86話 神崎家に真相を話すかどうか?
※何度か読み返し、色々話がおかしくなっている所や誤字・脱字は不定期に修正・加筆をしております。(更新日が多々変更あり)
迷い家でピートを含めた神族6人と300年前から現在に至るまでの全てを聞いたウィステリア組4人、今後どうするのかと話そうと言ってきたのは一応最年少の夏椰である。
「それより家族には話すのか姉貴?」
「あぁそうだ、この次元移動の件も神崎家の始祖の件も気にしていたもんな」
「放置はできないと思う」
「ピートさんの正体はどうするの?」
「ピートが人間じゃなかったって家族に言うのか?夏椰」
「不味いよねぇ~」
「えっ、別にバラしても良いんじゃない?」
ここで爆弾発言をしたのは、当然ウィステリア公爵であり、始祖の魂を持つ雪華である、その言葉にウィステリア組だけではなく神族の眼も集中していた。
「だって今更隠しても意味ないじゃん」
「何で?」
「神崎家の起こりは始祖だし、ウィステリア資料館なんてもので私が『始祖姫の生まれ変わり』って事を領民の一部は知っちゃっているし、ウィステリア領は神々の管理下にある土地って事が判明して、こいつ、ピートはそれを公表しようか何て言い出しているのに、隠しても無駄じゃん」
「今すぐ公表なんてしねぇ~っての、何かあった時ってのが条件だよ」
「あっ、そう、でも別に良いわよ」
「だから何でだよ姉貴!」
そこで雪華は弟の夏椰を凝視した、それは強い目線である。
「夏椰さぁ~あんた気づいてた?」
「何を?」
「神崎家で私が目覚めて始祖の話をした時、次元移動で始祖の残滓と話した時の事を説明した後、家族の私への態度に微妙な変化を感じなかった?」
「えっ……、そんなのあったっけ?」
「うん、お爺ちゃんとお婆ちゃんに父さんと夏椰は表面上普通に今まで通りで気にならなかったけど、他は違ったわよ、特に春姉ぇは……」
「うそぉ」
「覚醒したら人じゃなくなる、この言葉に対して動揺しない人は誰もいなかった、それより畏れをなした者が多かったわね、春姉ぇは一番に敏感になっていたようだったけど、春兄ぃも秋枝も微妙だったわよ、逆に月宮や小花衣達は寂しそうだったわ、私がもし覚醒してたら人ではなくなる、そして本来いるはずの神界に行ってしまうとでも思ったんじゃない?」
この雪華の言葉に多少なりとも感じ取っていたのは夏椰である、気のせいだと思って気にしないようにしていたのも事実だった。
逆に浅井賢吾と霧島廉は何となく気づいていた、ぎくしゃくとまでは行かないけれど、微妙に空気が違うと感じていたのだ。
「でもいいのか雪華、お前はそれでも?」
「……別に、私は今まで家族に良い思い出なんて殆ど無かったもの、もちろん優しくしてくれた祖父母や、気にかけてくれる父と夏椰は別よ、でも一緒に生活を共にしていなかったからねぇ~父と夏椰は空いた時間によく祖父母の家に来てくれる、特に夏椰はあの母の目を盗んでだし、祖父母は老いにむち打って私を育ててくれて感謝しているわよ、でも学校でみんなが言う家族ってのを私は知らない」
「姉貴……」
「学校の長期休みの日は家に居ない様にしていた理由は、もう夏椰には理解できるでしょう、休み明けの学校生活って私にとっては苦痛そのものだった、まぁそれでもメルリアに行って銃やライフル等の武器の扱いを学び飛行訓練をさせてくれる所や、格闘術を教えてくれる人が居たから、日本での事を忘れることができていたのよ。今更家族の動揺に気にする必要なんてバカらしいわ」
雪華の言葉に思い当たることがある夏椰、そしてクラスメートは複雑な思いである、休み明けはどうしても夏休みは何をしていたなどの話になる、天文研究の後は自由に夏休みを謳歌できるからだ。
だが雪華は決まって野球部が優先甲子園がなければメルリアに行っていた、その話くらいしか彼女はしていない、家族の事は一切していなかった、でもおそらく彼女の一番の幼なじみである和宮聡と穂高篤だけは知っていたのだろうと、今更ながらに思い出していた。
「……姉貴はまだ兄貴達の事を許せない?」
「別に今更許すとかそう言うのではないわね、一応和解はしてあるから、ただ何て言うか、距離感がつかめないってだけ、特に春姉ぇなんかはね、三人の兄妹としての感覚もぎこちない感じは未だにあるし、腹を割って話なんて無理ね、夏椰は子供の頃から懐いてくれているからそれは無いけど、馴れ馴れしく話せないわねあの3人には」
「そうか……、そうだよな、春姉ぇは姉貴を殺そうとしたからね、姉貴がその春姉ぇの顔を覚えてなかったら、そういうのは無かったのかな?」
「それは無理ね、精霊達が私に教えてくれるわ、それに春姉ぇは、あんたが生まれる前から私を殺そうとしていたからね、今更だけど、母さんから吹き込まれた負の感情のまま行動していた人だから、蔵から私を落とそうとした事だってあるわよ、だから余計に私の正体を知ってからの動揺は大きいかな、春兄ぃは自分から和解をする事を決めたから直接謝ってくれたし、秋枝はあの性格だから簡単に謝って更に同じ学校行きたいから勉強教えてって強硬手段にでるし……春兄ぃと秋枝の動揺は春姉ぇよりは大きくないわよ、注意するとすれば春姉ぇだけよ」
「注意って、春姉ぇだまた何かをする気があるって事か?」
「私に対して何かはできないと思っていると思いたいけど、逆に流されやすいっていういか、騙されやすいというか隙を作りやすいからつけ込まれやすいのよ、普段の彼女ならそれは無いでしょうけど、今の状況だとねぇ」
雪華の言葉を受けて夏椰は長女の春菜の姿を思い浮かべた、母親の雪華殺害未遂事件が公になって以来、勤めていた銀行から退職を余儀なくされ、家事手伝いという形で家で祖母の手伝いをしていた。
母に対する裁判所の判決が出て以降は母と共に京都に行き、亡くなってからは家に戻り祖母の手伝いをしていた、でもあの末期の災害時は人手もおらず役所を手伝うという名目で仕事をしていた事もあり、次元移動後も同じように役所勤めをしている。
もし今雪華の話した様な状況なら、付け入られる隙を与える可能性はあり得る。それが悪い方向へ向かわなければ問題はない。
「だったら、春姉ぇの為にも隠す方がいいんじゃないのか?」
「何で春姉ぇの為に隠す必要があるのよ、実際覚醒は近いってピート達は思っているのに、隠せないわよ、それに私は春姉ぇに対しての信用はないから何かあっても気にしないわよ、他の家族には申し訳ないけど、もし私に何かやったとしてその責任はとって貰うわよ」
「でも姉貴……」
「夏椰には優しい姉だったのかも知れないけど、私には敵意しか感じられない人だったのよ、昔の敵意から変わって、どうして良いか解らない感情ともやもやとした感情を常に持ち、それが更に変わって今は畏怖の念だけ、そんな人と和解をしようとしても成功はしない、見せかけの和解状態よ」
どうやら雪華の逆鱗に振れた様で彼女の言葉はかなりキツい、それだけの事を春菜はやってきた、
家族の中で一番雪華にキツく当たったのは彼女だったのだ、母に言われるままに行動して虐めてきたのは春菜自身である。
遺伝子情報で本当の事を知ってさえも母の味方になって京都まで行った人物である。雪華にとっては他人と同様である。
「どっちにしても春姉ぇはこっちに来て行動や態度を改められればいいけど、それを指導するのは他の兄妹や父さんでしょ、祖父母を巻き込まないで貰いたいわね、私としては……」
「そうか、姉貴はまだ春姉ぇの事を許せないんだね」
「だから、許すとかの問題ではないのよ、態度で示せって言ってんの! 普通は家族ならそんなの必要ないのだろうけど、私は春姉ぇに対して家族としての認識を子供の頃に捨てたのよ、あの日、あの神社で私を殺そうとした日にね、……笑ってたのよ……それでもまだ未練があったのに……決定的だったのはもう限界だった小学校の事件よ」
「……姉貴……」
「……だから私の中ではもう春姉ぇは姉であっても家族じゃない、他人と変わらないのよ、父さん達の手前家族である振りくらいはできるわよ、もう子供じゃないからね」
雪華の中では、何故春菜の魂は守られてしまったのかと思うほどである、家族だから、ウィステリア家の者だからという理由だからだろうと言うのは、もう理解できている。
仕方がない、だからもう諦めている、でもだからこそ、今度は普通に何もせず生きて欲しいと願っているのだ。余計なことをせず自分の幸せだけを考えて生きていたらそれで良いとさえ思っている。
だから家族が彼女をちゃんと指導して導いて欲しいと願っているのに、誰も気づかない、それどころか雪華に畏怖する気持ちが出てきている状況だからこそ心配だけが過ってくるのだ。
「……悪い、ちょっと言い方キツかったわね」
「いやっ……姉貴の本音が聞けた気がするから、でも今の話父さん達に話しても良いか?」
「………」
「姉貴が春姉ぇに対してこうして欲しいと思っている事とか、多分だれも気づいてない、だから」
「……夏椰に任せる、ただこれだけは言っておく、私は信之介様の様に怨霊になんてなりたくないし、春姉ぇの不幸を願っている訳じゃないわよ、彼女がこの世界で幸せに何事もなく生活できるようになればいいって思っているのは本当だから、何にも煩わされず、生き霊なんかにもならずに自分の幸せだけを考えて生きて欲しい、それだけだら……」
「わかった、それはちゃんと伝える」
「ちょっと待て、生き霊って何だ?」
「あぁ~昔ね、春姉ぇは生き霊として私を殺しに来たことがあったのよ、あれは確か母が死ぬ前かな、本人気づいてないけど」
「それって京都から?」
「そう、神崎家の血を受け継いでいるからねぇ~無意識だからどうにもならないわよ」
「……マジかよ……」
ここまで神崎姉弟の話を聞いていた面々は、口を挟む余地は一切無かったのだが、生き霊云々の話で元クラスメートが口を挟んでいた。
ただ神族組はやはり主はあの姉に対して怒りを持っていたかと思ったのだ。この件について彼らなりに色々話をした事はあった、守るべきか守らざるべきか、でも上層部はウィステリアの一員であるという一点で守ったのだ。
上層部が守ったのなら従う以外どうにもできない、このまだ覚醒していない主に対して、聞かれた時どう説明すればいいのか悩んだのは事実である。
「でぇ話もついたしここを出たいんだけど、その前にピートあんた家にきて在る程度の説明と質問に答えて貰うわよ、私たちはもう知っているけど、他の家族は知らないんだから、あんたの口から言いなさいよね、一応降臨してるとはいえ人族としてここに居るしスキルマスターNo.1なんだから、冒険者ギルドにも顔を出しておいてね」
「……解っている……って冒険者ギルド??」
「あんたが移植修正した世界でしょ、冒険者ギルドに所属してないと行動できないわよ」
「……マジか……」
「冒険者ギルドではスキルマスターが何人居るのか、くらいは判明しているらしいのよ、あんたが居ることも知られているから諦めなさい」
「はぁ~~~面倒な……」
「イルレイア大陸の迷宮に関してはあんたの仕事でしょ、冒険者ギルドに登録し直してくれたらそれで良いわよ」
「あっ、雪華ピートってメルリア国籍だろう? 身分証明書(IDカード)ないんじゃねぇ~?」
「あぁ~そう言えば……」
「身分証明書(IDカード)?」
「物理世界で神崎領に住んでいた人は身分証明書(IDカード)持っているから、こっちでもそれが使えるのよ、ってあんたが修正したんじゃないの?」
「あぁ~そういえばそうだった、俺神崎領の身分証明書(IDカード)持ってねぇな、あの身分証明書(IDカード)魔核付近の魔鉱石から造っていたようだから移植作業で有効にしてあったんだった」
「あっ、冒険者カードは有効だったじゃん、それで大丈夫じゃねぇの?」
「そうねぇ~、でもその冒険者カードの所属国ってどこになっているの? あんたメルリア国籍だったし、魔族で登録していたでしょ?」
「俺は移動時に変更しておいた、当然フェスリアナ王国のウィステリア領籍にしておいたから問題ないんじゃねぇ?」
「……マジで? うちの領民って事になってんの??」
「あぁ、その方が何かと都合がいいし、俺の迷宮富士山のテッペンだしな」
「……最悪だ、これで天神将の最悪の規格外が揃っちまった」
「『無慈悲なる魔女』と『破壊神の知将』かぁ~~それも2人揃って人間じゃないって最悪しかない」
「私はまだ人間よ!!!」
「まぁ、これでウィステリアを敵に回すバカは居ないんじゃないですか先輩達」
「……夏椰ぁ~お前本当に優しいな、でも油断できん、この2人の喧嘩に巻き込まれる領民の事を考えて見ろ、しかも人間じゃ無いんだぞ、地理が変わる」
「国が滅ぶ」
「他の国が滅ぶのは別に良いけどねぇ~、私に喧嘩売ってタダで済むと思う方が間違いよ、特に貴族どもはね」
「ほらぁぁ~~」
「これだ雪華の破壊神がこう言ったらマジで貴族は滅ぶ」
「だからレイモンド・フェスリアナ国王が手を出すなって命令だしたじゃないですか、信じましょ、ねぇ先輩達」
「ゲーム内での前科者2人が揃って安心できねぇよ」
「確かにそうだが……でもまぁ~ウィステリア領が神々の庇護下と言うか管理下にあるなら人間は敵ではないって事は事実だな、当面は将来出現する可能性がある元凶魔王に対して準備が必要ってことだから、そっちに集中した方が良さそうだ」
「兼吾が正しい判断をしたわよ!! とにかく自分の領地が危うくなる事なんてしないから安心しなさい」
上司とウィステリアのスキルマスター達の話を聞いていた、残りの5人の神族達は唖然としていた、我が主と上司がよりによって『無慈悲なる魔女』『破壊神の知将』等と呼ばれているなどとは思っていなかったのだ、神族とはかけ離れた名称の為困惑していた。
稚拙な文章をお読みになって頂きありがとう御座います。
ご感想に対する返信返しは超苦手なので、出来ないことが多いかもしれませんが、出来るだけ頑張りますので、長い目で見ていただけると幸いです。