78話 ピートの居所へ出発
※何度か読み返し、色々話がおかしくなっている所や誤字・脱字は不定期に修正・加筆をしております。(更新日が多々変更あり)
ウィステリアに帰宅した当日の晩餐会のは主要人物達との謁見と愛想笑いで過ぎた、その翌日は旅の疲れと晩餐の疲れを癒すために一日休みになった。
また、廉と兼吾も自分の迷宮に一度戻ってくると言ってウィステリア家を後にしていた。
雪華は昨日話題に出たウィステリア資料館なるものを視察しに小花衣と出かけていった。説明によれば元神崎資料館だと言う。
「それマジな話?」
「はい事実です、中の資料を使用人一同で調べましたが、全て残されておりました」
「そのままなんだったら、何で私の事がバレるような事になるのよ」
「まずはご覧ください、我々にも解らないのです」
そう言った小花衣の言葉に怪訝な表情をしながら馬車で到着したウィステリア資料館、領都の行政区に近い場所で、領都図書館の横に併設されていた。共に無料で利用できるが身分証明書(IDカード)が無ければ利用できないようになっていた。
今回は領主が視察に行くことになっているため、資料館の方は閉館になっており責任者も退出して貰っていた。中は本来の神崎資料館のままになっている、神崎家の歴史や人物の紹介に遺品等が展示されていた。
「……子供の頃にみた資料館そのままって感じだけど……」
「えぇ、ただ文字はこの世界の言葉に置き換わっています」
「本当だね、これあなた達が翻訳でもしたの?」
「いいえ、我々は何も手に付けてはいません」
「手を付けてない??」
「はい、それとあちらの奥の部屋をご覧ください」
資料館の奥の部屋には神崎家の家系図と家紋印や当主印といった『神崎家当主の証』の写真や本家と分家の争いの説明が記されていた。ただ、雪華の説明には『始祖の魂を持って生まれた先祖返りの転生者』と記されていた。
「これって……何?」
「存じません、我々は追記もしておりませんし、直系筋である惣摩様達の指示は有りませんので、ご家族もこれを見られて驚かれていました」
「……いや、私も驚くわ、前は無かったはずよね??」
「はい、雪華様が当主と公表されてもこの文言は記載していません」
「だよねぇ~」
「ただ、領民はこの資料館を見て『歴史や言い伝えは本当だった』と再認識したと言う者が後を絶ちません」
「それってどういう意味よ?」
「この世界の歴史に出てくる始祖はウィステリア家の興りであるという言い伝えが有るそうです」
「…………何それ、言い伝えって………」
「歴史の授業でもそれだけは伝えられていたそうです」
「300年も?」
「はい、大人の領民を含め役人に聞いてもそう言っています、ですから移住者ではない元々の領民はみなウィステリア家を大事にし、神々の言葉から始祖姫の転生を信じていたそうです」
これが原因であの親子を含めて数名が『始祖姫様』と言ったのかと思った雪華であるが、謎である。とはいえ1人だけこれを可能に出きる人物が頭に浮かんだ。そしてもはや奴の仕業以外あり得ないと断言した。
その結論に達して雪華は暫く資料館は閉鎖しておいてと小花衣に命じた、最低でもピート・ルゥ・パートを問いつめて全てを吐かせてから対処しようと考えた。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
そしてその次の日、領土に戻って三日目の朝、ウィステリア家に集まった浅井賢吾と霧島廉と雪華に夏椰の4人は再び迷宮探索と言う偽りの名称で、嘗ての仲間をシメに出発準備を整えた。
ウィステリア家で朝食を取り、出発前のお茶を飲みながら、準備万端といった所であるが、肝心のピートの迷宮がどこにあるのか誰も知らない。
「ところで雪華よ、ピートの迷宮って今どこに在るんだ?」
「確かゲーム時代はウィステリアの南東あたりだったと記憶にあるんだが?」
「天魔の城でしたっけ? ピートさんの迷宮の名前」
「そのピートって人の迷宮はどんな迷宮なんだい?」
旅立つ4人の話に加わったのは父親の海李である、一番大事な娘が気にしている人物である心配をして当然である。
「確か、白い塔じゃなかったかな? 姉貴の迷宮は白い神殿だったよな、ギリシャ神話に出てくるようなやつ」
「雪華の神殿は『花の神殿』って当時は呼ばれてたよな、花がたくさんあったし」
「別名『深淵の迷宮』ってな呼ばれ方もしていた」
「それずっと不思議だったんですけど、何でそう言われているんですか先輩」
「それはな、何回階層まであるか誰も知らないからだよ、俺たちスキルマスターですら知らん」
「でぇ雪華、お前の迷宮は実際の所何階層なんだ?」
「えぇ~っと何階層だっけ? 確か地上は4階層くらいで、その後は地下に転移されてから100階層くらい在ったかも……」
「なに~~~~!!」
「マジで言ってんのか雪華!」
「うん、たぶんそれくらいだったと思うわよ、それに当時の冒険者なら攻略できるレベルだったと思うけど、迷宮もダンジョンと変わらないしねぇ」
「お前のそれはもはや迷宮と言うよりダンジョンだよ!」
「この時代じゃ絶対攻略できないな、でぇちなみにピートの迷宮は30階層迄だったよな?」
「まぁ~一応ね、基本的には30階層迄って事になっているけど……」
「けど???」
「どういう事だ??」
「30階層あたりで何かしてたんだよね、アイツ」
「何か?っていったい何?」
「知らない、けどあれは絶対30階層で終わりじゃないと思う」
「……マジで?」
「うん、魔物のレベルも結構高かったし、覚えてない?」
「……そう言えば1階層で既に400~500レベルがいたな」
「えっ1階層でランク4~5なんて、そんな魔物が出るんですか???」
「あぁ、在る意味動物園の次に危険かもって思ったわ」
「だなぁ、まぁ動物園に関して言えば、レベルもランクも一定じゃないから、ランダムだしシャレにならんが、ピートの迷宮も在る意味シャレにならん」
そんな話をしながら食後のお茶を飲んでいた彼らに、再びピートの迷宮の在処を聞いてきたのは一応元プレイヤーである兄の春樹と妹の秋枝である。
「この世界で一番高い場所です」
「この世界で一番高い場所?」
「……それってもしかして……」
「ほかの大陸じゃなくて、このウィステリアだよね?」
「えぇ、ウィステリアにあり、それがこの世界の一番高い場所ですよ、ピートの迷宮はそこにあります」
「……ちょっと待て、それって富士山……」
「正解、だから登山用具も必要だね」
「ちょっと待て、何で富士山?」
「次元移動と富士山噴火で地形が変わっているしねぇ~」
「いやいや、ウィステリアの南東にあったアイツの塔が何で富士山まで移動するんだ?」
「あぁ麓か??」
「違うわよ、正真正銘の富士山のてっぺん」
雪華の答えを聞いて全員が凍り付いた、あの活火山に変身している富士山に今から上るのか?と言うことである。
「……雪華よ、あそこは確か活火山だよな」
「そうね」
「そんな所にピートの塔が在るってわけか?」
「そういう事」
「どうやったら、そんな所まで移動できるんだよ! てっぺんだぞ、あのテッペンっていったら天文台があったあそこ!!!」
「そうよ、その天文台があったあそこが天文台に変わって塔になっちゃってるのよ!!」
「「何だってぇぇぇ~~~~」」
天神将メンバー2人が唱和して叫んでいた、当然である、あり得ないことだからだ、元々あの塔は地上にあったものだ、それが何で山のてっぺんにある、しかも場所がまるっきり違うのだ。
「だいだいね、私だってそれに気づいて最初にあんた達と同じ事思ったわよ! だから謎なんだって言ったでしょ、解らないことだらけのこの世界だって!」
「あぁぁ~~~俺頭痛くなってきた……」
「俺もだ、何がどうなっているんだよ」
「姉貴、確証がないだけだろう、だからそれも確認するために行くって事だよな?」
多少気づいている夏椰は雪華の顔を見て聞いてきた、その通りであるからだ。
「そう、夏椰の言うとおり、こんな事やってのけるのは奴以外にいない、その確証を得るためにも行くしかない、夏椰、本人に会うまでは口に出してはダメよ」
「解っている……」
それを聞いた皆が、夏椰は何かに気づいている事に、今になって漸く理解した。ただそれが何なのかは解らない。雪華が口止めをしている以上、夏椰は口を割らない。
「さて、そろそろ出発するわよ、遅くなって吹雪にでも遭ったら最悪だからね」
「それ、どういう意味だ?」
「一応活火山だけど、噴火せず煙を出している間は雪が降っているからよ、昔みたいに夏は溶けるなんて事はない、大昔の富士山の様に万年雪だよ、あそこ」
「うそぉ~~~」
「天文台があった場所は噴火口から離れてたでしょ」
「確かに……」
「そこも万年雪なのよ、今の冒険者はあそこまで行けないわね」
雪華の言葉でこれは難度の高い攻略になると思ったのは雪華以外の全員である。
「なぁ飛行魔法で行けないのか?」
「私は行けるけど、皆は飛行魔法でどこまで行けるの?」
「天空の城には行けるから大丈夫じゃねぇの?」
「じゃ行ってみる? 雪と風の精霊達に邪魔されなければ行けると思うけどね」
「精霊達って、どういう事?」
「あそこ精霊達が守っているのよ、特に雪と風の精霊は、ピートが召還してるか使役してるかどっちかだとしたら、どうする?」
「倒せないのか?」
「倒せないわけじゃないわよ、精霊だもん」
「召還魔法で精霊を呼ぶなんて出来るのか?」
「精霊っていや自然様だろう?」
「普通の人間には無理よね、魔術師でも契約をしなけりゃ無理よ」
「姉貴は昔から精霊とかと話できるから、普通だと思っていたけど、違ったんだ?」
「私は陰陽師の力もあったし魔術師の力も持っていたから、精霊と話せるし見ることも可能だった、でも本来基本的に人間が魔法によってする精霊召還は、契約の元に出来ることなのよ、だから召還魔法を使える者でも精霊だけは召還をすることは無理だった、つまりね悪魔召還と対等の位置にあるのよ」
「えっ悪魔召還と同じ?」
「悪魔召還の場合供物と魔力を餌に契約をするんだけど、精霊は基本的に人が嫌いだからね、召還に応じて貰って契約をしてくれたら召還出来るって形になるのよ、でもそれはもの凄く難しい事なのよ」
「じゃ何でピートは雪の精霊を召還か使役している可能性があるっていうのはどういう事だ?」
「………それは………ここではよそう、あいつに会えば解ることだから」
雪華は何やら厳しい顔でそう言った。夏椰は完全に理解をしているピートの正体に、だから精霊を召還もしくは使役できるのだろうと、恐らく雪華も同等だと気づいている。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
雪華一行がウィステリア家である御陵屋敷だった筈の城を出発して1週間が経った、見えている富士山が近づいてこない感覚になっている頃である。
「ん~~~車だったら早く付けるのになぁ~」
「とりあえず、麓迄来られたんだから良しとしようぜ」
「でも大分寒いんだけど……」
「このあたりはもう精霊の支配下になっているかもね、でも樹海が在るからこれを突破して山を登らないとダメなんだけど……」
「えぇぇ~~~樹海を突破って……」
「強い魔物が山ほどいるんじゃ」
「いるわねぇ~、って事でここからは私が転移魔法を使って行くからついてきて」
「転移魔法?」
「それなら俺たちも使えるぜ!」
「知っているわよ、でもね、ここで普通の転移魔法なんて使ったら精霊に邪魔されるわよ」
「普通のって何だそりゃ?」
「あなた達が持っている魔法はゲームで使っていた魔法でしょう、ピート相手にそれは通用しないわよ、あいつが使っている精霊はそんな生やさしいもんじゃない、私はゲームではなく現実世界、つまりあの物理世界で精霊と話せた、陰陽師であり魔術師でもあったからね、そっちの力も必要になる。それでもどこかできっと邪魔されるわ」
「……本物の精霊様って事か?」
「本物って何だよ姉貴??」
「つまり俺たちが今まで在ったことが在る精霊ってゲーム時代の精霊って事だよな、こっちで精霊を見たことは今の所一切無い」
「……って事は……」
「そう本物の精霊達よ、ゲームではなくあの物理世界にいた精霊達と同等のね。いい、これから言うことをよく聞いてね、ここからは何があっても私の言うことを聞いて行動してね、雪の精霊達は雪を操る、つまり凍り付けにすることだって出来る。普通の火の魔法なんかでは倒せないわよ」
「……解った……」
雪華の言葉で皆が息をのむ、ゲームではなく本物の精霊との対峙など想像できないのである。ただ雪華は物理世界時代から慣れっこであるために気にしていない。
樹海を少し入った所で雪華は超音波魔法を高出力で放出して周囲の魔物を蹴散らした、それから全員を自分の周囲に集めさせて魔素を凝縮し魔力を高めで無詠唱で全員を包むほどの魔法陣が光り現れて、転移した。
稚拙な文章をお読みになって頂きありがとう御座います。
ご感想に対する返信返しは超苦手なので、出来ないことが多いかもしれませんが、出来るだけ頑張りますので、長い目で見ていただけると幸いです。