97話 化け物上司認定したユパとの会談
※何度か読み返し、色々話がおかしくなっている所や誤字・脱字は不定期に修正・加筆をしております。(更新日が多々変更あり)
ピートの迷宮の奥深く、人が立ち入ることの許さない場所である迷い家、そこは神界と繋がってる異次元である。そこにピートとともに雪華はやってきて話をするはずが、何故かピートの上司という通称ユパが現れて話をすることになった。
「取りあえず、一つずつ問題を解いていきませんか? まず初めにノワールの問いを雪華様にご説明致します」
「ノワール問い?」
「我が部下に対して話した『冥界に何故悪魔が存在するか』という問いです。これに関しては悪魔が元々は神族だったと言うことです」
「えっ……元神族???」
「はい、遙か大昔という認識でお聞き下さい、当時色々な事が起こり始祖姫様に対して敵対行為をした者がおりました、そのものたちが神界を追放されたのです、その一部は人間界にまた一部は冥界に流れた者たちが居たのです、冥界に流れた者はとても大きな大罪を犯したものです、今の冥界にいる悪魔たちはその残滓から生まれたものと思っていただければ良いと思います」
「ちょっと待って下さい、私はピートから人間界で罪を犯した者の魂が冥界に流れると聞いています、違うのですか?」
「いいえ間違っていません、私が今お話ししたのは初期の頃の冥界の話です、冥界とは弱肉強食の世界、一番大きな大罪を犯した者でもその中で淘汰されていきます、そのため淘汰される中少しでも自身の身を残したいと思ったのでしょう、霧散する中に残された身が2人の悪魔が受け継いだのです、それがルージュとノワール、勿論淘汰された事で力は合りません、普通の悪魔です、ただこの2人だけは力を徐々に付け、どの悪魔よりも長生きをしたのです」
「つまり……何? 冥界の初期の頃は神族が悪魔だったって事?」
「罪を犯して冥界に流された元神族だ、だが記憶なんか無いはずだが、何故か話だけは冥界で伝えられていたらしい」
「どういう事、ピート?」
「つまり長生きしているルージュとノワールがまだ生まれたての悪魔だった頃に先輩悪魔から聞いた話を知って、更にそれが他の悪魔にも伝えられたって事だよ」
「マジ……な話なの?それ」
「あぁ正真正銘のマジな話、流された神族は俺も始祖姫も知っている者だったからな」
「人間界に流された者で、更正できた者も多くいます、冥界に流された者でも、現世にでる機会があって更正に近い行いができた者もいました。とはいえ元いた神界に戻ることは絶対に出来ません」
「戻ろうとした者もいたようだけどなぁ~」
「出来なかったの?」
「始祖姫がお許しにならなかったのです」
「えっ……」
「まぁ当然だけど、お心はお許しになっては居たけどね、戻すわけにはいかないと断言していた」
「……そうなんだ」
「でも雪華よぉ~今の冥界の悪魔は、もう元神族なんかいないからな、それだけは間違うなよ」
「そうなの?」
「あぁ今の冥界は人を含め下界で罪を犯した者が流れ着く場所だ、人がいう所の地獄ってヤツだと思えばいい」
「地獄かぁ~、それが冥界って事なのね」
「お前は陰陽師や霊能力者として生きてきたから、魂の行く場所も何となくは判るんだろうけど、あくまでもそれはあっちの場合だ、こっちは魔素で成り立っている世界だから同じじゃねぇからな」
「うん、わかった、それはもう嫌って程理解できているわよ、魂が魔素還元なんてする世界だからねぇ~、初めてみた時は何だこれって驚いたけど、もうだいぶ馴れたわ」
「そっか、ならいいけど……、神崎家の術者たちはどうなんだ? アイツらもその辺見えていたんだろう?」
「あぁ~それはあれだ、ゲームの世界そのままが現実になったから、魔素還元を見てそういうものだと納得しようと努力してるみたいだわ」
「………気の毒に………」
「そう思うなら責任とれ、あんたがこんな事やったんでしょうが!」
「俺は上の命令でやってただけだ!!!」
この2人の会話を見ていたピートの部下はオロオロと心配そうに、そして上司は何か懐かしいものを見る様な目をしていた。まだ始祖姫がいた頃の、主従を越えた友人の関係の2人の姿が、またここで健在であると。
「そろそろよろしいか?」
「あぁごめんなさい、えっと……」
「次に『ノワールをウィステリア領内に住まわせる事』についてですが」
「あぁ~アイツそんな事言ってたねぇ~」
「俺としてはお前を守るためには排除したい気分だがね」
「ノワールの魂は純粋な悪魔の魂のようです、またルージュと違って気ままで自由……故にハダル、いえピートの言うように排除が良いと思いますが、逆に本当に心から仕えたい相手に対しては従順です、もしノワールが雪華様に対して従属すると言うなら、守るために命も投げうる可能性も秘めています」
「……なるほど……なら妖怪を使役するのと変わらんか」
「はぁ~使役ってお前アイツを妖怪と同列に考えてんのか?」
「使役するなら主に逆らえないでしょ、私九尾の妖狐を使役してるけど、今の所逆らってこないわよ」
「……九尾を使役していたのか、お前、あれ大妖怪だぞ」
「小物を使役しても、大物妖怪に太刀打ちできんだろうが、只でさえ毎日妖怪に追いかけられる生活をしてたんだからぁ~」
「まぁ確かにそうだけど……」
「取りあえずノワールの領内生活についてはもう少し検討の余地ありって事だわね」
「あの悪魔に従属契約なんぞ通用するかね?」
「やってみなければわかんないでしょう、反抗するなら殺すだけよ、問題ない」
「………やっぱりお前は破壊神だよな、そういう所」
「あんたはその知将でしょ、期待してるわよ」
「うぅぅ~」
アークデーモンノワールへの対処法が決まった所で、お茶の入れ替えが行われた。そして最後の件が最大の問題だった。
「では次に、これはこちらからの質問です、我が部下が報告を渋っている件ですが……」
「あぁそれねぇ~実は次元移動の時に、魂の割り振りってあなたは管轄外って事でしたね?」
「はい、私は携わっていませんが、それが必要なのですか?」
「一番知りたいことだったので……」
「それはいったいどういう事でしょうか」
「えっと魔王の魂のことなんだけど……」
「魔王……」
「実はあの前の世界で、例の魔王ダミアスの気配かも知れない人間に、雪華は遭遇しているんだそうだ」
「何っ、それはいったいどういう事ですか?」
「説明が難しい……なんて言うか、その魔王かも知れない人物に遭遇しているんだけど、そもそも魔王ダミアスを知らない私が何でそう感じたのかも判らないんだけど……こっちに来て転生者とか色々と会っている中で、当時のあの魔王かも知れない気配をもった者はどうなったのかなぁって……気になって……」
「正直俺も雪華から聞いた時は驚いた」
「どう言うことだ?」
「次元移動の原因となった元凶魔王ダミアス、人から魔王になって始祖姫がお怒りになった原因の魂の行方が気になるって事だよ、雪華があっちで感じたのは魔王の気配を持っているものと会ったと言う事実と、当時はその人間が魔王の記憶は戻ってないと思うって言っていた話、でもそれは確証がないから分からないと言うこと、そしてこっちに来て、何人かの転生者と会った事、今のフェスリアナ王国の祖父である先代国王は転生国王と言われていた。神崎家の事を知る者、そして現在、雪華や同じ天神将メンバーの同級生である2人が貴族の娘や息子として転生している事実がある。これを踏まえると、元凶魔王が次元移動を耐えて転生しているんじゃないかっていう仮説を雪華が打ち立てたんだ」
「バカな! あのときお前達十二神魔は魔王ダミアス討伐を確認したのだろう、始祖姫様の護衛として出ていったはずだ、そしてその死を確認したと報告していた、それなのに何故!」
「だから俺も驚いたと言っている。だがノワールから聞いた情報から考えると、あながち転生の可能性を否定できないんだよ」
「何をノワールから聞いた」
「現魔王が獣王に負けたって話しと獣王が魔王と同じだけの年数を生きているっていう事実だ、獣族は短命だ、それは喩え王であってもだ、なのに今の獣王が300年生きているという事実があるんだよ」
「………魔王ならか………」
「魔王種になっているなら可能性は否定できない」
「その獣王は魔法を使えるのか?」
「会ったことが無いから分からないな、ただノワールは一般的な獣族だが違和感があるって言っていたし、300年前の領土戦争の時は物理的な道具を使用していたとイルレイア大陸の歴史書には書かれていた」
「……あの魔王が転生の可能性……」
「もしピートの知っている魔王が復活って事になれば、今の冒険者では相手にならないんですよ、だから早急に対策を立てる必要もあって、ピートには迷宮の対処と、戻ってきてからウィステリアの冒険者育成に手を貸して貰う予定にしています、ウィステリア周辺の魔物討伐も出来ない様じゃ元凶魔王相手に何も出来ないですから、それに私たち天神将メンバーはピートの知る魔王がどの程度の魔力と力を持っているのか知らないので、手探り状態なんです、ですからどうかピートは暫く下界に居させて下さい、お願いします」
何故か懇願に近いお願いをした雪華、本来雪華を守るために降臨しているピートである、懇願されずともずっと雪華のそばにいることになっている。だが上司が出てきて何らかの形で神界戻らされでもしたらと少し不安が過ったのだ。
「雪華様、今のお話は上に持ち帰らせて下さい、そして現状下手に動かないで下さいませんか?」
「どういう事ですか?」
「ピートを迷宮の対応に当てると言うのは同意致します、ですが獣王に会わせるという事や、雪華様自らが会うという判断はまだしないで欲しいのです、当然お立場も考えれば現魔王にもまだ会って欲しくは在りません、この一件、事は重大です、今は急いては仕損じます」
「分かりました、ですが悠長に構えられないのも事実です」
「分かっております、早急に上に話を持って行き指示を仰いできます、どうかそれまでは静観を通していただきたく存じます」
「どの程度待てばいい? 迷宮の件がある」
「お前はすぐに迷宮対処に迎え、起動して閉鎖するだけなら1日在れば十分だろう、その後は常に雪華様のお側を離れるな」
「それは無理ってもんだよ、こいつには執事がいるからな」
「仮定としてもその元凶魔王相手に人間の執事など当てにならん、お前は何のために降臨している」
「……わかったその辺は調整することにする、ウィステリアの冒険者育成は頼まれた仕事でもあるからな」
「いいだろう、それならば認めよう」
「助かる……」
「では雪華様、先に失礼しますこと、お許し願いたく」
「それはいいけど……その連絡とかは?」
「ピートに指示を出しますので、お聞き下さいませ」
「分かりました、すみません面倒な事を頼んでしまって」
「いえ、これは我々のすべき事です、雪華様の手を煩わせるわけには参りませんので、では失礼いたします」
ピートの上司は丁寧な挨拶をしてその場を去っていった。残されたのはピートと雪華と、ピートの部下でライファと呼ばれていた者だけである。
ピートは上司を目で見送った後、暫く気配を探ってから、大きな溜息を付いた。
「……やれやれ、相変わらずなヤツ……」
「筆頭! またそのような事を」
「おい、ライファこの部屋に言姿伝があったんじゃねぇ~の?」
「あぁはい、確かに御座いました」
「やっぱりか……、全く油断も隙もねぇ~」
「ねぇピート、いったいどういう事?」
「あぁ実はな、俺たちの会話と姿を映して収めるもんがあるんだよ、まぁいってみれば動画みたいなもんなんだが、それがこの部屋にあったって事だ」
「えぇ、それっと盗撮?」
「まぁハッキリ言えばそうなるな」
「筆頭、そんな人聞きの悪い言い方はなさらないで下さい」
「本当の事だろう、でもまぁ今回の話を伝言ゲームみたいに変な風に変わる危険は無いから良しとするか」
「ねぇその動画って誰が見るの?」
「間違いなく三聖天だな、お前の言葉が直接神界の側近達に伝えられたって事だ」
「それって、あの元凶魔王の魂を探してくれるって事?」
「まぁ一応対処に力になるって事でいいんじゃねぇかな、どっちにしても俺に連絡が来るだろうし」
「そう、分かった……」
雪華はそう言って握っていたピートの服を離して机に突っ伏した。あのプレッシャーに負けじと気を張っていたのだ。
「珍しいなぁ~お前がそんな疲れた顔するの」
「……あんた冗談じゃないわよ、何あれ化け物か!」
「……ぷははは、化け物ってユパの事かぁ、まぁそりゃ今のお前からしたらそう見えるか。うははは笑える」
「筆頭……」
「あんなのが上司ってあんたよく耐えられたわね」
「お前、あれを化け物扱いするなんてあり得んぞ、お前が覚醒すればアイツ以上だっつぅの!」
「はぁぁ~~~???」
「お前は神界の頂点に立つ始祖姫だぜ、ユパよりももっと強い他の三聖天の勢至天様や幻帝様もいるのに、ユパは軍神だから強いけど勢至天様程ではないってぇの」
「三聖天様ってそんなに強いの?」
「お前はそれを上回っているんだけど……、いつか自覚してくれ」
「嫌だよぉ~~これ以上化け物扱いされるの、私よりももっと上がいるじゃない!!」
「いねぇ~~よ!」
「だいたい何なのあれは! 魔素じゃないあんた達のいう神力ってやつなの?膨大すぎるんだけど!!!」
「だからお前はそれ以上の神力があるんだって」
「………信じたくないし持ちたくないわ!」
「おまえぇぇ~無理だっての、だいたい普通の魔術師というか霊能力者以上の力を既に前の世界では持ってただろうが!」
「あれは神崎の血筋だからでしょ!」
「そうだよ、神崎家の血筋の直系だろう、直系はフェリアナだフェリアナは始祖姫が人の世界で、人として生きていた時の姿と名前だよ! お前のその子孫でしかもその魂を受け継いで生まれたんだよ!」
ピートの言葉を聞いて少し涙目になっている雪華である、これ以上の強さを持って化け物以上の化け物になって、家族との諍いの種が増える事にもう疲れているのだ。漸く少し落ち着いてきたのに、またぶり返すのかと……
そんな雪華の顔を見てピートは優しく頭をなでる。そばで見ている部下は冷や冷やモンである、主に対する言葉遣いにこの馴れ馴れしさ、正直臣下としてはあるまじき行為である。
「大丈夫だよ、俺がいる、喩え人がお前を化け物扱いしても、おれはお前の味方だからさ」
「……あんた悟や篤みたいな事言うのね」
「あぁ?悟と篤……、あぁお前の幼なじみだった和宮聡と穂高篤か、前の世界で唯一お前の事情を知っていて守っていた2人だな、次元移動前に死亡しているからこっちには来ていないか……」
「もうあの2人が死んだ時点で諦めてるよ、二度とあんな風に私の味方で居てくれる人って存在しないもん」
「だからオレが居るって言ってんだろうが……」
「……あんたとはゲームで知り合ったギルドメンバーって言う位置づけなんだけど……」
「……それマジで言ってんの?」
「………最初はね、でも何だろうねぇ~こっちに来てからあんたが頼りになるかも知れないなんて思ってしまった私が怖いわ……」
「どういう意味だよ!」
「実際自分の正体を認めたくないばっかりに、今まで生きてきたのよ、でもこっちに来てからは、もうそうも言ってられないって思うことが多すぎてねぇ~、とはいえ神崎のみんなとはどんどん距離が開いていく感じがしてるし、この先一人かで生きるしかないんだなぁ~って思っていたら、あんたがこっちにいたからビックリだよ、しかも人間じゃなかった……私の同類じゃんって思った時点でもう私、人間捨てちゃったのかも知れないねぇ~」
「オレはお前の家族にはなれん、オレはお前の臣下だからな。でも相談役にはなれるし困ったことが合ったら助ける」
「…………うん、ありがとうねぇ~」
涙目の雪華は、今までにない最高の笑顔をピートに見せた、これを見たピートとライファは驚いてみていた、かつての始祖姫と同じような笑顔であると。
稚拙な文章をお読みになって頂きありがとう御座います。
ご感想に対する返信返しは超苦手なので、出来ないことが多いかもしれませんが、出来るだけ頑張りますので、長い目で見ていただけると幸いです。