76話 主と執事
※何度か読み返し、色々話がおかしくなっている所や誤字・脱字は不定期に修正・加筆をしております。(更新日が多々変更あり)
朝食を終え、チヨリ村を出たロドリア商隊と護衛の一行は、ゆっくりと進み関所に到着した、そして当然の如くロドリア商隊は商業ギルドカード、雪華達は冒険者カードで身分証の確認を行い関所を通過、その改めには当然門番長のロドックが立ち会った。
「迷惑をかけたわねロドックさん、うちの者が迷惑をかけなかった?」
「いいえとんでもない、とても礼儀正くて助かっております、また魔物も討伐していただきましたので」
「そう、それは良かった、じゃまた今後は領主としてか冒険者としてか、どちらかの立場でここを通るときがあるかも知れないから、その時はまた宜しくお願いしますね」
「はい承知しております、が身分証明書の確認はさせていただきますよ?」
「当然です、一応ね」
そう言いながら雪華は笑って関所を通過していった、そしてそこから暫く進んでいくとウィステリアの迎えがズラッと並んで整列して出迎えていた。
雪華達はロドリア商隊を守るように前衛に雪華と夏椰、後衛を浅井と霧島が馬で守っていた。全ての商隊がウィステリアの地に入った時、小花衣と兄の春樹が一緒に来ていた。
「お帰りなさいませ雪華様」
「お帰り雪華、夏椰、えらく長旅だったなぁ~」
「………色々あったのよ、報告はしていたはずだけど?」
「お伺いしております、それでお話ししたい事もございますので雪華様はどうか馬車の方にお乗りいただけませんか?」
「私は冒険者としてロドリア商隊の護衛をしているのよ」
「存じております、ですがここはどうか、商隊の方はこちらで護衛をいたしますし、夏椰様にお頼みいたします」
どうも譲る気が無いような小花衣を見て、雪華は溜息を付いた。そして夏椰を連れてロドリアの所に向かった。
「姉貴、小花衣さん怒っているような気がするんだけど……」
「そうね、怒っているわよね、あれは私にも解るわ」
「大丈夫なのか?」
「大丈夫よ、一緒に行けなかったことで怒っているのは解っているし、王都で色々合ったのにその場にいられたなった事でグチでも言いたいんでしょ」
「……小花衣さんのグチって聞いたこと無いけど」
「そうねぇ、私も余り聞いたことはないけど、今後のこともあるから宥めることにする、だから夏椰は私の代わりに賢吾や廉と一緒に衛兵達とロドリア商隊を護衛して頂戴、こっちの馬車には護衛はなくていい、何せスキルマスター二人が乗った馬車だからね、問題ない」
「解った」
「有る程度の話が付いたら、馬車から降りて馬に乗って護衛も戻るから、それまで何とかして」
「戻ってこれるのかよ」
「戻るわよ! あんな馬車の中で重たい空気なんて吸いたくない!」
「了解、戻ってこれることを祈ってる」
そんな話をしながらロドリアの所に戻ってきて事情を話した、そして後衛の賢吾と廉も集めて夏椰に話した事を再度説明した。
その後雪華は嫌々ながらに馬車の方に向かって歩いて行った。それを見送る3人のスキルマスター達がご愁傷様と言いながら見送っていた。
小花衣達の所に戻ってきた雪華は、兄と小花衣の顔を交互に見て先を促す、そして雪華と春樹が馬車に乗ったのを確認してから、ウィステリア一行は領都に向かって出発して行った。
「でぇ雪華様、王都は楽しゅうございましたか?」
「……なんか嫌みに聞こえるんだけど気のせい?」
「いいえ気のせいではございませんよ」
「でしょうねぇ、そんなに怒らなくてもいいんじゃないの?報告はちゃんとしていたでしょ、守護者経由で」
「えぇ頂いておりましたが、まさか王宮にお出でになるとは思いませんでしたが……」
「私もそんな予定はしていなかったけど? ついでにとんでもない物まで貰ったしね、あの国王侮れん」
「何を貰ったんだ?雪華」
「これです」
そう言ってアイテムボックスから取り出したのは公爵杖と佩玉だった、最後に質問したのは兄の春樹、和解したとはいえ、今までの習慣で夏椰以外の姉弟に対しては敬語を使っている。
「これって……」
「公爵杖と佩玉よ、なんか侯爵から公爵に陞爵しちゃったのよ」
「……お待ち下さい、どうして公爵なのですか? 公爵とは王家と血の繋がった者がなれる爵位と私は考えていたのですが?」
「間違ってないわよ、私だってそう言ったんだから、でもね……小花衣は月宮から先王の手紙の事は聞いてる?」
「一応聞いてはおりますが、中身は領主宛しかも雪華様の名前が記されているため読まなかったと言っていました」
「そう、王都に向かう途中関所を越えた後はベルフィント領でしょ、その領都を通過しないと王都には行けない、でもその途中で襲撃にあった、それは報告しているわよね」
「はい、お伺いをしています」
「その後の事は複雑に色々あったから詳しい説明は送らなかったのだけど、領都で、現在王の側近で宰相をつとめているベルフィント伯爵の敷地内のある場所で国王がいたのよ、しかもお忍びでね」
「国王陛下が?」
「そう、しかも手の込んだやり方でウィステリアスキルマスター全員を呼びだした」
「呼び出されたのか?お前たち?夏椰も?」
「そうです全員、4人全員です」
スキルマスター4人を全員呼び出されたという事に、小花衣達は警戒をした。しかも国王自らが呼び出したと言ったのだ。
「……あの国王が私たちに会うために手の込んだやり方で呼び出した方法は、一見してベルフィント伯爵の封蝋が押されていた手紙だった、でも厚みが合ったのよ、でぇ開けてみたらもう一枚手紙があった」
「もう一枚?」
「そう、その封蝋が王室のものだった」
「王室の? じゃ国王自らの手紙って事か?」
「えぇ、そこに私たちウィステリア組4人だけで来て欲しいと、居場所と時間が書かれていた、でも私たちには尾行が付いていたから、飛行魔法で指定場所まで行ったのよ」
「そこがベルフィント伯爵家の?」
「えぇまぁ小屋みたいな感じで作られ立派な建物ではあったのだけど、そこで伯爵に会って、2階に通されたらレイモンド・フェスリアナ国王がいたのよ」
どうも穏やかではない呼び出され方に詳しく話すよう小花衣と春樹は急かしてきた、というか心配してのことだった。
「それで何かされませんでしたか?」
「まぁ何かされても反撃するけどね、どうも国王の方が私たちに会いたかったらしくてね、先王の手紙を私たちに読ませるために」
「それってどういう意味だ?」
「本当にスキルマスターやウィステリア家が300年前に神々に眠らされて目覚めた者達か確かめるためって言っていましたよ」
「それが手紙って事か?」
「えぇ、しかもその手紙日本語で書かれていたのよ、だからこの世界の人々は読めないし理解できないわけ」
「日本語??」
「先王の正体は聞いてないの月宮からは?」
「はい何も……」
「そう、現国王は生粋のこの国の人、もちろん先王もこっちで生まれ育っているのだけど、一つだけ違っていたわ」
「違っていた?」
「恐らく月宮は手紙を見せられたときに正体を知ったのだろうけど、あの先王300年前の転生者だったのよ」
「転生者!!」
「いるのですか?」
「先王以外に後二人転生者がいたわ、私のクラスメートの小山内琴音と水原拓馬の二人も伯爵家の人間として生まれている、晩餐会で会って話をしたわ」
「何だって? お前のクラスメートって言えば藤華のSAクラスのか? じゃ先王は誰の転生者?」
転生者がいる等とは彼らも思っていなかったらしく、驚いて雪華に問いただしてきたのだが、その前に先王の手紙の説明が先である。
「転生者がなぜ居るのかは後で考えるとして、今は手紙の方よ」
「その手紙を読ませる為に国王自ら会いに来たって事か?」
「そうです、わざわざお忍びで、私たちに尾行が付いているのを知っていたのでこんなやり方しかなかったと弁解してはいましたけどね」
「でぇ国王からそこで先王の手紙を見せられたという事ですか?」
「そう、しかもその手紙の封蝋が菊花紋章だった」
「えっ!」
「まさか!」
「本当よ、レイモンド・フェスリアナ国王に直接聞いたら、先王が自分で決めた自分の印の封蝋だって言ったのよ」
「って事は……皇室の者?」
「300年前のあの当時の今上天皇ではなく皇太子の方ね。しかも皇太子は300年前に一度一般人の平民として転生して一生を終えている、その後再度転生して今度は王太子として王室に生まれたらしいのよ、そんな事を手紙に書いていた。呼び出された4人全員が読んで確認したから間違いないわ」
「皇室の転生者が存在するなんて……」
「私も驚いたんだけどね、もう一つ有るのよ、とんでもないことが」
「何ですか?」
「代々皇室の代替わりの直前に次の天皇になる者に対してだけ口伝されている真実があったらしいわ」
「それは何だ!」
「………神崎家の真実」
「神崎家の真実???」
「つまり神崎家の興りが誰なのかを知っていた、そして代々天皇しか知り得ないこと」
「つまりそれは始祖の事ですか?」
「そう、今回あの国王に会って始祖の名を持ち出されたわ、希望もあったため手紙は翻訳してあげたけど、この世界の歴史にも始祖が出てくるでしょ、同一人物であるっていう認識をしていたわよ」
雪華の話を聞いて小花衣も春樹も驚きを隠せない、雪華からの報告は今の話とピートの件以外は包み隠さず報告されていた、この件に関して雪華はあえて報告をしなかったのだ。
「雪華様、何故今のお話は報告に無かったのですか?」
「複雑すぎるでしょう、それに300年前の転生者の話なんて守護者経由で話せる事じゃないわよ、正直な所、私たち4人ですら今回の旅は収穫もあったけど驚きも合ったのよ。そして謎も深まってしまった、簡単に守護者経由で話せることも少なくなったのよ、だから大まかなことしか言えなかった」
「謎とは?」
「……それはスキルマスターが7人いるって事よ、その7人目をウィステリアに戻ってすぐに締め上げに行くことにしているのよ、ただ、悪いけどこれも小花衣は連れていけない」
「何故ですか!」
「……少々やっかいなのよ、いろんな意味で、7人目は天神将の私と同じ規格外よ、誰か判るわよね」
「……はい、天神将の規格外と言えば雪華様の他にはピートという魔族の男だったと記憶しています」
「えぇでも恐らく魔族としてこっちにはいないでしょう、それにね、今回4人で旅をして知った事だから4人であいつに会いに行く、そして天神将メンバー3人で締め上げる、夏椰を連れていくのは、旅をしたから会う資格を私が与えた。奴から聞いた話を検討してから、あなた達に話すことにする」
「雪華、何故夏椰にその資格を与えるんだ? 夏椰に与えるんだったら小花衣さんにも権利は有ると思うが」
「……春兄ぃの言うことは最もですよ、でも今回はダメ、代わりに小花衣と月宮には頼みたいことがあります、奴がいるのは恐らく迷宮だと検討は付けているので、その迷宮はウィステリアにあります、間違いなく私と奴は喧嘩をする事になるでしょう、地上が危険にさらされないようにするつもりだけど、万が一を考えて二人には領民の守護を頼みたいんですよ」
「守護って……」
「……今回は私もかなり頭にきてるので、半殺しにしたいくらいなのよ、奴から詳細を聞き出せたら、話せる範囲でウィステリア家には公表します」
「話せない内容なのか?」
「場合によっては、そうなるでしょうね」
雪華はそう言いながらも怒りの霊波を出していた、それはどうも今まで以上にでかい、馬車から漏れ出してその気配は護衛をしているスキルマスター3人にまで届いている。
これは不味い状況ではと思った3人の男達、しかし様子を見に行こうと思った所でその霊波は収まった。
「雪華様どうか霊気を納めて下さい、強すぎます」
「あぁ、ごめんなさい」
雪華の霊気につまり大きすぎるオーラ、魔力は他者に強いプレッシャーになったり、気絶したりする程だった。
故にスキルマスターではない春樹は苦しんでいるし、スキルマスターといえど規格外の魔力には辛いものだった。
「それですぐにでも行かれるのですか?」
「そうねすぐにでも行きたいのだけど、そっちも何かある?」
「領民が雪華様のお目覚めを待ち望んでいましたし、ギルドマスター達から漏れた事もあって出迎えようとお祭り騒ぎになっているのです」
「あぁぁ~~じゃすぐに行くのは無理そうね」
「出来ますれば少しの間だ、領民の心の安寧をお願いしたいのですが」
「わかったわ、でぇどうやってするの?」
「一人一人というのは無理ですので今から、城までの道中を帰郷凱旋という事で領民にその姿を見せていただければ、そして城に到着した夜に主要な人物達との晩餐をご用意する予定となっております」
「その次のは一日ゆっくりと休んでから、そのピート君に会いに行けばいいだろう、事情が事情なら早い方が良いんだろう?」
「そうですね、早い方が今後の対策も考えられますし、時間をかけたくはありません、この帰郷で凱旋パレードの様なもので良いのであれば進んでしましょう」
「状況の説明は、たぶん家族から聞かれるだろうから対処を考えておけ」
「わかりました」
雪華はそう言うと、自分が居なかった間の領内の事を小花衣から報告を聞いた、割と細めに守護者経由で報告が来ていた為、それほど問題は無かった。
パロル隊長達の件も小花衣達のおかげで大分経験値が増え、今では初心者の塔の第一階層の魔物を討伐できる迄に成長しているという、しかもレベル100を越えていた。
それを良しとして嬉しそうに小花衣達の労をねぎらっていた。
その後領都に着くまで2泊程野宿をしたが、問題なく過ぎていく、その間小花衣とスキルマスター達はお互いの情報交換をしていた。
但し、雪華からピートに関することは厳重に口を閉ざすよう命じられた。
稚拙な文章をお読みになって頂きありがとう御座います。
ご感想に対する返信返しは超苦手なので、出来ないことが多いかもしれませんが、出来るだけ頑張りますので、長い目で見ていただけると幸いです。