85話 神族ピートから聞くの真実、その3
※何度か読み返し、色々話がおかしくなっている所や誤字・脱字は不定期に修正・加筆をしております。(更新日が多々変更あり)
魔王の存在を示唆したウィステリアのスキルマスター達、同じ天神将なのに、人間じゃなかったピートとその部下達が唸って頭を抱えていた。
「元凶魔王の存在に気づいてなかったのピート?」
「あぁ、あの始祖姫様自らお裁きになったからな、流れるとは思っていなかった」
「だから、本当に流れたかは解らないって言ったわよ、私は元凶魔王を知らないんだから、それに今回の私達以外の人間の様に再び戻っている可能性って事も確証が無かったから仮説でしかなかったのに、あんたが移植作業なんちゃらって言ったから、こっちは目眩がしそうだわよ」
「………悪かった、もっと早くにお前と接触しておくべきだったかもしれないな」
「……それはそれである意味怖い……」
天神将の誰かがボソッと言った言葉は、当然元プレーヤー達は激しく頷いたが、該当人物の2人はサラッとスルーした。
「それは良いけど、今後の事よ、仮にあの次元移動を耐えて流れているとすれば、奴はいったいどこに流れたのかを突き止めなきゃならないし、それ以前に冒険者のレベルアップを図らないと、その元凶魔王相手に戦えないのよ、私たちがゲームで遊んでいた当時の魔物のレベルは全く変わってないのに、何で冒険者レベルが下がってるのよ!! あんた何かしたの!!」
「いや、別に大きな変更はしてないぞ、禁術魔法は指定したけどな」
「それって何よ」
「当然、蘇生魔法だ」
「……やっぱり」
「あの魔法は魔素量が多くないとできないし、自分の命と引き替えで使う以外に無いからな、ゲーム時代と違って運営はいないからその辺の変更は結構してある」
「レベルが低い冒険者が多い理由は何だ?」
「人族として魂が流れて存在している、だから魔素量は少ないし、扱い方を知らない者が多いんだ、だからレベルが上がりにくい」
「それだけじゃないわよね、ロストマジックにロストスキル、在るでしょ」
「そりゃ当然だ、ゲームで使えても生身の体が耐えられるとは思えないからな」
「じゃ俺たちは何だ?」
「ウィステリア領は別なんだよ、元々ウィステリア領はお前達がいうその元凶魔王が存在いしていた頃から魔素が豊富で一番狙われやすかった。神獣が守るには余りある量だから無理だった、故に神族が直接守っていた、それがウィステリア家だったんだ」
「そんな当時からウィステリア家は在ったんだ?」
「あぁあった、ウィステリア家は神族だったからな」
「えっ?」
「ちょっと待て人間界に干渉しないんじゃなかったっけ?」
「干渉はしない、だがウィステリアは神々が守護する領地として知れ渡っていた、領主はその神族が選んで統治させていたんだよ、だからゲーム内でお前がウィステリア領を統治できたってわけだ、スキルマスターで限界突破者であり、規格外というランクとレベルだから統治可能と判断されただけじゃない、俺がログイン登録をして一番最初に修正を行ったのがウィステリア領だったからな、雪華以外が領主になれないようにしたんだ」
「………そんなからくりが在ったのか」
「まぁ雪華が領主になれる様にそうし向けたのは俺だけどなぁ~」
「なっ!!!」
「仕方ないだろうが、上層部の決定を無視できないし、移植作業をしながら、ウィステリアは始祖の魂を持つ雪華以外に考えられなかったんだから、本来あるべき統治者を選定しなければならないからな、覚醒していない状態でも問題はない」
「だからって……あのウィステリアって神崎領と殆ど変わらないんですけど!」
「その方が統治しやすいだろう、お前にとっては……それになあの榊島には魔核がある、お前が統治しないと誰も管理できないんだよ、だから余り手を煩わせなくて済むようにあれこれ考えたんだぜぇ」
ピートの話を聞いて雪華はワナワナと少し身を震わせながら、一瞬眼をつむり、統治しやすいウィステリアを思い浮かべていた、見た目こそゲーム内のそれではあったけれど、建物も含めて殆どが神崎領に近い素材でできており、統治自体もほぼ代わりがなかった、故に最初に目覚めた月宮は、情報収集と同時に統治に必要な状況を確認して雪華が目覚めるまで頑張って統治ていた、だから雪華に何故か凄く管理しやすかったと言っていた。それもこれも全てこの目の前の光臨した神族ピートの差し金だったとは……
「そう、そうよねとってもやりやすいって月宮が言っていたわよ、他の神崎家の関係者も動きやすいみたいだから、それは良いけど……貨幣価値も変わっているし修正すべき点もいくつか在った。それは仕方ないわよね、えぇ解っているわよ、だからそこは素直に礼を言っておくわ、ただ迷宮のことなんだけど、あれはいったい何の冗談なの?」
「……あぁあれかぁ、あれも仕方ないって事で諦めてくれ」
「どうしてよ!!」
「俺にとっては誰がこっちに戻ってこられるか解らなかったんだから、判断のしようがない、転生して記憶が戻っても迷宮を管理できる程レベルは上がらないだろうから、確実に戻れる者を管理者にする方が安全だからだな、まぁたまたま6人のスキルマスターが上層部に守られたって事で、俺としてはホッとしているんだぜ」
「あの危険きわまりない『動物園』はどうするのよ! あんなの私に管理させるわけ? あんたがしなさいよ!」
「それはお前の仕事だよ、俺は俺で別の仕事がある」
「あんたぁぁ~~~~」
「だいたいあの迷宮管理できる奴なんているか? あれ王都にあるんだぞ、死ぬぞ。だったら危険度の高い迷宮は始祖姫様にお任せする方が安全だ」
「あんたの方が神族なんだから強いじゃい、さっきの戦いだって相打ちだったけど、あれ本気だしてなかったでしょ」
「当たり前だ! 人間界で本気でやれるかっての」
ピートの副官で次席の彼は眼を細め上官を見ていた、またウィステリア組のスキルマスター3人の男達はため息を付いて始まったよぉ~~と嘆いていた。それを気づいた次席の男が3人に質問をしてきた。
「お前たちはこの言い合いに慣れているのか?」
「えぇ、ゲームでは毎回こうでしたよ」
「最終的に喧嘩になって巻き添え食らうこっちの身にもなって欲しもんだ」
「そう、なのか……」
「始めて見るんですか?」
「あぁいや、そうではないが……現在の始祖姫様と直接会う事を許されているのは筆頭だけだったからな、始祖姫様との会話は昔から変わらないのだなと思っただけだ、気にしないでくれ」
「それより、こんな所でまた喧嘩始められると不味いから、止めるのを手伝って下さいよ副官さん」
「確かに、奴らが喧嘩始めたら周りを巻き込んで破壊の一途をたどる、蘇生魔法が使えないなら、俺は死にたくない」
「右に同じ!」
と言いながら男三人は立ち上がって最強レベルの結界魔法を展開した、同時に喧嘩はするなよと大声で声をかけていた。
ここで喧嘩をされては目も当てられない。そして副官も部下に命じてピートを止めるよう促していた。
「なによ!」
「喧嘩? しねぇよ!」
「お前等のその言葉は信用ならん!」
「何でだよ!」
「何でよ!!」
「ゲーム内での前科がたくさん在りすぎるからだ」
「姉貴、落ち着いてくれ、ここは迷い家だけどウィステリア領だからね、影響が在ったら不味い」
ゲーム仲間の言葉と最大級の結界を張られているのを見て2人は大きなため息を付いて、座り直した。
「その結界解いてくれない?」
「もう喧嘩しないか?」
「しないわよ!」
「俺は死にたくないぞ」
「蘇生魔法が使用できないんだからな!」
「解っているわよ!!」
「おい、ピートお前は!」
「承知した」
その言葉で結界を解いた3人組は警戒をしながらも座った。そして副官は再度部下に命じてお茶のお変わりを準備させていた。同時に上司の行動と言動に驚いている様子である。
「でぇ元凶魔王復活の件だけど、実際はどうなんだ?」
「わからん」
「わからんのか?」
「だってさっきも言ったけど、私元凶魔王を知らないもん、気配なんて分からないわ」
「とはいえ、放置もできないだろう、だからとりあえずウィステリアの冒険者だけでもレベルアップを図ろうと色々動いてはいる」
「ただ雪華は一応領主で、公爵なんて貴族になったもんだから政治的に色々忙しいんだよ、だから俺たちで動くしかないって事だな」
「それは冒険者のレベルアップに貢献って事か?」
「そう言うことです」
「なるほど……なら俺も力を貸そう」
「本当か?」
「あぁ主を助けるのは親衛隊である俺たちの仕事だからな、っと言っても動けるのは俺だけだ、コイツらは人間界には来られない」
「この迷い家は人間界じゃないわけ?」
「あぁこの迷い家はあの物理世界の迷い家を似せて造っただけだ、神界に繋がるから、俺の部下が来られるのはここまでだ」
「……なるほど、だから少し気配が違うのか」
「あっちの迷い家に入ったことある口振りだな」
「えぇ入ったことあるわよ、その時は子供がいたけど」
「よく出てこられたな」
「まぁ~何とかね、迷い家を破壊すれば簡単だけど、あの子供に他意も敵意も無かったから説明して納得してもらえたら出してもらえたわよ」
「へぇ~珍しいな、普通迷い家はなかなか出られないんだぜ」
「知っているわよ、そんなこと術師なら誰でも知っている事よ」
「そうか、なるほどな、じゃ、そうだな他の迷宮の探索はどうなっている?」
「迷宮の殆どがなぜかセトレイア大陸の中でもウィステリアに集中しているんだけど、それもあんたの仕業よね?」
「まぁ一応な、迷宮は危険度も高いからな、とはいえ全てではないのも事実だ」
「『パンダの城』と『白亜の館』だけがどうもセトレイア大陸にはないみたいね」
「あぁそっちは別の大陸だな、イルレイア大陸には確か『パンダの館』だ、サスレイア大陸には確か『白亜の館』だったな」
「……イルレイア大陸かぁ~」
「ん、どうした?」
「さっき話した元凶魔王かも知れないっていうマクディナル大司教が、仮に次元移動できていたとすると、イルレイア大陸かなぁって思ったんだけどね」
「どうして?」
「だって魔王かも知れないし、仮に魔王だったら記憶が戻って魔族か、他の獣族として転生していてもおかしくないかなぁ~って思ったんだけど」
「なるほど、正当な魔族や獣族としての転生なら魔王、もしくは獣族の王として君臨しても問題ないって事か」
「そう! でぇ……」
「ちょっと待って、姉貴の話じゃあっちで大司教をしていたんだろう、ピートさんの話だと聖職者は該当しないんじゃねぇの?」
「あぁ~確かに、聖職者は罪はない?のかな」
「まぁ~犯罪は犯してないだろうなぁ~」
「それはない!」
「えっ、何で?」
「聖職者って言っても、表に出ないだけで罪人が結構多いのよ、特にイタリーはね、チリア島なんて歴史的にもマフィアの本拠地だったし、それにあのマクディナル大司教って欲深かったからねぇ~本音と魂の部分で言えばイルレイア大陸向きよ!!」
「……なるほど、何か不思議と説得力あるなぁ~」
「そうだなぁ~歴史的に見てなら確かに……」
天神将メンバーが納得した所で、雪華は話を進める。
「でぇ話を戻すけど、イルレイア大陸で全うに魔族や獣族として普通に生きているのなら問題ないのよ、でももしあんたが知っている元凶魔王としての転生なら問題あるからねぇ~」
「あぁいや魔王ではないだろう、お前がさっき言っていた様に、今の魔族側には魔王が存在しているし、ただ獣王としての転生の場合は可能性がある」
「……何で言い切れるの?」
「現魔王については300年前に神族が定めたからだよ、そいつがまだ生きている。だから元凶魔王ではない、となれば獣王以外にない」
「現魔王がいる、そう、やっぱりそうなんだ……なるほど……」
「しかし獣王の可能性かぁ~」
雪華の説明で納得できたピートは、ある意味現状は深刻でもあると考えた、そして雪華と話した事を踏まえて上層部に連絡をしなければならない。
「とりあえず、上への報告が先だな、判断を仰ぐ必要がある」
「そう、わかった、……あぁ、それとねピート」
「何だ?」
「あんたの移植なんちゃらは今も作業してんの?」
「ほぼ終わってはいるが、細かい所はまだ残っているからもう少しかかるけど、何で?」
「えっといや、まぁあんたが神族でこっちでそんな作業しているなら、私たちが目覚めた後の事は知ってるの?」
「お前が無事に目覚めた事を確認してからは、作業に集中していたけど?」
「そう」
「何だよ?」
「えっとね、転生者の事は知っているの?」
「転生者? いたのか?」
「うん、まぁ~2人は既にこの世にはいないんだけどね、現時点では居るのは2人かな」
「知っている奴?」
「この世に居ない方で言うなら1人は日本人だったら誰でも知っている人だったぞ、俺たちは会ってないけど」
「月宮さんは会ったことあるみたいだったね」
「転生者の子孫ってのは会ったことはあるけどな」
「誰だ?」
「まぁ~どっちの転生者の子孫だけどな」
「だな、1人はこの間ハルシェット辺境伯の地下牢に閉じこめられてた木工職人の子孫だったけど、そっちは子供の頃に魔素過壊病で死んでる」
「もう1人は日本の皇族、300年まで神崎領に強制的に有無を言わさず避難してきた人たちよ」
「まさかと思うが天皇?とか?」
「違うわ、当時はまだ皇太子、でぇ私は見たことあるけど話したのは一言だけだったんだけど……」
「それで?」
ここで雪華を含めた4人が今までの経緯を順を追って説明を始めた、最初から最後まで共に旅をしていて知り得た事全てをだ。
「何で遺跡何て物まで残していたのよ」
「あぁそれもある意味冒険者には楽しみの一つかなぁ~って思って残しておいたのもあるけど、300年前の歴史を残しておく必要も在ったわけで……」
「必要在るの? 別に新たなダンジョンとかの方がよかったんじゃないの?」
「まぁそれもそうだけど……遺跡で見つけた子供の手紙はともかく、その国王になったほうだが、何か問題でもあったのか?」
「問題は無いわね、とりあえず今は、他の貴族どもに対しウィステリアを敵になわさないようにとか、領主雪華を怒らせないようにっていう事を公に公表しているくらいだけど、それも子孫に遺書として残していたし、とはいえ300年も眠りについて誰も信じられないだろうからと、用意周到に日本語の手紙までのこしていたからねぇ~」
「なるほどなぁ、でぇ独立自治領で治外法権としたわけだ。いい判断じゃねぇの? 本来の歴史を知っていたら当然の対処だ、ウィステリアは神々が管理している事を思い出したんじゃないのか?」
ピートの意見に一理ありと納得した雪華、ただ統治する雪華としては面倒だと思ったのも事実である。
「ただ……今の国王や貴族がウィステリアに対して敵対行為をしてきたら、俺たちが黙ってはいないって事を公にておくのも悪くはない……」
「はぁ~~なにを言ってんのピート」
「思い出させるには丁度いいだろう?」
「ちょっと待ってよ、神族は人間界に対して干渉しないんじゃないの??」
「干渉もしないし関知もしないのは原則だ、でも事がウィステリアに関することは別」
「何で?」
「言っただろう、ウィステリアは神々の管理下にあるって」
「それはあれか、膨大な量の魔素がある魔核のせい?」
「そうだよ、あれを管理できる人間はいないし神獣もいない、神族といえど全て者が管理できるわけではない、上層部の一部の方々だけしか管理できない魔核だよ、言ってみればこの世界の中核をなすものっていう意味だが、それを知る者はいない」
「………マジ?」
「そんなにヤバい魔核なのか? あの榊島の奴」
「元々榊島はウィステリア領には無かったものだぜ、こっちに移植したときにウィステリアとくっつけたんだよ」
「くっつけた!! 何でぇ?」
「本来の魔核はお前達の知っている、地球の中心核の中に隠されていた、だが小惑星の衝突なんかで、一部が海底深くに出てきて沈んでいたんだ」
「えぇぇ~~~~中心核の中に隠されていた??」
「お前達科学者が核といっている物の中に隠されていた、まぁ結界を張ってあるから人には存在を知られてはいないがな」
「………マジか………」
「その飛び出した一部が海底深くに存在していたのに、物理世界でなぜか上昇して姿を見せたんだ、その時は焦ったけど、雪華が購入した事で上層部も俺たちも安心したんだよ」
「……そうなんだ、で上昇して島になったのか?」
「物理世界でも魔物を出現できる程だっただろう?」
「あぁぁ~~~~キメラがいたねぇ~そう言えば映像でみた」
「キメラ!!! マジか夏椰」
「えぇ、姉貴が行った時にキメラ出てきてましたよ、あっさり倒してましたけど」
「マジっ~~」
あぁ~いたなぁ~そんなのっとボソッという雪華を、スキルマスター3人の男どもの目が集中していた。それを見ていたのは当然ピートを含めた神族6人である。
稚拙な文章をお読みになって頂きありがとう御座います。
ご感想に対する返信返しは超苦手なので、出来ないことが多いかもしれませんが、出来るだけ頑張りますので、長い目で見ていただけると幸いです。