87話 帰宅と国王からの手紙
※何度か読み返し、色々話がおかしくなっている所や誤字・脱字は不定期に修正・加筆をしております。(更新日が多々変更あり)
迷い家から出て地上に出た時点で、既に一ヶ月は経っていた、この時間の差に驚くのは男三人組である、そしてピートの力で樹海の入り口まで転移していたのだ。つまり雪の精霊の攻撃はなく魔物の攻撃もなく、地上に降り立ったのだ、迷い家にはピートの部下達だけが残され、ピートは雪華達と共に地上に出てきたのだった。
「おぉ~~久しぶりのシャバ!」
「何、それ刑務所帰りの人間か、あんたは!」
「いやぁ~マジで久しぶりの外の空気だからさ、いいねぇ~」
「自業自得の引きこもりだろうがあんたは!」
そんな2人のやりとりを聞きながら他の3人は周囲に対して索敵した、魔物の気配は全くない。不思議に思っていると雪華が言ったのだ、多分私たちの魔素に反応して出てこないんじゃないの?と。
それを聞いて3人は思った、規格外2人の魔素量が半端ではない、ついでに自分たちスキルマスターの魔素も、今の時代ではチートレベレである、とはいえ魔物のレベルはゲーム時代と全く変わっていないのだから少しくらい出てきても良さそうだと思っていたのだ、だが規格外2人はタダの規格外ではない為警戒している可能性があると思うことにした。
「それより、戻ってきたなら早く帰ろうぜぇ、きっと神崎家は待っていると思うし」
「だなぁ」
「一ヶ月も経っているなんて……2日くらいだったと思ったのに」
「迷い家だからねぇ~時間の流れが違うのよ、でも家に帰る前にまずは!」
「まずは?」
「………ピートの冒険者登録が先よ!」
「あっ、そうだな、そっちが先だな」
「うん、確かにそうだけど……」
「ギルマスも驚くでしょうねぇ~、規格外が本当にもう1人居たとは」
「……ちょっと待て、久しぶりに出てきたのに、遊べないのか?」
「そんなの後でも遊べるでしょうが、まずは登録が先、そして家に行くのが次ぎで、遊ぶのはその後! 同時に他の大陸にある迷宮を閉じて管理する! それを先にしなさい!!」
雪華の雷が落ちた、当然である。今まで自分の迷宮で引きこもっていたのだ、仕事はして貰わねばならない、この状況を造った本人なのだから当然だと皆から言われて、ピートは上司の命令だったのにぃ~~とグチっていた。
「ちょっと姉貴、やっぱり冒険者ギルドの前に家に寄った方が良いと思う」
「何で?」
「何か気になるのか夏椰?」
「だって、ピートさん人間じゃないんでしょ、この世界の事をやっぱり先に報告すべきだと思うんだけど……」
「ん~~確かに夏椰の言うのも一理ある」
「そうだなぁ、コイツの紹介も早い方が良いだろうし、何せ神崎家はコイツと同じ神族が守っていたんだからな、どう思う雪華」
「そうねぇ~確かに正論だわ」
そんな話をしている4人を余所にピートは、周りの景色を見ながら何かを満喫している様な顔をしていた。
「今後の対策を考える上でもさ、冒険者のレベルアップに協力するって言ってくれているし、まず家族への説明は居ると思うぜ」
「ん~そうね、解った冒険者ギルドへの登録は後日改めるとして、まず家に戻ろう、コイツから説明をさせてからそれに対しての質問を家族にさせる方が良いだろうね」
「いいのか? 神族って事がバレるぞ」
最後に発言したのは周りの景色を満喫していた当の神族本人であるピートだ。しっかり話は聞いていたようである。
「……隠していてもいずれバレるでしょ、家族は私が始祖の魂を持つもの、って事やいつか覚醒する日が来ることを知っているのだから、黙っていても意味ないわ」
「……なるほど、わかった良いだろう、先に神崎家に行くとしよう」
そう結論づけたピートと、一抹の不安がありながらも認めた面々と共に、実家のある領都までの旅はゆったりとしながら、1人だけ楽しみながら、他の者はため息をつきながらある種の不安を抱きながら前に歩いていた。
家を出た時は徒歩か走るかのどちらかで、宿泊したり野宿したりを繰り返して1週間かけて到着していた、体力と魔力の温存のためだった。
しかし今回の帰宅にはその必要が全くない為、途中の町や村は全て通らずにその場所をテレポートですっ飛ばして旅をした。当然雪華の強制テレポートである。そして2日後には領都に着いた。
「これは領主様、スキルマスターの皆様お帰りなさいませ」
「ただいま」
「ただいまぁ~」
「そちらの見慣れぬお方はどなたでしょうか?」
「あぁ~コイツ!」
雪華はそう言いながらピート見て門番に告げた。
「コイツが例のもう1人の『至高の存在』だよ、取り敢えずこいつを連れて帰宅するわ」
「えっ、この方が?」
「おぉよろしくな、ピート・ルゥ・パートって言うんだ」
「あぁはい……あ、えっとようこそおいで下さいました」
なにやら返答に困ってしどろもどろの門番をみて、ため息をつく一行とそれをにこにこして笑っているピートに対して雪華は睨みつけた。
「ほら、行くよ!」
「あぁ」
そう言って一行はそのまま真っ直ぐに実家であり元の神崎家の御陵屋敷と言われていた筈の、この世界でウィステリア城と名を変えが場所に向かう。
その道中の店や町並みを見ながら、ピートがあれこれと独り言を言っている、あれは残ったのかとかあれはこうなったのか等というものである。そんな彼の声を聞きながら歩き、目的地に到着した。中は当然いつもと同じである。
「お帰りなさいませ、お館様」
「お館様?」
「そちらの方は?」
「あぁ~コイツは探しに行っていたもう1人のバカだよ、冒険者ギルドにいく前に家につれてくるのを先にしたのよ」
「左様でございましたか、今門をお開けいたします」
本来の神崎御陵屋敷がゲーム内のウィステリア城であるわけだが、何故かゲーム時代よりもデカくなった城には当然門番がいる。
その門番に事情を説明して門を開けて貰ってから敷地内に入った。当然馬車ではないため、皆歩きで城の入り口まで歩いた。
30分ほど歩くとデカい城の玄関口が見えてきた、当然こちらにも門番はいる。すると門番の1人が屋敷に入り報告をしに言った。
「お帰りをお待ちしておりました皆様、もう少々お待ち下さいませ」
「えぇ、解っているけど……、なんか前よりも厳重な警備になってない?」
「そうですね、一応家令の月宮様からのご命令ですので」
「……月宮の……」
出発前に比べて門番が増えたり、敷地内の警備が徘徊していたりと、少々物々しく感じたのは全員である。そんな様子を見ながら気配を探ったりしている一同の元に、家令で執事統括の月宮と雪華の執事である小花衣が姿を見せた。
「お帰りなさいませ、お館様」
「………さっきから気になっていたのだけど、そのお館様って何??」
「それは、そのご説明は後で致しますので、どうぞ皆様中の方へ」
月宮に言われて、仕方なく全員が屋敷に入った、当然城である広いロビーが広がっている。そこには使用人全てが全員両側に整然と並んで頭を下げて『お帰りなさいませ、お館様、夏椰様、スキルマスターの皆様方』と声を唱和して迎えていた。
さすがに雪華だけではなく他の面々も驚いていた、約一名を除いてではある。
「えっと、ただいま……」
「皆様方、長旅でお疲れでしょう、皆様がお揃いになるまでの間だ、お部屋でお休み下さい」
月宮が言った後、雪華や夏椰の側仕えが直ぐに近くまで来た、そして霧島廉や浅井賢吾やピートにも側仕えが付き部屋まで案内された。入浴を済まし衣服を整えて、皆が揃うまで部屋でゆっくりするよう言われたのだ。
雪華も自室に戻り入浴を済ませ軽めの衣服に着替えたが、休む間もなく執務室に向かった。
「小花衣、いったい何がどうなっているのか聞きたいんだけど?」
「全てのご説明を含め、ご家族が揃ってから統括からは言われているのですが、お館様はお疲れでしょう、少しはお休みになりませんと」
「休む暇があれば良いと思っているけど、色々と問題が在るんじゃないの? その、まず私の呼び方が変わっているんだけど!」
「その件も含めてです、実は王都より領主宛に封書が届いておりまして、その件もあって統括が全てが揃ってからと言っております」
「王都から? ならば直ぐに持ってきなさい、私宛なんでしょ?」
「……どうやら少しもお休みになる気はなさそうですね」
「休めるときが来たらちゃんと休むわよ! だいたい王都からなんて碌な話じゃないかも知れないでしょうが」
「解りました、少しお待ちいただけますか? 月宮統括に話して参ります」
「えぇ、そう願うわ」
雪華がそう言うと、小花衣はお茶の準備をして待っている間に飲んで頂くことにして出て行った。暫くすると月宮を連れて戻ってきた。
「少しはお休み頂けると、こちらとしては安心するのですが……」
「小花衣にも言ったけど王都がらみは早急に対処しないとまずいのよ、それに私の呼び方も厳重な警備もいったい何があったのか聞きたいわね、小花衣に聞いても月宮からとしか言わないのよ」
「その王都からの封書のせいです、中身は領主宛のため読めませんが、王都からと言うことで警備を厳重にする方が良いと私が判断しました」
「お爺ちゃんや父さん達は反対しなかったの?」
「一度は考えられましたが、お館様達が出発される前に詳しい説明は後回しにされたこともあり、王都がらみは件は警戒するに限ると大旦那様が仰りましたので、今回の対応になりました」
「……大旦那様って誰のことを指して言ってるの?」
「惣摩様です、ちなみに海李様は旦那様です」
「でぇ、私がお館様??」
「はい」
「はい!じゃないわよ、何でよ!!!」
「この件に関しては神崎家の総意でございます」
「だからどうして?」
「雪華様は始祖の魂を持つもの、いずれ覚醒すれば人ではなくなる、故に……との意見で領主であり公爵に陞爵されたウィステリア家の当主でもある為、お館様と呼ぶことが決まった次第でございます」
聞いた雪華が唖然とした、これは何だ、既に私は人じゃないと判断されたのか?と思わず思った。
正直ピートが語ったウィステリア家という家系がどう言ったものかを知らなかったら断固反対した、しかしピートの話を聞いてそれが出来ない可能性もあったというか在りすぎた、気持ち的には反対したい気分ではある。
「………わかった、取り敢えず意見は解った………」
「御理解頂けてありがとうございます」
「……一応理解はした、けど本音は納得しがたいんだからね、覚えておいて、でぇ王都から来た手紙ってのはどれ?」
「はい、こちらでございます」
月宮から渡された手紙は、以前と同じ様な手の込んだやり方である、王都からベルフィント伯爵より領主宛となっている、見た限りでは、ただし分厚い、これを手に取ってみた雪華は眉間をピクピクさせながら、中身が国王からであると見抜いている。
故に手紙を開けると当たりである。月宮と小花衣は驚いているが、雪華は今更である。
『拝啓、ウィステリア公爵、この様な手紙は二度目だな、実は例のハルシェット辺境伯の件だが公爵が言ったとおり、イルレイア大陸に逃げ込んだことが判明した、イルレイア大陸との貿易関係で会議があり外務省からの報告で解ったことだったのだが、どの種族かは解らないが、獣族の知り合いが手引きをしたことが解った。またその獣族はハグレ魔族と結託していたことも解った、ただ魔族はハグレ魔族に関しては一切関係ないと関与を否定しているとのこと、獣族に関しては種族が多いため詳しくは解らないということだった、また、魔族側の現在の魔王がこの一件に関わっているかも不明であるとの事だ。一応報告をしておこうと思って手紙を書いた次第である、現状では辺境伯の生死は解っていない、以上報告を終了する。 レイモンド・フェスリアナ国王』
国王直々の手書きの手紙である、読み終えると盛大なため息をついた雪華、やっぱりと思いながらもハグレ魔族とは何ぞやと思った。ゲーム時代には無かった単語である。
稚拙な文章をお読みになって頂きありがとう御座います。
ご感想に対する返信返しは超苦手なので、出来ないことが多いかもしれませんが、出来るだけ頑張りますので、長い目で見ていただけると幸いです。