪華自身は動けないだろう領主だし、だからじゃねぇか?」
「確かにそうだけどねぇ」
「それよりお前侍女も行くのか?」
「あぁ親は連れていくようにとは言っているけど、藤華でしょ、寮が在るからねぇ~侍女はダメって書いていたわ」
「貴族の子女を寮住まいって普通は侍女がいるもんだがな」
「でも藤華でしょ、あの大学、私たちが300年前に通っていた大学よね」
「そうらしいなぁ、っとなると寮もあのときのままって事になるか」
「そうだったら侍女は連れていけないわよ、それにあそこが藤ノ宮なんだったら、雪華のことだから思いっきり結界を張っていると思うわよ」
「あぁ~~あの結界かぁ~、確かにあれじゃ安全だな、でもあの領内多種族共生だろぉ、ほかの種族もいるけど、お前は大丈夫か?」
「あんたはどうなのよ」
「おれは冒険者をしているからな、そういう関係で多種族と行動を共にすることもあるから慣れてる」
「……なるほどぉ~、そう言えば雪華は私に生物学の延長として、冒険者になって欲しいと思っているようだけどねぇ」
「お前が冒険者?」
「うん、生物学専門だしSAクラスの後期生を教えてたから、その延長で魔物の生体も調べられないかって言っていた」
「マジで?」
「えぇ、あぁ~私としては願ったり叶ったりなんだけど」
「……お前魔物を甘く見てないか?」
「あんたから見たらそう見えるわね、だから私も冒険者予備校に通うつもりよ、それに王都の動物園を見ちゃったからねぇ~」
「動物園? あれって超越者迷宮だろ?」
「迷宮は地下らしいのよ、現在雪華が強力な結界を張ってるから誰も入れないらしいわよ、でも地上に在る動物園は、私たちが普通に知っている動物園だったわよ、サファリも在るし水族館もあった……、しかもパンダがいた」
「はぁ~~~パンダ? 何でいるんだよ、そんなもん!」
「でしょ、そう思うわよね普通、でも居たのよ、私この眼で見たもの、水族館なんか回遊魚もいたのよ、見た瞬間刺身が食べたくなったわ」
「……って事はマグロか?」
「そう!!! マグロ、マグロも居たの、ジンベイも居たし深海魚だっていた、この世界ではあり得ないでしょ普通……」
「あり得ないけど、パンダって一番あり得んだろう」
「そうなのよ、でね詳しいことは全てあっちに行かないと分からないってわけよ」
「そういえば、そんな事言ってたな」
「そう、取りあえずこの件はこれでお終い、あっちにいる元クラスメートから聞くしかないわ、だから今はいつでも行けるように準備するだけよ」
「だな……」
「それよりあんたはいいの?」
「何が?」
「ご家族よ、何もいわないで行くつもり?」
「言った所で意味はない、それに疎遠だし、カミングアウトしてからは避けられてるよ」
「えっ、そうなの? 避けられてるってまさかでしょ?」
「本当だ、時々ギルドに様子を見に来ていた兄上が来なくなった」
「マジか……そこまで悪化していたとは、まるで雪華の家族みたいね」
「あぁ言われてみればそうだな、アイツも子供の頃はそうだったなぁ~ 今は大丈夫なんだろう?」
「まぁ~一応はね、でも夏椰君以外の兄姉には敬語を使っているらしいわよ」
「らしいって、どういう事だ?
「夏椰君から聞いたのよ、そしたら姉貴は他の兄姉には敬語だって、特に春菜さんとは、未だにぎこちないらしいわよ」
「そうか、まぁ~春菜さん相手では仕方ないのかも知れないな」
「まぁ~ねぇ」
雪華の家族事情を在る程度知っている二人は思いだしていた、雪華の家族関係の複雑さを、それを今の自分と近いと感じたルイスこと拓馬、でも雪華程酷いわけではないと思い直していた。雪華のように命を脅かされたわけではなかったからだ。
「それより拓馬、あんたに連絡する方法だけど、どうすればいい?」
「あぁ~じゃここのギルマス宛に預けてくれたらいい、クエスト依頼の時にでも貰い受けられるよう協力して貰う」
「いいのぉ?、今のギルドは貴族との結託は禁止されているでしょ?」
「あぁ~それは大丈夫だ、ギルドに何かするわけじゃねぇ~、ギルド長は雪華の部下の部下になるみたいだからな」
「部下の部下?」
「ウィステリアにはギルド総本部ってのがあるんだ、全てのギルドの統括をしている、そこの運営責任者が雪華なんだよ」
「えぇ~~そうなの?」
「あぁ、ギルマスのロイド・三橋さんは、ウィステリアにある冒険者ギルド本部ではギルマス本部長の右腕だった人だから、雪華とも顔見知りだ」
「そうなんだ、じゃ大丈夫なのね」
「あぁ、ギルマスには話を通しておくけど、できたら毎回同じ人が連絡役になってくれた方が、ギルマスも安心だと思う」
「そうね、分かった、じゃ彼に頼むわ、ロナルド・ハウザー、私の護衛だから」
「わかった、じゃちょっと待っててくれるか? ギルマスを呼んでくる」
「わかった……」
拓馬はそう言って部屋を出ていった。それを見送る琴音ことリリアナ・ベルフィントは大きな溜息を付いていた。
「お嬢様、私でいいのですか?」
「別にかまわないわよ、でもあなた以外に連絡役にすることはできないからね、お父様達にも伝えておくわ」
そんな話をしていると、拓馬がロイド・三橋さんを連れて戻ってきた。
「でぇ彼がその伝言担当の……」
「ロナルド・ハウザーです、お見知り置きを」
「お話は分かりました、お二人がウィステリアに行く迄ならという期限付きですね」
「えぇ、申し訳ないけどよろしくお願いします」
「承知いたしました、一応1階の受付の者達にも会わせておいて頂けますか?」
「わかりました、そういたします」
琴音と拓馬が冒険者ギルドで話をしている頃、拓馬であるルイス・ウィルシュタインの実家では、ボイド・ウィルシュタイン伯爵が妻のエリーゼを含め家族会議をしていた。
ただルイス・ウィルシュタインがカミングアウトして家族に話して以来、家族は接触を避けていた、どう対処して良いか分からなかったせいもあるが、騎士団に所属している長兄のラルク・ウィルシュタイに街でのルイスの様子などを聞いていたが、殆ど会わないと答えていた。
また休日を理由に一時的に実家に戻っていた長女で拓馬にとっては妹になる、メアリー・ウィルシュタインは何の為に呼び出されたのか分からずこの場にいる。
「ねぇお父様、お兄さま、一体なんですの? 家出をした方の事なんか今更どうだって良いでは在りませんか」
「メアリーそんな事をいうものでは在りません」
「でもお父様の言いつけを無視して家を出ていった人ではありませんか、しかも騎士団に入らずに医者になるなんて……ウィルシュタイン家は代々騎士爵家ではありませんか」
この妹にしてまだ学園にいるが、騎士爵家の娘として立派に剣術も学んでいた。学院で次兄になる兄が冒険者予備校に通っていた事が噂になっていた事もあり恥ずかしい思いをしたと怒っていたのを家族は知っている。それもあって昔からルイス・ウィルシュタインに対しては冷たい態度で接し、会うことも言葉も交わす事もせず嫌っていたのだ。
「はぁ~仕方ない、メアリーをこんな風にしたのは私の責任でもある、今更どうにもならん」
「ですがあなた、このままではルイスが可哀想です、家族からも捨てられたようなものではありませんか!」
「母上、別に捨てたとは言っていませんよ……」
「捨てたも同然でしょう、学費も生活費も与えなかったのですから、今更あの子の本当の気持ちや立場を聞いて助けた所で、あの子は受け取りませんよ!」
「お母様一体なんの話をしているのですか?」
「メアリーには話していませんでしたね、あなたの兄ルイスは転生者だったのです」
「えっ」
「お前……ルイスが口止めをしていただろう」
「家族に対しての口止めでは在りません、あれは他の貴族に対するものです、だから使用人も全て外に出しているではありませんか」
「だが……使用人もどこからか聞いてしまったら……」
「その時は覚悟をするしか在りません」
「ウィステリア公爵を敵に回すことはするな、これはルイスだけの言葉ではない、陛下も同じ事を仰っていた」
「あの、転生者って……誰がですか?」
「ルイスだよ、先王と同じ300年前のね」
「そ、そんな、まさか……」
「本当だ、本人から直接聞いた、騎士団に入れない理由もな」
「入れない理由って何ですの?」
「ルイスは300年前の記憶を持つ転生者で、当時は医者をしていたそうだ、だから人を殺す仕事には就きたくない就けないと言っていたんだよ」
「医者……」
「あの子のしたいようにさせてあげましょ、ねぇあなた」
「そうだな、でも頭では分かっているのだ、だが……何をどう言ってやればいい? 今までルイスを否定し続けてきたのと同じだ」
「でも、これからもそれだとずっとルイスを否定することになります、見捨てたままになりますよ」
「でも母上、今更ルイスが心を開くでしょうか?」
「……それは、分かりませんけど……そうね、そうだわ、ねぇベルフィント伯爵にご相談しませんこと?」
「ベルフィント伯爵に?」
「えぇ冒険者ギルドでルイスが言っていたじゃありませんか、貴族に話してダメだけれど、ベルフィント伯爵なら……と」
「……リリアナ嬢か」
「えぇ、そうしましょう、何かしらの助言は頂けるのでは?」
「そうですね母上の言うとおりかも知れません、あの方なら先王陛下もご存じですし、何かお力添えを頂けるかも知れません」
「わかった、では伯爵に話してみよう」
両親と兄の話について行けていないメアリーは、次兄が転生者であるという言葉がどうしても信じられず、訳の分からないことを言っていると感じていた。
稚拙な文章をお読みになって頂きありがとう御座います。
ご感想に対する返信返しは超苦手なので、出来ないことが多いかもしれませんが、出来るだけ頑張りますので、長い目で見ていただけると幸いです。