75話 チヨリ村の異変?
※何度か読み返し、色々話がおかしくなっている所や誤字・脱字は不定期に修正・加筆をしております。(更新日が多々変更あり)
チヨリ村から少し離れた所で野宿をした一行は、陽が少し上がった頃に村に入った。
相変わらず冒険者に対しての道具屋や武器屋が中心の宿場村って感じの所である。村で朝食を摂ってから、再出発をすることにした。ここから関所までは20分程度で行ける、さっさとベルフィント領から出て自分の領地には入りたいと言うのが雪華の思いだった。
しかしどうも以前通った時とは少し雰囲気が違っていた。ロドリア商隊と馬に乗ったスキルマスターを見て皆が何やらヒソヒソと話している者もいれば、何やら我々の噂をしているようだ。
「なんか前に来たときと様子が違うな」
「そうねぇ~」
そんな話をしながら一行は以前泊まった宿屋に入った。すると店主がロドリアに声をかけてきた。しかもヒソヒソと話をしている。
「何だろう?」
「あぁ~大方私たちの正体を知ってしまって、確認しているんじゃない?」
「あちゃ~」
「えぇ~何でバレるの? 早すぎねぇ?」
「そうねぇ、情報が流れるには少し早いような気もするけど、これが我が領地から流れた噂だった場合、ここは一番に知ることになるわよねぇ~」
「あぁ~なるほど、関所近いしって事か」
そんな話をしていると、ロドリアと店主が一緒にやってきた、そして彼らに対して片膝をついて深々とお辞儀をしている。それを見て雪華一行は溜息を付いた。
「ロドリアさん?」
「どうも皆様の噂が真実なのかと問うて来たのですよ」
「噂って……もしかして……」
「はい、スキルマスター様であり、ウィステリアの領主様であることをです」
ロドリアが雪華達に説明をしたあと、店主は失礼を承知で話しかけてきた、失礼ではないのだが、貴族相手に一介の民が話しかけることは無いからである。
「前回はとんだご無礼をいたしました、ウィステリア領主様、スキルマスターの皆様」
「無礼って、別に受けてないんだけど?」
「とにかく立って下さいよ店主さん」
「それより噂ってどんな噂??」
「はい、関所の門番からの話でした、『ウィステリアの領主様がお目覚めになり、王都に向かって行ったと、そして今回御帰郷されるため、関所近くには護衛の衛兵やウィステリアの関係者が来られるそうだ』といった話です。我らは領主様を存じ上げませんでしたので、前回は普通の冒険者と思っておりました」
「いや別にそれで構わないんだよ、俺たちも正体を隠して冒険者として王都に観光目的で出ていったんだから」
「そうですよ、だから気にしないでいいから、立って下さい」
皆にそう言われ、立ち上がった店主を今度は雪華が質問をした、その顔は、どうも怒っていると感じさせるような表情だった。
「ねぇ、店主、さっき話した門番の噂だけど……」
「……はい?」
「姉貴??」
「関所の衛兵や護衛の者を含めてウィステリア家の者が来るって事かしら?」
「はい、そういう話が村で噂になっております」
「……そう」
「えっ、何で怒ってるんだよ雪華!!」
「……何で怒っているかって? 目立ちすぎるのは止めろと言ったはずなのよ! 私は、なのに衛兵に護衛って必要だと思うの私たちに?」
「……いや必要ないね」
「まぁ魔物は適当に討伐すれば問題ないけどさぁ、ウィステリア家としては領主をちゃんと出迎えないとって思ったんじゃねぇの? なぁ夏椰」
「ん~~お婆ちゃんあたりなら、そう考えるかもねぇ~」
「お婆ちゃん!!」
「ついでに言えば月宮さんだってそう考えていると思うし、小花衣さんは姉貴の執事だろう? そりゃ迎えに来るに決まっている」
そこに、関所の門番らしき人物と村長がやってきた、そして店主と同じように雪華達に対して片膝をついて令とっていた。
「お初にお目にかかりますウィステリア公爵様とスキルマスターの皆様方、私はこのチヨリ村の村長をしていますマデックと申します。村にお越しになったと聞きご挨拶に参りました」
「お初にお目にかかります、ウィステリア公爵様とスキルマスターの皆様方、私は関所の門番長ロドックと言います。ご挨拶に参りましたお見知り置き下さいませ」
「……私がその噂の雪華・ウィステリアよ、前回は冒険者カードで名称の方で通ったから解らなかったのも当然だから、気にする必要は無いわ、当然弟も名称で通ったから、それより気になるのだけど、関所の向こうにうちの関係者は来ているの?」
「はい、2週間前にウィステリア領方面から連絡がございました、その為こちらも確認の為ベルフィント領の代官様に確認をとりましたがお留守だったのです、ですが同日王都よりの国王陛下の署名が入った伝令書を持った兵がお越しになり、事実確認が取れました。そして昨日先触れで明日お迎えの関係者が来るとウィステリア領からの伝令がございました」
「って事は既に来ている?」
「少しずつお越しにございます、先ほど先発隊が到着され準備を始めておられました」
「マジか……」
この話を聞いた雪華の額には青筋が立っていた、そしてスキルマスター達はウィステリアの行動に呆れかえった上、雪華の性格を考えると雷が落ちそうだと直感で分かった。
そのため兼吾と廉は夏椰に対して、雪華を宥めろと言ってきた。当然である、弟が姉を宥めなくては収まりがつかないだろうと思ったのだ、特に雪華が怒れば被害が免れない。
「姉貴、諦めろ家令の月宮さんは来られなくても執事の小花衣さんが来るのは当然だと思うし……」
「…………」
「仕方ないだろう、ウィステリアを出るときに小花衣さんを置いていくことを決めたのは姉貴だよ、迎えくらいはしたいと思うぜ、少なくとも俺ならそう思う」
「ウィステリアの守りはどうすんのよ!」
「姉貴の結界が有るんだから、大丈夫だろう、それに月宮さんだってスキルマスターだぜ、領内だけなら何とかなるだろうし、秋姉ぇや春兄ぃだっているいるしさ」
「そうそうパロル隊長達だって成長しているって言ってたじゃん」
「雪華よ、お前の命令で入国制限かけたんだろう、だったら有る意味で大丈夫なんじゃねぇの」
弟と仲間のクラスメートからの助言で怒りを収めることにした、取りあえず今は、でも恐らく小花衣の顔を見たら怒りが復活しそうだと思ったのは間違いない。
「店主、悪いんだけど私たちはここで朝食を摂ってから出発する予定になっているのよ、商隊の人数分の朝食を作ってもらえるかしら? 当然普通の食事で良いからね、普通の食事で!! 皆と同じ物を頼みます」
「領主様、それでしたら我が家でお摂りになられては、おもてなしをさせて頂ければと思います」
「悪いけど、お断りいたします、今回は冒険者としての外出だったので、最後までそうさせて頂きます、今後は正体もバレちゃったしそうはいかないかもしれないけど……基本的に私は冒険者として動くことが多いからね、店主さん宜しくお願いします」
「あぁ~はい畏まりました」
「あぁそれと門番長のロドックさんだっけ? うちの連中に伝えてもらえます? 朝食を摂ってから向かいますって、これは領主の私からの命令だと伝えてくれれば良いです、そこに小花衣がいれば文句は言わないでしょう、というか言わせないわよ」
「畏まりました」
「ごめんなさいね村長さん、ご厚意には嬉しく思っているのよ、でも今回だけは勘弁して下さい」
「解りました、ご意向に沿いましょう」
「ありがとう」
雪華の命令と言うものを受け取った門番長ロドックはそのまま急いで関所に戻っていった。そして村長は諦めたように笑顔で雪華の言葉を受け入れた、その雪華一行は食事を摂るためテーブルに着いた。
「本当にいいのか? 村長さんの厚意を蹴って」
「今回は申し訳ないと思っているわよ、最初に正体を隠して出てきているからね、最後までそれを通したかったのよ、我が儘だけど」
「我が儘だって解っているんだ……」
「解っているわよ、それくらい」
「じゃ我々の護衛依頼はここまでですかね、お迎えもいらっしゃるのでしたら」
「冗談じゃないわよ、最後まで護衛の仕事はするわよ、それにうちに納品するものがあるでしょ、あの茶葉大事なんだから」
「あぁ~承知しておりますよ」
「茶葉?」
「ベルフィント領の茶葉を沢山購入したのよ、うちでは少ないでしょ、緑茶に加工するわよ」
「何! 緑茶飲めるのか?」
「俺たちにも分けてくれ!!」
「解っているわよ、家で栽培している分だと少ないからなぁ~、毎日緑茶って訳には行かなかったし、だから大量に買い込んだのか?」
「そうよ、加工は出来るからね、これから毎日緑茶が飲めるわぁ~」
「お婆ちゃんとお爺ちゃんが喜びそうだね」
「私も嬉しいわよ!」
「あぁはいはい、姉貴のお茶好きは知っているから、緑茶を飲みたくて小さな茶畑作るくらいだからな」
「あぁそうだロドリアさん、今度うちの緑茶に加工した茶葉を例の茶畑農家に持って行ってくれる?」
「はい、構いませんがおいくらでお売りに?」
「売らないわよ、こんな味だよって言うのを知って貰うために渡すんだから、数種類の加工した茶葉を説明書と一緒に渡すから、依頼の仕事として頼めるかしら?」
「解りました、依頼の仕事としてカイル・ロッド氏にお渡しいたします」
雪華の言葉でロドリア商隊の仕事として依頼をした二人は笑って商談の話をしていた、それを見ながら夏椰含めたスキルマスター達は昔の雪華を思い出した。さっきの門番長や村長と話をする彼女と、300年前政治家と話をして対応する雪華がだぶって見えたのだ。
「あの時も、こうやって政治家と渡り合ってたのかなぁ~」
「あの時って?」
「学校が避難所になったときの事ですよ、前に話しましたよね」
「あぁ~、夏椰は直接見てなかったんだっけか」
「えぇ見てません、お爺ちゃんから聞いた話くらいですからね」
「あのとき市長や知事がやってきて問答していたからな、あの場に俺はたまたまいて見ていたんだけど、ぜんぜん負けてなかったし」
「逆にやり込められてる政治家達って感じだった、今のはまだ軽い方じゃねぇか?」
「王宮で啖呵切った時の雪華は、当時の政治家相手にしている感じだったんじゃねぇ、メルリア官邸では大統領相手に動じず睨み返していたしなぁ~」
その当時を思い題している男共は、それぞれの思いで目の前のクラスメイトであり姉である雪華に対して、今後もまだ強くなりそうで怖いと思っているのだった。
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その頃関所では、雪華の伝言を受けた門番長ロドックが部下の門番より報告を受けていた、既にウィステリアからの迎えが多く集まっており責任者も出向いているとのこと。
「そうか、ならばその責任者に会えるか? ウィステリア領主様の伝言を持ってきていると伝えてくれ」
「畏まりました」
そう命じられた門番の一人が、ウィステリアの兵士の所に向かって行った。そして暫くすると部下と一緒にスラッとした若い男性が歩いてきた。
「ロドック隊長、お連れしました」
「ご苦労、下がってよし」
「はっ」
「私はこの関所の門番長をしているロドックという者だが、失礼ですがお名前を教えていただけますか?」
「ウィステリア領主、雪華様にお仕えする執事の小花衣です」
「あなたが小花衣様ですか、これは失礼を、領主様より小花衣様に御伝言がございます」
「主は何と仰っておられましたか?」
「一字一句違えず申し上げます。『朝食を摂ってから向かいます。これは領主の私からの命令だと伝えてくれれば良いです、そこに小花衣がいれば文句は言わないでしょう、というか言わせないわよ』……っと仰っておりました」
「………承知いたしました、伝言ありがとうございます」
「いえ」
「でぇ質問なのですが、雪華様以外には夏椰様や浅井様、霧島様のスキルマスターもご一緒でしたか?」
「はい、ロドリア商隊の護衛を引き受けていると仰っておられました」
「なるほど……、ではあなたが行ったときには、まだ食事を摂られていなかったのですね」
「はい、丁度私に伝言を伝えた時に、宿屋の店主に商隊の皆と同様に食事をご注文されておりましたので、まだお食事中かと存じます」
「そうですか、丁寧な説明ありがとうございます。暫くこのあたりを騒がせてしまいますが、どうかご容赦下さい、魔物が出ればこちらで討伐しておきます」
「承知しました」
小花衣は大きな溜息を付いて雪華の伝言を了承し、部隊の調整と迎えの準備の為離れていった。
それを見送った関所の門番長は思い出していた、あの方自身もスキルマスターであると領主一行が言っていたことを。ウィステリア領とは特別な地域であることはフェスリアナ王国国民なら誰でも知っていることである。
稚拙な文章をお読みになって頂きありがとう御座います。
ご感想に対する返信返しは超苦手なので、出来ないことが多いかもしれませんが、出来るだけ頑張りますので、長い目で見ていただけると幸いです。