98話 神族と下界の関係
※何度か読み返し、色々話がおかしくなっている所や誤字・脱字は不定期に修正・加筆をしております。(更新日が多々変更あり)
ピートの上司との会談を終え、2人はウィステリア城に戻ってきた。迷い家にいた為か既に1週間は経っていた。
ただ何やら疲れた様な顔をしている雪華を見た家族が心配をしたが、ピートから少しそっとしておいて欲しいと助言があり、従うことになった。
そしてピートも用事があるからと、翌朝早朝にウィステリア領を出た、目的は迷宮の件を片づけに行ったのだ。そして迷宮から戻って三日目の朝、ウィステリアに戻ってきた、ただまだ雪華は部屋に籠もったまま出てこないとの報告を受け、ここぞとばかりにピートが質問責めに合ったのだ。
「ピート・ルゥ・パート! どこに行っていたんだ!」
「あぁ雪華に頼まれていた残っている迷宮の対処に行っていた」
「……あれってイルレイア大陸とサスレイア大陸じゃ無かったっけ?」
「あぁそうだ、一日で片づけてきた」
「……普通出来ないよね、一日でって」
「そこはあれだ夏椰、規格外だからな」
「いやそれ以上でもある」
ピート・ルゥ・パートが天神将メンバーの規格外で人間じゃない事は既に知られている為、こんな不思議をやっても可笑しくないと思うことにした面々だった。
「なぁぁ~ピート、お前の迷宮まで行って何があったんだよ」
「そうだあの雪華があんな疲れたような顔なんて滅多に拝めん!」
「ん~~、まぁなぁ~」
「戻ってきてもう三日は経っている、なのに未だに部屋から出てこない、側仕えの者は顔を合わせてるが布団からでる気配がないと言っているんだが……ピート君何か知っているのなら話しては貰えないだろうか?」
「まだ出てこないのか?」
「あぁ……」
「そうか……」
天神将メンバー2人の質問の後、雪華の父である海李が質問をしてきた、その表情を見るに、心配する父親っていう顔がありありと分かる。祖父母も同様だ、だが兄弟姉妹を見るとどうか、夏椰以外は、何ともあっさりした表情か、言葉すらない……
ピートも迷宮に関しての報告も兼ねて、雪華の部屋に行って話をした。話してもいいことダメなこと取りあえず聞いておかないとと思ったのだ。
だが迷宮に関しては感謝の言葉があったが、それ以外はまだ考え中と言って布団の中に潜り込んだ、仕方なくピートは居間に戻っていった。
「月宮さん、門番の方から魔族の情報はあれから一度もないんですかね?」
「はい、御座いません」
「そうか……」
それを聞いてピートは思った『あいつ律儀に約束を守っているのか? あのノワールがねぇ~』と。そして部屋を見回してみて現状元NPCはいない事を確認してから結界を張った。
「結界??」
「それ程まで必要なのか?」
「……この結界、魔素の結界じゃないね」
「さすが夏椰だな、気づいたか」
「って事はあれか、ピートの迷宮で張っていたあの例の結界?」
「……そうみたいだな、魔法が使えん!」
そう言う天神将メンバーは小さな魔法が霧散する様を見て納得した。
「すまんな、これから話す事を聞かれたくないヤツも居るんで、この結界じゃないと覗かれるからな」
「覗かれるって、誰に?」
「とにかく詳しく話せないんだが、まず第一に、城外に魔族が一人ウィステリア領に住みたいという者がいる、だがこいつに関しては、まだ雪華も認めていない、っというか検討中という所だ……」
「魔族が一人、そんなヤツが居るのか?」
「あぁ、まぁ~正直な所、俺はかかわり合いにはなりたくないって思ったんだが、どうも雪華のヤツ使役するつもりで考えているようだな、この結界を張ったのもヤツが居るからなんだがな」
「魔族を使役ってどういう事ですか?」
「魔族は種族でしょ、それは差別に当たるのでは?」
「ウィステリアでは禁止されている筈です」
「でも領外にいるのに、覗かれるってどう言うことだ?」
皆の意見は普通の意見である、だが只の魔族ならそれもいい、でもヤツは只の魔族ではない。
「…………あぁ~それは大丈夫じゃねぇの………」
「大丈夫って……」
「アイツは魔族を騙った悪魔だし、雪華は悪魔を使役するつもりだからな、命令に従わなければ殺すって断言しやがった」
「悪魔……悪魔ってあれか! 普通敵だよな?」
「魔族は元悪魔だって前に説明しなかったか?」
「……あぁ~そう言えば、そんな事聞いた事がある」
「雪華が部屋から出てこないのはそれが原因か?」
「いやそれは原因じゃねぇ~」
「じゃ……何が原因?」
「……お前らさぁ~雪華が覚醒したら人じゃなくなるってのは理解しているんだよな」
「当然だ、それは前からお前も知っているはずだぞ」
「そうですよピートさん、今更何でそんな事を聞くんですか?」
「………それが原因の一つだよ、ただ本人もそれは納得しているんだけどねぇ~、オレの口からその話は出来ないな、雪華から聞け」
「じゃ他にもある?」
「例の魔王について……」
「……例の魔王って、転生したかも知れないとかいうあの魔王?」
「あぁ、実際この領内にいる魔族側と獣族側の話は俺も一緒に聞いたし、イルレイア大陸の歴史書も読ませて貰っている、が決定打に欠けた」
「それはどういう事なんだね?」
「イルレイア大陸には魔族と獣族が支配権、領地争いをして長い間戦争していたらしい、ただ300年前にそれが終結した」
「それは良い事じゃないのかね?」
「普通なら喜ぶべきなんだが、魔王に関してはオレも知っているヤツだ、だが獣族の王に関しては不明だ、領内の連中もそこまでは知らなかった、そんな所に領民になりたいと行ってきた悪魔が姿を見せた、それにも驚きだったんだが……」
ピートは舌打ちをしながらノワールの姿を思い出していた、そして溜息を付く。
「ノワールが、ヤツがイルレイア大陸の情報を携えてこっちに来た事で、雪華が悩んだんだ」
「ノワール?」
「あぁウィステリア領に住みたいとか言い出した、魔族を騙った悪魔だよ、アイツ俺が初めてあった時はグレーターデーモンだったのに、冥界に戻らず現世に留まってこの300年の間にアークデーモンになってやがった」
「アークデーモン!!!」
「グレーターデーモンも上位悪魔だけど、それ以上って……」
「アークデーモンって言えば、確か上位魔将だったか?」
「ピートさん、あなたには悪魔の知り合いも居るんですか?」
雪華の祖母楓が珍しく質問をしてきた、その言葉と彼女の顔を見て小さな溜息を付いたピートは少し話すことにした。
「魔族の正体は現世に出てきた悪魔だ!」
「えぇ確かそれは理解しています、悪魔が召還魔法というもので呼び出されたとか」
「そう、でぇ今の魔王は元冥界で二大デーモンと言われていた程長く生きたグレーターデーモンだった、現世に召還されて召還主の依頼を完了後、依頼主を殺して近くの国一つを崩壊させて、魔王種になり魔王となった、これに対して神界は現世に姿を見せて残っている悪魔を配下にしてまとめることを認めた事で、魔族が誕生した」
「あぁそうだ、思い出した、それで悪魔を束ねて魔族が誕生したんだよな」
「その時なんか神族が条件を付けたんじゃなかったっけ?」
「あぁ始祖姫に対して逆らうな、敵対行為をするな、ウィステリア領に手を出すなってヤツな、違えた場合は種族毎命を取ると命じてある」
「でぇそれと今回の話と関係があるのか?」
「俺はこの二大デーモンとは顔見知りだ、魔王は冥界でルージュと呼ばれ、今領外にいる悪魔はノワールと呼ばれていた、まぁこれも只のあだ名に過ぎず名前はない、ただルージュの方は魔王になってから名前を付けた可能性はある」
「うそっ、冥界で二大デーモンって言われているって事はかなり強い?」
「ルージュとノワールの二大デーモンは冥界で数千年は生きているからな、それから現世で300年だ、他の悪魔とは天と地ほどの差がある」
「そんな悪魔が魔族と偽って姉貴に会いに来たのは、イルレイア大陸の情報を持ってうちに住みたいって理由だけなの?」
「まぁそこは不明だな、でもヤツのもたらしたイルレイア大陸の情報は、雪華を悩ませるには十分だった」
「どう言うこと、イルレイア大陸の情報で悩むって……」
「さっきも言ったが、現魔王は俺も知っているヤツだ、だから長命であっても不思議じゃねぇ、だがもう一方の獣族はどうか……」
「獣王……?」
「基本的に獣族は短命だ、それは王であってもだ、なのにルージュと戦っていた獣王は同じだけの年月を生きていると言っていた、あり得ない事実だ」
「って事は、300年生きているって事?」
「……マジかよ」
此処まで話して藤華組はどうやら理解した様子である、それ以外がまだピンときていない様な表情を認め、藤華組が再度説明をして漸く納得ができた様子だった。
「でぇ内容が複雑であった事もあり、お前ら人間に話せないと判断した俺は、自分の塔に行ったんだ」
「って事はあの迷い家にか?」
「あぁあそこなら人間は入れないからな、結界も張れる、特にノワールに知られることもない」
「なるほど、あそこは神域だって言ってたからね」
「さすがのアークデーモンもで無理か」
「まぁ今後の対策を話すために行ったんだけど……」
「……けど?」
「………俺の上司が来ていた」
「はっ??」
「お前の上司?」
「って事は神族の上層部って事か?」
「あぁ、色々複雑に絡み合っていて話が纏まってから報告しようと、遅らせていたんだけど、痺れを切らしたようで向こからやってきたんで、焦った……」
「その上司って怖いのか?」
「……軍神だぞ」
「軍神って、戦いの神って事か?」
「神力は俺よりも遙かに多いからな、今の雪華も上司を見て化け物って認定していた」
「雪華が化け物認定したのか?」
「あの破壊神が化け物認定ってどんだけ強いんだよ」
「でも俺から言わせりゃ、覚醒した雪華の方が上なんだけどな」
「マジで……」
そんな話をしているとき、何故か結界を素通りして姿を見せた雪華が言った。まるで幽鬼のようにフラァ~~とピートに向かって。
「あっ、姉貴!」
「雪華起きてきたかぁ~」
「心配したんだぞぉ~」
家族の心配する言葉をスルーした雪華は開口一番にピートに向かって言った。
「……ピート……」
「何だ……」
「あんたのあの上司、あれだけ強いんだから、例の元凶魔王倒せるんじゃないの? 軍神って言ってたわよねぇ~~」
「……おい、雪華ちょっと、何怖い、いきなり、何だ! ユパに対応させるってのか?」
「そりゃ出来るでしょう、あの化け物じみた気配だったら、私、次元移動前の元凶魔王は知らないもん、冒険者で無理だったらあんたの上司で十分じゃない……」
「待て待て待て、神族は下界に干渉しないって言っただろう! それに今三聖天様たちと協議するって言ってたじゃないか!! それまで待てよ!」
「………待つわよ、待ちたいわよ!! でも神界と人間界って時間の差が在るでしょ、そんなの待ってたら冒険者は間に合わないわよきっと……」
雪華の眼が据わっている、怖い気配満載である。これには周りの人間も引いていた、特に元プレイヤーで破壊神の被害に巻き込まれた者は少しずつ雪華から離れていた。
「……おい、雪華……」
「私はまだ、只の人間だからね、元凶魔王が出てくる頃迄に覚醒なんかするとは思えんし、したくないんだけど……」
「……でもなぁ~あの元凶魔王を倒したのは始祖姫だぞ! 三聖天様たちじゃねぇ~よ!」
「それって出てこなかったんじゃないの? 初代始祖が怒って先に飛び出したのよね、普通は主より先に行くべきでしょ? 何で初代始祖が先に行ったのよぉ~」
「だからそれは、神族が下界に干渉できないからだってのぉ、始祖姫だけしか出来ないからだよ!!!」
「でも行ったのよね……、あんたも……」
「まぁ~そりゃ俺たちは行くに決まっている」
「干渉できない神族じゃないのぉ~~? 何であんたは行けてあんたの上司たちは行けないわけぇ~~!!」
雪華の額には始祖の印が浮いていた、これにはピートも警戒をする、覚醒が近いと感じているピートにとって、今此処で覚醒されても困るのである、主の力を押さえるものが手元にないからだ。
「うぁ~~~雪華ちょっと待て、落ち着け、落ち着いて話をしよう……なっ。覚醒したくないんだよな? まだ、だったらちょっと落ち着け、ソーマを抑えろぉ~~~!!!!」
ピートの叫び声で少し我に戻った雪華は、ソーマを抑えることに成功した、だが額の印は消えてはいない。少し落ち着いた雪華の様子を見ていた家族も少しずつではあるが近寄ってきた。
「ふぇ~~、助かった……死ぬかと思った」
「何よそれ、助かったって! あんたを殺すわけないじゃん」
「………お前今の自分の状態わかって言ってんのか?」
「………よくわかんない」
「んったく!! お前の額はくっきり印がでているし、魔力とか霊力とかじゃなくてソーマを操っていたぞ、それって神力だからな!!」
「………無意識だったわ、そうこれがソーマか」
「ソーマかじゃねぇ~よ!! 今お前に覚醒されても困るんだよ!」
「何で……、神族は覚醒して欲しいんじゃないの?」
「お前覚醒したくないって言ったじゃん、それにな、覚醒されてもお前の力を抑える物が手元にないんだよ、そんな状態で覚醒なんかされたら俺が困る、いやこの領地が大変なことになるんだよ!!! ちょっとは自覚しろ!」
どうも雪華がピートに説教されてる図というのを、あまり見たことがない、というか一度もないと天神将メンバーは思った。珍しい構図である。
「……善処する……」
「はぁ~全く、とにかく三聖天様たちからの報告が来るまでは動くなって言われただろう」
「分かっているわよ……」
「珍しいな、雪華に余裕がないっていう様子は初めてみる」
「……すみませんね、余裕がなくて」
「あぁいや、その悪気があって言ったわけではないんだが……」
「別にいいですよ春兄ぃ、正直な所ピートの上司に会って化け物じみた気配に怖じ気付いたのは事実ですから」
「規格外の姉貴が怖じ気付くなんて珍しいね、そんなに凄かったの?」
「……ピートを省いて天神将メンバー全員で向かっても死ぬだけだわ」
「待て待て、俺も上司との鍛錬にはいつも負けてんだけど……っか勝つ自身はないぞ!」
「……それ納得できるわ……」
「とりあえず迷宮は封鎖してきたから問題ないだろう」
「イルレイア大陸の方はどうたったの?」
「あっちの『パンダの城』は深い森、魔族側に合ったな……」
「でぇ~あんたの知り合いの魔王はその迷宮に入った可能性は無かったの?」
「それは無かったな、約束を守っていた」
「約束?」
「アイツが悪魔を率いて魔族として現世にいることを神界が許した時、俺も一応一緒にいたんだよ、でぇ、この世界の事もあったしお前が居ることも示唆しておかなければならなかったから、迷宮には一切手を出すなと命じておいた」
「あんたが命じて聞くのか?」
「まぁ一応な、それにその場で反対すれば、即刻殺されてだろうからな」
「殺されてたって誰に?」
「三聖天様たちだよ! 当然代表として軍神が前に立っていたからな」
「………案外神族も怖いわね………」
「神族はそんなに甘い連中じゃねぇよ、厳格で厳しく……それでも時に慈悲も示す、下界は欲望の固まりだからな」
「そうねぇ~確かに間違ってはいないわ」
神族というものがどういった物達かを少し垣間見た気がする人間たちは、怒らせたらとんでもないのでは無かろうかと思った、特にその頂点に立つと言われる雪華を怒らせるのは災厄以上のものだと認識した様だ。
「でも神族も精神生命体って言ってなかったっけ?」
「そうだ、夏椰はよく覚えていたな」
「でも悪魔も精霊も精神生命体よね?」
「この世界の序列みたいなものを付けるとしたら、神界が頂点にある。そして下界に在るのが、冥界・精霊界・人間界があるけど、この三つは同列だな」
「えっ、同列なの?」
「あぁ、だから魔王は反抗できないし神界の命令には逆らえないのさ」
「悪魔が同列なんて初めて聞いたわ」
「下界の三つはそれぞれに特徴があるからだ、冥界と精霊界は魔法を主体として存在する、人間界は魔法を使える者と使えない者が在る為、物を作るという事を考える、つまり物質だ、だが物質といっても魔素の存在があるから、お前達がいた物質世界とは別物だ」
ピートの説明を聞いていた元プレイヤー達は、やはりこの世界は別物なのだと改めて思った。
「じゃ獣族や牙狼族とかの種族は、その人間界の部類にはいるのか?」
「あぁそう言うことだ、冥界を出た悪魔は『現世に出現した』と言うだろう、現世=人間界って思えばいい、他の種族も元々人間界で生まれるからな、だが魔族だけは違う、コイツらは元々冥界で悪魔として生まれて、誰かに呼ばれなければ現世に出現は出来ないからだ、そして実体化出来て初めて魔族となるんだが……実体化できる悪魔も居るから一概には言えんな、だから現世にいる悪魔も魔族として扱うんだ」
「だからあのノワールは魔族扱いをしたのね」
「そういう事だ、でも、まぁ冥界でもアークデーモンなんかは
ごく希に進化したものだからな、悪魔達でもアークデーモンなんて滅多に会える様なものでもない、数は圧倒的に少ないんだよ」
「少ないんだ……」
ピートから下界の三つの異界の事を聞いて、改めて知ったことなどで、ゲーム時代や物理世界時代との違いを知った。
稚拙な文章をお読みになって頂きありがとう御座います。
閑話以降久しぶりの更新でした。以前の様にもう少し早く更新できれば良いのですが、忙しくてちょっと遅めになっています。
ご感想に対する返信返しは超苦手なので、出来ないことが多いかもしれませんが、出来るだけ頑張りますので、長い目で見ていただけると幸いです。