95話 ギルド総本部とアークデーモン
※何度か読み返し、色々話がおかしくなっている所や誤字・脱字は不定期に修正・加筆をしております。(更新日が多々変更あり)
魔族との会談のあと、引き続いて獣族からも全く同じ質問をし、聞いた内容はほぼ同じだった、ただ何故か獣族側は物理攻撃が主流だったという。
獣族も魔法は使えるが魔素量は少なく魔法を使える者は多くない為だと伝えられているとの事、また獣族側にも獣族会というものが存在しており代表はライオンの顔を持った男で名前をライナスという者だった。
「別段代わり映えは無かったわね」
「そうだな、皆が移住者でありここで生まれ育っている状態だと現状の情報が全くないに等しい」
「気になるのは仲違いの原因と、魔法が使えないとはいえ物理攻撃に道具を用いていたという話よね」
「領土争いって言っていただろう?」
「どうもそれだけじゃないような気がするのよねぇ~何だろう、なんか違和感がある」
「違和感?」
「うん、みんなが言うのは間違いないのだろうけど……いきなり300年前の戦争で決着が付いた、そして市民レベルの交流はある、一部貿易はしている、それって何なの?」
「完全にいがみ合っているわけではないって事だろうけど、統治する側が何らかの理由を持っている……って言いたいのか?」
「魔王と獣王の関係性かなぁ~」
そこで雪華はあることを思い出してピートをみた、見られた側は何だと言う顔をしているが、雪華はため息をついて代理をしていたジャスパー・ロッドに話しかけた。
「ねぇジャスパー・ロッド、今後も此処で私の代理をして貰える?」
「えっ!」
「つまり副代表の地位について欲しいって言ってんの、私が来られない時の書類整理とかを含めてね、私がここに来てすぐ仕事が出来るように対応して欲しいって意味よ、当然私が居ないときは代理として対応もして貰う」
「……それって今までと変わらないって事ですか?」
「基本的に変わらないわね、でも私はここに来る回数は増えるわよ、多少仕事は楽になるでしょう」
「はぁ、解りました」
「お願いね、でぇ早速で悪いけど、私の執務室はどこかしら?」
「あぁ、はいこちらで御座います」
そう言って雪華達を案内した、結構な広さである、当然執務机が正面にあり、その前には立派な応接セットが存在していた。
「ねぇジャスパー・ロッドここの運営って基本的にはどうなっているの?」
「えっとまず1階の受付で各ギルドの対応をしており、2階と3階でギルド本部長が時々執務をしているという状況でしょうか」
「時々なの?」
「はい領都にいる本部長は各それぞれのギルド本部で仕事をしております、本部長総会や会議、また支部長との会議にはこの建物の会議室で行われております」
「事務員は居ないわけ? 掃除とかはどうしているの?」
「こちらに一般のギルド員が来ることは滅多にありません、基本本部長か副部長のみなので、それぞれの会議の時はそれぞれの受付が対応します、掃除に関しては1階の受付が全員で担当を決めてしております」
「なるほど、了解した、それは今後も続けてちょうだい」
「畏まりました」
「でぇ、私はこれから少しピートと話があるから、悪いけど席を外して貰える、机にある書類で私が対応しなけりゃならない物は教えてちょうだい、やっておくから」
「畏まりました、では書類はこちらにあるもので、決済をお願いいたします、お話をされるというのであれば、今からお茶をご用意いたします」
ジャスパー・ロッドはそう言って執務室を出て行った、ピートは応接セットに腰を下ろして周りを見回している、雪華は執務机に向かって書類を眺め始めた。
「なぁ~何が気になるんだ?」
「それは後で話す、ジャスパー・ロッドには聞かれたくない」
「解った」
それから暫くしてジャスパー・ロッドがお茶を持ってきて、雪華と仕事の話を少しした後、決済済みの書類をもって出て行った。雪華は残りの書類に目を通し問題が無いのを確認してから決済をして仕事を終え、ピートの前のソファに座った。
「でぇ聞かれたくない話?」
「300年前に現魔王に対してあんたの上司が命令したのよね」
「あぁ~~確かに」
「それって戦争集結に影響はあるの?」
「ねぇ~よ、あれはあくまでもお前に対してだけだ、魔族と獣族の戦争関連には、全く一切関与してねぇ~」
「……って事は、やっぱり獣王の事が気になるわね」
「魔王に会って何があったのか聞いてみるか?」
「そうねぇ、それが一番でしょうね、300年前を知る魔族はこっちに居なかった、でも魔族って長命じゃなかったかな?」
「戦争で逃げのびて此処に来た場合は寿命だったんじゃねぇか?」
「じゃ獣族はどうなのよ」
「獣族はどちらかというと人族よりも短命だぞ」
「……そうねぇ~確かにあっちの世界じゃ犬、猫は人より長生きする事は滅多になかった」
「一部の動物を除いてもそう長くはねぇ~だろう」
「確かに……、じゃ何で今の獣王が300年も生きてるのよ」
「あぁそれは俺もおかしいと思った」
謎を残したまま、雪華とピートはウィステリア家に戻っていった、総本部の仕事を片づけてピートと話をしている間に夕方になっていたからだ。帰宅をして月宮から話があった。
「えっ門番からの報告?」
「はい、魔族が一人こちらに入りたいと申し出ているそうです、ただ現状外部からの入領は制限中なので入れないと伝えたそうです」
「あぁ~~あれまだ続行中だったのか」
雪華が王都に行くことになった為、その間領民以外の出領は認めても入領は認めていなかったのだ。
「でぇ何で魔族が?」
「解りかねます、ただ領主に会いに来たと申していたそうですが、どうも胡散臭いと感じたと話していたそうです」
「胡散臭い……」
「名前はあるのか? その魔族」
「名前はないと言ったそうですが、仮にノワールと呼んで良いと言ったそうです」
「……ノワール……」
「何? 知っているのピート?」
「えっ、いや……何でもない」
「……何そのあやふやな発言は……」
ノワールという単語に反応したピート・ルゥ・パートの表情をみた雪華は、何かあると感づいた。
「はぁ、じゃそうね、今から会いに行ってみようかな」
「お館様危険で御座います、もう夜ですし魔族の興りが悪魔であるなら夜は彼らの領域、妖怪達と同じなのではありませんか?」
「う~~ん、そうね可能性は否定しない」
「でしたら!」
「でも、今は一つでも情報が欲しいのよ、領内で聞くのは危険と判断したから、領外なら問題はない、相手が高位魔族で悪魔だったとしても、敵としても不足はない、それにピートも来るでしょ?」
「あぁ気になるからな」
「しかし……」
「夕食までには戻るつもりだけど、遅れたら先に食べて貰っていてね」
雪華はそう言うと、ピートと共にウィステリア城を出て行った、共も護衛も付けず、素早い動きでの為スキルマスターである月宮ですら追えなかった。当然だ、相手は規格外である。
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二人はゲーム時代のいつもの軽装で門番の所まで来ていた、軽装と言ってもゲーム時代で獲得した最高級で特殊なレアアイテムや装備品である、簡単に手にはいる代物ではないし、この世界に同等の物があるとは思えないと雪華などは思っている。
実際天神将ギルドメンバーは全員最高級品のレア物で身を固めていたのだ。誰も勝てるものなど居なかった。
「これは領主様、こんな時間にどうされました? もうすぐ門が閉まる時間で御座います」
「知っているわよ、だから来たの」
この世界の門は夕日が沈む頃、また朝日が昇る頃に門の開閉が行われるのである、雨や曇りの時も同じ時間帯に開閉が行われる。そして今はまさに夕日が沈む頃である。
「えっと……」
「門番から連絡があったと聞いたのよ、領内に入ろうとした魔族がいたって」
「あぁはい、少しお待ち下さい隊長を呼んで参ります」
門番が隊長を呼びに言っている間に雪華達二人は探知魔法やら感知魔法に索敵魔法まで展開して門周辺を探っていた。
「お待たせいたしました領主様」
「えっと確かコニー・ラント隊長だっだっけ?」
「はい名前を覚えていただき光栄に御座います」
「門を守って貰っているからね、それでこっちに入ろうとした魔族の報告が来ていたんだけど、その後はどうなったの?」
「まだ近くにいるようですが、我々には姿を見せません」
「だろうなぁ~隠蔽スキル使っているようだし」
「そうねぇ~」
「でぇどうする雪華」
「会うに決まっている」
「だと思った」
「ラント隊長、私たち少し門外に出るわ」
「ではお戻りになるまで開けておきます」
「それは気にしないで閉めちゃって良いわよ、相手の魔族と話をしてくるから、内容によっては戻れないかもしれないしね、戻れたとしても夜中になりそうだから」
「しかし……」
「門番でしょ、誰かは起きているのではない?」
「まぁ一応……」
「その時に入れて貰えたらそれで良いわ、今は部外者を入れたくないので、規定に反することで申し訳ないのだけど」
「畏まりました、出来ればお早いお戻りを願います」
「うん、ありがとうね」
雪華はコニー・ラント隊長に礼を言って、ピートと共に領外へと出て行った、近くは不味い為少し離れることにした。とはいえ遠すぎるのも良くない為、領門が見えないあたりまで来た。
当然このあたりにくれば魔物も出てくるレベルはそれなりに高いため、普通の冒険者では手も足も出ないだろうが、雪華とピートにとっては雑魚である。
「やっぱりウィステリア周辺は魔物のレベルが高いな」
「まぁ~今に始まった事じゃないけど、この状況で冒険者レベルが低いって冗談ではないわよ、全く!!」
「それは俺に言われても困る、物理世界での人族は魔素を扱えんからな、お前達の様な陰陽師とか霊能力者じゃなけりゃ対処できねぇだろうよ」
「それでも魔素の扱いなんて、向こうじゃ習わないわよ。まぁ~霊力の流れをコントロールする程度なら可能だけど、質が違うでしょうが」
そんな会話をしながらもLV300から400程度の魔物を含めた集団を手当たり次第に一発でシトメていく所に、この2人の強さが普通の冒険者ではない証拠でもあった。
「さて、このあたりで大丈夫かな?」
「そうだな魔物もだいぶ倒したし、城壁からも遠のいた」
そう言いながら2人はある一点を見つめて威嚇し、隠蔽魔法を解除した。
「……これはまた……まさか破られるとは……」
「この程度の隠蔽魔法が俺たちに通用すると思ったのか?」
「これでも最大級だったのですがねぇ」
「あんたが内の領内に入りたいっていう魔族なの? どう見てもアークデーモンにしか見えないんだけど」
「……なるほど至高の存在のお二人には、私の正体もお見通しという訳ですか、流石です」
「御託はいい、お前何で魔族って誤魔化しているんだ?」
「悪魔の姿は人に見えませんからね、多少は見えるようにと思いまして……」
「でぇ魔族と偽ったわけか、ご丁寧に魔力量まで低下させているようね、一体何の用なの?」
「領主様がお目覚めになったと風の噂で聞いたものですから会いに来たのです」
「会いたい理由を聞かせろ、アークデーモン何ぞ簡単に会わせられん」
「おや、目の前にいらっしゃる方が領主様では無いのですか? それに正体を隠しているのはお互い様ではありませんか、見た所あなたも人の姿をしていますが少し違うようですね、何者ですか?」
「なるほど、私の正体を知った上で会いに来たわけか、なら理由を聞こうかアークデーモン、門番に対して名前はないといったようだけど」
「はい名前は御座いません、ただ私はウィステリア領に住んでみたいと思っただけです」
「何っ! お前このウィステリア領がどういう領地か知っていての発言か!」
「当然です神々の加護のある領地であり、当主は代々神々が決めると伺っておりますが」
「それで悪魔が住むっていうのか?」
「魔族は住んでいるのでしょう、差別の無い領地であると……、ならば私も魔族として住まわせて頂きたいと思いまして」
アークデーモンの言葉を聞いて雪華は唖然とし、ピートは少し怒りを見せた、そして大結界を瞬間的に張った上で自身の本来の正体をさらす。
「……そうか、思い出したお前は確かあの時にいたノワール……」
「えっピート! 何知っているの??」
「あぁ、知っているさ……魔族のノワールと聞いて引っかかっていた」
「っていうか何それ、ピートその姿! 羽が生えてるっていうか枚数が多い!!」
ピートがさらした本来の正体、島で見せたのは一部と言っていた、レモンシフォン色(LemonChiffon)の髪に透明に近いブルーの瞳をした4枚羽の姿で腰の剣を抜いて悪魔に対して剣先を向けている。
「これはこれは、まさか十二神魔様が降臨しているとは、存じ上げませんでした、ですが始祖姫の護衛隊である十二神魔が降臨しているということは、やはりウィステリア領主様は転生した始祖姫なのですね。主を守るために人の姿をして守っておられるとは……」
「……お前は300年前のあの日魔王の近くに隠れていたグレーターデーモンだった、この300年でだいぶ力を付けたようだな、まさかアークデーモンになっているとは」
「なるほどあの時にいらっしゃっていたのですね、ですが私は隠れていたわけではありません、ただ関わりあいになりたくなかっただけです、魔王も元々私と同じグレーターデーモンでしたが、すぐに魔王種になってしまいましたからね」
「お前達は冥界二大デーモンと言われていたルージュとノワールだ、そして魔王になった方はルージュ……」
「えぇその通りです、さすがは十二神魔様ですね」
「……全くここで出会うとはな、冥界に戻っていると思っていたが、まさか現世に残っていたとは……」
「あの……申し訳ないのですが、その剣を納めていただけませんか? 何も争いに来たわけではありませんので、それにあなたは冥界の悪魔が何故存在しているのかご存じなの筈では無いですか?」
相手の言葉を聞いてピートは険しい顔を更に険しくしながら思い出していた、悪魔が何故冥界に存在しているのか、そして本来なら雪華もというか雪華の魂も知っているはずの事だからである。
「えっと……ピート?」
「……あぁそうだ、知っている」
「だが、お前はあのルージュの配下ではないだろう」
「そうですね、人間のいう所のハグレ悪魔という位置づけでしょうね、まだ主を決めておりませんから」
「だったら、ウィステリア領に近づく理由は何だ?」
「イルレイア大陸の情報が欲しいと……そう精霊達が話しているのを聞いたのですよ、なのでご報告にと思いまして」
「悪魔のお前が情報をただで提供するとは思えんが、何を企んでいる」
「何も企んではおりません、ただ私はルージュとはソリが合いませんし、獣王も嫌いでしてね、勿論人も基本的に好きではありませんが、負の感情は時によっては美味です」
「始祖姫を襲うつもりならお前の命を貰う、これは魔族に対して初めに伝えてある事だ、冥界に居ない悪魔は魔族扱いになる、よってお前もその範疇に入るが、それも覚悟の上か?」
「勿論です、また始祖姫が人を守っているというのであれば、襲わないと約束をしましょう」
「……違えたときは……」
「この命をお好きに……」
2人の会話に入れず見守っていた雪華、これは人が介入してはいけないものと肌で感じ取っていた為、口を出さなかった。
稚拙な文章をお読みになって頂きありがとう御座います。
ご感想に対する返信返しは超苦手なので、出来ないことが多いかもしれませんが、出来るだけ頑張りますので、長い目で見ていただけると幸いです。